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Re:ゼロから始める異世界生活 8(感情トリガー/感想)

スバルの囮作戦×魔女教討伐×不滅の怠惰

強敵『白鯨』との激戦を乗り越えて、再びメイザース領へ舞い戻るスバルはついに宿敵、大罪司教ペテルギウス・ロマネコンティ率いる魔女教徒と激突する。2016年4月TVアニメ放送開始の大人気WEB小説、絆と決意の第八幕。
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◆登場人物
ナツキスバル(17)……異世界召喚者。『死に戻り』ができる
エミリア……ルグニカ王国の王選候補。ハーフエルフ
パック……猫の姿をした大精霊
ラム……鬼族の双子メイド(姉)。ぺったん
フェリス……クルシュの騎士。ネコミミ亜人の男の娘
ヴィルヘルム・トリアス……クルシュの執事で練達の老剣士
ユリウス・ユークリウス……アナスタシアの騎士。『最優の騎士』
リカード……アナスタシアの傭兵『鉄の牙』。犬人族のコボルト
ミミ&ティビー……『鉄の牙』の副隊長。ネコミミの姉弟

ペテルギウス・ロマネコンティ……魔女教『怠惰』担当の大罪司教

ロズワール・L・メイザース……奇抜な衣装とピエロ風メイクの貴族
レム……鬼族の双子メイド(妹)。家事全般が得意
ベアトリス……禁書庫の司書
クルシュ・カルステン(20)……カルステン公爵家当主で男装の麗人
ラッセル・フェロー……商業組合を取り仕切る会計係
オットー・スーウェン……若い行商人
カドモン……厳つい商売人
ロム爺……盗品窟の主
アナスタシア・ホーシン……カララギの一大勢力、キーシン商会の会長
プリシラ・バーリエル……王選候補。豪華な衣服と尊大な態度が特徴的
アル……プリシラの傭兵。異世界召喚者
フェルト(15)……王選候補。元貧民街育ちの盗人少女
ラインハルト・ヴァン・アストレア……フェルトの騎士。『剣聖の騎士』
エルザ・グランヒルテ……艶めいた雰囲気をまとう美女

◆あらすじ
 ようやくリーファウス街道を霧で塞いでいた白鯨を討伐し、メイザース領へ進むことができた。
 スバルは残りの討伐隊と援軍の傭兵団を加え、一番の要である魔女教狩りに進軍していく。
 仇敵——大罪司教『怠惰』のペテルギウスが待ち受ける茨の道で、今、スバルの力が試されようとしていた。

【目次】
第一章 怠惰一閃
第二章 ——戦え
第三章 帰ってきた意味
第四章 悪辣なる怠惰
第五章 契約の履行
全292ページ

【感情トリガー】
第一章 怠惰一閃
第二章 ——戦え
第三章 帰ってきた意味
 ├突と神隠し【訝】(ハ?)
 ├白影の来襲【喜】(オー!)
 └白紙の親書【謎】(ナゾ)
第四章 悪辣なる怠惰
 └銀鈴の声音【喜】(オー!)
第五章 契約の履行
 ├奇妙な感慨【怪】(ン⁉︎ ナンダロウ?)
 └青年の異変【呆/失】(ッ⁉︎/ソンナァ)

 ヴェロキラプトルのような地竜に騎乗しながら進む隊の筆頭——若い青年が、味方兵を率いて森中を進んでいる。
 その先の村を襲おうとしている異教徒らを警戒しながら、並走する仲間と戦意を鼓舞し合うつもりで会話をしていた。
 その仲間は、以前確執のあった男で、原因をつくった自分に幾ばくか呵責はあるものの、それを素直に認めるには精神が若すぎた。
 が、今は協力し合わなければ凱旋は不可能だろう。
 青年は前方を見遣りながらバツが悪そうに寄り添う言葉をかけていく。
 仲間はただ黙って聞いていた。ノーリアクション。
 相槌のない仲間に苛立った青年は、彼を見遣って確かめた。
 ところが、彼の姿はなく、その後ろに続く地竜の列も消えていた。
 いつのまにか、青年は一人きりになっていたのだ。

 主の領地で奇襲をしかけようとしている組織を征伐するため、17の青年が筆頭となり、討伐隊を率いて森中を行進していた。
 敵のグループをいくつか討伐し、残りの連中を警戒しながら進んでいく。
 道中、幻覚を見せられる術式に嵌り、青年は死にかけた。
 仲間に救われるも、不意に現れた白い影に襲われる。
 青年は白影に拉致されようとしていたが、仲間の攻撃により救われた。
 味方軍の中でも随一の腕利き剣士らが白影と衝突。
 たった一人で
古強者ふるつわものの仲間達と拮抗していることに、青年は瞠目どうもくした。
 小柄な体躯のどこにその
膂力りょりょくが隠されているのか。
 だが、腕利きの剣士が増えたことにより、形勢が変わる。
 白影は潔く敗北を認め、毅然と死を受け入れた。
 凛とした少女の声音に仲間達は動揺を隠せない。
 そこに青年が割って入る。聞き覚えのある声だ。
 フードを外した少女の正体——それは主に仕える仲間のメイドであった。

『死に戻り』で想いびとが襲われることを知っている青年は、下手人どもと戦える同胞を率いて、領地へつづく森中を行進していた。
 道中、白いフードの小柄な少女に青年は拉致されそうになり、味方がそれを阻止した。
 フードの少女は歴戦の古強者たちとも拮抗していたが、数で勝るこちら側に敗北を認め、その正体を現した。
 青年が身を置く屋敷のメイド美少女だ。
 敵陣と思われていたその誤解を解き、死人や大怪我をしたものが出なかったことに安堵する。
 だが、腑に落ちない点があった。
 味方同士の衝突を避けるため、青年は、内情を綴った親書を
あらかじめ使いの者に委託していたのだ。
 確かに親書は屋敷に届けられていたという。内容のない白紙の状態で。
 それは相手に『対話する意思はない』ということを示す
婉曲えんきょく表現。
 発送元が政敵関係者の屋敷からというのも誤想を招く要因だった。
 それと屋敷近辺の不穏な動きが重なり、敵陣が攻めてくると思われたのだ。
 そうなると問題が浮上する。
 同盟を願う領主たちの関係性に、亀裂を入れようと目論む奴がいるということ。
 手紙を白紙とすり替えたその人物とは……。

銀鈴の声音【喜】(オー!)
 艶めいた銀髪の可憐な美少女——人間とエルフの混血令嬢——が、謎大き異教徒らに狙われていた。
『死に戻り』で未来を知っている17の青年は、想い
びとを守るために戦える同胞を率いて、森中に潜む異教徒らと戦闘を交えた。
 序盤は順調にいっていたが、想定外の奇襲により戦況は悪化。
 腕利きの剣士に残堂をまかせ、青年は大将格に挑んだ。
 敵の『視認できない魔手』が見えるのは青年だけ。
 一対一であれば、その脅威は青年に届かない。
 戦闘態勢の仲間達から離れ、入り組んだ森の奥へと大将格を誘いこむ。
 敵の猛威に手傷を増やされながも青年には秘策があった。
 自分の匂いに反応する魔獣の性質を利用した危ない賭け。
 非力な青年の咄嗟の思いつきだ。
 青年は結界を張るのに用いる魔石をひそかに拾っていた。
 結界が破られたことで森奥に棲息する魔獣犬が現れ、大将格に齧りつく。
 獰猛な牙が大将格の生命を奪った。
 これで戦況は覆るはず。
 残りの大将格を討ちとれば勝利は確実だ。
 急いで仲間達の下へと、地を走る愛竜に騎乗して駆けていく。
 やはり大将格はいた。視認できない脅威の魔手を顕現させ、村のすべてを蹂躙しようとしている。そうなれば被害は膨大。
 森を駆け破った青年が味方に警戒をさけんだ。
 すると、凛とした
銀鈴ぎんれいの声音が周囲の鼓膜につきささる。
 敵も味方も呆気にとられて凝然と空を見上げた。
 強力な精霊魔法が展開されている。
 可憐なハーフエルフの美少女——
 青年の想い女によって。

17の青年が筆頭となる討伐隊は、村を襲撃してきた異教徒らと悪戦苦闘していた。
 その窮地に登場したハーフエルフの美少女により、戦況が覆る。
 侍る大精霊との連携魔法により大将格を斃したのだ。
 ようやく想い
びとと再会できて喜ぶ青年だったが、その感情とはまた別物の感慨が沸き起こってもいた。
 青年の傍にいた回復担当の仲間が、この事態を彼女に報せてくれていたようだ。
 その回復担当の仲間のところに、深傷を負っていた別の仲間がやってきた。
 かなりの重症で立ってられるのが不思議なくらいの老剣士。
 青年に大事な報せがあるという。
 しかし、青年は既にそこから姿を消していたのだった。

 17の青年が恋した異世界の令嬢が、ある恐ろしい組織に狙われていた。
 この世界では忌み嫌われる存在——魔女教徒。
 辺境の村近くにある屋敷に、魔女教徒らが襲撃しに現れることを青年は掴んでいた。
 それを阻止するため、腕利きの騎士と傭兵を知人から借りて、機先を制すための作戦にでる。
 
れは上手くいき、領地である森中に潜んでいた魔女教徒の頭領格と出会うことができた。
 飛び出すほどの血走った大きな
四白眼よんぱくがんの男は、常軌を逸するという言葉通りの狂人で、滔々とうとうとのべつ幕なしに愛を語っていた敬虔けいけん者。
『死に戻り』前のルートでは、大切な仲間の命を冒涜した憎き存在である。
 だが同じ
てつは踏まない。青年の挑発に意識を向けられていた魔女教司教は、不意打ちによる騎士の斬撃により絶命した。
 悪戦苦闘を強いられながらも残党を仲間と討伐し、村人や令嬢に迫っていた危険因子を取り払うことに成功する。
 勝利の悦びと令嬢との再会に安堵する青年。
 駆け出した。仲間達からも令嬢からも遠ざかるように森中へと。
 不審に感じた仲間らが青年を追いかけ、引き止めようとする。
 離れろと、切迫した感じで言う青年のセリフが変化した。
 其れは嫌でも耳に残る——魔女教司教のセリフと一緒だった。
 青年は奴の精神に憑依されてしまったのだ。

【刺激された感情の種類:6種
幸福☺️:★★
 喜=思いがけずに恵まれた状況(2)
驚度😳:★
 呆=俄に起こる想定外な事件(1)
思考🤔:★★
 訝=疑問を抱かせる言動や描写(1)
 謎=不可解な問題が提起される(1)
不幸😫:★
 失=土壇場で期待を裏切られる(1)
恐怖😣:★
 怪=様子に違和感を覚える(1)

全体を通してのプロット

人物・世界観の説明
白鯨攻略戦を成し遂げたスバルは、次に待ち受ける魔女教徒の襲撃に備えるため、援軍と作戦会議をはじめる。

問題の広がり・深刻化・窮地
 ペテルギウスとの対峙。
 新たな『怠惰』の出現。
 ペテルギウスによるスバルの躰への憑依。

読了した感想

レムのことを言及されていなかったということは……
 白鯨戦での負傷で離脱しているレム。
 彼女はクルシュの陣営とともに王都へ引き返しております。体力が回復するまでお留守番です。
 スバルは残りの討伐隊を率いて魔女教狩りに攻め入ります。
 ロズワールの領地にある森の中、潜んでいた魔女教徒がスバルの匂いに引き寄せられ、そこを味方軍が叩き潰すというシンプルな作戦。
 そこで思わぬ人物がスバルらの隊に接触してきました。
 白いフードで身を覆っていた桃髪のラムです。
 傲岸な態度はいつものことですが、スバルのことを気にかけてくれる優しい子でもあります。
 喜びの再会を果たし、スバルはレムのことを少し触れておりました。
 でも、ラムは話を聞いていなかったのか、聞き取れなかったのか、それについて言及することはありませんでした。
 そこに違和感を感じてしまいます。
 双子の妹と一蓮托生のラムが、レムの安否を確認しなかったことに。
 もしかすると、すでにレムの存在がなかったことになっているのではないか
 だとしたら腑に落ちない点があります。
 ネコミミの男の娘——フェリスはレムのこと憶えていたから。
 もやもやしますねぇ。

アニメでは見れないラムの繊細な心情
 ロズワールの領地で厄介な動きがあり、厳戒態勢に入っていたラムは、スバルが率いてきた討伐隊を敵陣の襲撃と誤認していました。
 人質のスバルを救い出そうと術式で討伐隊を錯乱させ、その間隙かんげきをついて彼を隊から引き離そうとしたラム。
 ですが、白鯨戦での疲労を残すも、ヴィルヘルムやリカード、ユリウスという強者つわもの揃いが立ち塞がり、ラムによるスバルの救出作戦は失敗します。
 いさぎよく死を受け入れるという侠気おとこぎをみせるラムですが、スバルから誤解だとさとされ、彼らと行動を共にすることに。
 ですが、プライドと自尊心の高いラムは、決してスバルのために行動したとは言いません。むしろ、彼を裏切り者と揶揄やゆしていたくらいです。
 そんなラムでも人間っぽい心情を見せてくれました。
 スバルの愛竜の後ろで同乗していたラムの腕が震えていたのです。
 おそらく、死戦をくぐりぬけたことで緊張感が解け、あとから命を失っていたかもしれないという恐怖感が押し寄せてきたのでしょう。
 アニメではラムとヴィルヘルムたちの戦いはカットされているので、この繊細な描写は残念ながら見れません。

Re:ゼロから始める異世界生活 8
長月 達平(著)
KADOKAWA
2016年3月25日発売
全292ページ

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