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Re:ゼロから始める異世界生活 5(感情トリガー/感想)

狂気の魔女教徒×怠惰なスバル×レムの愛

エミリアとの最悪の別離より三日。身を寄せたクルシュ邸で、レムの献身に甘え心を腐らせていくスバル。そんなスバルの下へエミリアの窮地の報せが届き……。激動と波乱の第五幕。絶望と死の螺旋、迫る。
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◆登場人物
ナツキスバル(17)……突如、異世界に召喚された高校生
エミリア……ルグニカ王国四十二代目の『王候補』の一人
パック……エミリアと契約してる猫の姿をした大精霊
ロズワール・L・メイザース……奇抜な衣装とピエロ風メイクの貴族
ラム……ロズワール邸の双子メイド(姉)。ぺったん
レム……ロズワール邸の双子メイド(妹)。家事全般が得意
ベアトリス……禁書庫の司書
カドモン……厳つい商売人
ロム爺……盗品窟の主
オットー・スーウェン……若い行商人
ラインハルト・ヴァン・アストレア……『剣聖』と呼ばれる騎士の中の騎士
フェルト(15)……王都の貧民街育ちの盗人少女
クルシュ・カルステン(20)……カルステン公爵家当主で男装の麗人。騎士はフェリス
フェリス……ロズワール邸を訪れた王都からの使者。ネコミミ
ヴィルヘルム・トリアス……フェリスと共にロズワール邸を訪れた竜車の御者
プリシラ・バーリエル……スバルが王都で出会った少女。豪華な衣服と尊大な態度が特徴的。騎士はアル
アル……漆黒のフルヘルムに山賊のような奇抜なファッションに身を包む男
アナスタシア・ホーシン……カララギの一大勢力、キーシン商会の会長。騎士はユリウス
ユリウス・ユークリウス……ルグニカ王国近衛騎士団所属の騎士。『最優の騎士』
エルザ・グランヒルテ……艶めいた雰囲気をまとう美女

◆あらすじ
 王都に残されたスバルは、クルシュ・カルステン公爵の屋敷で養生していた。
 エミリアと決別した日から三日目。
 彼女の騎士になるという目的を失い、スバルは順調に腐っていた。
 その晩、クルシュとの晩酌に付き合っていたスバルは、自分の使命に気付かされる。
 自分にしか出来ないやり方で、エミリアを護るという使命。
 そんな折り、レムが共感覚でラムからの危険な感情を認知する。
 ロズワールの領地で厄介事が起きた模様。
 エミリアのことを危惧し、スバルはレムを連れて屋敷に戻ることを決意する。と同時に、不謹慎にもこの凶報を好機と喜んでいた。自分の必要性を解らせてやるのだと。
 しかし、最短ルートは霧が蔓延していて通れない。通れば白鯨と遭遇する恐れがあった。遭遇すれば死は避けられない。
 やむなく遠回りをする道中、レムの案で村の宿をとる。
 スバルが寝過ごした宿には、もうレムの姿はなかった。
 エミリアからもレムからも頼られていない失望に苦しまれる。
 悔しさと怒りをバネに、スバルはレムの跡を追う。
 ——
 悲惨と絶望が待ち受ける悪夢の再来、開幕!

【目次】
プロローグ その名は——
第一章   腐敗する精神
第二章   動き出す事態とレムの意思
第三章   絶望という病
第四章   狂気の外側
第五章   怠惰
全293ページ

【感情トリガー】
プロローグ その名は——
第一章   腐敗する精神
第二章   動き出す事態とレムの意思
 └もぬけの殻【悲】(ナンテコッタ!)
第三章   絶望という病
 ├白煙の方へ【呆】(ッ⁉︎——)
 ├心の拠り所【呆】(ッ⁉︎——)
 └灼熱の痛み【訝】(ハ?)
第四章   狂気の外側
第五章   怠惰
 ├自己犠牲愛【哀】(カワイソウ)
 └無惨な屍山【憮】(ソンナ…)

もぬけの殻【悲】(ナンテコッタ!)
 政敵せいてきの邸宅で養生していた17の男子主人公は、自分の世話係を務めるメイドの美少女を連れて、主の屋敷のもとへ急いでいた。
 自分の想い
びとが居る屋敷に厄介な動きがみられ、厳戒態勢との報せが入ったのだ。
 魔獣、もしくは暗殺者が現れたのか。
 ここから竜車で走っても一日以上はかかる遠い道のり。
 道中、主人公はメイドと宿をとり、明日の準備のために床に就く。
 不安と焦りで眠れなかった主人公の部屋に、メイドの美少女が入ってきた。
 主人公の疲労を
いやす魔法を施され、朦朧もうろうと深い眠りに入っていく。
 目覚めた主人公は仰天した。大きく寝過ごしてしまったのである。
 すぐにメイドの
もとへ駆けたが、部屋はものぬけの殻だった。
 宿の主人に
たずねると、彼女は夜のうちに出て行ったと知らされる。
 主人公に
恋慕れんぼしているメイドの彼女が、一人で問題を解決しようとしている。
 愛する人を危険な目に
わしたくない、その一心で。

 自分が身を置いているあるじの領地で厳戒態勢がかれているという。
 体の治療で離れていた主人公男子は、報せを知るや、すぐに屋敷のほうへ戻っていく。
 そこには想い
びとの令嬢がいる。彼女の安否が心配でならない。
 自分を運んでくれた
御者ぎょしゃと別れ、ようやく屋敷近くの小村が見えてきた。
 早朝から白煙が空に向かって上がっている。
 慣れ親しんだ村の人々の安否も気になり、主人公は様子を確かめに足を運ぶ。
 怪しげな
静謐せいひつが漂っている。村民の気配がまるでない。
 何件か訪ねてみるももぬけの殻。
 白煙が出ている村の中央へ進む。
 
くすぶっていた火は消えかけ、そこに老人の焼死体が横たわっていた。

 その容姿、とても鬼族とは思えぬ可憐な美少女。
 双子の姉も彼女と同じ屋敷に仕える専属のメイド。
 妹は屋敷に入ってきた新米の使用人——異世界に召喚された主人公男子に愛慕を抱いていた。常に主人公を支え、慰め、導いて、彼の弱い部分もすべて受け止める。ただ献身的に彼に尽くすことがなによりの幸せ。
むくわれぬ恋と解っていても。
 主人公の体が不調を
きたしていたため、治療目的で離れた街に付き添っていた。
 そんな中、屋敷の領地で不穏な動きが見られるとの報せが入る。
 一日で着く距離ではないため、主人公と一緒に帰路の途中、宿をとった。
 就寝時、彼の部屋を訪れ、すぐに目覚めぬよう深い眠りを与えた。
 病み上がりの彼に無茶はさせられない。愛する人を死なせるわけにはいかない。
 宿を出たメイドの美少女は、一人で問題解決に
のぞんでいった。

 寝過ごしてしまった主人公は、メイドの計らいに失望と怒り覚える。
 自分は戦力外——そう言われたように感じたのだ。
 すぐに彼女の跡を追いかけ、屋敷に近い村まで辿り着いた。
 村の凄惨な光景に絶句する。
 火事の跡……焼死体……村人の哀れな死体の数々……
 メイドの美少女もこの村を通ったはず。
 彼女の安否を懸念し、絶望感から目を背けるように屋敷へ向かう。
 彼女は庭園にいた。
 すでに事切れた状態で。

 異世界に召喚された17の主人公男子は、仲間の危機に屋敷を訪れていた。
 広い屋敷内を探し回り、家主の執務室から隠し通路を発見した。
 屋敷の地下まで通じる階段を下り、発光してる壁を伝って広間に出る。
 散乱しているいくつもの柱——凍った死体
——を通り過ぎ、奥の扉に行き着いた。
 すでに恐怖に侵されながらも、気づけばその取手に右手を伸ばしていた。
 耐え難い激痛が主人公を襲い、絶叫を上げた。
 反射的に手を放し、右手を見遣る。
 そこに自分の人差し指がなかった。

 鬼族の双子姉妹として生まれた妹の少女。
 
類稀たぐいまれな鬼の力を宿す姉とは裏腹に、妹の方はその劣化版というていであった。
 周囲から持て
はやされる姉を尊敬し、いつもその背中を追っていた妹は、届かぬその努力を諦め、従者のような立ち位置となる。
 そんな姉が事件で角を失い、
稀有けうな力までも失った。
 妹は無意識に喜んでいた。姉よりも勝るようになったから。
 今ではそんな自分を恥じ、罪悪感を抱いている。
 鬼族の落ちこぼれ。その事実は変わらない。
 自分は無価値。姉への支えだけが生きる目的。
 妹には、自尊心というものがなかった。
 それを与える青年が後に現れる。
 とても非力で魔法も使えないのに、命を張ってまでも妹の窮地を救う救世主。
 妹に明るい希望を与えたのは普通の男の子。
 それを機に、妹はその青年に愛慕の情を抱くようになる。
 彼には好きな人がいた。妹の想いは実らない。
 それでもいい。いつも近くにさえいられれば。
 この儚げな願いを邪魔する連中が現れた。
 魔女教徒。精神崩壊した彼を連れ去り、監禁している。
 愛する彼のために妹は鬼の力で尽力する。

 魔法やら魔獣やらも存在しない世界から、突然、異世界に召喚された17の青年は、絶望的な光景を目の当たりにしていた。
 自分の世話係りしてくれてる可憐な美少女が、魔女教徒に
なぶられているのだ。
 手枷・足枷で助けてやることも叶わない。無力を痛感する。
 いつも献身的に支えてくれた大切な仲間・家族。
 その命を
もてあそばれ、青年の怨嗟の叫びだけが空間に響いている。
 魔女教徒はとっくに立ち去った。
 自分はここで野垂れ死ぬだけ……。
 だが、動けないはずの体をひきずり、瀕死の少女が近づいてくる。
 青年の下まで辿り着くと、残りの力を出し切って
かせが破壊される。
 少女は最後に微かな声音で「生きて」と呟いていた。
 そして……彼女は息絶えた。

 小さな子供たちから好かれやすい。
 それは召喚された異世界の村でも同じだった。
 ある屋敷に居座っていた17の陽気な青年
、使用人に付き添って買い出しに出かけ、その村で五人の子供達と仲良くなっていた。
 遠慮なく呼び捨てで呼んでくる子供達にどこか嬉しさを覚えつつ、ちゃんと五人の名前まで憶えている。
 異世界にきて数ヶ月が経つと、青年はもう村によく馴染んでいた。
 あるとき、屋敷の領地で厳戒態勢が敷かれているとの報告を耳にする。
 少し離れた街で体の治療を受けていた青年は、すぐに引き返すことにした。
 帰路の途中、ローブを
まとった怪しげな集団と遭遇した。
 その手に十字剣を持つ彼らは、青年を無視し、屋敷方面から去って行った。
 嫌な予感がよぎるも青年は進み続け、屋敷近くの村に辿り着いた。
 村人は全滅。使用人も前庭で力尽きていた。
 絶望に打ちのめされる。
 それでも青年は屋敷のなかを確認しに向かった。
 想い
びとである令嬢の安否が知りたい。
 だが、青年は何かの働きによって全身が凍りつき、絶命した。
 ふたたび街で意識を取り戻した青年は、『死に戻り』していた。
 前の記憶のせいで彼の精神は崩壊状態。
 体の治療も行えず、使用人が青年を
ながら屋敷へと戻っていく。
 道中、使用人は殺された。青年の目の前で。
 自分を取り戻した青年は、
い使用人を運んで村へとやってきた。
 前回と一緒で村は全滅していた。
 ただ、その死体の山に見覚えのある顔ぶれが重ねっていた。
 無垢で陽気で愛らしかった五人の子供達が……。

【刺激された感情の種類:5種
驚度😳:★★
 呆=突然で呆気にとられる(2)
思考🤔:★
 訝=疑問を抱かせる言動や描写(1)
不幸😫:★★★
 憮=如何ともし難い痛ましさ(1)
 哀=取り返しのつかない不幸(1)
 悲=計画に支障を来たす不測の事態(1)

全体を通してのプロット

人物・世界観の説明
 異世界召喚されてから二ヶ月半ほど。
 エミリアを失望させて仲違いとなったスバルは、クルシュ・カルステン公爵の邸宅で養生生活していた。
 クルシュに仕えるフェリスからの治療を受け続けながら、スバルは空いた時間を執事のヴィルヘルムとの剣術訓練に費やしている。
 ある晩、酒の飲めないスバルがクルシュと晩酌を交わし、フェリスとの堅牢な絆を見せつけられる。その二人から諭されたスバルは、エミリアの相応しい騎士として自分にしかできないことを悟り、気概を取り戻しいく。

物語が始まる起点・問題
 レムの双子共感覚でラムからの不穏な感情を認知する。
 スバルはクルシュから、ロズワール辺境伯の領地で厄介な動きが見られると知らされる。

発生した問題への対処
 スバルはクルシュ側との契約を破棄し、レムを伴ってロズワールの屋敷に戻ろうとする。

問題の広がり・深刻化・窮地
 屋敷へ戻る道中、レムがスバルから離脱する。
 戻った屋敷内で隠し通路を発見したスバルが『死に戻り』する。
 
人物の葛藤・苦しみ
 スバルが精神崩壊し、狂ってしまう。
 スバルに近づいてきた魔女教徒とレムが戦う。
 スバルの目の前に『怠惰』の魔女教徒が現れる。

問題解決に向かう最後の決意
 王都の果物屋に戻ったスバルは、魔女教徒への復讐を心に誓う。

問題解決への行動
 次巻へつづく。

読了した感想

◆クルシュのギャップがより窺えた!
 エミリアの政敵となる王候補の令嬢。
 キリッとした吊り目で凛然とかまえる軍服姿は、堅物といった印象を受けます。
 その面持ちは威風堂々としており、自分の信じる道を決して曲げない克己心の持ち主。
 そんな彼女ですが、意外と女性らしい起伏のある躰をしております。
 スバルの前でネグリジェ姿を晒しても無頓着です。
 スバルの悩みを見透かす鋭い観察力もありましたが、自分に関する恋路には鈍感なとこもあったり。
 ほんの少し窺える彼女の隙が魅力的ですね。

新たな感情刺激を発見!
 それは『憮然ぶぜん』という感情。
 力及ばない意外な出来事にぼうっとしてしまう感じです。
 茫然ぼうぜんに近い感覚ですが、悲哀ひあいの感情が含まれるという点で『不幸』にカテゴライズしました。
 今回、また始まったあの悪夢『死に戻り』、とても悲惨です。
 なぜ村民までも犠牲になったのか不明だし、あまりにも理不尽すぎる展開に衝撃でした。

最狂の魔女教徒現れたり!
 狂気に満ち溢れたペテルギウス・ロマネコンティ。
 奇怪で奇抜で珍奇な言動がとても斬新です。
 あのキャラをアニメで声優さんが演じるんだから凄すぎ!
 ぜったいモノマネする人とか出てくるんじゃないかなぁとか思って検索してみたら、やっぱり何人かユーチューブに投稿してる人いましたね(笑)

◆レムの存在感がかなり大きくなる!
 彼女と付き合うことになったら、男は間違いなくダメ男化していくでしょうねぇ。それぐれらい好きな人に献身的でありました。
 そりゃあ、スバルも腐っていくわけです。彼女の気持ちに甘え、どんどん怠惰になっていく。
 そんな尊いレムが魔女教徒との肉弾戦で満身創痍していく姿は、読んでていて辛いものがあります。『死に戻り』でやり直せると分かっていても。
 レムが尽きてしまうシーンの、あの繊細な挿絵には感嘆でした。
 彼女の口の表現で、言葉が耳に届いてくるのです。

Re:ゼロから始める異世界生活 5
長月 達平 (著), 大塚 真一郎 (イラスト) 
KADOKAWA
2014年11月24日発売
全293ページ

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