スバルの権謀×『怠惰』の執念×新顔の大罪司教
ペテルギウスとの死闘に敗れ、再び時を遡ったナツキ・スバル。他者の肉体を乗っ取る邪悪、ペテルギウスの目論みを打ち砕くために！ 一方、ロズワール邸に残るエミリアも、屋敷周辺の異変に気付いていて――!?
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◆登場人物
ナツキ・スバル（17）……異世界召喚者。『死に戻り』ができる
エミリア……ルグニカ王国の王選候補。ハーフエルフ
パック……猫の姿をした大精霊
レム……鬼族の双子メイド（妹）。家事全般が得意
ラム……鬼族の双子メイド（姉）。ぺったん
ベアトリス……禁書庫の司書
クルシュ・カルステン（20）……カルステン公爵家当主で男装の麗人
フェリス……クルシュの騎士。ネコミミ亜人の男の娘
ヴィルヘルム・トリアス……クルシュの執事で練達の老剣士
ユリウス・ユークリウス……アナスタシアの騎士。『最優の騎士』
リカード……アナスタシアの傭兵『鉄の牙』。犬人族のコボルト
ミミ&ティビー……『鉄の牙』の副隊長。ネコミミの姉弟
オットー・スーウェン……若い行商人
ペテルギウス・ロマネコンティ……魔女教『怠惰』担当の大罪司教
レグルス・コルニアス……魔女教『強欲』担当、大罪司教
ライ・バテンカイトス……魔女教『暴食』担当、大罪司教
◆あらすじ
ルグニカ王国の国王選抜戦が公となってから再び始まった悪夢——
——『死に戻り』。
『失望』から始まり、『絶望』と『憤怒』、そして『希望』の四周目、ようやく魔女教との最終対決、
『喜悦』のループ脱却からは、あと一歩及ばずだった……。
ペテルギウスの『精神憑依』という新たな権能に侵されたスバルは、自分に止めを刺すよう仲間に切願し、そして絶命した。
だが、今回の『死に戻り』はいつもと違った。
白鯨討伐後の世界に記録が更新されていたのだ。
幸いを得たスバルは、完全勝利の作戦を考える。
ペテルギウスの『憑依』への対策。
味方に紛れている魔女教徒の対策。
且つ、王選に悪影響を与えずエミリアを救出する方法を。
——
悪戦苦闘続きの『死に戻り』連鎖もここで潮時。
ついに宿敵——『怠惰』の終わりを見届けよ！
【目次】
プロローグ Re：スタート
第一章 温もりという福音
第二章 お膳立ての舞台裏
第三章 自称騎士と最優の騎士
第四章 怠惰の終焉
第五章 ——ただそれだけの物語
幕間 竜車でのひと時
断章 ナツキ・レム
幕間 イタダキマス
第六章 それぞれの、誓い
全317ページ
【感情トリガー】
プロローグ Re：スタート
第一章 温もりという福音
├憑依の対策【慮】（ｺｳｼﾀﾗ）
└それが最善【察】（ﾏｻｶ…）
第二章 お膳立ての舞台裏
├親書の対策【褒】（ｽﾊﾞﾗｼｲ）
└怪訝な少女【疑】（ﾏﾁｶﾞｲﾅｸ）
第三章 自称騎士と最優の騎士
第四章 怠惰の終焉
第五章 ——ただそれだけの物語
└問題が発生【困】（ﾅﾆ⁉︎）
幕間 竜車でのひと時
断章 ナツキ・レム
幕間 イタダキマス
└全身白の男【唖】（ｯ⁉︎——）
第六章 それぞれの、誓い
『死に戻り』で再び作戦会議の場に復活した17の青年は、前回のルートで得た敵の情報を共有し、その対策を仲間達に相談する。
敵陣の頭領格を最初に斃しても、其れの精神は自分の配下らに次々と憑依し、あげく青年に取り憑いたところを、仲間の慈悲によって殺された。
この事実を基に仲間達の知恵を借り、仮説を立てていく。
憑依魔法には条件があるのではないか。
彼らは魔女教という組織に属する異端者だ。つまり、魔女教と深い繋がりがある同胞のみ、憑依可能なのだと仮定する。
であれば、今回の作戦はこうだ。
頭領格より先に配下の魔女教徒らを全滅させる。
そうすれば憑代を失い、敵の切り札を封じることができる。
しかし、問題はまだあった。
青年も憑代だったという事実。
『死に戻り』の異能と関係があることは確かだが、詳しくは本人も解っていない。
そこで青年は仲間たちに問うてみた。
自分も憑代の対象だとしたら、どんな戦法で臨めばよいか。
——
【自分の対策案】
パターン①
魔女教を引き寄せる青年の囮作戦はこれまで通り続け、現れたらを殲滅する。頭領格と遭遇したら、味方の扱う精霊の魔法で姿を視えなくしてもらう。姿が視えなければ憑依できないという期待で。あとは味方の騎士に滅してもらうだけ。
パターン②
頭領格と遭遇したら精霊魔法で眠らせるか、結界に閉じ込める。殺しちゃうと憑依してくるので。その間に残りの教徒らを全滅させ、憑依できない位置まで青年が離れていく。あとは味方の騎士らが頭領格を屠るだけ。
パターン③
精霊魔法で青年の躰に憑依できないようにしてもらう。あとはなるべく教徒らを優先に討伐していき、最後に頭領格を討ち取る。
ある屋敷には17の青年が恋したハーフエルフの令嬢がいる。
しかし、彼女は殺されてしまうのだ。
これから襲撃してくる魔女教徒の集団によって。
奴輩は屋敷近くの森中に潜んでいることが判っている。
近くの村人もすべて殺されることも。
前回のループで青年は魔女教徒を束ねる頭領格の権能により絶命に繋がった。
奴は自分の精神を他人に移すことができたのだ。
その対象となるのが魔女教徒と青年。
『死に戻り』した青年は、もう一度討伐隊を率いて魔女教狩りに臨もうとする。
前回の記憶を頼りに対策を慮り、行軍した。
仲間が本当にその作戦でいくのかと、確認してくる。
決意は揺らがないと青年は宣った。あとで令嬢に怒られるかもと付け加えて。
——
領内の森中に潜んでいるのは魔女教徒だけではない。
実は、人々に害を為す魔獣犬も棲息している。
だから村を襲われないよう魔石で結界が張られているのだ。
その結界を張っていたのがハーフエルフの令嬢である。
察するに、青年の作戦とは、その結界を敢えて破り、制限のなくなった魔獣犬に魔女教徒らを襲わせようとしているのではないか。
魔獣犬は魔女の匂いに反応し、問答無用で襲撃してくることが判っている。
奴輩が森中で足止めをくらっている間に、村人を安全地帯へ運び出し、屋敷の令嬢を救出しようとする狙いがあるのかも。
また、令嬢には最強の大精霊が侍っている。
過去のループでは魔女教も大精霊のまえでは蚊も同然。
つまり、青年の立案は、足止めしてる魔女教徒らの前に大精霊を立たせることなのでは。
青年は、領主の屋敷と村が犯罪集団に襲撃されることを認め、使者にその親書を届けさせていた。
何者かによって中身を白紙とすり替えられていたとも知らずに。
集めた討伐隊を率いて領内へと行軍していた青年は、屋敷の番犬もといメイドの美少女に襲われるという事態が起きた。
青年が連れてきた討伐隊を敵陣と誤解されていたのだ。
原因は白紙の親書。宣戦布告を示唆する意味がある。また、手紙には政敵関係者の家印が入っていた。討伐隊を借りるために青年が交渉した領主の。
そのせいで無駄な時間を使い、敵に機先を制すチャンスを逃してしまったのだった。
『死に戻り』で青年は再び犯罪集団の悪業を防ごうと策謀する。
既に親書を送ったあとから始まってるため、メイドからの襲撃という二の舞が待っている。
この問題を解決する必要がった。
なぜメイドは領内に踏み込む討伐隊の進軍に気付けたのか。
それは彼女の持つ『千里眼』によるもの。自分と波長の合う生物の眼を通し、視ることができる索敵能力。
すでに討伐隊を行軍させていた青年は、四方八方に掲げている。白紙は間違いだったと釈明する文字が書かれた大きなパネルを。何処からかこちらを視ているメイドに向けて。
鬼族である双子妹を侍らす青年は、知己の領主から借りた討伐隊を率いて魔獣の討滅を果たした。
その負傷で双子妹は王都で療養することになり、青年は次なる問題に突き進む。
領主の屋敷にいる双子姉と想い女の救出だ。
残りの討伐隊を率いて領地に行軍していた青年は、偵察していた双子姉と合流する。
彼女も領内に潜む良からぬ存在の影を感知していたのだ。
青年の作戦に協力を肯いてくれた双子姉。
合流してから一度も妹の安否を言及してこなかったことに青年は気づいていない。
そのまま作戦の実行に入り、屋敷を襲おうとしていた魔女教の集団に敗れて青年は絶命する。
『死に戻り』で復活した青年は、再び双子姉と合流した。
侍女でありながらその口調、態度はどこか尊大で、いつも青年には容赦ない皮肉を浴びせてくる意地悪な性格だが、妹への家族愛は堅強である。
村人たちの避難を手伝ってくれる双子姉に、青年は迎合的な感謝を述べた。
語尾に姉様と付け加えて。
双子姉は怪訝に首を傾げて、村の方へ行ってしまった。
——
今回も双子姉は妹の名前を出してこなかった。姉妹の絆の強さは知れているのに。
姉様という言葉にも違和感を持っていた描写から、やはり、記憶から完全に抹消されてしまっている。
その原因は序盤で戦った魔獣の霧と思われる。消滅型の霧を直撃すると、その人の存在自体が残された人の記憶から消されてしまうのだ。
双子妹は生きているし、負傷した他の討伐隊といっしょに王都へ戻っているはず。
なのに、なぜ妹の存在がなかったことになっているのか……それは謎。
問題が発生【困】（ﾅﾆ⁉︎）
ある領地が敵陣の襲撃に見舞われようとしていた。
討伐隊を編成した17の青年は、事前に村人を非難させ、近くで潜伏していた敵陣を全て駆逐してみせた。
悪戦苦闘の末、ようやく辿り着いたハッピーエンド。
一人も死者を出さなかったことに安堵と悦びを覚える。
あとは最後の問題さえ解決すれば一段落つくだろう。
村人と一緒に非難している想い女との和解だ。
そんな折、仲間が神妙な様子で呼んできた。
不穏な気配から嫌な予感が過ぎる。
村人の避難に同行していた仲間から報せが届いたようだ。
非難用車から、不審な点がみつかったと。
それが事実なら想い女が危ない。
全身白の男【唖】（ｯ⁉︎——）
宙を遊泳する巨大な魔獣——白鯨を討伐するという悲願を果たし、頭首である緑髪の女傑は、生き残った兵らと共に王都へ凱旋していた。
ところが、味方が乗っている先方の竜車が突然崩壊した。
御者も竜車も搭乗者も粉微塵となる凄惨な光景。
その向こうに無防備をさらす人影がある。
敵襲とみるや、女傑は、そのまま轢き殺すよう命じた。
激突寸前で竜車から飛び降りる。
地竜と荷台が破砕した。が、轢殺されたはずの男は無傷だった。
女傑は眼前に佇む白髪の男に敵愾心を抱きながら正体を訊ねる。
白い服を纏う飄々とした男は質問に応えず、先の暴挙に対する批難を浴びせてきた。
御託を並べ続ける男に痺れを切らし、女傑が不可視の一太刀を振るう。
見えない斬撃の圧倒的な殺傷力により、男は絶命……するはずだった。
ありえないことに相手は無傷で平然としている。
向こうが体勢を変えてきた。腕を振り上げると風が巻き起こる。
宙でクルクルと回る物体が目に入った。
それは肩から切断された女傑の腕だった。
【刺激された感情の種類：6種】
賛美🥳：★
褒＝解決策に納得する（1）
驚度😳：★
唖＝俄に起こる想定外な事件（1）
思考🤔：★★★
慮＝悪い状況の打開策を考察（1）
察＝ヒントから展開の予測がつく（1）
疑＝疑惑を確信する証拠や傍証（1）
不幸😫：★
困＝目的に支障を来たす報せ（1）
全体を通してのプロット
【人物・世界観の説明】
エミリアの居るメイザース領に魔女教の脅威が迫っていた。
療養目的でカルステン公爵邸に滞在していたスバルは、『死に戻り』を繰り返し、帰路を妨げる巨大な魔獣『白鯨』の討伐を果たしてみせた。
クルシュとアナスタシアから編成した残りの討伐隊を率いり、スバルは一番の目的である魔女教の殲滅に臨むのだが、大罪司教ペテルギウスの想定外な権能により、あと一歩のところで命を失った。
スバルはいつものように 『死に戻り』を繰り返す。
白鯨討伐後の世界——魔女教攻略戦のブリーフィング中に。
ペテルギウスの新たな権能と、味方に紛れた魔女教徒を事前に知れた有利性を活かし、スバルは再び魔女教の駆逐に臨んでいく。
【人物の葛藤・苦しみ】
「魔女教を呼ぶ疫病者」と畏怖されているエミリアを戦場から遠ざけるため、スバルは仲間と芝居打って村民と一緒に彼女を非難させる。
ペテルギウスの新たな権能『憑依』への攻略戦を開始する。
【問題解決に向かう最後の決意】
王都に向かっているエミリアの竜車に、爆発物が仕込まれていた。
スバルは『言霊の加護』を持つオットーの協力を借り、爆発物の除去に向かう。
【問題解決への行動】
爆発物からエミリアの命を守る。
【次に待ち受ける問題】
白鯨討伐後、スバルと別れて王都へ帰還していた道中、クルシュ陣営の前に大罪司教『強欲』と『暴食』が現れる。二人の襲撃後、重傷を負わされたクルシュは記憶喪失に、同行していたレムは意識不明に。
また、エミリアの記憶からもレムの存在は消えていた。
スバルは、レムの意識と失った存在の証を取り戻すため、新たな大罪司教との対決を心に誓う。
読了した感想
◆蟠りが残る二つのミステリー
一つは『白紙の親書』。
魔女教の接近を報せる内容が書かれているはずなのに、何者かの仕業で白紙とすり替えられておりました。
送り主はスバル。そのときクルシュの屋敷に滞在していたので、依頼した使者は、おそらくクルシュに仕える者と想定できます。
その使者は、ラムの計らいで屋敷に軟禁しているとのこと。
スバルとの交渉で同盟を結んだクルシュの謀とは思えません。
使者が白紙にすり替えた犯人なのでしょうか？
ですが、スバルがエミリアやベアトリスを非難させるために現れたとき、軟禁している使者のことには一切触れておりませんでした。
そこがミステリーですよね。
二つ目は、やはりレムの存在が忘れ去られていること。
今回、新たに登場した大罪司教『暴食』と『強欲』の権能なのかと思いがちですが、白鯨討伐後から既に存在消失の伏線が二度ありました。
ラムが一切、レムのことを気にかけていなかった所です。
レムのことを話題に出したスバルの言葉をスルーし、姉様とスバルに呼ばれたことを怪訝に感じたりと、明らかにラムも忘却してるでしょう。
『暴食』と『強欲』に襲われたレムは、現在意識不明でロズワール邸の自室で寝かされています。対して、レムと同じく襲われていたクルシュについては記憶喪失です。
この症状の違いは何なのか？
誰の権能で、どんな能力なのかまだ不明でミステリー。
『Re：ゼロから始める異世界生活 9』
長月 達平（著）
KADOKAWA
2016年9月23日発売
全317ページ
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