
性犯罪者の闇×衝撃的すぎるラスト!
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
UNEXT
◆登場人物
蒲生稔……シリアルキラー
蒲生雅子……息子の不審な行動に疑惑を持つ母親
樋口武雄……退職した元刑事
島木かおり……被害者の遺族
◆あらすじ
大学に通っている稔が、ある日、同じ大学の女性に興味を持ち、ホテルで彼女と一夜を過ごしたのが凄惨な事件の始まりである。稔は本当の愛を知り、それを何度も体感したいがために犯行を繰り返していく。真実の愛を手に入れるため。
息子の様子に不審感を抱いていた母親の雅子は、やがて彼の行動を観察するようになり、悪い予感に現実味が帯びていくことに苦しんでいく。息子は犯罪者なのではないか、と。
すでに警官を退職をしている六十過ぎの樋口は、連続殺人の被害者である遺族の妹と邂逅し、互いに抱く罪悪感から共同で犯人の痕跡を追っていく。
犯行を止められない稔の異常な性癖・妄執、見事すぎる伏線の数々、度胆を抜く衝撃的なラスト。読み返し必須のサイコ・サスペンス物語。
【目次】
エピローグ
第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
第六章
第七章
第八章
第九章
第十章
【感情トリガー】
エピローグ(逮捕の瞬間)
第一章(疑惑)
├青年の衝動【訝】(ハ?)
└子の性調査【蔑】(キモチワル)
第二章(初犯)
└ラブホテル【呆】(ッ⁉︎——)
第三章(遺族と邂逅)
第四章(二人目)
├首を絞めた【訝】(ハ?)
└稔の実年齢【仮】(モシカシテ)
第五章(捜査依頼)
└鬼畜な姦淫【蔑】(キモチワル)
第六章(三人目)
├件の看護婦【察】(マサカ…)
└二件の殺人【訝】(ハ?)
第七章(プロファイル)
第八章(四人目)
└誰かの視線【怪】(ン⁉︎ ナンダロウ?)
第九章(物色)
└通る女の幻【察】(マサカ…)
第十章(終焉)
├スーツの男【察】(マサカ…)
├変装した女【察】(マサカ…)
├若い男の服【訝】(ハ?)
└全裸の二人【訝】(ハ?)
【刺激された感情の種類:6種】
驚度😳:★
呆=突然で呆気にとられる(1)
思考🤔:★★★★★★★★★★
訝=疑問を抱かせる言動や描写(5)
察=ヒントから展開の予測がつく(4)
仮=実現性がある程度高い仮説(1)
恐怖😣:★
怪=様子に違和感を覚える(1)
攻撃👊:★★
蔑=愚劣な行いを見下す(2)
全体を通してのプロット
A【人物・世界観の説明】
【稔】
シリアルキラー。初犯は三ヶ月も前になる。
【雅子】
自分の息子が犯罪者なのではないかと疑い、密かに息子の行動を観察している。
【樋口】
去年、妻と死別し、風邪で訪れていた元刑事が、院内のワイドショーで最近起きた殺人事件のニュースを知る。
a【物語が始まる起点・問題】
【稔】
自分に性欲はないと思っていた稔が、大学内で見かけた一人の女性に惹かれていることを自覚する。
【雅子】
息子の部屋のゴミ箱を物色し、血液を含んだ黒いビニール袋を発見する。
【樋口】
家に訪問してきた警部から事情聴取を受け、昨夜もお世話になっていた看護婦が殺害されたことを知る。
B【発生した問題への対処】
【稔】
惹かれていた女性と接触し、その理由を確かめるためにホテルで彼女の肉体と戯れる。
【雅子】
現実を直視できず、いつも通りの日常を送ろうとする。
【樋口】
亡くなった看護婦の仮通夜に赴く。
b【問題の広がり・深刻化・窮地】
【稔】
犠牲者の躰の一部を持ち去るようになり、犯行を繰り返す。
【雅子】
訪ねてきた警察の聞き込みを受け、家族崩壊の危機に直面する。息子の持ち物がニュースにあった情報と重なり、疑いに確信をもつ。
【樋口】
看護婦の遺族である妹と共に、連続殺人犯の痕跡を追う。一人の記者が二人に近づき、捜査協力を願いでる。
C【人物の葛藤・苦しみ】
c【問題解決に向かう最後の決意】
【稔】
殺害したはずの女を道で目撃し、生き返ったと妄信する。また会えると思い、彼女と出会った店に向かう。
【雅子】
不審な息子を尾行し、最後まで見届けようとする。
【樋口】
被害者と容姿が似ている遺族の妹を囮にし、犯人が現れそうな店で様子を窺うという仕掛けにでる。
D【問題解決への行動】
○遺族の妹の前に犯人が接触してくる。
読了した感想
◆叙述トリックが巧み!
三人称一元視点による群像劇のなかに、ミスリードへと持っていく仕掛けが素晴らしい。まんまと先入観の落とし穴に落ちてしまいました。読み返すと、ちゃんと推察できるヒントが書かれているんですよねぇ、さりげなく。なんで見過ごしてしまったのか……。小説だから成せる技法。これはとても勉強になります。
◆嗜虐的な描写がえげつない!
稔の変態ぶりをそこまで書いてしまうのか? というところまで書いてあります。普通の人は不快感を感じてしまうことでしょう。人の深淵を覗きたい方以外の方には、おすすめできる内容ではありませんね。プロットは素晴らしいのですが。
◆雅子の行動も異常すぎてドン引き!
息子を愛することは良いことですが、度を超すと気持ち悪くてゾッとします。勝手に部屋のなかを物色し、ゴミ箱に溜まっているティッシュの匂いを嗅いで確かめる。週に何回してるかまで観察するという、とんでもないサイコマザー。とにかく異常者は面白い。
◆ちょっとした疑問
ホテルって監視カメラついてますよね? 犯人はホテルで襲っていたから、映像みれば特定できるのでは?
またNカメラ——走行中の自動車のナンバープレートを自動的に読み取るシステム——があるので、容疑者が乗っていた車と犯行日を照らし合わせば、身元も特定できるのでは?(目撃証言で白のカローラだと判明してた)
犯人が手袋をしている描写はありませんでした。つまり、いたるところに指紋が付着していたはず。被害者の躰にも。もしも容疑者の自宅を訪ね、指紋を採取すれば一発で犯人特定です。初犯から五ヶ月近くも警察は何をやっとんねん、って思っちゃいましたね。樋口って元刑事なのに。
ただ、本書の初版本は1996年と、28年も前の時代。Nカメラの導入数も少ないだろうし、指紋鑑定技術も現代ほど高くないところからみると、警察の捜査が膠着してしまうのも肯けるか。
『新装版 殺戮にいたる病』
我孫子武丸(著)
講談社
2017年10月13日発売
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