
怪奇事件×都市伝説×霊媒師
幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。正体不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのだろうか? 愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん”の魔の手から、逃れることはできるのか……。怪談・都市伝説・民俗学――さまざまな要素を孕んだ空前絶後のノンストップ・ホラー!!
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◆登場人物
田原秀樹(36)……東京の製菓メーカーの営業部
田原香奈(33)……秀樹の妻
田原知紗(2)……秀樹と香奈の娘
高梨重明……秀樹の一つ下で部下
唐草大悟(36)……民俗学の准教授。秀樹とは学生時代の友人
野崎昆(32)……オカルトライター
比嘉真琴(26)……ボランティアでやってる女性霊媒師
岩田哲人……唐草のゼミの大学院生
◆あらすじ
営業回りから戻って来た秀樹は、部下から来客が来てると報された。
秀樹の娘について話があるという。名前まで知っていた。
誕生するまで黙っていようと妻と決めていたのに。
相手は若い女性。それすらも部下の記憶は曖昧だった。
その上、来客がどこにも見当たらなかった。
そんな混乱する彼の異変に秀樹は気づく。
部下の白シャツが血で真っ赤に染まっていたのだ。
後に彼は救急車に運ばれ、入院することになった。
腕に残された原因不明の噛み跡。
なのに着ていたシャツは無傷だったという謎。
説明のつかない怪奇事件。
秀樹は、ある記憶と結びつけた。
中学三年のときに祖父の葬式で聞いた怖い都市伝説。
それが来たら、絶対答えてはいけない、開けてはいけない。入られてしまうと捕まって山へ連れてかれるという。
其れの名は『ぼぎわん』だと、生前の祖母は言っていた。
小六の、まだ祖父が存命していた時期に、秀樹が遭遇しかけた謎の女性とも類似していた。
そして、危惧していたことが起きてしまう。
娘が二歳になる少し前、秀樹が帰宅すると部屋が何者かに荒らされていた。
その時、妻は娘を抱きながら何かに怯えていた。
家の電話が鳴り、留守電に切り替わると女性の声がした。
夫妻の名前を呼んでいる。祖母の名も。
『ぼぎわん』に間違いない。
秀樹は民俗学の准教授を通じて、怪奇専門作家と若い霊媒師の女性と邂逅する。
——
なぜ秀樹の家族だけが狙われているのか?
『ぼぎわん』の名前の由来とは?
都市伝説の発祥の地で、かつて何が起きていたのか?
ミステリーが絡む恐怖の化け物退治が開幕!
【目次】
第一章 訪問者
第二章 所有者
第三章 部外者
全349ページ
【感情トリガー】
第一章 訪問者
├神妙な祖母【訝/仮】(ハ?)(モシカシテ)
├謎の来訪客【訝/謎】(ハ?)(ナゾ)
├留守番電話【怖】(ゾッ トスル)
├妖怪の対策【呆】(……)
├奇怪な電話【唖】(ッ⁉︎——)
├逢坂さん?【訝】(ハ?)
└霊の悪知恵【察/悲】(マサカ…)(ナンテコッタ!)
第二章 所有者
├危急の報せ【困】(ナニ⁉︎)
└黒い撫偽女【竦】(ッヒ)
第三章 部外者
└伏在する敵【定】(ヤッパリ)
夏休み、小六の少年が一人で祖父母の家に訪れていた。
認知症で寝たきりの祖父がいる居間で、少年は漫画に読み耽っている。
ピンポンという音に少年が反応した。
近所の集まりに参加している祖母なはずはない。
中年以上の女性の声で、祖母の名前を出してきた。
いないと答えると、祖父の名前も出してきた。
少年は、ドアのガラス越しに見える灰色の人物にゾッとする。
ドアに近づき、何度もしつこく呼んでくるのだ。
すると、「帰れ!」と怒声が耳をつんざいた。
驚いて祖父の方を見遣り、またドアへと振り返る。
灰色の人物は消えていた。
祖父に呼ばれる。
あれは開けてはいけない。答えてもいけない。
認知症が嘘みたいに明瞭と話していた。
そこからの遣り取りは奇妙なことに覚えていない。
祖母が帰宅したときには、いつもの祖父に戻っていた。
中学三年のときに、祖父の葬式が行われた。
その時、祖母から怖い話を聞いていた。
生前の祖父が言っていた、恐ろしい言い伝え。
小六の時に体験した不気味な訪問客と類似していた。
その通夜の帰り、祖父母の家に泊まったのかは覚えていない。
社会人になった息子は、結婚相手と共に実家へ帰省した。
だいぶ高齢となった祖母は、既に両親の家へ移っている。
祖父の仏壇前にいた祖母から、嫁を大切にするよう訓示を聞かされた。
食事に誘ってみると、祖母がこちらを凝然とみつめてくる。
神妙な様子でこちらの名前を確認してきた。
なぜか、それからの記憶が不鮮明だった。
/
なぜ、祖母は孫の名前を確認したのか?
なぜ、少年の記憶に欠損がみられるのか?
あの不気味な訪問客と関係があるのか?
少年は禁忌と知らずに答えてしまっていた。
もしかして、少年はその霊に取り憑かれているのかも。
もう一つの仮説は、少年の中にもう一人の人格がいるというもの。
一人称で語られるモノローグで、『わたし』を使っているから。
叙述トリックで見られる技法だ。
女性にも男性にも使える一人称。
祖母は、多重人格に気づいているのかも。
妻の妊娠手続きを終えたころの昼下がり、営業回りから会社に戻った夫を部下が呼び止めた。
夫に来訪客が来てるという。〇〇さんについて話があると。
胎児の娘の名前が出てきて夫は驚いた。
病院の関係者かと思い、すぐにロビーへ出向く。
が、どこにも来訪客は見当たらない。
部下に訊ねると、若い女の人としか判らなかった。
ついさっきの出来事なのに、他の特徴が思い出せないようで。
逆に部下から『〇〇さん』のことを尋ねられた。
夫は奇妙な違和感に気づく。
子供の名前は生まれてから報告しようと妻と決めている。
まだ誰も娘の名前を知らないはずだ、と。
/
心配になり、夫はその場で妻に電話を掛けた。
眼前で暑がりの部下が、脱いでいた上着に袖を通そうとして——
妻が電話に出るまえに瞠目した夫が部下に訊ねた。
右腕の肘辺りが真っ赤に染まっていたのだ。
部下も自分の白シャツを見るなり驚いた。
広がっていく赤いシミ——血だ。
その腕に触れた部下が苦痛の悲鳴を上げた。
いったい、なにがあったというのか。
夫はすぐに救急車を呼び、部下が運ばれていくのを見届けた。
とある町に伝わる怖い怪異談。
ソレが訪ねて来たら開けてはいけない。答えてもいけない。
破れば捕まり、山へ連れ去られてしまう。
二歳の娘と妻を持つ夫は、小六のときに遭遇していた。
一人で遊びに行った祖父母の家に、不審な女が訪ねて来たのだ。
理由もなく、ただ祖父母が居るかとしつこく訊いてくる女に、ドアの前で少年の頃の夫は立ち竦んでいた。
認知症の祖父が「帰れ!」と叫ぶと、女の影は消え、またボケてる祖父に戻っていた。
その体験が今も夫の心のシコリとなっている。
家に幾つもの護符を飾り、悪いものから家族を守ろうといつも不安だ。
仕事から帰宅すると、なぜか部屋の明かりは点いていなかった。
妻と娘が見当たらない。
明かりを点けると、飾ってあった護符が破られて床に落ちていた。
キッチンでうずくまっている妻を発見した。娘は眠って抱えられている。
妻は恐怖でまともに会話ができなかった。
その様子に、夫は誰かが訪問してきたのだと察する。
妻の動揺からも間違いない。
まずは安心させようと娘を預かり、妻を立たせて寝室に向かう。
電話音が鳴っているが、今はそれどころではない。
留守電に切り代わり、ピーという音が発せられた。
『もしもし』と女の声。『〇〇さんは居ますか』
とっくの昔に他界した祖父の名前だ。
小さな娘と妻が自宅で怪奇現象に襲われたのを契機に、営業マンの夫は、その正体と対策を調べることにした。
都市伝説に詳しい友人によると、『妖怪』が一番蓋然性のある答えだった。
それは江戸時代以前から存在し、捕まると山へ連れてかれるという。
訪問に開けてはならない。質問に答えてはならない。
禁忌事項は亡き祖父から聞いた話と一緒だ。
その友人から紹介してもらったオカルトライターと対面し、科学では説明つかない災厄に困っていることを伝えた。
悪霊などを祓う専門家を知っているらしく、夫はライターの案内についていく。
住宅街のある雑居ビルに入り、鍵が開いていたドアを勝手に開けて入っていく。
居間で寝ていた派手な頭髪色の若い女性が起き、酒の匂いをぷんぷんとさせながら顔を洗いに夫の側を通っていった。
除霊師や祓魔師といったイメージとはかけ離れているなと、夫は呆気にとられた。
乱雑に散らかる部屋と女のガサつさは日常らしく、ライターは平然と夫の悩みの要点を説明した。
話を聞いた女性は、その『妖怪』への対策が分かるという。
怖い妖に窮していた夫へ、女性は告げた。
「家に帰って奥さんとお子さんに優しくしてあげてください」と。
営業マンである夫は、怖しい怪奇現象に悩まされていた。
幼い頃に遭遇した謎の女。実体のない虚像が家を訪ねて来て、家族の名前を出し、居ますか居ますかと何度も扉の向こうから訊いてくるのだ。
決して開けてはいけないし、答えてもいけない。
其れが最近になってまた現れた。
家に飾ってある護符が破られ、留守番電話に奴が掛けてきたのだ。
未だに小さな娘と嫁も怖がっている。
夫は藁をも縋る思いで知り合いから紹介された霊媒師の女を頼った。
昼の店で霊媒師と対面し、これからお祓いに挑戦してもらう。
夫に取り憑いている妖を呼びよせた。
お店の電話が鳴り出す。
電話に出た店主が夫の名前を呼び、カウンター越しに受話器を渡した。
既に他界している祖母の名前がメモに書いてある。
間違いない……奴からだ。
声を聞くだけなら問題はないと霊媒師は言っていた。答えなければ大丈夫だと。その間に霊の隙を窺い、封じてみせると。
受話器から聞こえてくる声に聞き覚えがある。
亡いはずの祖父、祖母、そして幼いころの自分、最近の自分……。
盗聴していたかのように再現している。
声がしなくなると、突然店内が色めき立った。
他の客たちが唖然と硬直している。
夫が座っていたテーブル席。そこで正気を失くした霊媒師が、口を半開きにして椅子にもたれていた。
根本から切断された、右腕を床に転がして……。
厄介な霊に取り憑かれていた男は、若い霊媒師の女性を頼り、診てもらうことにした。
彼女でも手に追えないほど強力な悪霊らしい。
姉でないと除霊はできないという。
だが、霊媒師の姉は現場から離れており、直接お祓いすることは不可能。
そこで姉の代行となる住職を紹介してもらうことにした。
お姉さんのお墨付きなので信頼できるだろう。
が、一人目、二人目と、男に取り憑く霊の強大さに誰もが辞退していく。
了承してくれたのは五人目の霊媒師だった。
益体もない話をべらべらとよく喋る膨よかな中年女性が、男に取り憑く悪霊を封じ込める作戦にでる。
それは八月のまだ明るい飲食店の中で行われ、敢えなくその霊媒師は悪霊によって腕を切断された。
同じ店にいた男は、自分の家族を危惧し、自宅へ急行した。
タクシーの中から嫁に電話を掛けた男は、すぐに家から離れろと警告する。
自宅に来ていた若い霊媒師の女性も、嫁に付いてくれると請け負ってくれた。
幾許かの安堵も束の間、男の携帯が鳴り出す。
警戒しながら電話に出ると、相手は若い霊媒師の姉からだった。
姉妹の共感覚で事態の深刻さを感知したらしい。
スピリチュアル的な力によるものなのか。
男は、病院に運ばれた中年の霊媒師の安否が気になり、電話で繋がってるお姉さんに尋ねてみた。
彼女なら同胞の様子を不思議な力で窺えるかもしれない。
沈黙の間が空き、お姉さんは訊いてきた。
「どなたですか? その人」と。
嫁と娘を別の場所へ避難させ、夫が自宅に戻って来た。
電話で繋がってる霊媒師の指示に従い、悪霊への対策に行ずる。
部屋の鏡をすべて割り、塩水を張ったお椀をいくつも床に並べた。
すると、家の固定電話が鳴り、留守電モードに切り替わる。
迫った声が夫に呼びかけて来た。
しかしおかしい。今も携帯で話している霊媒師の女性からだったのだ。
今すぐ家から逃げてくださいと言っている。無理な状況なら、あるだけの包丁を持って鏡台の前にいてください、と。
その悪霊は包丁と鏡を忌やがるのだと。
一方、携帯からは「電話に出ないでください」「耳を貸さないでください」「それは罠です」と警告される。
どちらも同じ声、同じ人物。
どちらが本当の霊媒師の女性なのか、判断ができない。
留守電が途切れると、携帯の方の霊媒師が「これで安心です」と言ってきた。
なにも信用できない。このまじないも。
霊媒師が続けた。
「わたしも知恵をつけたんですよ」と。
/
夫はすぐに家から飛び出そうとした。
が、床に配列されてたお椀にぶつかり、塩水をぶちまけながら転倒してしまう。
遅まきながらも夫は悟った。
すべて謀られていたのだ。包丁を片付けさせ、全ての鏡を割らさせ、逃げ出せないように塩水のお椀を配置させ……。
霊媒師を装って携帯に掛けてきた——悪霊によって。
自宅マンションに戻ると、顔を何かに酷く齧られて夫は死んでいた。
夫を通じて知り合った若い霊媒師の女性と、その連れのオカルトライターの男が、その後も度々家に顔を出して二歳の娘と遊んでくれている。
夫を助けてあげれなかった罪悪感だろうか。
そんなもの、妻には一切なかった。むしろ喜んでさえいる。
とっくの前に、夫への愛情は無くなっていたのだ。
風邪で困っていても自分で何とかしろと助けてくれない。
子供が作れなかったら問題は君にあると鼻っから決めつける。
死ぬ思いで出産したのに優しい労いの言葉もない。
育児で睡眠不足なのに育児の勉強を強要してくる。
子供が目の前で大怪我しても突っ立ったまま。
妻は夫のモラルハラスメントに限界だった。
悪霊はそういう隙間につけこむと、仲良しの霊媒師は言う。
彼女は夫婦の関係が良くないことに気づいていた。
度々遊びに来てくれるのはそのためだと彼女は認めた。
リビングで彼女と話していると、携帯が鳴る。
彼女はスピーカーにして妻にも聞かせた。
相手はオカルトライターの男からだ。
危急の報せだった。
俺たちはハメられていた。あの悪霊の伝承は他にもあった。
家族の声色を使って子供を連れ去ることもあると。
娘さんは、今まさに狙われていると。
なぜか都市伝説の悪霊に狙われてしまったある家族がいた。
夫は、妻と小さな娘を守るために情報収集や霊媒師を頼ってみたが、長い黒髪で顔を隠した女の化け物が自宅に現れ、顔を食われて殺された。
その後、霊媒師の若い女性が毎日のように妻の自宅を訪れ、二歳の娘の遊び相手になってくれている。
ところが、事件はまだ終わっていなかった。
悪霊は夫だけでなく、娘も狙って来たのだ。
開いていたベランダから娘を操って連れ出そうとしたのを霊媒師が阻止する。
しかし、悪霊の力のほうが強かった。
霊媒師は何とか娘さんを妻に渡し、夫妻の自宅から逃がした。
霊媒師の安否は分からない。妻が最後に見た光景は、ベランダの窓に飛び散る彼女の血飛沫だった。
とにかく追ってくる悪霊から離れるため、妻は娘を連れて新幹線に乗った。
娘が催したので個室トイレにつれていく。
ドアがノックされた。妻の名前を呼んでいる。何度もなんども。
恐怖に怯える妻と泣きじゃくる娘。
ドアを開ければ連れて行かれる。この世ではない……。
妻は所持していた組紐でドアと個室内の出っ張りを固く結びつけた。
すると悪霊の声が変化した。
霊媒師からの組紐が効いているのかもしれない。
途切れ途切れの言葉から、妻は推測して聞き取った。
『開いているだろ、裏が』
便器の蓋が開け放たれた。
血に染まった長い腕が伸びてくる。
ごぼごぼ、ごぼごぼ。
長い黒髪、小さな頭、長い首が這いずり出て来た。
伏在する敵【定】(ヤッパリ)
妻と小さな娘を守るため、夫は学生時代の友達が居る大学を訪ねた。
民俗学を研究してる准教授になっていた友達によると、家族が遭遇したソレは、江戸時代以前から存在したと思われる妖怪だという。
神出鬼没に標的の下を訪ね、捕らえて山へ連れさるのだそうだ。
決して開けてはいけない。答えてもいけない。
その他の対策については不明。
夫は藁をも縋る思いで寺の護符を買い集め、自宅に飾るようにした。
しかし、ダメだった。目の前で護符が切り裂かれ、家の侵入を許し、夫は顔を食われて亡くなった。
今度は、妻と娘が狙われている。
夫が殺されて間も無いのに、妻は夫の友達から食事に誘われていた。
断るのもこれで三回目。
妻は今も家族を狙った妖怪に怯えながら暮らしている。
生前の夫が連れて来た若い霊媒師の女性と、その恋人のオカルトライターがたまに遊びに来て、娘の面倒を看てくれていた。
だが、霊媒師の女性が居たのにも関わらず、また妖怪が自宅に現れた。
そのとき、霊媒師の携帯のスピーカーでオカルトライターが言っていた。
准教授にハメられた——と。
オカルトライターの男は、民俗学の准教授を介して心霊現象に悩む夫と知り合い、恋人の霊媒師を紹介した。
何度か親子の自宅を調査するうち、自身もその妖怪に興味を持った。
実際に店で腕を齧り千切られた中年女の霊媒師や、自宅で顔を酷く食われた夫の遺体を目の当たりにし、この妖怪の恐ろしさを痛感してしまう。
何か対策はないものなのか。
ライターは准教授からまたご利益のある護符を預かった。
亡くなった友達の奥さんに渡して欲しいと。
何やら下心が見え隠れしていた。
同大学で、自分の雑誌を読んでくれてる大学院生の男と知り合った。
件の妖怪について話し合っていたとき、大学院生が”あるモノ”に気づく。
准教授から預かっていた護符だ。
しかし、用途が逆転するものだという。
『魔導符』と呼ばわれ、悪いモノを呼びせるものだと。
【刺激された感情の種類:11種】
驚度😳:★★
唖=俄に起こる想定外な事件(1)
呆=期待とは違った興醒めさせる展開(1)
思考🤔:★★★★★★★
訝=疑問を抱かせる言動や描写(3)
謎=不可解な問題が提起される(1)
定=察した予想がピタリと一致(1)
察=ヒントから展開の予測がつく(1)
仮=知り得た情報からある仮説が立つ(1)
不幸😫:★★
困=目的に支障を来たす報せ(1)
悲=既に手遅れな不測の事態(1)
恐怖😣:★★
竦=視線を向けられる恐怖の対象(1)
怖=悪い予感を感じる無気味さ(1)
全体を通してのプロット
【人物・世界観の説明】
生前の祖父母が言っていた都市伝説『ぼぎわん』に、小六の秀樹は遭遇していた。
訪問に開けてはいけない。答えてもいけない。破れば山に連れてかれるという怖い存在。
それから時は経ち、製菓メーカーの会社で働いていた秀樹の下に、奇妙な来客が現れた。姿を見せずに立ち去った謎の女性。
なぜかまだ誰にも告知していないのに娘の名前を知っていた。
謎の女性の対応をしていた部下が、原因不明の噛み跡を残され、その後、どんどん容態が悪化していく。
秀樹はこの怪奇事件を『ぼぎわん』と無意識に結びつけ、家族を守るために寺の護符を買い集めて家に飾っている。
【物語が始まる起点・問題】
娘が二歳になる少し前、『ぼぎわん』が二十五年越しに秀樹の下を訪れる。
【発生した問題への対処】
『ぼぎわん』の対策を調べるため、大学で民俗学の准教授を務める中学時代の友人を中る。
【問題の広がり・深刻化・窮地】
友人の紹介で、怪奇専門作家の男と慈善で霊媒師をしている若い女性と知り合う。
調査で怪奇専門作家と霊媒師が家に訪れているとき、家族も居るなか、『ぼぎわん』が再びやってくる。
『ぼぎわん』の脅威を知った霊媒姉妹の姉から助っ人を紹介してもらう。
秀樹は霊媒師の指示で『ぼぎわん』の退治を試みるが、不測の事態に窮してしまう。
追って来た『ぼぎわん』に娘を連れ去られてしまう。
【人物の葛藤・苦しみ】
オカルトライターと霊媒姉妹の姉が、『ぼぎわん』に狙われる原因を探りに秀樹の両親の調査をしていく。
民俗学の准教授から貰っていた文献のコピーから、『ぼぎわん』の発祥の山をオカルトライターが推測し、霊媒姉妹の姉と調査しに向かう。
【問題解決に向かう最後の決意】
霊媒姉妹の姉が、『ぼぎわん』を誘い出す作戦にでる。
【問題解決への行動】
誘い出した『ぼぎわん』と戦い、秀樹の娘を助け出す。
読了した感想
◆第一章が一番面白い!
江戸時代以前から言い伝えられていた都市伝説『ぼぎわん』。
なぜか秀樹とその家族だけが狙われる理不尽性が怖い。
幽霊が出る場所に入ったとか、知らずに封印を解いてしまったとかではなく、いきなり自宅や会社を訪ねてくるのです。
秀樹の主観で描かれる第一章では、『ぼぎわん』の怖しさが一番刺激される内容となっております。
一般的な悪霊との違う点は、悪知恵を働かせてくるという点でしょう。こちらを騙したり、誘導してくるのです。
物語の進行性も割とスムーズで、ホラー度も文句なしですね。
◆第二章からガクンとペースダウン
秀樹の妻——香奈の主観で描かれる章では、回想に入っていきます。
第一章ではほとんど出てこなかった妻と子供とのやりとり。家族を愛してると言いながら、あらすじメインで二人はモブキャラも同然でありました。
それがここの回想で出て来ます。
一旦、『ぼぎわん』への恐怖を置いといて、香奈の秀樹に対する心情が語られているのです。
『ぼぎわん』に狙われる理由が、この章で見えて来ます。
その分、物語の進行が緩くなるのはしょうがないですね。
◆第三章、恐怖から勇気に変わる
『ぼぎわん』にまつわる都市伝説の謎がここで解明されます。
そして、秀樹の家族を助けようしてくれている霊媒師の真琴と、怪奇専門作家の野崎との関係性も。
野崎の主観である第三章で、ようやく本命の霊媒師——真琴の姉——琴子が登場します。
警察の上層部ともパイプがある影の暗躍者といったところ。
そんな彼女が『ぼぎわん』を退治しに来てくれたのです。
なんと心強いことでしょう。
『ぼぎわん』と戦う勇気が出て来ますね。
◆終わっても謎の言葉が気になる
『ぼぎわん』の発した呪文のような言葉。
「ちがつり」「さおいさむあん」
これに関しての説明はありませんでした。
おそらく、比嘉姉妹シリーズへの伏線なのでは。
物語のエピローグで秀樹と香奈の娘——知紗が寝言で呟いていた言葉も「さおいさむあんちがつり」でした。
『ぼぎわん』は滅んでいないという暗示なのかも。
『ぼぎわんが、来る 比嘉姉妹シリーズ』
澤村伊智(著)
KADOKAWA
2018年2月25日発売
全349ページ
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