サスペンス・ミステリー

『ミステリ作家 拝島礼一に捧げる模倣殺人』感情トリガー/あらすじ/場面/考察/感想

前半のストーリー

謎に包まれた天才ミステリ作家・拝島礼一の代表作「絵札の騎士」を模倣した連続猟奇殺人事件が発生。 新米週刊誌記者の織乃未希は、唯我独尊な拝島に半ば強引に協力を求められ、秘密裏に事件を調査することになる。(中略) 壮絶な頭脳戦の果てに、二人が辿り着く驚愕の真相とは?
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週刊誌の新米記者である織乃おりの未希みきは、
潜入取材で小説家の拝島はいじま礼一れいいち出遇であう。
小説のほう連続殺人犯を見つけるため、
原作者本人と未希が共同捜査を始める。

◆登場人物
織乃おりの未希みき……今の職場に不満を持つ新米の記者
藤咲ふじさき絵里えり……未希の同居人であるイラストレーター
岩佐いわさ憂人ゆうと……人気俳優。〈絵札の騎士〉の主演役者
拝島はいじま礼一れいいち……小説〈絵札の騎士〉の原作者
矢坂やさか直輝なおき……読書会の主催者

『ミステリ作家 拝島礼一に捧げる模倣殺人』
野宮のみやゆう(著)
KADOKAWA
2023年9月25日発売
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感情トリガーとあらすじ、場面

※:本ページの情報は2023年10月時点のものです。
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【感情のトリガー↓】0~243P(スマホ)
①絵札の騎士【
②地取り捜査【
③手口の変化【

【トリガーの内訳】
①絵札の騎士(小説を模倣した連続殺人が起きる)
 └思わぬ邂逅【驚】(エッ⁉︎ イガイ)
②地取り捜査(未希と拝島が三件の事件現場を確認する)
 └犯人の輪郭【蟠】(キニナル)
③手口の変化(模倣犯のパターンに変化が現れる)
 └見られてる【警】(ナゼココニ?)

【刺激された感情の種類:3種
驚度:★
 驚=予想外の出来事(1)
不幸:★
 蟠=中途半端でまだ未解決(1)
恐怖:★
 警=警戒心を抱いてしまう(1)

①絵札の騎士【驚】

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あらすじ——
週刊ふう編集部の記者、織乃おりの未希みき23歳は、
人気俳優の岩佐いわさ憂人ゆうとり付いていた。
後日、
未希は彼が主演をつとめる〈絵札の騎士〉の、
原作者のファンがつどう読書会に潜入する。
その帰り道、
未希は参加者の1人に声をけられ、
ゴシップ好きをあおる記者だと見抜かれる。
相手が〈絵札の騎士〉の作者本人だと知り、
未希は彼から信頼できる相棒にえらばれる。
大ファンでもある小説家の拝島礼一とみ、
未希は、模倣犯の真相を追う協力者になる。

思わぬ邂逅【驚】

新米記者である23の織乃おりの未希みきは、
小説家、拝島はいじま礼一れいいちの大ファンである。
今、彼の作品の一つが大問題となっており、
すでに3人の犠牲者が出てしまっていた。
ふだ騎士きし〉という小説の主人公をした、
連続殺人事件。
半年前から始まり、犯人はいまだ野放しのまま。
そのきゅうだんは作者である拝島礼一に集中し、
未希の編集部もその独占ネタにかじりつく。
今もファンである未希は、しょうしょうながらも、
ある読書会に潜入取材でおもむいていた。
6名の参加者が拝島礼一の作品について——
1人ずつ語っていく流れで——
未希は〈絵札の騎士〉を話題にだした。
読書会を終えた未希は、ある決意を固め、
そのまま編集部に戻ろうとする。
そこに1人の男が未希に声をかけてきた。
読書会に参加していた好男こうだん
彼は未希が記者であることを見抜いていた。
まるで名探偵さながらの推察力をって。
その時、きょかれていた未希の前で、
山倉やまくらという好男子が自分の素性を明かした場面シーン

新宿駅に近い交差点の信号待ち。

 もしかして……いや、そんなのありえない。
 だってその人は今、世間から姿をくらませているのだから。
「実は、『山倉』というのは適当に考えた偽名でね。もちろん公務員でもない」
 柔和な仮面をいつの間にか取り払い、は血も凍るような無表情で告げた。
「僕は小説家だ。拝島礼一という名前を使っている」

《前掲書、 P.47~48》※スマホで閲覧

——えっ!? 意外。

容疑者じゃないかと警戒していたら、
まさかの作者、本人でびっくり。
犯人は男である可能性が高いからね。
最初の被害者は刺殺。
次の被害者は不詳。(ほうを防ぐため)
3人目は撲殺ぼくさつ
犯人は特定の小説を見立てている訳だから、
拝島礼一のかくれファンである可能性が高い。
読書会にまぎれ込んでいるかもしれない。
名前が出ていた参加者で、
行動力のありそうな男……山倉やまくらだ。
でも、ちがった……たぶん……
作者本人が実行犯でないかぎり。
参加していた男は、もう1人いる。
読書会の主催者だった矢坂やさか直輝なおきだ。
二十代後半で社交性もある。
犯人候補に入れておこう。

■一章の概要

②地取り捜査【蟠】

イラストAC

あらすじ——
未希は、小説家の拝島礼一と一緒に、
第二の現場を検証で訪れる。
後日、未希はまた拝島に呼び出され、
第三の現場を訪れる。
検証後、レンタカーに乗って、
未希らは最初の現場である邸宅を訪問する。

犯人の輪郭【蟠】

新作を最初に読ませてもらうという条件で、
未希みき拝島はいじま礼一れいいちの型破りな捜査に協力する。
3人目の犠牲者がでた現場を確認したあと、
未希らは、模倣犯のとった違和感に気づく。
原作の主人公なら取らないはずの行動に。
模倣が中途半端な犯人のねらいは、
拝島礼一を怒らせることなのではないか?
本当の標的は、もしかして……
と、未希が相棒の不幸を危惧きぐしていたとき、
拝島が犯人像の特徴について触れた場面シーン

3人目の被害者が撲殺されてた現場——
住宅街の路地。

「まあ、『〈絵札の騎士〉の模倣犯』で『暴走した正義中毒者』という犯人像自体は間違ってないと思うよ。もう一つの仮定が正しければ、もっと輪郭がはっきりしてきそうだけど」
「何ですか? もう一つの仮定って……」
「その話はあと。そろそろ、次の現場に出発する時間だ」

《前掲書、 P.134》

——気になる。

〈絵札の騎士〉の主人公は自己完結型で、
自分の目的も語ることはなかった。
が、この模倣犯はメモを現場に残していた。
犯行を正当化するような本人の意思表明を。
これは警察に対する挑戦状なのか?
拝島礼一へのラブコールのつもりか?
ここまでの犯人像を整理してみよう。
犯人は三件とも夜に犯行におよんでいる。
日中は普通の仕事にいてる可能性あり。
2人目の被害者は大学生の女子で、
彼女の自宅で犯行に及んでいた。
押し入った形跡けいせきがないことから、
女を安心させる見た目と職業うかがえる。
3人目の被害者に使ったハンマーのあとが、
ブロック塀のあちこちに確認できた。
犯人は、もうしょうわずらっている可能性あり。
これらを東京圏内に住む男でしぼれば、
容疑者リストが出来上がる。
あとは警察達の人海じんかい戦術でリスト者を勾引こういんし、
専門のメンタリストに特定してもらえば完璧——
とは、いかないよねえ。

■3人の被害者の概要

最初の事件以外、目撃者はなし。
奥さんは、メディアに広める媒介ばいかいとして、
えて生かされていたとみられる。
犯人につながる証拠を残していないことから、
模倣犯は用意周到な頭のキレる人物であり、
殺人犯としての成長度も再現していた。
おそらく、〈絵札の騎士〉の主人公……いや、
拝島礼一先生をも超えようとしているのでは?

③手口の変化【警】

イラストAC

あらすじ——
お笑い芸人をかくし撮りしていた未希みきは、
同居人の絵里えりから飲みのさそいが入り、
仕事終わりにダイニングバーへおもむく。
そこで、図書会をもよおしていた矢坂やさかと出遇い、
彼から模倣犯の新たな声明文を知らされる。
絵里と帰路きろについていた未希は、
自宅マンションでち伏せていた拝島はいじまから、
犯人の声明文に触発された事件を知らされる。
翌日よくじつ、4人目の犠牲者が遺体で見つかり、
未希は拝島と事件の現場近くで合流する。
被害者に使用されていた毒物が判明し、
未希らは、犯人につながる手がかりを得る。

見られてる【警】

〈絵札の騎士〉模倣事件の捜査聞き込みと、
本業の特種探しを並列に働いている未希は、
仕事終わりにダイニングバーへ赴いていた。
同居中の親友、絵里と2人で飲んでいたとき、
話を聞いていた男性が声をかけてきた。
矢坂やさか直輝なおき、読書会をもよおしていた、
未希と同じ拝島礼一の作品愛好家のひとり。
3人が帰路きろについていたとき、
矢坂があるSNSの画面を見せてきた。
〈絵札の騎士〉の模倣犯による声明文。
同類仲間をあおるような内容が書かれていた。
駅前で矢坂を見送ったあと、
未希は、あることに気がつくのだった。
背後から自分をのぞいている怪しい視線に……

宵の駅前。

駅
写真AC

 気のせいであることを祈りつつ、慎重に後ろを振り返る。
 そこで私は、自分の呼吸が断絶したのをはっきりと自覚した。
 三〇メートルほど離れた電柱の陰から、何者かがこちらをじっと見ているのだ。
 その人物はすぐに身を翻し、路地裏へと身体を滑り込ませていく。黒いレインコートのようなものを着ている上に、この距離だ。顔はおろか、体型すらも全く判別できなかった。

《前掲書、 P.196~197》

——なぜ、そこに?

真犯人ではないと思うんだけど、
雨もっていないのにレインコートは怪しい。
しかも、夜と同じ黒色で。
未希みきではなく、絵里えりのほうを見ていたのか?
それとも、駅構内に去った矢坂やさか直輝なおきのほうかな?
どうも、尾行者は誘導ミスリードっぽいにおいがする。
模倣犯が矢坂直輝なら、
僕のプロファイルにがっするんだよなあ。
女性に警戒されない社交性と外見にすぐれ、
拝島礼一の著作にもくわしいのですから。
ただ、使っていた一人称が気になる。
犯人視点での描写では「私」に対し、
矢坂は「僕」を使っていた。
別の人物を演じているためなのか、
はたまた多重人格をわずらっているのか。
黒いレインコートの人物も気になるけど、
読書会の矢坂直輝がどうもキナ臭いよね。

■三章の概要

感想(前半)

◆発見されてない被害者が気になる

犯人視点でえがかれる一章の方で、
美しすぎる弁護士の女性がつかまっていました。
周囲が森だらけの廃屋の中で。
これまで発見されてる被害者のなかで、
女性弁護士は、まだ出てきていません。
これは、〈絵札の騎士〉の主人公視点なのかも。
模倣犯のことなのか、小説のことなのか、
よく判らない伏線をっておりますね。
もしくは模倣犯の最後の被害者だったりして。
えて曖昧あいまいな未来を描写しといて、
最後の伏線回収でおどろかせるというねらいなのか?
後半が楽しみであります。

◆じわじわと推理が刺激される

トリガーとまではいたらなかったですが、
模倣犯のことなる犠牲者たちの状況から、
ある程度、犯人像を推測することができます。
ミステリ小説のだい醐味ごみともいえるところ。
まるで名探偵になったつもりで推理を展開し、
あの人物なら犯行が可能かもしれないと、
かってに予想を立てておく。
これが当たれば「よっしゃー」とよろこび、
外れれば「ちくしょー」とくやしむのです。
どちらにせよ、
ミステリは絶世の美女のお尻といっしょ。
つかめるまで追いかけたくなるのです。

◆正解のない問題を提起している

創作物が原因で不幸な事件が起きた時、
誰がもっとも罪深い人であるのか?
事件を起こした加害者
その加害者の両親や周りの人物
事件を起こせるような環境システム
事件を誘発させるような創作物の関係者

著書では模倣するシリアルキラーを通して、
こういった問題点をとりあげております。
法律では加害者が一番悪いと判断されますが、
道徳的にはもっと悪い背景もあるのでは?
加害者を生み出す背景こそが諸悪の根源だろ。
そういう考え方もあるわけです。
じゃあ、襲ってきたストーカーよりも、
魅力的すぎる人物の方が悪いということなの?
これは、創作物も同じことが言えるしょう。

後半の感情トリガー

【感情のトリガー↓】244~482P(スマホ)
①容疑者浮上【
②光明の発見【
③怪物と対峙【

【トリガーの内訳】
①容疑者浮上(模倣犯と思しき男の自宅を訪問する)
 ├容疑者の宅【呆】(ッ⁉︎——)
 └嵌めた人物【察】(マサカ…)
②光明の発見(真犯人の正体を突き止める)
 ├犯人の視線【謎】(ナゾ)
 └逆襲の作戦【楽】(ウキウキ)
③怪物と対峙(真犯人を推理論告する)
 ├偽りの感傷【訝】(ハ?)
 └逃亡防止策【褒】(スバラシイ)

【刺激された感情の種類:6種
賛美:★
 褒=解決策に納得する(1)
驚度:★
 呆=突然で呆気にとられる(1)
思考:★★★
 訝=疑問を抱かせる言動や描写(1)
 謎=行動や現象に不可解を残す(1)
 察=ヒントから展開の予測がつく(1)
乗気:★
 楽=告知されてる出来事への期待(1)

全体を通してのプロット

A人物・世界観の説明
①舞台が現代日本の首都圏
②若手記者である織乃未希の現状
③首都圏で発生している連続殺人
④事件の基となる小説家の創作物

a物語が始まる起点・問題
読書会で未希と拝島礼一が出会う
未希と拝島礼一が模倣犯を追う

B発生した問題への対処
○未希らが被害者達の事件現場を調査する

b問題の広がり・深刻化・窮地
①模倣犯に煽動された通り魔が現れる
②未希が謎の不審者を目撃する
③4人目の犠牲者が見つかる
④未希らが容疑者捜しに転々とする
⑤拝島礼一に容疑がかけられる

C人物の葛藤・苦しみ
①未希が無力感に苛み、自信を失くす
②未希が敬愛する作家から失望される

c問題解決に向かう最後の決意
★未希と拝島が犯人の正体を突き止める

D問題解決への行動
◯未希と拝島が犯人を誘い出す作戦にでる

読了した感想

◆ミスリードに引っかかる

未希と拝島が模倣犯を辿っていく展開で、
妙に思えるほど順風に進んでいきます。
「あれ? これはもしや……誘導されていた?」
と〇〇を疑ってしまったのですが、違いました。
上手いですよねえ。
〇〇が犯人でも辻褄が合いそうなんですから。

◆後半は期待でウキウキしました

〈絵札の騎士〉の模倣犯は、
冷酷無情で証拠を残さない完璧主義——
と思われてましたが、実際は違います。
もしそうなら、未解決で終わりますから。
犯人のミスから徐々に浮かび上がる犯人像、
その答え合わせが解ると思うと、
次のページが楽しみでしかたない。
そういう気分にさせてくれましたね。

◆鮮やかな完結に惚れ惚れです

野宮先生の巧みな仕掛けが巧妙です。
違和感を覚えていた伏線が回収され、
納得の事件解決でありました。
最後の文の締めも意味が掛かっていて、
プロの技に惚れ惚れですね。

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