
クーデタ×脱獄×殉教×革命
《暁闇計画》を巡る『灯』の戦いはついに最終局面へ。不動を貫くニケ、『焔』の双子の死の真相、計画に潜む『蛇』のフィクサー。世界の秘密を巡り数多の陰謀が絡み合う中、いよいよ革命の朝を迎える――。
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◆登場人物
ディン共和国のスパイ『灯』
クラウス『燎火』……感情欠落天然な『灯』の指揮官
リリィ『花園』……毒耐性体質の屈託ない銀髪少女。十九歳
ジビア『百鬼』……スリが一流の血気盛んな白髪少女。十九歳
サラ『草原』……調教した動物を扱う優しい茶髪少女。十七歳
ティア『夢語』……願望を覗ける妖艶な黒髪少女。二十歳
グレーテ『愛娘』……他人に変装できる赤髪少女。二十歳
モニカ『灰燼』……身体能力の高い不遜な蒼銀髪少女。十八歳
アネット『忘我』……工作が得意の非情な灰桃髪少女。十六歳
エルナ『愚人』……災禍を感知する卑屈な金髪少女。十六歳
スージー(14)……秘密結社『LWS劇団』の生き残りで代表
ガルガド帝国のスパイ『蛇』
紅蜂……実はライラット王国の王族フェルディナン゠シャルル
黒蟷螂……兵器型の義手を付けた長身体躯の漢
白蜘蛛……弱者を愛し、強者を憎む飄々とした男
翠蝶……両方に稲妻の傷跡がある狡猾で嗜虐的な少女
蒼蝿……元ディン共和国のスパイ。クラウスの師匠
紫蟻……傀儡兵を作る暗示の達人
銀蟬……既にクラウスによって屠られている
藍蝗……『LVS劇団』に潜む最悪のフィクサー
ライラット王国の創成軍
ニケ(36)……常勝無敗の謀神で国の英雄的存在。抜群の体躯と尊大な性格をした女傑
タナトス……ニケの右腕として仕える変態マゾ
アイオーン……血を飲む奇人を装う『灯』のモニカ
キルケ……ニケと情事関係を結ぶ『灯』の変質ティア
◆ミッション「『暁闇計画』の全容をつかめ」
世界大戦に関わる重要な機密情報。
ディン共和国以外の三ヵ国が絡んでいる。
(ライラット王国、ムザイア合衆国、フェンド連邦)
計画の原案元はライラット王国。
計画の創設者はクラウスの指揮官だったフェロニカ。
ライラット王国の要人が機密情報を握っている。
要人との接触で障壁となるのが常勝無敗のニケの存在。
◆全容を掴むためのプロセス
①『灯』のメンバーがライラット王国に潜入する。完遂
②『扇動班』のエルナとアネットが反政府組織と接触し、二年前に王を退位させた実績のある秘密結社『LWS劇団』を探る。完遂
③『籠絡班』のジビアとサラが国王親衛隊を味方につける。未遂
④劇団と親衛隊の力を借りて国民を扇動し、君主制を崩壊させる。未遂
⑤『終局班』のリリィとグレーテが混乱を収めてくれる貴族を探す。??
⑥『ニケ班』のモニカとティアが孤立化したニケを制圧し、『暁闇計画』の情報を手にいれる。未遂
◆計画に支障を来たしてる問題
エルナとアネットを救ったサラが収容されている。
経緯は不明だがリリィも同じく収容されている。
ニケの直属の部下、アイオーンに扮していたモニカも収容されている。
LWS劇団を裏切っている『蛇』のスパイが潜んでいる。
◆あらすじ
ディン共和国で暗躍するスパイ『灯』。指揮官のクラウスと、その愛弟子の少女八名が在籍する組織に、ある任務が下っていた。
『暁闇計画』の全貌を掴むこと。
判っているのは、第二次世界大戦が再び起こるという内容であることと、ディン共和国以外の三ヵ国が絡んでいるということ。
その計画の原案元がライラット王国だという。
国王を捉えて直接訊問できれば簡単なのだが、それが難しい大きな壁が存在する。
最強の諜報機関『創世軍』の頭首で、常勝無敗の謀神ニケ。
クラウスと比肩し得る強敵に、少女達だけで臨まなくてはいけない超難関ミッション。
そこで『灯』は奇策な謀略を水面下で工作していた。
民衆を虐げている今の王政府を崩壊させ、ニケの権力を無力化する。
扇動を担うエルナとアネットは、反政府活動を行っている学生らと繋がり、伝説の秘密結社『LWS劇団』の代表と邂逅した。
その人脈のおかげで反政府勢力の力が増していく。
ついに舞台は整った。
創成軍や国王親衛隊を退かせるだけの勢力を率いり、『革命』の立役者——エルナが筆頭に進撃していく。
——
謀神ニケとの最終局面。権謀術数と竜騰虎闘が繰り広げられるアクション・サスペンス・コメディシリーズ第十二巻開幕!
【目次】
プロローグ 革命前夜
1章 蜂起
2章 衝突
3章 疎通
4章 脱獄
5章 迷宮
6章 双子
7章 終点
8章 中心
9章 万愚節
10章 藍蝗
11章 『邪悪』と『聖善』
エピローグ 集合
全288ページ
【感情トリガー】
プロローグ 革命前夜
1章 蜂起
2章 衝突
└裸女の人形【喜】(オー!)
3章 疎通
└コンタクト【呆】(ッ⁉︎——)
4章 脱獄
5章 迷宮
└影武者作戦【訝】(ハ?)
6章 双子
└双子の詐術【訝/奇】(ハ?)(クレイジー)
7章 終点
8章 中心
9章 万愚節
└謀神の激昂【愉】(イイゾ)
10章 藍蝗
11章 『邪悪』と『聖善』
エピローグ 集合
裸女の人形【喜】(オー!)
少女八名がある任務で敵国に潜入していた。
そのうち三名が既に拘束されており、一人は消息不明。
残りの四人で、扇動した市民たちによる反乱を成功させなくてはいけない。
この革命で王政府は崩壊し、格差社会を助長させている君主制に終止符が打てる。力を失った権力者を捕らえ、機密情報を手に入れられれば任務完了だ。
しかし、反政府集団の進行を阻止する国王親衛隊が現れた。
警告を無視すれば、容赦無く射殺するという。
ここで引けば、計画はおじゃん。
すると一人の少女が親衛隊の前に進み出た。
仲間の少女が指示をだしたのだ。
撃たれてもおかしくない危険な行動。
しかし、少女が撃たれることはなかった。
ブラフだったのだ。親衛隊は市民を殺せない。
撃たれない確信の根拠はなんだったのか?
仲間の少女は推測で指示を出していた。
昨晩、親衛隊の大佐の自宅が何者かに侵入されたらしく、不審な少女の裸人形が置かれていたらしい。
それを聞いて仲間の少女はピンときた。
それは着せ替え人形——つまり変装だ。
変装の達人が親衛隊に潜入しているとしたら。
変装が得意な味方がいるではないか。
未だ消息不明の、もう一人の仲間が。
仲間の少女が自分の推測を教えると、少女たちの後ろから初老の男が現れた。
自分の顔を剥がした初老の正体——
おなじスパイ仲間の少女であった。
コンタクト【呆】(ッ⁉︎——)
潜入した敵国で革命運動を起こそうと、水面下で八名の少女たちが奮闘していた。
計画は順調に進み、扇動された市民たちがクーデタを始めている。
看守らの様子でそれを悟った少女は、隣りの房で拘束されてる仲間——もう一人の少女——に伝える手段であぐねていた。
そんな時に呼び出しがかかり、尋問部屋に少女が連行されていく。
すると、隣りの房にいる少女が突然話しかけてきた。
彼女らが仲間だとバレれば、双方に酷い拷問が待っているのに。
血迷ってしまったのか?
とりあえず一年ぶりの再会として房に近づき、彼女の顔を覗く——
房の隙間から胸ぐらを掴まれ、引き寄せられた。
看守らも呆然とする。
房にいる少女が、近づいた少女に唇を重ねたのだ。
影武者作戦【訝】(ハ?)
敵国の領地でクーデタを扇動しているスパイの少女たちがいた。
少女たちは既に捕まっている三人の仲間を救うと同時に、そこに収監されている反政府の同胞らを脱獄させようと行動に移す。
しかし、扇動役で顔が割れている少女Aが捕まるわけにはいかない。
そこで変装の得意な少女が少女A’に扮し、収容所へと同行する。
本物の少女Aは、他の仲間と宮殿の破壊活動へ同行した。
捕まっていた三人の少女らは、抜け出した収容所の敷地で強敵と遭遇。
収容所に侵入した少女A’らも強敵と遭遇していた。
敷地で激戦が繰り広げられているなか、少女A’らは強敵に制圧される。
少女A’が偽物だと見抜いた強敵が仲間に連絡を入れた。
敷地で少女らと戦闘している仲間に。
こっちの方は偽物。本物の少女Aはお前の方にいると。
少女Aは宮殿の方に向かっていたのではないのか?
双子の詐術【訝/奇】(ハ?/クレイジー)
敵国で革命を煽っていた双子スパイの兄弟は殺された。
敵対する防諜部隊の強者によって。
その防諜部隊が今、他国のスパイと激戦している。
戦場と化したその場には、多くの死体が転がっていた。
残っているのは疲弊しきった頭首格のスパイたち——
だけではなかった。
突然、死体が彼らを奇襲してきた。
それは死体を装っていた双子スパイの片割れだった。
生きているなんてありえない。
防諜部隊の強者は確かに兄弟の遺体を確認したという。別々の場所で。
奇襲で負傷したスパイらの前に、もう一人の影が現れた。
片割れとそっくりの顔をした男。
だが、糸で操られていた遺体だとわかるも、
時既に遅し。遺体が炸裂し、血飛沫がスパイらを襲った。
兄弟の遺体をも奇襲に利用する枠外の発想。
/
双子兄弟の片割れは確かに殺されていた。
逃げ切った兄弟がその遺体を回収し、創を増やして別人だと思わせ、別の場所で敵陣のスパイに確認させていたのだ。
顔も体格も同じ、一卵双生児だからこそ成せる詐術。
謀神の激昂【愉】(イイゾ)
スパイである少女ら八名は、ある任務で敵国に潜入していた。
市民が虐げられてるこの王国で革命を起こし、腐敗した王政府を崩壊させること。
その任務に大きな障壁となるのが英雄的存在、親衛隊の女騎士。
幾度と少女らの前に現れ、捻じ伏せられ、既に三名が捕まっている。
残りのメンバーで革命運動を扇動しつつ、仲間の救出に向かったその先にも女騎士が待ち構えていた。
作戦がすべて彼女に読まれていたのだ。
敗戦を喫した計六名の少女が捕まり、一人がクーデタを起こしていた仲間の下へ逃げていく。
なぜか市民らが革命を遂げたと悦んでいた。
内閣の退陣という、向こう側が用意したシナリオに、まんまと踊ろされていたのだ。それもすべて女騎士の謀。
逃げた少女は女騎士の従騎士に追い詰められてしまった。
大きな悲鳴を上げるも、弾丸が少女の躰を貫通する。
勝利に喜祝する市民らの前で、革命の立役者だった少女が殺された。
拘束している六名の少女らに、スパイとしての格の違いを見せつける女騎士。
だが、これが少女らの用意していた秘策であった。
革命には感情エネルギーが必要不可欠。怒りや憎しみといった憤りを呼び起こすには、立役者である少女の死がもっとも有効な手段となる。
女騎士は油断していた。もう一人の少女の存在を。
その『殺し担当』の少女が、立役者の少女を撃ち抜いていたのだ。
親衛隊が少女を殺したと思い込んだ市民らの怒りが爆発。
その知らせを女騎士は部下から受けた。
拘束されている少女が手を引けと彼女に諭す。
だが、女騎士は、それすらも読んでいたと毅然と宣った。
それを聞いて少女らの顔に絶望の色が浮かぶ。
任務は失敗——
と思ったら、女騎士がにわかに憤怒の叫声を響かせた。
これまで常勝無敗の彼女からは想像もつかない醜態ぶり。
少女らの作戦が見事敵側の盲点を突いてみせたのだ。
【刺激された感情の種類:5種】
幸福☺️:★★
喜=恵まれた状況を認知する(1)
愉=思惑通りに事が進んだとき(1)
驚度😳:★★
呆=俄に起こる想定外な事件(1)
奇=普通と違いすぎて珍しい(1)
思考🤔:★★
訝=疑問を抱かせる言動や描写(2)
全体を通してのプロット
【人物・世界観の説明】
ディン共和国のスパイ『灯』に与えられた任務を遂行するため、師匠クラウスの愛弟子達——少女八名がライラット王国に潜入していた。
今回の任務は、世界大戦に関わるとされる『暁闇計画』の全貌を突き止めること。しかし、王国には『謀神のニケ』という強敵の存在が障壁となっている。
ニケを無力化するには王政府を崩壊させる『革命』が必須。
『扇動班』のエルナとアネットは、反政府を密かに掲げる秘密結社と繋がり、かつて、その国の王を退位に追い込んだ『LWS劇団』の代表と邂逅した。
LWS劇団の人脈で同胞を集めたエルナは、この革命の立役者となり、理不尽な君主制に怒れる市民らを扇動してクーデタを起こしていく。
【物語が始まる起点・問題】
国王親衛隊を密かに偵察していた『終局班』のグレーテと、エルナ達のグループ(ジビア、ティア、アネット)が合流する。
グレーテの情報から、革命を理想の形で終息させてくれる味方の有力者らが、ニケ側に翻っていたことが判明する。
もし王を退位させることができても、ニケの都合の良い王政府が誕生するだけで、根本的な問題解決とはならない。
【発生した問題への対処】
ニケの洗脳に影響されてない反政府勢力を味方につける必要がある。
それには収容所に囚われている彼らを解放するのがベスト。
ついでにリリィ、サラ、モニカも奪還できれば万々歳。
革命の立役者であるエルナ(に変装したグレーテ)を筆頭に、ジビアとテイアも収容所へ向かう。エルナとアネットはクーデタの応援に向かう。
【問題の広がり・深刻化・窮地】
脱獄中のリリィ、サラ、モニカの前に、ニケの従騎士タナトスが現れる。
反政府勢力を解放しにきたエルナたちの前に、謀神のニケが現れる。
【人物の葛藤・苦しみ】
革命運動がニケの筋書き通りに動いてしまう。
『灯』の六名が創成軍のニケとタナトスに拘束されてしまう。
【問題解決に向かう最後の決意】
エルナとアネットが革命を成功に導く最後の秘策にでる。
【問題解決への行動】
王政府を陰から乗っ取ろうとしていたLWS劇団の裏切り者——『藍蝗』を仕留め、ニケとの交渉で『灯』のメンバーを解放してもらう。
読了した感想
◆エルナはヒットマンに染まっていくのか
自罰的で卑屈な金髪少女——エルナ。
彼女は、災難を予見することができる最強の能力を持っております。
銃撃戦や肉弾戦に不向きでも、予見で死は避けられるのです。
ある意味最強という評価は否めない。
そんなエルナには、唯一心許せる友——灰桃髪のアネットがいます。
人間らしい良心が欠けた非情の少女。工作を得意とし、その発明品で破壊と殺戮を好む怖しい性格をしております。
今回の『革命任務』でも常にアネットと行動を共にしていたエルナですが、互いに感化し合っていたのは間違いありません。
アネットには想いやりを、エルナには無慈悲さを。
良くも悪くも成長しあう二人ですが、エルナがアネットよりになっていくのは意外でしたねぇ。
◆ラブコメ要素も忘れてない!
『灯』のムードメーカーといったら銀髪のリリィであります。
任務中、早々に敵の収容所で捕まっていたポンコツリーダー。
同じメンバーの蒼銀髪モニカに特別な好意を持たれていた少女。
その二人が収容所で一年ぶりの再会を果たします。
ですが、二人が仲間だとバレるわけにはいきません。
そこでリリィが情報共有するためにとった行動とは……。
あのシーンが衝撃でしたねぇ。
竹町先生はどういうふうに持っていくんでしょうか。
ガールズ・ラブになりつつあるような気がします。
男性が苦手なんですって、リリィ。
バストばかり見られるからだそうです。
そんなの、モニカも一緒だと思んだけどなぁ。
◆やっぱりクラウスは『世界最強のスパイ』だった!
少女達が苦しい戦いをしているというのに、指揮官はいったい何をしとんねん! って思った方は結構いるのでは?
クラウスの活躍も見たかったのですが、今回の任務では「ニケとの戦闘を避けろ」という上からの指令で、少女たちの影に隠れる形となっていました。
クラウスとニケ、どちらが強いのか判然としない様子でありましたが、タナトスというニケの従騎士の存在が推定の材料となります。
なんとタナトス、実力はニケよりも上でありました。
ニケに勝っていたモニカを仕留めたのも彼であります。
ですが、そんなタナトスもクラウスの前では赤子も同然。
つまり、クラウスはニケよりも数段上をいくということです。
やはり『世界最強のスパイ』という異称は伊達じゃない。
◆まだもったいぶるんかい!
今回の『革命運動』は手段のひとつ。
『暁闇計画』の全貌を突き止めることが最終目標。
であるはずなのですが、十二巻でもまだ明かされません。
もやもやしますよねぇ。
一応、教えてくれるという言質は得られているようです。
十三巻でようやく開示されるのでしょう。
ですが、十二巻が諸々の事情で発売までの期間が延びたように、十三巻もあまりかんばしくないようす。
一年待つのは辛いところであります。
期待と応援を胸に、次巻を楽しみに待っております。
『スパイ教室12 《万愚節》のエルナ』
竹町(著)
トマリ(イラスト)
KADOKAWA
2024年10月19日発売
全288ページ
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