
やばい黒幕の正体に迫る!
戦利品は、アイドル自慢の装飾品に彩られた身体の一部!悪魔に魅入られた洗脳実験で、熱狂的な異常殺人者を世に放つ真意を暴け!カラオケバーの美人ママが変死体で見つかった。自慢の装飾品を着けた瞼を切り取られていた。憑依作家・雨宮縁は、これを連続殺人と突き止める。そして、背後で殺人犯を操る存在を嗅ぎ取る。数々の洗脳実験で殺人犯を世に放った帝王アカデミーの月岡玲奈との関連はあるのか?縁は自分が囮になり、彼らの正体と狙いを暴こうとするが――クライム・ミステリーの白眉!
UNEXT
◆登場人物
真壁顕里……出版社『黄金社』ノンフィクション部門のアラフィフ編集者
蒲田宏和……元『黄金社』装丁部の32歳フリーカメラマン
飯野深雪……スマイル・ハンターの被害に遭った元『黄金社』の未亡人。現在、のぞね書房に勤務
雨宮縁……自分の小説の主人公達に成り切るミステリー人気作家。帝王アカデミーに関する事件を追っている
『キサラギ』……二十歳前後の銀髪青年
『響鬼文佳』……四十がらみのモデル風マダム
『大家東四郎』……奇を衒った和服老人
『片桐愛衣』……快活な女子高生
庵堂貴一……雨宮縁の助手
月岡玲奈……片桐一家殺傷事件の唯一の生き残りで、帝王アカデミーの最高責任者
吉井加代子……閉鎖病棟に隔離されてる危険人物
◆あらすじ
年齢・性別不詳の人気ミステリー作家——雨宮縁は、十五年前に起きた片桐一家四人殺傷事件の真犯人を追っている。生き残った長女(月岡玲奈)が事件と関わっていることは分かっていながらも、証拠は何一つ残されていない。父(片桐寛)が創業した帝王アカデミーの運営を長女が引き継ぎ、裏で『洗脳実験』を行なっていると縁は疑っている。前回、解決した事件のスマイル・ハンターもネスト・ハンターも洗脳実験で操られていたはずだと。
そんな折、カラオケバーを経営する若い女性がストーカーに殺害されるという事件が起きる。似たような事件が過去にも三件起きており、これで犠牲者は四人目。被害者は皆、ストーカー被害に遭っていた看板娘たちで、縁は同一人物による連続殺人事件だと睨む。帝王アカデミーが関わっているはずだと。
しかし、今回は自殺や事故にみせるという犯罪の隠蔽が見られなかった。これも洗脳実験による被験者の犯罪なのか?
縁は、全ての方がついたら自分の命をくれてやると約束した助手の庵堂と、本の執筆で関わる編集者の真壁、デザイナーの蒲田を巻き込み、ハニー・ハンターの捕獲に臨む。
【目次】
プロローグ
第一章 縁と庵堂
第二章 緊急刊行『スマイル・ハンター』
第三章 隔離病棟の絶対悪
第四章 戦利品
第五章 ハニー・ハンター
第六章 トラップを仕掛ける
エピローグ
【感情トリガー】
プロローグ(カラオケバーでの悲劇)
第一章(縁と庵堂)
└運命の邂逅【蟠】(キニナル)
第二章(緊急刊行『スマイル・ハンター』)
└狂気の患者【惧】(シンパイ)
第三章(隔離病棟の絶対悪)
└檻中の狂女【恐】(コワッ!)
第四章(戦利品)
└ヒントの謎【蟠】(キニナル)
第五章(ハニー・ハンター)
└ヒントの図【驚】(エッ⁉︎ イガイ)
第六章(トラップを仕掛ける)
├縁を抱く男【呆】(ッ⁉︎——)
├黒幕の狙い【蟠】(キニナル)
├ドタキャン【訝】(ハ?)
├面識の犯人【驚】(エッ⁉︎ イガイ)
└火炎の人影【呆】(ッ⁉︎——)
エピローグ(片桐一家と庵堂とのつながり)
├片桐と庵堂【驚】(エッ⁉︎ イガイ)
└庵堂の回想【悶】(イイトコダッタノニ)
【刺激された感情の種類:7種】
驚度😳:★★★★★
驚=予想外の出来事(3)
呆=突然で呆気にとられる(2)
思考🤔:★
訝=疑問を抱かせる言動や描写(1)
不幸😫:★★★★
蟠=中途半端でまだ未解決(3)
悶=期待が何かに阻まれる(1)
恐怖😣:★★
恐=危険なのが襲ってきた(1)
惧=悪い事が予測できる事実を知る(1)
全体を通してのプロット
A【人物・世界観の説明】
○裏で『洗脳実験』を被験者に行い、シリアルキラーを生み出している組織が存在する。人気ミステリー憑依作家——雨宮縁は、帝王アカデミーの関係者を疑っている。
○最近ストーカーによる殺人事件が続いており、縁は帝王アカデミー絡みだと踏んでいる。
○縁の本を手がける編集者の真壁とカメラマンの蒲田が、協力して縁の正体を調べようとしている。
a【物語が始まる起点・問題】
☆縁は連続殺人である可能性を確かめるべく、真壁を伝って竹田刑事と接触しようとする。
☆本の打ち合わせという名文で縁が真壁と蒲田を呼びつけ、今回起きてる殺人事件と帝王アカデミー創業一家殺傷事件との類似点を話す。
☆特殊精神病院の閉鎖病棟に移された吉井加代子——片桐一家殺傷事件で唯一生き残った長女、月岡玲奈の生母——が今も生きていることを縁が真壁らに話す。
B【発生した問題への対処】
○吉井加代子に興味を持った真壁が、縁の助手の庵堂と一緒に取材しに行く。
○縁が竹田刑事を動かし、四名の女性被害者が連続殺人であった証拠を掴ませようとする。
b【問題の広がり・深刻化・窮地】
○四人の被害者の新たな共通点が見つかり、連続殺人である可能性が高まる。
○吉井加代子のヒントから次の犯行日が予測できる。
C【人物の葛藤・苦しみ】
○縁が犯人の囮役となって作戦を決行する。
c【問題解決に向かう最後の決意】
★縁が土壇場で計画を変える。
D【問題解決への行動】
○逃走を図った犯人が吉井加代子のいる閉鎖病棟に向かい、目的を果たす。
読了した感想と気づき
◆縁と庵堂の繋がりがまだ未開示
第一章から庵堂貴一の回想シーンが出てきます。治安の悪いロサンゼルスのダウンタウンで、暗い通りを泥酔気味で歩いている庵堂が少年と取引をするという意味深な邂逅。庵堂の父親は再生医療を研究していた医学博士で、少年と引き合わせたのも彼でした。そんな父親をなぜか庵堂は憎んでおり、少年に対しても同様の感情を抱いています。どうやら、この少年が雨宮縁なのでしょう。しかし、庵堂の怒りの根源がわかりません。まだまだ謎だらけであります。
◆まるで私小説を読んでいるよう
雨宮縁の目的は十五年前の片桐一家殺傷事件の真犯人を追い詰めることです。すでに帝王アカデミーの実権を握る月岡玲奈が怪しいと縁は踏んでおり、黒幕が関わっている事件の真相を暴き、それを小説にすることで追い詰めていく作戦です。
で、実際に解決した『スマイル・ハンター』を刊行しようと進めているのですが、僕たちが手に取って読んだ本も同じタイトルで同じ装丁デザインというのが面白い。もしかしたら、『ネスト・ハンター』も『ハニー・ハンター』も僕らの知らないとこで解決した現実の事件なのかもという想像が楽しめます。
◆マッドプリズナーの恐ろしさに震撼
スマイル・ハンターもネスト・ハンターも意外と呆気なく捕まっており、あまり手応えの感じない犯人だなぁという印象でしたが、今回はやばい奴が登場します。
吉井加代子。四十代後半から五十代と思われる女性サイコパス。拘置所でも刑務所でも人を何人か襲っており、現在、閉鎖病棟に隔離されている危険人物であります。
蒲田のセリフから『ハンニバル』を意識したような人物で、相手の懐に入り操る『絶対の悪』。そんな彼女に真壁が取材しに行くというこの興味深さ。震えましたね。
◆薔薇のようなシーンに唖然
ハニーハンターを罠に仕掛けるため、縁は皮膚が全身真っ白のアルビノ美女に扮したのですが、どうやらそのモデルが庵堂の想い人だったようです。
すでに亡くなっていると知りながら、桐生月子に扮した縁の躰をうしろから庵堂が抱きしめるシーンにはびっくり! あれ? 縁って男だよね? 妹の臓器移植で助かった片桐涼真だよね? って勝手に私が推測しているのですが、だとすると男同士で密着しているわけです。
縁の本質が不明だから、脳が混乱してきますね。
◆意味深なメタファーが気になる
縁が黒幕対策で用意した古い建物の事務所であります。そこにはかろうじて呼吸している古時計が……という描写が出てきました。まるで縁の命も終わりに近づいているかのような暗示がうかがえます。
免疫抑制剤を服用している縁。
全ての方が着けば庵堂に殺される予定の縁。
縁がフェードアウトしてしまったら魅力的なキャラがいなくなってしまうんで、どうか死亡することがないよう祈っております。
『ハニー・ハンター 憑依作家 雨宮縁』
内藤了(著)
祥伝社
2022年6月10日発売
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