サスペンス・ミステリー

『シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する』感情トリガー/あらすじ/場面/考察/感想

イラストAC

前半のストーリー

増加する凶悪犯罪に対抗し、探偵という職業の必要性が飛躍的に高まった現代。日本で唯一「国家探偵資格」を取得できる超難関校・真理峰探偵学園に今年、とある少年と少女が入学する。(中略)これは、真実を競い合う新たな学園黙示録。最高峰の知的興奮がここにある!【電子限定!書き下ろし特典つき】
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世界に知れる犯罪王の孫の不実崎ふみさきは、
探偵学園で探偵王の娘の詩亜しあと出遇う。
たがいの目的である探偵資格を得るため、
探偵スキルをきそい合う学園生活を送る。

◆登場人物
不実崎ふみさき未咲みさき……亡き犯罪王の孫である15歳の探偵学生
詩亜しあ・E・ヘーゼルダイン……探偵王の娘で探偵学生
恋道れんどう瑠璃華るりか……真理峰探偵学園の生徒会長
宇志内うしない蜂花ほうか……推理より演技が得意な探偵学生
カイラ……詩亜の侍女
祭舘まつりだてこよみ……未咲と同じクラス探偵学生
万条ばんじょうふい尾奈おな……探偵学園の先輩

『シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する』
紙城かみしろ境介きょうすけ(著)
しらび(イラスト)
KADOKAWA
2023年6月23日発売
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感情トリガーとあらすじ、場面

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【感情のトリガー↓】0~285P(スマホ)
①模擬事件【
②探偵授業【/
③寮生の素【/

【トリガーの内訳】
①模擬事件(探偵学園の入学式で試験が行われる)
 ├犯人が判明【推】(マテヨ…)
 ├女優の豹変【茫】(????)
 └これが真実【悶】(マチドオシイ)
②探偵授業(探偵を目指す訓練がはじまる)
 ├本当の答え【肯】(タシカニ)
 ├暗号の解読【諦/解】(オテアゲ/ナルホド!)
 └荷物の中身【蟠】(キニナル)
③寮生の素(幻影寮の住人達の素性が露見する)
 ├姫様の秘密【笑】(アハハ)
 ├友達の法則【知】(ヘェ~)
 └先輩の正体【蟠/晴】(キニナル/スッキリ)

【刺激された感情の種類:10種
幸福:★
 晴=怨みや蟠りが解消される(1)
驚度:★
 茫=神秘的な現象に遭遇する(1)
思考★★★★★
 諦=希望や答えがみえない(1)
 知=豆知識を教えてくれる(1)
 解=不可解が解明される(1)
 推=謎を解く仮説を考察する(1)
 肯=諭す言葉に納得してしまう(1)
不幸:★★★
 蟠=中途半端でまだ未解決(2)
 悶=期待がまだ実現していない(1)
攻撃:★
 笑=滑稽さを感じて可笑しい(1)

①模擬事件【推・茫・悶】

o-dan,イラストAC

あらすじ——
1999年、犯罪王は探偵王にやぶれた。
以降、犯罪王の後継者フォロワーが後をたたず、
世に混沌をもたらす迷宮入り事件が続出した。
える犯罪に対抗すべく、国がったさくとは、
国連探偵開発局の設立であった。
それから、四半世紀以上のこと——。
 ※
東京都内にある真理まりみね探偵学園で、
入学式が行われる。
あつまった生徒達の目の前で理事長がたおれ、
死体を模擬もぎした人形にんぎょうに入れわる。
この謎に1人だけ——探偵王の娘が、
犯人がわかったと挙手をする。
 ※
犯罪王の孫である不実崎ふみさき未咲みさきは、
模擬事件に遅刻して入学する。
教室で説明会オリエンテーションが行われ、
未咲は、同クラスの宇志内うしない蜂花ほうかと知り合う。
宇志内から模擬事件の内容を知った未咲は、
現場をおとずれて犯人のトリックをく。
試験結果の順位に不満をもった探偵王の娘、
詩亜しあ・E・ヘーゼルダインが未咲の前にあらわれ、
推理勝負をいどんでくる。

❶犯人が判明【推】

探偵学園の地下講堂で行われた入学式で、
60代男の理事長が生徒のまえにあらわれる。
入学生に向けた挨拶あいさつの途中で停電が起き、
数分後に講堂内のかりがもどった。
が、理事長に異変が起きていた。
舞台上でたおしていたのだ。
ゆか血溜ちだまりの中で……。
舞台中央のセリからあがってきた車椅子の女子、
生徒会長が入学生らに向けて説明する。
これは、理事長そっくりの人形であると。
いつのまにか、入れわっていたのだ。
生徒会長が生徒らにうてくる。
あの一瞬の暗闇のなかで、
理事長は、どのようにして人形になったのか。
困惑する生徒らの中から一人、挙手が上がる。
『私』という一人称の人物が、
生徒会長にのたまっていた場面シーンである。

東京都内——
真理峰探偵学園〈第一秘匿講堂〉。

講堂
o-dan

 ──それじゃあ、私が先に答えてもいいよね?
「はい」
 私はまっすぐに手を挙げた。
「犯人がわかりました」
 講堂中の視線を全身に浴びながら、私はかすかに微笑んだ。

《前掲書、 P.32》※スマホで閲覧

——まてよ……

理事長は最初から人形だったんじゃない?
スモークの演出で舞台袖から出てきたからね。
停電が起きたタイミングで、
壇上の列席者(4人)の誰かが人形を倒した。
人形には、光の目印をつけていたのだろう。
小さな光が空中で静止していたみたいだから。
革手袋を両手にしていた男があやしいな。
血のりを使うときに手が汚れてしまうから、
その対策で事前に手袋をしていたのかも。
慌て出した生徒たちをしずめるために、
真っ白な手を大きくっていた男が犯人だ。
汚れた手袋をいでかくしたに違いない。
理事長の声は、コナンと同じ方法だろう。
スピーカーを人形にり付けていたのさ。
たぶん。

■日本唯一の真理峰探偵学園

探偵階級
▼ブロンズ(1000P <1200P)
▼シルバー(1200P<1500P)
▼ゴールド(1500P<1800P)
▼プラチナ(1800P<2100P)
▼ダイヤモンド(2100P<2400P)
▼マスター(2400P<2700P)
シャーロック(2700P<????P)
※探偵ポイントが800を下回ると退学決定

❷女優の豹変【茫】

探偵学園の入学式に遅刻してきた未咲みさきは、
地下講堂で実施されていた模擬事件を知らない。
だが、緊急捜査訓練の犯人を見つけれないと、
未咲はマイナスポイントで退学になってしまう。
犯罪王の孫として知れ渡っている未咲に、
協力してくれそうな友達もいない。
入学して早々、退学という危機がせまっていた。
め切りは、今日の午後3時。
そんなとき、
未咲の前に大きな胸の女の子がやってくる。
おなじクラスの快活そうな宇志内うしない蜂花ほうか
女優探偵だと自称している。
初対面であるはずの宇志内が、
未咲に訓練内容を教えると言ってきた。
推理の仕方を教えるのが条件で。
昼頃、二人は学生食堂に移った。
未咲は疑問に思う。
入試内容に推理問題もふくまれていたからだ。
宇志内うしないは、実技でそれをカバーしたと言う。
誰にも気づかれずに尾行してきたのだと。
未咲は納得できない。
彼女は、あまりにも目立つたいなのだから。
そんなげんな未咲の目のまえで、
宇志内うしないが自分の実力を見せつけていた場面シーン

レストラン風の学生食堂。

食堂
o-dan

「じゃあちょっと見てなよ! 今からここで変わる・・・から!」
 (中略)
 か細く漏れた震え声さえ、さっきまでとは別人だった。
 顔立ちや髪型を変えたわけじゃない。表情、仕草──あるいはそれらを生み出す、人格。外見以外のすべてを変えることで、完全な別人に『変装』していた。
 俺はもう、目の前の女子を宇志内蜂花だと認識できなかった。
「──って感じ!」
 再び瞼を閉じ、そして開くと、俺の向かい側には宇志内さんが座っていた。

《前掲書、 P.60~61》

——????

宇志内蜂花ほうかは演技が得意みたいですね。
となると、推理が不得意という話も、
もしかしたら演技なのかもしれない。
不実崎ふみさき未咲に近づくための口実——
そういう可能性も出てくるよね。
本当の宇志内は、どんな子なのか?
どの性格が素なのか?
今の宇志内を信用してもいいのか?
ちょっと、警戒しておきましょう。

❸これが真実【悶】

学生食堂でお昼をとっていた宇志内うしないが、
未咲に模擬事件の内容をおしえた。
タブレット端末で詳細を確認した未咲は、
宇志内に、推理に必要な手掛かりをつたえる。
未咲には、犯人の目星もついている。
が、一つ、気になるところがあった。
二人は、模擬事件のあった講堂をおとずれ、
現場周辺を確認した。
そのとき、
未咲が探偵王の娘である詩亜しあの推理を、
不完全だと言い切っていた場面シーンである。

第一秘匿講堂。

「完璧な答えがわかった。……と同時に、もう一つわかったことがある」
「なに?」
詩亜しあ・E・ヘーゼルダインの推理は、完璧じゃない」
 少しだけ安心したぜ。
 どうやら、探偵王女様も人間らしい。
「魂を懸けてもいい。これが──真実だ」

《前掲書、 P.84》

——まちどおしい。

いや〜、モヤモヤしますね。
なんか、逆に分からなくなってくる。
リアルタイムで事件が起きたとき、
凶器などの情報は書かれてなかったのに、
今更、大事な情報が開示されたのですから。
革手袋をめてた人物と、
大きく手を振っていた人物は別だったとか、
4人のそれぞれの特徴だとかね。
詩亜しあと同じタイミングで、
犯人を推理するのは不可能ですよ。
いったい誰が、どんなトリックを使ったのか?
早く、答えが知りたい。

②探偵授業【肯・諦/解・蟠】

あらすじ——
校内で選別裁判セレクトがはじまり、
未咲みさきいどんだ詩亜しあが推論を語っていく。
が、後手の未咲は、彼女の盲点もうてんをつき、
より正しい論説によって勝負が決まる。
退学をまぬがれた未咲は、
り当てられた学生寮をおとずれる。
2年の先輩と、同じ1年の女中と出会い、
未咲は、ふたたび詩亜と同じ寮でも出会う。
学園で授業がはじまった未咲は、
尾行訓練で祭舘まつりだてこよみとペアとむ。

❶本当の答え【肯】

選別裁判をすることになった未咲みさき詩亜しあ
どちらの推理がより正しい答えか、
先手の詩亜がトリックと犯人を推論した。
ち所がない彼女の完璧な推理に、
未咲は意をとなえる。
この裁判に設定した議題は、
生徒会長の内容と同じもの。
どのようにして人形にわったのか?
ぜんとしてしまった詩亜に、
後手ごて未咲きかえす。

探偵学園校内のおもて。

校内
みんちりえ

「あの暗闇の中で、血痕の配置を始めとする細かい作業が可能となる方法は一つ──闇に目を慣らしておいた、だ。ライトを使えばすぐにバレただろうし、暗視ゴーグルみたいなゴツい装備を持っていたら、それもやっぱり目についただろうからな」
 (中略)
「名前? 知らねえよ。だからすぐにわかったぜ。あんたの推理が不完全だって──『犯人の名前を指名した』って、得意げに言ってたもんな、お姫様?」

《前掲書、 P.135~140》

——たしかに。

生徒にサクラを用意していたのは盲点。
思い返せば、
出席順についての描写がありましたわ。
それ、関係ある? なんて思ってたけど、
ちゃんと伏線だったのですね。
いや、むずかしいなあ。
せめて、見取り図が欲しいとこ。

❷暗号の解読【諦/解】

未咲と詩亜、彼女の女中であるカイラも、
同じ1年3組という偶然がかさなるなかで、
女性教師による授業が始まった。
探偵科目による暗号解読。
教師が難題をいかけてくる場面シーンである。

教室内。

教室
o-dan

 ドレスの先生は、黒板に大きく8文字の文章を書き記した。
 ──『過去白く寝られよ』。
 その意味不明な文章をバックに、俺たち生徒を睥睨へいげいする。
「小手調べと行きましょう。誰か、この文章の意味がわかる方は?」
 過去? が、白く? 寝られよ? 寝ろってことか? 意味がわからん……。

《前掲書、 P.179》

——おてあげ。

ダメだ、さっぱり分からない。
パスト、ホワイト、スリープ……。
英語にしてもつながりがわからない。
あ~もう、降参です。

❸荷物の中身【蟠】

尾行・張り込みの授業で2人1組にさせられ、
取り残されそうになっていた未咲みさき
彼は、授業中に居眠りをこく中背の華奢きゃしゃな子、
祭舘まつりだてこよみとペアになる。
課題は、御茶の水の街を歩きまわり、
街の地図を正確に書くこと。
未咲は、相棒の祭舘まつりだてと路上で一服いっぷくした。
そこに、変装していた詩亜しあとカイラが現れる。
詩亜がかかげていた大きなかばんを、
未咲も祭舘も気づいていた。
すると、逃走中の男が詩亜にしょうとつした。
掲げていた詩亜のカバンが落下した。
すぐに置き引き犯の男だと推理した詩亜が、
あっという間に事件を解決してみせた。
詩亜と女中のカイラが学園にもどっていくと、
祭舘まつりだてが詩亜の鞄についてぼそっとつぶやく。
気になった未咲は、彼女の推察すいさつもくした。
祭舘が鞄の中身を予想してみせるのだが、
肝心なところをかくされていた場面しーんである。

昼間の東京——
御茶の水の街の路上。

「候補はいろいろありそうだけどー……わざわざ鞄を用意して隠している以上、それは少なくとも、ヘーゼルダインさんのイメージからは外れるようなものなんだろうねー」
「例えば?」
「そうだなあ。例えば──」
 そして祭舘が口にした言葉に、俺は大いに眉根を寄せた。
「あのお姫様が……? そんなもんを、入学二日目に?」
「イメージから外れてるでしょ?」

《前掲書、 P.213》

——きになる。

バスケットくらいの大きさで、
割れたら困るうような電化製品……。
動画配信に使うパソコンかと思ったけど、
祭舘がその候補をはずしていた。
大きくて入りきらないという理由で。
意外なもの?
詩亜・E・ヘーゼルダインの印象と離れたなにか。
彼女は、引きこもり系の女の子だったから、
ゲーム機とかかなあ??
それとも、お菓子作りの製品とか?
例えば、流れ出るチョコレートファウンテンとか。

③寮生の素【笑・知・蟠/晴】

イラストAC

あらすじ——
入学から数日が経った幻影げんえいりょうで、
未咲みさき詩亜しあの意外な一面をかい見る。
翌朝、さらに関係をこじらせた2人は、
おなじ同居人の人達にたしなめられる。
対局の関係であった未咲と詩亜が、
話しあって和解にいたる。
探偵学園で本番の警報が発令はつれいされる。

❶姫様の秘密【笑】

探偵学園に入学して数日がった幻影寮で、
深夜遅くに大きな悲鳴がとどろいた。
たまたまトイレで目をましていた未咲みさきが、
ろうを通っていた時に聞いてしまう。
発生源をたどった未咲が、
詩亜しあの部屋のふすまをけた。
未咲の視界にとびこんできたのは、
さいしょくけんな詩亜の意外な一面であった。
その場に凍りつく彼女に一言のこして、
未咲が早々に立ち去っていく場面シーンである。

写真AC

幽霊屋敷風の幻影寮——
詩亜・E・ヘーゼルダインの部屋。

 あいつの推理は、正しかった。
 デスクトップPCの横には、まさに、最新鋭のゲーム機の姿があった。
 つまり、さっきの悲鳴は──
「なんだよ。ただゲームでやられただけか」
 ぷるぷる震え始めたお姫様の前で、俺はいきをつく。やれやれ。人騒がせなやつだぜ。
「じゃあな。あんまり夜更かしすんなよ」
 俺はピシャリと障子を閉めた。
 そして──だっのごとく、その場から逃げ出した。
「んぁああぁああああああぁぁああああああああああああああ────っっっ!!」

《前掲書、 P.224》

——あはは。

当たっちゃったよ。
やっぱり、ゲーム機だった。
一人称視点射撃F P Sをやっていたのは想定外。
悲鳴をあげるくらいだから、
ホラー系かと思ったよ。
脱兎のごとく、逃げる未咲と、
羞恥心の頂点にいたった詩亜が、滑稽こっけいで最高!

❷友達の法則【知】

未咲が詩亜の意外な一面をのぞいた翌朝、
その話題がきっかけとなって、
二人の関係はギクシャクする。
朝食をませた詩亜と女中のカイラが、
登校に寮を出ていった。
近くでうかがっていた2年のフィオ先輩——
小学生みたいな風体ふうていなのにちょうぜんとした女が、
ふたりの内面的な心理を冷静に分析ぶんせきし、
未咲に仲直りのチャンスをほのめかす。
その時、
心理学的な実験を例にだして語っていた場面シーン

幻影寮の居間?

和室
写真AC

「昔さあ、アメリカの心理学者ニューカムが実験をしたんだけどぉ~」
 ご飯粒を付けた口から、とっぴょうもなく飛び出した言葉に、俺は面食らった。
「ある大学の寮でさ、考え方が違う学生を近くの部屋に入れてみたんだってさ。そしたら、最初の一週間くらいは近くにいる人同士で仲良くなるんだけどぉ、何げつったら部屋割りは関係なく、近い考え方の人間とつるむようになってたんだって」

《前掲書、 P.231~232》

——へえ〜。

距離が近いほど仲良くなりやすい。
でも、最終的には、
自分と似たタイプの人とつるみやすい——
って傾向が高いということですね。
政治、宗教、習慣、趣味、悩みなど、
近しい者に会うと安心できるからですかね?
孤独ではないんだという実感と、
自分の理解者に出会えたという喜び。
だから、「類は友を呼ぶ」のでしょうねえ。

❸先輩の正体【蟠/晴】

おなじりょうに住むフィオ先輩の助言により、
未咲みさきは、詩亜しあと和解することができた。
翌日よくじつの放課後、未咲はそのことを、
寮に戻っていたフィオ先輩に報告した。
2人のいる居間に、うわさの詩亜がやってくる。
その後ろにいたカイラの後押しで、
詩亜がずかしそうに未咲をゲームにさそった。
仲良くなっている2人のようすに、
フィオ先輩が面白そうに茶化してくる。
その後、先輩が飄々ひょうひょうとまた寮を出て行った。
フィオ先輩については、まだなぞがある。
制服を着てる姿を見たことがない。
普段、何をしているのか、と未咲はつぶやいた。
すると、「今更いまさら?」というかんじで、
詩亜とカイラが同時に驚いていた場面シーンである。

夕方ちかくの幻影寮の居間。

「不実崎さん、知らないんですか?」
「驚きました。ばんじょうふい尾奈おな先輩が何者か、ごぞんなかったのですね」
「は? いや……何者か、って。2年の先輩だろ? この幻影げんえいりょうに住んでる……」
「それだけじゃなくて……」
 エヴラールはもどかしげに、
「あのですね、万条吹尾奈という人は──」
 続いた言葉に、俺はただただ口を開けることしかできなかった。

《前掲書、 P.280》

——きになる。

小学生にしか見えない小柄な女の子なのに、
精神年齢は、だいぶ大人びている内面が面白おもしろ
私服のぶかぶかなパーカーを着ていて、
自由奔放ほんぽうそうなる舞いのフィオ先輩です。
詩亜とカイラがおどろいていたくらいだから、
その界隈かいわいでは知らぬ者がいないのでしょう。
未咲と読者である我々以外は。

ここまでの相関図

感想(前半)

◆序盤の伏線が気になる!

物語のメイン主人公は、不実崎ふみさき未咲みさき(15)。
なぜ、彼は探偵学園に入学したのか?
6年前に流れていた動画配信で、
未咲は本物の探偵に親近感としょうけいをいだきます。
最高ランクのS階梯ティアー探偵——
ジョルジュ・〝ポアロ〟・エルミート。
凶悪犯の息子でありながら、
実力だけでのし上がった英雄的存在です。
が、エルミート氏は人々の期待を裏切り、
イギリスの州でたいとなって発見されました。
それを知って失望していた小さな未咲に、
『あの人』が探偵をすすめていたのです。
未咲のことを「——ぼっちゃん」とんで。
そして、『あの人』は言ったのです。
いつか、私をつかまえてごらんなさい——と。
気になりますよね?
『あの人』ってだれやねん——って。
両親についてはまだしょう
もしかしたら、未咲も養子の可能性あり。
『あの人』は、
亡き祖父犯罪王の従者か後継者ってところかな?

◆情報の後出しがちょっと残念かな

模擬事件が起きたときの状況を、
後になって補足していたのがアンフェアです。
見取り図もないので、分かりづらい。
どういう立ち位置で倒れていたのか、
生徒や列席者との距離感とか。
あとは、場所の説明ですね。
つぎの場面に変わるとき、
場所と関係のない説明から入ったり、
セリフから始まるところが気になりました。
これ、頭が疲れるんですよね。
「どこなんだろう?」と疑問が湧き立ち、
次の文章から読み取っていかないといけません。
そして、セリフと場所の調整で脳を使います。

つまり、最初にポンと「広くてイメージしやすい場所」を書き示してあげると、読者にとっては読みやすい文章となり、しかも、脳内で映像化しやすくなるわけです。

《森沢明夫『プロだけが知っている 小説の書き方』 P.168》飛鳥新社 2022/7/20 ※画像元:U-NEXT

でも、脳が疲れるということは、
脳が鍛えられているということ。
脳の健康に良いかもしれない——
そういうことにしておきましょう。

◆また出てきた伏線が気になる!

探偵王スティーブン・ヘーゼルダインが、
養女の詩亜にせていた試練。
不実崎ぜんの最後の事件』——
この真相を調べてこいというもの。
未咲みさきの祖父——犯罪演出家・犯罪王とは、
どんな人物だったのか?
最後の事件とは、どんな事件?
なんか、興味が出てきますよね。
3年前の〈カーテン・フォール事件〉——
これのことらしいです。
カーテンが落ちてきたってことですよね?
捜査するには『探偵資格』が必要で、
だから、娘を探偵学園に入学させたようです。
探偵王の残堂〈劇団〉が関わっているのか?
孫である未咲は、何もしりません。
車椅子の生徒会長——
恋道れんどう瑠璃華るりかも〈劇団〉をさがしているようでした。
家族をころされた復讐が目的なのかも。

後半の感情トリガー

【感情のトリガー↓】286~593P(スマホ)
①別動捜査【
②推理裁判【
③推論終幕【/

【トリガーの内訳】
①別動捜査(学園内で起きた他殺事件を追う)
 ├他殺体発見【謎】(ナゾ)
 ├犯人の特徴【肯】(タシカニ)
 ├硬貨十四枚【謎】(ナゾ)
 ├自作自演?【察】(マサカ…)
 └犯人象浮上【察】(マサカ…)
②推理裁判(詩亜と先輩の選別裁判が行われる)
 ├真相が判明【訝】(ハ?)
 └万条の宣言【訝】(ハ?)
③推論終幕(他殺事件の真相が明らかになる)
 ├手口の矛盾【肯/訝】(タシカニ/ハ?)
 ├裁判の決着【晴】(スッキリ)
 └宇志内蜂花【驚】(エッ⁉︎ イガイ)

【刺激された感情の種類:6種
幸福:★
 晴=怨みや蟠りが解消される(1)
驚度:★
 驚=予想外の出来事(1)
思考★★★★★★★★★
 訝=疑問を抱かせる言動や描写(3)
 謎=行動や現象に不可解を残す(2)
 肯=諭す言葉に納得してしまう(2)
 察=ヒントから展開の予測がつく(2)

全体を通してのプロット

A人物・世界観の説明
①不実崎未咲が探偵を目指す背景
②犯罪王の残堂『劇団』が存在する現在
③真理峰探偵学園が探偵を輩出し、
 犯罪に対抗している現状

a物語が始まる起点・問題
犯罪王の孫と探偵王の娘が、
 入学した探偵学園で邂逅する

B発生した問題への対処
①模擬事件の推理試験が始まる
②未咲がクラスメイトと捜査する
③未咲と詩亜が選別裁判を始める

b問題の広がり・深刻化・窮地
①未咲と詩亜の住む学生寮が同じ
②探偵学園の授業課題に取り組む
③未咲が詩亜との関係を拗らせる
④学園内で生徒の変死体が発見される

C人物の葛藤・苦しみ
①未咲と詩亜が、別々で捜査していく
②詩亜が容疑者に選別裁判を申し込む
③未咲が自分の推理に躊躇いを覚える

c問題解決に向かう最後の決意
★未咲が事件の真相に気づく

D問題解決への行動
◯選別大法廷で未咲と詩亜が論破する

読了した感想

◆推理要素が多くて難解

こんな複雑ふくざつな事件、初めてですね。
明らかにこんな手口を使わない方法で、
被害者をき者にしていたのですから。
被害者関係から動機とか考えてみるのですが、
これが、さっぱりからない。
プールの真ん中でできしていた女子生徒です。
なぜか制服のままだったし、
彼女のつめから水着の繊維が見つかっています。
プールがまた特殊で、動床どうゆか
水深を自由に変えられるんですよ。
そのほかにも、まだまだ色々でてきます。
推理に自信のある猛者もさたちでも、
これは苦戦するんじゃないかなあ。

推論と反論のバトルが熱い!

探偵王の娘——詩亜しあ・E・ヘーゼルダイン。
りんとしいる小柄な外人美少女で、
フランス生まれのアメリカ育ち。
幼少期から探偵修行をみ、
探偵目録の上から3番目——
B階梯ティアーまで上りめた探偵お姫様。
そんな優秀な彼女が法廷ほうていのまえに立ち、
こくに対して推論をあげつらっていきます。
これまでの手がかりからた、
うたがいようのない真実——
と思われたのですが……。
被告側の反撃がすごすぎた。
詩亜もついには反論できず、
どんどん不利な展開になっていきます。
おいおい、そんなげ方があるのかと、
感心してしまうほど素晴らしかったですね。

◆紙城先生の仕掛けた最後の罠に驚き!

ようやく物語がまくをとじる後半に、
「えっ!?」と驚く瞬間があります。
全然、気づけなかったですね。
それをにおわせる伏線もちゃんとありました。
前半のところにさりげなく。
上手うますぎる。伏線のかくし方が。
気づけなかったくやしさと、
巧妙さに対する感歎かんたんを覚えましたね。

シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する』
紙城かみしろ境介きょうすけ(著)
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想像力を鍛えて脳内映像化マスターへ!

【群像劇小説】悪い夏(感情トリガー/感想)
【推理小説】虚構推理(感情トリガー/感想)
【推理小説】魔法使いが多すぎる(感情トリガー/感想)
【クローズド・サークル】迷路館の殺人(感情トリガー/感想)
【推理小説】神薙虚無最後の事件(感情トリガー/感想)

※:執筆者の独断と偏見が含まれます。
※:本ページの情報は2023年9月時点のものです。
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