
前半のストーリー
増加する凶悪犯罪に対抗し、探偵という職業の必要性が飛躍的に高まった現代。日本で唯一「国家探偵資格」を取得できる超難関校・真理峰探偵学園に今年、とある少年と少女が入学する。(中略)これは、真実を競い合う新たな学園黙示録。最高峰の知的興奮がここにある!【電子限定!書き下ろし特典つき】
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世界に知れる犯罪王の孫の不実崎は、
探偵学園で探偵王の娘の詩亜と出遇う。
互いの目的である探偵資格を得るため、
探偵スキルを競い合う学園生活を送る。
◆登場人物
不実崎未咲……亡き犯罪王の孫である15歳の探偵学生
詩亜・E・ヘーゼルダイン……探偵王の娘で探偵学生
恋道瑠璃華……真理峰探偵学園の生徒会長
宇志内蜂花……推理より演技が得意な探偵学生
カイラ……詩亜の侍女
祭舘こよみ……未咲と同じクラス探偵学生
万条吹尾奈……探偵学園の先輩
『シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する』
紙城境介(著)
しらび(イラスト)
KADOKAWA
2023年6月23日発売
購入金額の最大40%が、
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感情トリガーとあらすじ、場面
※:本ページの情報は2023年9月時点のものです。
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【感情のトリガー↓】0~285P(スマホ)
①模擬事件【推・茫・悶】
②探偵授業【肯・諦/解・蟠】
③寮生の素【笑・知・蟠/晴】
【トリガーの内訳】
①模擬事件(探偵学園の入学式で試験が行われる)
├犯人が判明【推】(マテヨ…)
├女優の豹変【茫】(????)
└これが真実【悶】(マチドオシイ)
②探偵授業(探偵を目指す訓練がはじまる)
├本当の答え【肯】(タシカニ)
├暗号の解読【諦/解】(オテアゲ/ナルホド!)
└荷物の中身【蟠】(キニナル)
③寮生の素(幻影寮の住人達の素性が露見する)
├姫様の秘密【笑】(アハハ)
├友達の法則【知】(ヘェ~)
└先輩の正体【蟠/晴】(キニナル/スッキリ)
【刺激された感情の種類:10種】
幸福:★
晴=怨みや蟠りが解消される(1)
驚度:★
茫=神秘的な現象に遭遇する(1)
思考:★★★★★
諦=希望や答えがみえない(1)
知=豆知識を教えてくれる(1)
解=不可解が解明される(1)
推=謎を解く仮説を考察する(1)
肯=諭す言葉に納得してしまう(1)
不幸:★★★
蟠=中途半端でまだ未解決(2)
悶=期待がまだ実現していない(1)
攻撃:★
笑=滑稽さを感じて可笑しい(1)
①模擬事件【推・茫・悶】

あらすじ——
1999年、犯罪王は探偵王に敗れた。
以降、犯罪王の後継者が後をたたず、
世に混沌を齎す迷宮入り事件が続出した。
増える犯罪に対抗すべく、国が執った策とは、
国連探偵開発局の設立であった。
それから、四半世紀以上のこと——。
※
東京都内にある真理峰探偵学園で、
入学式が行われる。
集まった生徒達の目の前で理事長が倒れ、
死体を模擬した人形に入れ替わる。
この謎に1人だけ——探偵王の娘が、
犯人が解ったと挙手をする。
※
犯罪王の孫である不実崎未咲は、
模擬事件に遅刻して入学する。
教室で説明会が行われ、
未咲は、同クラスの宇志内蜂花と知り合う。
宇志内から模擬事件の内容を知った未咲は、
現場を訪れて犯人のトリックを解く。
試験結果の順位に不満をもった探偵王の娘、
詩亜・E・ヘーゼルダインが未咲の前に現れ、
推理勝負を挑んでくる。
❶犯人が判明【推】

探偵学園の地下講堂で行われた入学式で、
60代男の理事長が生徒のまえに現れる。
入学生に向けた挨拶の途中で停電が起き、
数分後に講堂内の明かりが戻った。
が、理事長に異変が起きていた。
舞台上で倒れ伏していたのだ。
床の血溜まりの中で……。
舞台中央のセリから昇ってきた車椅子の女子、
生徒会長が入学生らに向けて説明する。
これは、理事長そっくりの人形であると。
いつのまにか、入れ替わっていたのだ。
生徒会長が生徒らに問うてくる。
あの一瞬の暗闇のなかで、
理事長は、どのようにして人形になったのか。
困惑する生徒らの中から一人、挙手が上がる。
『私』という一人称の人物が、
生徒会長に宣っていた場面である。
東京都内——
真理峰探偵学園〈第一秘匿講堂〉。

──それじゃあ、私が先に答えてもいいよね?
《前掲書、 P.32》※スマホで閲覧
「はい」
私はまっすぐに手を挙げた。
「犯人がわかりました」
講堂中の視線を全身に浴びながら、私はかすかに微笑んだ。
——まてよ……
理事長は最初から人形だったんじゃない?
スモークの演出で舞台袖から出てきたからね。
停電が起きたタイミングで、
壇上の列席者(4人)の誰かが人形を倒した。
人形には、光の目印をつけていたのだろう。
小さな光が空中で静止していたみたいだから。
革手袋を両手にしていた男があやしいな。
血のりを使うときに手が汚れてしまうから、
その対策で事前に手袋をしていたのかも。
慌て出した生徒たちを鎮めるために、
真っ白な手を大きく振っていた男が犯人だ。
汚れた手袋を脱いで隠したに違いない。
理事長の声は、コナンと同じ方法だろう。
スピーカーを人形に貼り付けていたのさ。
たぶん。
■日本唯一の真理峰探偵学園

探偵階級
▼ブロンズ(1000P <1200P)
▼シルバー(1200P<1500P)
▼ゴールド(1500P<1800P)
▼プラチナ(1800P<2100P)
▼ダイヤモンド(2100P<2400P)
▼マスター(2400P<2700P)
★シャーロック(2700P<????P)
※探偵ポイントが800を下回ると退学決定
❷女優の豹変【茫】
探偵学園の入学式に遅刻してきた未咲は、
地下講堂で実施されていた模擬事件を知らない。
だが、緊急捜査訓練の犯人を見つけれないと、
未咲はマイナスポイントで退学になってしまう。
犯罪王の孫として知れ渡っている未咲に、
協力してくれそうな友達もいない。
入学して早々、退学という危機が迫っていた。
締め切りは、今日の午後3時。
そんなとき、
未咲の前に大きな胸の女の子がやってくる。
おなじクラスの快活そうな宇志内蜂花。
女優探偵だと自称している。
初対面であるはずの宇志内が、
未咲に訓練内容を教えると言ってきた。
推理の仕方を教えるのが条件で。
昼頃、二人は学生食堂に移った。
未咲は疑問に思う。
入試内容に推理問題も含まれていたからだ。
宇志内は、実技でそれをカバーしたと言う。
誰にも気づかれずに尾行してきたのだと。
未咲は納得できない。
彼女は、あまりにも目立つ肢体なのだから。
そんな怪訝な未咲の目のまえで、
宇志内が自分の実力を見せつけていた場面。
レストラン風の学生食堂。

「じゃあちょっと見てなよ! 今からここで変わるから!」
《前掲書、 P.60~61》
(中略)
か細く漏れた震え声さえ、さっきまでとは別人だった。
顔立ちや髪型を変えたわけじゃない。表情、仕草──あるいはそれらを生み出す、人格。外見以外のすべてを変えることで、完全な別人に『変装』していた。
俺はもう、目の前の女子を宇志内蜂花だと認識できなかった。
「──って感じ!」
再び瞼を閉じ、そして開くと、俺の向かい側には宇志内さんが座っていた。
——????
宇志内蜂花は演技が得意みたいですね。
となると、推理が不得意という話も、
もしかしたら演技なのかもしれない。
不実崎未咲に近づくための口実——
そういう可能性も出てくるよね。
本当の宇志内は、どんな子なのか?
どの性格が素なのか?
今の宇志内を信用してもいいのか?
ちょっと、警戒しておきましょう。
❸これが真実【悶】
学生食堂でお昼をとっていた宇志内が、
未咲に模擬事件の内容を教えた。
タブレット端末で詳細を確認した未咲は、
宇志内に、推理に必要な手掛かりを伝える。
未咲には、犯人の目星もついている。
が、一つ、気になるところがあった。
二人は、模擬事件のあった講堂を訪れ、
現場周辺を確認した。
そのとき、
未咲が探偵王の娘である詩亜の推理を、
不完全だと言い切っていた場面である。
第一秘匿講堂。
「完璧な答えがわかった。……と同時に、もう一つわかったことがある」
《前掲書、 P.84》
「なに?」
「詩亜・E・ヘーゼルダインの推理は、完璧じゃない」
少しだけ安心したぜ。
どうやら、探偵王女様も人間らしい。
「魂を懸けてもいい。これが──真実だ」
——まちどおしい。
いや〜、モヤモヤしますね。
なんか、逆に分からなくなってくる。
リアルタイムで事件が起きたとき、
凶器などの情報は書かれてなかったのに、
今更、大事な情報が開示されたのですから。
革手袋を嵌めてた人物と、
大きく手を振っていた人物は別だったとか、
4人のそれぞれの特徴だとかね。
詩亜と同じタイミングで、
犯人を推理するのは不可能ですよ。
いったい誰が、どんなトリックを使ったのか?
早く、答えが知りたい。
②探偵授業【肯・諦/解・蟠】

あらすじ——
校内で選別裁判がはじまり、
未咲に挑んだ詩亜が推論を語っていく。
が、後手の未咲は、彼女の盲点をつき、
より正しい論説によって勝負が決まる。
退学を免れた未咲は、
割り当てられた学生寮をおとずれる。
2年の先輩と、同じ1年の女中と出会い、
未咲は、再び詩亜と同じ寮でも出会う。
学園で授業が始まった未咲は、
尾行訓練で祭舘こよみとペアと組む。
❶本当の答え【肯】
選別裁判をすることになった未咲と詩亜。
どちらの推理がより正しい答えか、
先手の詩亜がトリックと犯人を推論した。
非の打ち所がない彼女の完璧な推理に、
未咲は意を唱える。
この裁判に設定した議題は、
生徒会長の内容と同じもの。
どのようにして人形に替わったのか?
憮然としてしまった詩亜に、
後手の未咲が巻きかえす。
探偵学園校内のおもて。

「あの暗闇の中で、血痕の配置を始めとする細かい作業が可能となる方法は一つ──闇に目を慣らしておいた、だ。ライトを使えばすぐにバレただろうし、暗視ゴーグルみたいなゴツい装備を持っていたら、それもやっぱり目についただろうからな」
《前掲書、 P.135~140》
(中略)
「名前? 知らねえよ。だからすぐにわかったぜ。あんたの推理が不完全だって──『犯人の名前を指名した』って、得意げに言ってたもんな、お姫様?」
——たしかに。
生徒にサクラを用意していたのは盲点。
思い返せば、
出席順についての描写がありましたわ。
それ、関係ある? なんて思ってたけど、
ちゃんと伏線だったのですね。
いや、難しいなあ。
せめて、見取り図が欲しいとこ。
❷暗号の解読【諦/解】
未咲と詩亜、彼女の女中であるカイラも、
同じ1年3組という偶然が重なるなかで、
女性教師による授業が始まった。
探偵科目による暗号解読。
教師が難題を問いかけてくる場面である。
教室内。

ドレスの先生は、黒板に大きく8文字の文章を書き記した。
《前掲書、 P.179》
──『過去白く寝られよ』。
その意味不明な文章をバックに、俺たち生徒を睥睨する。
「小手調べと行きましょう。誰か、この文章の意味がわかる方は?」
過去? が、白く? 寝られよ? 寝ろってことか? 意味がわからん……。
——おてあげ。
ダメだ、さっぱり分からない。
パスト、ホワイト、スリープ……。
英語にしても繋がりがわからない。
あ~もう、降参です。
❸荷物の中身【蟠】
尾行・張り込みの授業で2人1組にさせられ、
取り残されそうになっていた未咲。
彼は、授業中に居眠りをこく中背の華奢な子、
祭舘こよみとペアになる。
課題は、御茶の水の街を歩きまわり、
街の地図を正確に書くこと。
未咲は、相棒の祭舘と路上で一服した。
そこに、変装していた詩亜とカイラが現れる。
詩亜が掲げていた大きな鞄を、
未咲も祭舘も気づいていた。
すると、逃走中の男が詩亜に衝突した。
掲げていた詩亜のカバンが落下した。
すぐに置き引き犯の男だと推理した詩亜が、
あっという間に事件を解決してみせた。
詩亜と女中のカイラが学園に戻っていくと、
祭舘が詩亜の鞄についてぼそっとつぶやく。
気になった未咲は、彼女の推察に耳目した。
祭舘が鞄の中身を予想してみせるのだが、
肝心なところを隠されていた場面である。
昼間の東京——
御茶の水の街の路上。
「候補はいろいろありそうだけどー……わざわざ鞄を用意して隠している以上、それは少なくとも、ヘーゼルダインさんのイメージからは外れるようなものなんだろうねー」
《前掲書、 P.213》
「例えば?」
「そうだなあ。例えば──」
そして祭舘が口にした言葉に、俺は大いに眉根を寄せた。
「あのお姫様が……? そんなもんを、入学二日目に?」
「イメージから外れてるでしょ?」
——きになる。
バスケットくらいの大きさで、
割れたら困るうような電化製品……。
動画配信に使うパソコンかと思ったけど、
祭舘がその候補を外していた。
大きくて入りきらないという理由で。
意外なもの?
詩亜・E・ヘーゼルダインの印象と離れたなにか。
彼女は、引きこもり系の女の子だったから、
ゲーム機とかかなあ??
それとも、お菓子作りの製品とか?
例えば、流れ出るチョコレートファウンテンとか。
③寮生の素【笑・知・蟠/晴】

あらすじ——
入学から数日が経った幻影寮で、
未咲が詩亜の意外な一面を垣間見る。
翌朝、さらに関係を拗らせた2人は、
おなじ同居人の人達にたしなめられる。
対局の関係であった未咲と詩亜が、
話しあって和解にいたる。
探偵学園で本番の警報が発令される。
❶姫様の秘密【笑】
探偵学園に入学して数日が経った幻影寮で、
深夜遅くに大きな悲鳴が轟いた。
たまたまトイレで目を覚ましていた未咲が、
廊下を通っていた時に聞いてしまう。
発生源をたどった未咲が、
詩亜の部屋のふすまを開けた。
未咲の視界にとびこんできたのは、
才色兼備な詩亜の意外な一面であった。
その場に凍りつく彼女に一言のこして、
未咲が早々に立ち去っていく場面である。

幽霊屋敷風の幻影寮——
詩亜・E・ヘーゼルダインの部屋。
あいつの推理は、正しかった。
《前掲書、 P.224》
デスクトップPCの横には、まさに、最新鋭のゲーム機の姿があった。
つまり、さっきの悲鳴は──
「なんだよ。ただゲームでやられただけか」
ぷるぷる震え始めたお姫様の前で、俺は溜め息をつく。やれやれ。人騒がせな奴だぜ。
「じゃあな。あんまり夜更かしすんなよ」
俺はピシャリと障子を閉めた。
そして──脱兎のごとく、その場から逃げ出した。
「んぁああぁああああああぁぁああああああああああああああ────っっっ!!」
——あはは。
当たっちゃったよ。
やっぱり、ゲーム機だった。
一人称視点射撃をやっていたのは想定外。
悲鳴をあげるくらいだから、
ホラー系かと思ったよ。
脱兎のごとく、逃げる未咲と、
羞恥心の頂点に到った詩亜が、滑稽で最高!
❷友達の法則【知】
未咲が詩亜の意外な一面を覗いた翌朝、
その話題がきっかけとなって、
二人の関係はギクシャクする。
朝食を済ませた詩亜と女中のカイラが、
登校に寮を出ていった。
近くで窺っていた2年のフィオ先輩——
小学生みたいな風体なのに超然とした女が、
ふたりの内面的な心理を冷静に分析し、
未咲に仲直りのチャンスを仄めかす。
その時、
心理学的な実験を例にだして語っていた場面。
幻影寮の居間?

「昔さあ、アメリカの心理学者ニューカムが実験をしたんだけどぉ~」
《前掲書、 P.231~232》
ご飯粒を付けた口から、突拍子もなく飛び出した言葉に、俺は面食らった。
「ある大学の寮でさ、考え方が違う学生を近くの部屋に入れてみたんだってさ。そしたら、最初の一週間くらいは近くにいる人同士で仲良くなるんだけどぉ、何ヶ月か経ったら部屋割りは関係なく、近い考え方の人間とつるむようになってたんだって」
——へえ〜。
距離が近いほど仲良くなりやすい。
でも、最終的には、
自分と似たタイプの人と連みやすい——
って傾向が高いということですね。
政治、宗教、習慣、趣味、悩みなど、
近しい者に会うと安心できるからですかね?
孤独ではないんだという実感と、
自分の理解者に出会えたという喜び。
だから、「類は友を呼ぶ」のでしょうねえ。
❸先輩の正体【蟠/晴】
おなじ寮に住むフィオ先輩の助言により、
未咲は、詩亜と和解することができた。
翌日の放課後、未咲はそのことを、
寮に戻っていたフィオ先輩に報告した。
2人のいる居間に、噂の詩亜がやってくる。
その後ろにいたカイラの後押しで、
詩亜が恥ずかしそうに未咲をゲームに誘った。
仲良くなっている2人のようすに、
フィオ先輩が面白そうに茶化してくる。
その後、先輩が飄々とまた寮を出て行った。
フィオ先輩については、まだ謎がある。
制服を着てる姿を見たことがない。
普段、何をしているのか、と未咲は呟いた。
すると、「今更?」というかんじで、
詩亜とカイラが同時に驚いていた場面である。
夕方ちかくの幻影寮の居間。
「不実崎さん、知らないんですか?」
《前掲書、 P.280》
「驚きました。万条吹尾奈先輩が何者か、ご存知なかったのですね」
「は? いや……何者か、って。2年の先輩だろ? この幻影寮に住んでる……」
「それだけじゃなくて……」
エヴラールはもどかしげに、
「あのですね、万条吹尾奈という人は──」
続いた言葉に、俺はただただ口を開けることしかできなかった。
——きになる。
小学生にしか見えない小柄な女の子なのに、
精神年齢は、だいぶ大人びている内面が面白。
私服のぶかぶかなパーカーを着ていて、
自由奔放そうな振る舞いのフィオ先輩です。
詩亜とカイラが驚いていたくらいだから、
その界隈では知らぬ者がいないのでしょう。
未咲と読者である我々以外は。
■ここまでの相関図

感想(前半)
◆序盤の伏線が気になる!
物語のメイン主人公は、不実崎未咲(15)。
なぜ、彼は探偵学園に入学したのか?
6年前に流れていた動画配信で、
未咲は本物の探偵に親近感と憧憬をいだきます。
最高ランクのS階梯探偵——
ジョルジュ・〝ポアロ〟・エルミート。
凶悪犯の息子でありながら、
実力だけでのし上がった英雄的存在です。
が、エルミート氏は人々の期待を裏切り、
イギリスの州で遺体となって発見されました。
それを知って失望していた小さな未咲に、
『あの人』が探偵を勧めていたのです。
未咲のことを「——坊ちゃん」と呼んで。
そして、『あの人』は言ったのです。
いつか、私を捕まえてごらんなさい——と。
気になりますよね?
『あの人』ってだれやねん——って。
両親についてはまだ不詳。
もしかしたら、未咲も養子の可能性あり。
『あの人』は、
亡き祖父の従者か後継者ってところかな?
◆情報の後出しがちょっと残念かな
模擬事件が起きたときの状況を、
後になって補足していたのがアンフェアです。
見取り図もないので、分かりづらい。
どういう立ち位置で倒れていたのか、
生徒や列席者との距離感とか。
あとは、場所の説明ですね。
つぎの場面に変わるとき、
場所と関係のない説明から入ったり、
セリフから始まるところが気になりました。
これ、頭が疲れるんですよね。
「どこなんだろう?」と疑問が湧き立ち、
次の文章から読み取っていかないといけません。
そして、セリフと場所の調整で脳を使います。
つまり、最初にポンと「広くてイメージしやすい場所」を書き示してあげると、読者にとっては読みやすい文章となり、しかも、脳内で映像化しやすくなるわけです。
《森沢明夫『プロだけが知っている 小説の書き方』 P.168》飛鳥新社 2022/7/20 ※画像元:U-NEXT
でも、脳が疲れるということは、
脳が鍛えられているということ。
脳の健康に良いかもしれない——
そういうことにしておきましょう。
◆また出てきた伏線が気になる!
探偵王スティーブン・ヘーゼルダインが、
養女の詩亜に課せていた試練。
『不実崎未全の最後の事件』——
この真相を調べてこいというもの。
未咲の祖父——犯罪演出家・犯罪王とは、
どんな人物だったのか?
最後の事件とは、どんな事件?
なんか、興味が出てきますよね。
3年前の〈カーテン・フォール事件〉——
これのことらしいです。
カーテンが落ちてきたってことですよね?
捜査するには『探偵資格』が必要で、
だから、娘を探偵学園に入学させたようです。
探偵王の残堂〈劇団〉が関わっているのか?
孫である未咲は、何もしりません。
車椅子の生徒会長——
恋道瑠璃華も〈劇団〉を捜しているようでした。
家族をころされた復讐が目的なのかも。
後半の感情トリガー
【感情のトリガー↓】286~593P(スマホ)
①別動捜査【謎・肯・謎・察・察】
②推理裁判【訝・訝】
③推論終幕【肯/訝・晴・驚】
【トリガーの内訳】
①別動捜査(学園内で起きた他殺事件を追う)
├他殺体発見【謎】(ナゾ)
├犯人の特徴【肯】(タシカニ)
├硬貨十四枚【謎】(ナゾ)
├自作自演?【察】(マサカ…)
└犯人象浮上【察】(マサカ…)
②推理裁判(詩亜と先輩の選別裁判が行われる)
├真相が判明【訝】(ハ?)
└万条の宣言【訝】(ハ?)
③推論終幕(他殺事件の真相が明らかになる)
├手口の矛盾【肯/訝】(タシカニ/ハ?)
├裁判の決着【晴】(スッキリ)
└宇志内蜂花【驚】(エッ⁉︎ イガイ)
【刺激された感情の種類:6種】
幸福:★
晴=怨みや蟠りが解消される(1)
驚度:★
驚=予想外の出来事(1)
思考:★★★★★★★★★
訝=疑問を抱かせる言動や描写(3)
謎=行動や現象に不可解を残す(2)
肯=諭す言葉に納得してしまう(2)
察=ヒントから展開の予測がつく(2)
全体を通してのプロット
A【人物・世界観の説明】
①不実崎未咲が探偵を目指す背景
②犯罪王の残堂『劇団』が存在する現在
③真理峰探偵学園が探偵を輩出し、
犯罪に対抗している現状
a【物語が始まる起点・問題】
☆犯罪王の孫と探偵王の娘が、
入学した探偵学園で邂逅する
B【発生した問題への対処】
①模擬事件の推理試験が始まる
②未咲がクラスメイトと捜査する
③未咲と詩亜が選別裁判を始める
b【問題の広がり・深刻化・窮地】
①未咲と詩亜の住む学生寮が同じ
②探偵学園の授業課題に取り組む
③未咲が詩亜との関係を拗らせる
④学園内で生徒の変死体が発見される
C【人物の葛藤・苦しみ】
①未咲と詩亜が、別々で捜査していく
②詩亜が容疑者に選別裁判を申し込む
③未咲が自分の推理に躊躇いを覚える
c【問題解決に向かう最後の決意】
★未咲が事件の真相に気づく
D【問題解決への行動】
◯選別大法廷で未咲と詩亜が論破する
読了した感想
◆推理要素が多くて難解
こんな複雑な事件、初めてですね。
明らかにこんな手口を使わない方法で、
被害者を亡き者にしていたのですから。
被害者関係から動機とか考えてみるのですが、
これが、さっぱり分からない。
プールの真ん中で溺死していた女子生徒です。
なぜか制服のままだったし、
彼女の爪から水着の繊維が見つかっています。
プールがまた特殊で、可動床。
水深を自由に変えられるんですよ。
そのほかにも、まだまだ色々でてきます。
推理に自信のある猛者たちでも、
これは苦戦するんじゃないかなあ。
◆推論と反論のバトルが熱い!
探偵王の娘——詩亜・E・ヘーゼルダイン。
凛としいる小柄な外人美少女で、
フランス生まれのアメリカ育ち。
幼少期から探偵修行を積み、
探偵目録の上から3番目——
B階梯まで上り詰めた探偵お姫様。
そんな優秀な彼女が法廷のまえに立ち、
被告に対して推論を論っていきます。
これまでの手がかりから得た、
疑いようのない真実——
と思われたのですが……。
被告側の反撃が凄すぎた。
詩亜もついには反論できず、
どんどん不利な展開になっていきます。
おいおい、そんな逃げ方があるのかと、
感心してしまうほど素晴らしかったですね。
◆紙城先生の仕掛けた最後の罠に驚き!
ようやく物語が幕をとじる後半に、
「えっ!?」と驚く瞬間があります。
全然、気づけなかったですね。
それを匂わせる伏線もちゃんとありました。
前半のところにさりげなく。
上手すぎる。伏線の隠し方が。
気づけなかった悔しさと、
巧妙さに対する感歎を覚えましたね。
『シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する』
紙城境介(著)
しらび(イラスト)
KADOKAWA
2023年6月23日発売
想像力を鍛えて脳内映像化マスターへ!
※:執筆者の独断と偏見が含まれます。
※:本ページの情報は2023年9月時点のものです。
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