サスペンス・ミステリー

神祇庁の陰陽師・凪の事件帖(感情トリガー/紹介/あらすじ/感想)

ミステリ×ローファンタジーの鬼退治物語

数ヶ月前から『罪を犯す夢』を見るようになってしまった青年、嵐士(あらし)。彼はあるとき、近所の公園で女性を殺す生々しい夢を見た。彼は慌ててその公園に行くと、はたしてそこには既視感のある女性が死んでいた――。事情聴取が始まり、きつい尋問を受ける嵐士。ところがその時、世にも綺麗な男が取調室に現われ、さっそうと嵐士の身柄を引き取っていったのだが、その男に連れて行かれた場所は――処刑場だった。その男・凪(なぎ)は『魔』を回収する陰陽師だという。「人はよく『魔が差した』と言うだろう? 僕の仕事はその魔を回収する仕事だ。魔が差した人が『鬼』になってしまう前に」。『罪を犯す夢』と『魔、鬼』の関係は? 不思議な陰陽師・凪が事件の謎を追う。ミステリ&ファンタジー!
UNEXT

◆登場人物
神代かみしろあら……鬼の目を宿した19歳の青年
なぎ……神祇庁のイケメン陰陽師
うつつ……凪の配下的な存在
羅夢らむ……凪の配下的な存在
ざきつよ……尾道警察署の刑事
月島つきしまゆう……尾道警察署の若手刑事
あい……怪異専門の行政機関『神祇庁』の職員であり、凪たちの上司
かしわ芽衣めい……嵐士の幼馴染
酒吞しゅてんどう……500年前に人の躰に再び受肉した恐ろしい鬼

◆あらすじ
 東京在住の実家から広島に越してきたばかりの平凡な青年——神代かみしろあら(19)は、駅構内で通り魔に重傷を負わされていた。死に際に出遇った謎の男——白銀の長い髪に金色の瞳をしている——が、自分の目玉と嵐士の目玉を交換して姿をくらます。意識を取り戻した嵐士は無傷も同然で退院した。が、この事件をきっかけに、度々恐ろしい夢にさいなまれてしまうのだった。自分が人を襲っているリアルな夢に。
 ある日、嵐士は夢にみた覚えのある公園で女性の遺体を発見する。取り調べを受けていた警察署でなぎという二十代半ばのイケメン——陰陽師——と出会い、嵐士は知らされずに処刑場へと連れていかれる。鬼に変えられていた嵐士は、魔に共鳴して同じ視界を見れることが分かり、その特性を買われて凪たちの仲間にされる。
 嵐士の金色の右目は、凪たちが最優先で追っている酒吞しゅてんどう——歴史上最も恐れられた鬼——の目だと知り、彼は、魔を回収して治安を護る怪異専門の行政機関『じんちょう』の陰陽師と共に、ミステリアスな事件に臨んでいく。

【目次】
第一章
閑話
第二章

【感情トリガー】
第一章(殺人事件の謎)
 ├公園の遺体【謎】(ナゾ)
 ├轢かれかけ【茫】(????)
 ├洋館で荒事【呆】(ッ⁉︎——)
 ├刑事の車内【怪】(ン⁉︎ ナンダロウ?)
 ├空き巣の謎【謎】(ナゾ)
 ├監禁した鬼【疑】(マチガイナク…)
 ├この中に鬼【訝】(ハ?)
 └君だよね?【訝】(ハ?)
閑話(日常の謎)
 ├汚れた書物【謎】(ナゾ)
 └交換の理由【訝】(ハ?)
第二章(兄が死んだ理由の謎)
 ├兄の死の由【察】(マサカ…)
 └悪夢の警告【察】(マサカ…)

【刺激された感情の種類:7種
驚度😳:★★
 茫=不可解な現象を目撃する(1)
 呆=突然で呆気にとられる(1)
思考🤔:★★★★★★★★★
 訝=疑問を抱かせる言動や描写(3)
 謎=行動や現象に不可解を残す(3)
 察=ヒントから展開の予測がつく(2)
 疑=不審な様子や証拠で疑う(1)
恐怖😣:★
 怪=様子に違和感を覚える(1)

全体を通してのプロット

A人物・世界観の説明
○都会に住む実家から、逃げるように広島に越してきた神代かみしろあらは、三ヶ月前に通り魔の被害に遭っていた。最後に憶えているのが金色の目をした謎の男で、病院で目覚めると嵐士の右目もおなじ金色に変化しており、その日から度々人を襲う夢にさいなまれている。

a物語が始まる起点・問題
昨晩、夢のなかで襲った女性の遺体を嵐士が公園で発見してしまう。その後、おのみち警察署で事情聴取を受けるが、怪異事件を専門とする陰陽師なぎという男に引き取られ、案内された洋館で処刑されかける

B発生した問題への対処
○魔に共鳴して同じ視界を見ることができる嵐士は、魔を回収する凪たちに協力するというかたちで、彼らとの共同生活が始まる。

b問題の広がり・深刻化・窮地
○公園で発見した女性の死体遺棄事件の捜査。
○汚れた本のすり替え事件の謎。
○嵐士の兄が命を絶った事件の真相。
酒吞しゅてんどうの襲撃。

C人物の葛藤・苦しみ

c問題解決に向かう最後の決意
★嵐士が酒吞童子を倒そうと対策を講じる。

D問題解決への行動
○凪たちと共に酒吞童子の痕跡を追うため、鬼の目を持つ嵐士が一時的に神祇庁の職員となる。

読了した感想

ミステリの多様性が面白い!

 事件の犯人探しだけでなく、日常の謎や過去の真相の謎といったカラーの異なるミステリが一冊の小説で楽しめました。難しいトリックを推理するような本格ミステリが苦手な方でも楽しめるはずですよ。

あらすじじゃない回想描写が良い!

 酒吞童子に救われていた神代嵐士が公園で女性の遺体を発見し、警察署で事情聴取を受けていた時のシーンであります。嵐士が通報して警察とのやり取りが回想で出てくるのですが、ちゃんとセリフで読ませてくれるので情移入がしやすかったです。良かれと思って通報したのに発見したことを警察に不審がられるのですが、『夢で見たから』と正直に言うこともできないこのもどかしさ。頭おかしな人だと逆に怪しまれますからね。

鬼とのアクションバトル展開もあり!

 なんとイケメン陰陽師さん、鬼を退治するのに刀を使います。まるで『鬼滅の○○』を彷彿させるような類似性がありますよね。何百年も前から恐れられていたという鬼——酒吞童子は、さながら最強の鬼——鬼舞辻無惨といったところでしょうか。昔燃やされた彼の肉体から魔が活性化し、人間に影響を与えて鬼に変えてしまうという設定も近いものがありました。

さいごに

 どうやら次巻も出すような感じ。主人公の神代嵐士が一時的に神祇庁の職員となったところで終わってますからね。それに私たちの生きる現代でも魔が差したという犯罪は続いてますし、治安を護る警察が無くなることもありません。人間が存在するかぎり……。つまり、魔の元凶となっている酒吞童子を斃したとしても、また別の強力な鬼が現れ、陰陽師の活動もずっと続いていくのではないでしょうか。そうであって欲しいものです。もっと色んな種類の鬼とミステリを楽しみたいですからね。次巻は兄貴的存在のうつつと感情希薄のツインテール羅夢らむちゃんの活躍も期待しております!

神祇庁の陰陽師・凪の事件帖 魔が差したら鬼になります
桜川ヒロ(著)
KADOKAWA
2024年3月22日発売

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