
吉井加代子を熱望するサイコが迫る!
被害者に刻まれたおぞましき笑顔の謎とは!じわじわと雨宮縁に迫りくる狂気を一網打尽にすべく、逆襲の一手を放て!「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズの著者、戦慄の第4弾!――憑依作家・雨宮縁の担当編集者真壁は、戦慄した。共に社を出て家路についた同期入社の森山が殺害された直後、縁を熱烈に支持する書店員が命を奪われたのだ。遺体の顔面にはスマイルマークと思しき傷が残されていた。自分も狙われるのではと怯える真壁だったが、縁の怒りは頂点に達していた。またしても帝王アカデミーの犯行なのか?縁は自身を餌に罠を張るが――。
UNEXT
◆登場人物
真壁顕里……黄金社ノンフィクション部門の編集者で特別に縁を担当している
蒲田宏和……黄金社から独立したフリーランスのデザイナー兼カメラマン
雨宮縁……作中の主人公達に成り切るミステリー人気作家。帝王アカデミーに関する事件を追っている
『キサラギ』……二十歳前後の銀髪青年
『大家東四郎』……奇を衒った和服老人
庵堂貴一……雨宮縁の秘書
竹田刑事……警視庁捜査一課所属の一匹狼
月岡玲奈……片桐一家殺傷事件の唯一の生き残りで、帝王アカデミーの総帥
吉井加代子……玲奈の実母。帝王グループの病院の隔離病棟に収監されている
◆あらすじ
被験者からシリアルキラーを生み出している帝王アカデミー。憑依作家——雨宮縁は彼らの闇を暴くべく、解決してきた事件を小説にするという手法をとっている。
そんな縁を担当している編集者の真壁は、縁の次作となる『ネスト・ハンター』の企画書作りに苦戦していた。
二日後、事件は起きてしまう。つい二日前に会ったばかりの同期編集長——森山が遺体で発見されたのだ。犯人は遺体にメッセージを残している。真壁は戦慄し、自分も標的にされていることを自覚する。
縁は自分の本で身近な人達が襲われている事実に憤慨する。真壁や装丁デザインに関わる蒲田までも狙われている可能性があり、縁は自分が囮となって公の場で素顔を晒すという苦渋の決断をとるのだった。果たして、今回の犯人と帝王アカデミーとの関係性は如何に。
【目次】
プロローグ
第一章 編集者の憂鬱
第二章 笑う死に顔
第三章 縁の憂鬱
第四章 出版記念インタビュー
第五章 トラップ・ハンター
エピローグ
【感情トリガー】
プロローグ(一卵母娘)
第一章(編集者の憂鬱)
└遺体に加工【訝】(ハ?)
第二章(笑う死に顔)
├少年の遺体【驚】(エッ⁉︎ イガイ)
├犯人の性別【推】(マテヨ…)
└死体の笑顔【謎】(ナゾ)
第三章(縁の憂鬱)
第四章(出版記念インタビュー)
├不審な人物【落】(ガッカリ)
└白い影の男【驚/訝】(エッ⁉︎ イガイ/ハ?)
第五章(トラップ・ハンター)
エピローグ(グループセラピー)
【刺激された感情の種類:5種】
驚度😳:★★
驚=予想外の出来事(2)
思考🤔:★★★★
訝=疑問を抱かせる言動や描写(2)
推=謎を解く仮説を考察する(1)
謎=行動や現象に不可解を残す(1)
不幸😫:★
落=期待外れに落胆する(1)
全体を通してのプロット
A【人物・世界観の説明】
○帝王アカデミーの総帥——月岡玲奈が、面会を求めきた謎の男を、隔離病棟に収監している吉井加代子と会わせる。
○黄金社の真壁が、縁の次作『ネスト・ハンター』の企画書作りに苦戦中。そんな時、縁の担当者に会いたいという不審者が現れるが、受付に拒まれ去っていく。
○真壁が思いつきで片桐寛の関係者である亡き庵堂昌明について調べ、庵堂貴一が縁故者であったことを突き止める。
○退勤後、同じ会社で働く森山編集長と鉢合わせ、駐車場まで一緒に帰路につく。
a【物語が始まる起点・問題】
☆真壁は縁からの電話で、二日前に会ったばかりの森山編集長が遺体で見つかったことを知る。竹田刑事の報告によると、死因は失血死で遺体にある加工がされていた。
B【発生した問題への対処】
○森山の遺体の件で話があるという竹田刑事に、真壁が縁との取り次ぎを引き受ける。その代わり、庵堂昌明の事件に関するデータファイルを当たって欲しいと竹田に依頼する。
b【問題の広がり・深刻化・窮地】
○遺体で発見された森山の顔に、スマイルの切り傷が加工されていた。犯人は『スマイル・ハンター』を意識している可能性がある。
○森山編集長を最後に見た日、真壁に会いにきた謎の人物が容疑者候補に挙がる。犯人は、森山を真壁と誤解していた可能性がでてくる。
C【人物の葛藤・苦しみ】
○また一人、顔にスマイルを加工された被害者が遺体で発見される。真壁が仕事で関わった書店員であった。
c【問題解決に向かう最後の決意】
★犯人を誘き出すため、雨宮縁が刊行イベントを催す計画を実行する。真壁、蒲田、庵堂も計画に参加する。
D【問題解決への行動】
○誘きだされた犯人を逮捕する。
読了した感想
◆またこのパターンでやられると……
前回の『ハニー・ハンター』でようやく見えてきた黒幕の正体——帝王アカデミーの総帥、月岡玲奈と実母の吉井加代子。今回はいよいよその二人を追い詰めるのかと思いきや、また、彼女らの操り人形による事件がメインでありました。一番見たかったところが見れなくて残念。主人公の真壁や縁よりも、そっちのほうが謎めいていて興味があります。ですが、またこのパターンが続くなら期待はむずかしい。次作も籠絡された犯人の逮捕というオチなのかと思ってしまいます。
◆想定していなかったのは雨宮縁らしくない
雨宮縁の正体が今回ようやく明らかになりました。帝王アカデミー創業一家殺傷事件で亡くなった長男の片桐涼真だったのです。やっぱり、という感じでしたね。縁は優れた作家であり、優秀な探偵よろしく推理力も長けております。予めこうなるだろうと未来を予測する賢しさで、犯人を罠に誘ったり、素性をうまく隠しているのです。
そんな縁がですよ、月岡玲奈や吉井加代子を刺激するような小説を書いておきながら、その関係者が襲われることを予測できなかったのはおかしい。彼の先見の明はいずこにやられた……。
『トラップ・ハンター 憑依作家 雨宮縁』
内藤了(著)
祥伝社
2023年4月13日発売
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