
切ない泣哭×魔獣の強襲×鬼がかる者達!
――さあ、物語を動かそう。大切な人たちと、同じ朝日を迎えるために。強い決意を固めて、屋敷の始まりの日へと舞い戻ったスバル。ロズワール邸で繰り返したループの記憶を総動員し、最高の選択を行うことで惨劇の回避を狙うスバルだったが、絶対に失敗できないという恐怖心とプレッシャーはスバルの心を蝕んでゆく。そんな砕け散りそうな心を抱えるスバルに、あの始まりの日と同じ微笑みを浮かべるエミリアが手を差し伸べて……。「笑いながら肩組んで、明日って未来の話をしよう」大人気WEB小説、第三幕開始!
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◆登場人物
ナツキ・スバル(17)……突如、異世界に召喚された高校生
エミリア……ルグニカ王国四十二代目の『王候補』の一人
パック……エミリアと契約してる猫の姿をした大精霊
ロズワール・L・メイザース……奇抜な衣装とピエロ風メイクの貴族
ラム……ロズワール邸の双子メイド(姉)。ぺったん
レム……ロズワール邸の双子メイド(妹)。家事全般が得意
ベアトリス……禁書庫の司書。
ラインハルト・ヴァン・アストレア……『剣聖』と呼ばれる騎士の中の騎士
ロム爺……盗品窟の主
フェルト(15)……王都の貧民街育ちの盗人少女
エルザ・グランヒルテ……艶めいた雰囲気をまとう美女
カドモン……厳つい商売人
◆あらすじ
ロズワール邸に来てから四度も『死に戻り』して判ったこと、
スバルは王選を妨害するスパイだと警戒されていること。
そのせいで二度も監視役のレムに殺されていた。
また、レムを衰弱死させた呪術師がどこかに潜んでいること。
スバルも一度はそれで死に、二度目は死にかけていた。
これで五週目となるスバルは、監視役のメイド達から殺されないよう信頼関係の構築を優先し、且つ、呪術師を突き止めるという問題を一人で抱え込むのだった。
二日目、強迫観念に押しつぶされていたスバルは、ついにエミリアの前で溜め込んでいた弱音を吐き、改めて彼女の愛おしさを知る。
ふたたび勇気を養ったスバルは、ベアトリスの知恵を借り、呪術師を突き止めるとっかかりを得る。
監視役のラムとレムを伴い、買い出しという名目でアーラム村の村民と接触していった。
自分に触れた箇所をベアトリスに視てもらい、呪術師の正体を確かめたスバルはレムと共に、ふたたびアーラム村へと駆けていく。
危惧してしたことが的中。村で異変が起きていた。
子供達が行方不明となり、森の結界が破られていたのだ。
『死に戻り』の最終局面。ラムとレムの切ない譚がスパイスとなる、鬼がかったスバルの冒険活劇開幕!
【目次】
第一章 ナツキ・スバルのリスタート
第二章 泣いて泣き喚いて泣き止んだから
第三章 勇気の意味
第四章 鬼がかかったやり方
第五章 オールイン
エピローグ 未来の話
幕間 月下の密談
全311ページ
【感情トリガー】
第一章 ナツキ・スバルのリスタート
├男女の密談【蟠】(キニナル)
└堰を切る涙【切】(セツナイ)
第二章 泣いて泣き喚いて泣き止んだから
第三章 勇気の意味
├犯人の正体【蟠】(キニナル)
└魔獣の強襲【喜】(オー!)
第四章 鬼がかかったやり方
├余命の宣告【訝】(ハ?)
└香の囮作戦【突】(オイ!)
第五章 オールイン
エピローグ 未来の話
└五日目の朝【悦】(ヨカッタ)
幕間 月下の密談
└男女の密談【清】(スッキリ)
異世界の貴族——美丈夫が二日ぶりに帰還した。
王都の女王候補であるエルフの少女と双子姉妹の女中が屋敷で迎える。
客人も一人混じっていた。
この世界では見慣れない格好をした青年。
エルフの少女のピンチを救った恩人らしく、そのお礼として彼の要求を叶えることにした。
青年が望んだのは住み込みの使用人になること。
美人双子姉妹を彼の指導者に当たらせ、その日の彼の様子を密かに探らせた。
夜が更ける執務室に双子姉妹の姉が報告に来室する。
要件が済んだ後、座る美丈夫の膝上に女中が腰を乗せた。
主人の不在で疼いていた女中が「今夜も、失礼……します」と言う。
なにやら妖しげな密談が交わされていたのだった。
異世界で知り合った大事な仲間達を救うと決めた主人公男子は、自害した。
これで五週目。
四日前の屋敷で目覚めた主人公は、バッドエンドを繰り返す問題を攻略するための作戦を立てた。
一つは屋敷の連中の信頼を得る。
もう一つはまだ正体不明の敵を突き止める。
主人公はいつも以上に陽気なキャラを演じ、使用人としての勤めも果たしていく。とくにメイドの双子姉妹にはより親しみを表した。
二周目と三週目では双子の妹に殺され、四週目では姉が殺そうとしてきたのだ。
原因は余所者の主人公にスパイの疑惑を向けられていたから。
別の世界から来たなどと正直に言えば、もっと怪しまれるだろう。
人畜無害であることを分からせるため、がむしゃらに働き、彼女達をサポートし、作り笑顔で無邪気さをアピールし……仲間と認めてもらうため……
ついに主人公の精神が限界を迎えた。
そこに一人の美少女が声をかけてきた。王都の女王候補である。
『死に戻り』の事情も知らず、彼女が膝枕になって主人公を優しく労った。
一人で全てを抱え込んでた主人公は、滂沱と涙をながす。
自分の置かれた状況を相談したくても制限があってできない。
これまでに味わった失望と苦痛、絶望と恐怖、胸の痞をすべて曝け出すように主人公は泣き喚いていた。
異世界に召喚された主人公男子は、とある貴族の屋敷で何者かの呪術により絶命した。別のルートでは、同じ屋敷に住む女中が呪術によって死亡している。
魔法に精通した司書の少女に尋ねると、呪術をかけるのには物理的な接触が必要とのこと。また、発動する前なら解呪することができるという。
それを聞いた主人公は心当たりがあった。
早速、女中と買い出しに出かけた小さな村で、容疑者候補と接触をしていく主人公。屋敷に戻り、司書の少女に解呪してもらおうとする。
主人公は呪術師を特定できるよう、自分の躰に触れる箇所を分けていた。
いざ解呪してもらい、呪術師の触れた部分が判明する。
しかし、その正体を明示せず、主人公は慌ただしく部屋を出ていくのだった。
異性界に召喚された平凡な引きこもり高校生男子は、力も魔力もあるメイドの少女と共に、村の子供達が魔獣に攫われた夜の森の中へと駆けていった。
森中で子供達を発見し、メイドの少女が回復魔法で応急処置に費やす。
主人公はまだ見当たらないお下げの少女を探しに、奥へと単独ですすんだ。
発見したお下げの少女を連れて戻ろうとすると、想定外の体格をした魔獣犬と遭遇。なんとか一体を斃し、安堵するも束の間、二十体以上もの魔獣犬が目の前に現れた。
絶対絶命のピンチ。
魔獣犬が襲ってきた。主人公の眼前で魔獣の頭がスイカのように爆ぜる。
鎖に繋がれた鉄球。
優雅に降り立ったのは得物を手にしたメイドの少女だった。
対象との接触で呪いがかかってしまう呪術の因——
それは魔獣と呼ばれる子犬のような生き物だった。
そのせいで二度も死んでいた主人公男子は、強力な助っ人を連れて魔獣との死闘に打ち勝つ。
魔獣の呪術にかかっていた村の子供達は、皆、解呪されて助かった。
これでバッドエンドのループから脱出できたはず——
強力な魔力を持つ少女から主人公は告げられた。
あと半日でお前は死んでしまう、と。
ごく平凡な高校男子が異世界に呼ばれて、ある窮地に立たされていた。
接触すると死の呪いがかかる呪術で、すでに二度死んでいる。
『死に戻り』ができる主人公は、バッドエンドを回避しようと呪術師を突き止めた。
自分の腕に噛みついていた子犬もとい魔獣犬。
腕っぷしと魔力のある可憐な双子姉妹の妹といっしょに、主人公は結界を越えた森のなかで衰弱していた村の子供達を発見した。
魔獣犬との死闘で生還した主人公だったが、そのときに受けた呪いの数が多すぎて助からないと治療してくれた者から告げられる。
生き残るには呪いをかけた魔獣をすべて掃討する必要がある。
勝手に単独で魔獣の巣窟に向かった双子姉妹の妹を救うため、彼女の姉とともに主人公は駆け出した。
魔獣犬の群れは主人公が放つ特殊な香に反応して襲ってくる。
主人公は逆にそれを利用して妹の発見ができると考えた。
自分が囮となり、姉の魔力を以って自分の命も守る。そうすれば魔獣犬を追ってくる妹と合流できるはずと。
今度は姉バージョンの死闘劇……
現在、双子姉妹の姉を抱えて主人公は逃走中。
とんだ想定外。
妹よりもあらゆる面で劣る姉の体力が尽きたとのこと。
五日目の朝【悦】(ヨカッタ)
貴族の屋敷で意識を取り戻した主人公男子は、女王候補のエルフを救った褒賞として住み込みの使用人になり、先輩方にあたるメイドの美人双子姉妹と勤労生活を送っていた。
四日後の夜、同じ屋敷内で暮らすエルフと逢瀬し、デートの約束を申し入れる。
押しのおかげで了承してもらった主人子は明日を楽しみに床に就く。
翌日の朝——ではなく、四日前の朝に主人公は戻っていた。
『死に戻り』である。主人公は床に就いたまま死んでしまったのだ。
これが異世界に召喚された主人公の能力。
波乱万丈な『死に戻り』をすでに四回も繰り返した主人子は、ようやく問題解決の糸口をつかむ。
仲間との絆がリセットされる悔しさ、仲間から殺意を向けられる失望感、『死に戻り』を打ち明けられないもどかしさ、そのせいで好きなエルフから失望される絶望感、精神が参るほどの死を繰り返した主人公に希望を灯したのは、記憶に残る仲間達の優しさ、愛だった。
五週目となる最終局面、自分や仲間を殺した真犯人と激闘し、ついに死のループから離脱することに成功する。
五日目の朝を迎えた主人公の側には、心配してくれた愛しいエルフがいる。
恩返しをさせてと懇願するエルフに、二人でのデートを要望した。
デートの意味も曖昧な彼女は、天使の微笑で了承してくれるのだった。
男女の密談【清】(スッキリ)
”異世界の貴族——美丈夫が二日ぶりに帰還した。
王都の女王候補であるエルフの少女と双子姉妹の女中が屋敷で迎える。
客人も一人混じっていた。
この世界では見慣れない格好をした青年。
エルフの少女のピンチを救った恩人らしく、そのお礼として彼の要求を叶えることにした。
青年が望んだのは住み込みの使用人になること。
美人双子姉妹を青年の指導者に当たらせ、その日の彼の様子を密かに探らせた。
夜が更ける執務室に双子姉妹の姉が報告に来室する。
要件が済んだ後、座る美丈夫の膝上に女中が腰を乗せた。
主人の不在で疼いていた女中が「今夜も、失礼……します」と言う。
なにやら妖しげな密談が交わされていたのだった。”
二人の間で交わされていた内容が終盤で明らかになる。
メイド服を拵えた双子姉妹の姉は角を失くした鬼亜人だった。
かつては神童と呼ばれた鬼族の傑物児だったが、角を失くしたことで平凡な妹よりも劣る非力な存在となり、立場を失っていた。
角がないと大気中のマナを取り込んだり、マナを使った魔法も使えない。
そんな彼女を救ったのが貴族の美丈夫である。
彼は、自分のマナを相手に移譲することができる稀有な魔法使い。
日課となっている夜の怪しげな密談は、角無し少女の健全を維持するための『治療行為』だったのである。
【刺激された感情の種類:7種】
幸福☺️:★★★
喜=恵まれた状況を認知する(1)
清=怨みや蟠りが解消される(1)
悦=困難を乗り越えた今に感謝(1)
思考🤔:★
訝=疑問を抱かせる言動や描写(1)
不幸😫:★★★
蟠=中途半端でまだ未解決(2)
切=救ってあげれない心苦しさ(1)
攻撃👊:★
突=予期しなかった相手の誤り(1)
全体を通してのプロット
【人物・世界観の説明】
腸狩りのエルザとの死闘後、エミリアの後援者であるロズワールの屋敷でスバルは療養していた。
意識を取り戻したスバルは、禁書庫の司書を担うベアトリス、メイドの双子姉妹のラムとレム、ロズワール本人と新たに出会い、使用人としてエミリアの住む屋敷に居座った。
その四日後の夜から悪夢がふたたび到来し、スバルは今も『死に戻り』を繰り返している。
スバルとレムを呪い殺した呪術師の正体は不明だが、違う世界線ではレムに殺され、ラムにも殺意を向けられていた。
王選が絡んだ暗殺者の一味——エミリアを狙う者——と疑われていたのが原因である。
五週目に臨んだスバルは、自分の監視役であったラムとレムの信頼を得ることに集中し、且つ、謎の呪術師を突き止めようとする。
スバルは、発動すれば死んでしまう呪術の妨害手段をベアトリスから教えてもらい、呪術師が潜伏してそうな村に双子姉妹と赴く。
【物語が始まる起点・問題】
スバルに懐いていたアーラム村の子供達がまとめて失踪していた。
魔獣の侵入を防ぐ森の結界が破られていた。
【発生した問題への対処】
スバルとレムが森の中で衰弱していた子供達を発見する。
魔獣ウルガルムの群れと遭遇し、子供たちから守ろうと死闘する。
【問題の広がり・深刻化・窮地】
ウルガルムの群れから受けた解呪できないほどの呪いで、スバルは余命宣告を告げられる。
【人物の葛藤・苦しみ】
レムが単独でウルガルムの掃討に向かったことを知らされる。
【問題解決に向かう最後の決意】
スバルは千里眼を使えるラムとともにレムの救出に向かう。
【問題解決への行動】
非力なスバルが秘策をもってウルガルムの頭首と対決する。
読了した感想
◆プレッシャーに潰されてくスバルの描写が新鮮だった!
いつも陽気なスバルが、いつも以上に明るく健気に振る舞いながらも、心根ではそんな自分のことを気持ち悪いと嫌悪してる描写です。
スバルは、ラムとレムからスパイじゃないかと警戒されてるんで、彼女達からの信頼を得る必要がありました。でないと、四日後にレムから暗殺されてしまうから。
スパイでないことを分かってもらうために、笑顔でひたむきに働き、積極的に声掛けしてみんなと親和性を築こうとする必死さがすごい。
まるでメランコリー親和型のような特徴が見られます。
真面目で几帳面、勤勉でありながら、他者への配慮まで怠らない完璧主義者みたいな性格。
しかし、それだと肉体的にも精神的にも休まらず、やがて鬱病を発症してしまいやすいという良くない面をあるようで、スバルにも限界が訪れました。
なぜ社交的で快活そうなスバルが不登校になり、自宅に引きこもりだったのか怪訝でしたけど、この描写をみて納得した感じですね。
◆個人的にはエミリアよりレムかな
スバルのメンタルを救ったエミリアの慈愛はポイント高いんですけど、血みどろになりながらも共に全力を尽くして戦ったレムの方が上回りました。
やっぱ、ギャップなんですかねぇ。
初めはスバルに対して警戒から殺意を向けていたレムが、自分の命を懸けてでも彼を救おうする姿勢にぞっこんであります。
エミリアは最初から天使なのに対し、レムは悪魔の顔もみせた天使。
行動のギャップを魅せたという点では、やはりレムに軍配があがりましょう。
◆レムの人間味が少し窺えた!
デフォルメの利いた個性が特徴のメイド双子姉妹ですが、共感できる部分も見せてくれました。
ラムとレムは鬼の種族の双子として誕生しましたが、能力に格差がありました。
あまりに秀でたラムは神童と呼ばれ、同胞からも持て囃される存在に対して、レムは姉の影のような薄い存在。
幼少期から物分かりがよく、親や姉にも従順的だったレムでありますが、ある事件が起こります。
ラムの角が折られる事件。
いつも姉のうしろを追い続け、姉の横に立てるよう、支えられるよう努力してきたレムは、やがて諦め、自分を出来損ないとして認めていました。
しかし、レムは口の端を上げて喜んでいたのです。
角の無くなった姉の姿をみて。
腹のなかに隠していた嫉妬、憎しみが表れた瞬間ですね。
『Re:ゼロから始める異世界生活 3』
長月 達平 (著), 大塚 真一郎 (イラスト)
KADOKAWA
2014年6月23日
全311ページ
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