
十歳の軍神令嬢×料理好きのロリコン皇帝
婚約者の王太子から処刑を言い渡された令嬢・ジル。だけど死ぬ間際に、6年前婚約が決まったパーティーに時間が戻る。
破滅ルートを避けるべく、とっさに後ろにいた人に求婚すると最大の敵だった皇帝・ハディス!? 彼が闇落ちする未来を知っている……慌てて撤回するも、喜んだハディスはジルを城へ連れ帰り、ごはんを作る始末。胃袋をつかまれたジルは決めた。
「あなたを必ず更生――いえ、しあわせにします」 いざ、人生やり直し!
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◆登場人物
ジル・サーヴェル……サーヴェル侯爵家の軍神令嬢
ジェラルド・デア・クレイトス……クレイトス王国の第一王子。ジルの婚約者
フィリス・デア・クレイトス……ジェラルドの妹で第一王女
ハディス・テオス・ラーヴェ……ラーヴェ帝国の美しき皇帝
ラーヴェ……ハディスに侍る竜神
ベイル……侯爵。ベイルブルグの領主
スフィア・デ・ベイル……ベイル侯爵の前妻の娘。皇后候補の一人
ジーク……北方師団の兵士
カミラ……北方師団の兵士。オネエ
ヴィッセル……皇太子でハディスの兄
【目次】
序章
第一章 発令、竜帝攻略作戦
第二章 恋と心中、索敵開始
第三章 ベイルブルグ軍港奪還戦
第四章 お菓子と槍と剣の強襲
第五章 愛と理の竜帝攻防戦
終章
全267ページ
【感情トリガー】
序章
第一章 発令、竜帝攻略作戦
├求婚の承諾【草】(イヤイヤ)
└小さな軍神【凄】(スゴッ!)
第二章 恋と心中、索敵開始
└胃袋を掴む【嘲】(ハハ)
第三章 ベイルブルグ軍港奪還戦
└二人の初夜【僻】(ケッ)
第四章 お菓子と槍と剣の強襲
第五章 愛と理の竜帝攻防戦
終章
貴族の令嬢が婚約者に殺された。
だが、彼女は六年前の誕生日パーテイーの席でなぜか目覚めた。婚約するきっかけとなった十五歳の少年の。
破滅的な未来を避けるため、令嬢は婚約者だったその王子から隠れることにした。しかし、王子に見つかり、妃になって欲しいと求婚される。
無碍に拒めば王国への叛意を疑われかねない。かといって、恋人がいるというのも無理がありすぎる。今は十歳の少女なのだから。
令嬢は一旦王子から逃げた。彼が手を引くほどの身分高い男を求めて。
王子に追い詰められてしまった令嬢は、とっさに掴んだ男を示し、自分の結婚相手だと嘯いた。一生幸せにすると公然と宣って。
城内の参加者たちの視線を浴びる中、掴まれてた男は令嬢からの求婚を承諾する。
意外な反応に戸惑う令嬢。そして、その声に聞き覚えがあった。
六年後に戦いを交える敵対国の皇帝……。
令嬢の前で恭しく傅き、見目麗しい若きその男から真剣な面持ちで伝えられる。
求婚をお受けしよう。どうか僕を幸せにしてくれ、と。
婚約者に殺され、婚約する前の小さな自分に時間遡行した令嬢。
過去の失敗から問題の王子をなんとか往なし、九歳も年上の皇太子に求婚した。
生前では隣国の敵として令嬢と戦を交えた相手でもあった。
その時の冷酷無比さとは打って変わり、小さな令嬢の申し出を快諾したのは意外だった。
だが、王子は引かず、強引に娶ろうと迫ってくる。
皇太子は令嬢を連れて、自国へと船で渡航した。
小さな少女と青年との奇妙な婚約が成立したとき、船が攻撃を受けた。
敵襲を警戒し、皇太子は令嬢を抱えて甲板に出た。
突然、皇太子が膝をつき、倒れだす。太陽を浴びすぎてしまったと。あとは頼むと、自分が侍ている可愛い竜神に令嬢を託し、眠りにつく。
あれだけ大事にするとか絶対守るとか言っておいて……。
彼に呆れと憤りを感じる令嬢だが、巻き込んだのは自分であり、また幸せにすると約束したのも自分。彼女は竜神の転移を拒み、皇太子を守るために立ち上がる。
晴天の空を竜で駆ける傭兵らしき隊を確認。
令嬢は船尾に向かい、規格外の怪力で船を持ち上げ、投げ飛ばした。
空高く突き抜ける船の上で、令嬢は敵からの銃弾の的となる。
だが、それすらも魔力を帯びた手で軽く掴み、握り潰してしまう。
生前の彼女はこう呼ばれていた。
軍神の令嬢——と。
胃袋を掴む【嘲】(ハハ)
今は十歳の少女だが中身は十六歳。婚約者だった王子の裏切りにより絶命したが、なぜか過去に戻っていた。
同じ轍を踏まぬよう少女がとった手段は、王子からの求婚を避けること。
彼に諦めてもらおうと、少女はセレモニーに参加していた殿方に求婚した。歳が九つも離れた隣国の皇太子に。しかも、未来で戦を交えた敵に。
確かめもせずにとった無謀の賭けだったが、意外にも皇太子は婚約を快諾した。
少女を丁重に持てなし、敬愛の態度をみせる姿に肩透かしをくらう。残虐性の面影がまったく見られない。
奇妙な婚約カップルの誕生も束の間、皇太子の国に逃避行していたところ、何者かの襲撃に遭遇する。
君を守ると、体のいい言葉のわりに、皇太子は病弱体質だった。
代わりに軍神令嬢と称されてた少女が、化け物じみた怪力と魔法で敵襲を払いのける。
国に辿り着くと、皇太子は治療施設に運ばれ、少女は余所者として軟禁された。
三食の食事に清潔なベッドやお風呂付きと、意外にも高待遇。
さらに愛らしい姿の竜神が手品のように出現させるお菓子に少女はご満悦だ。
すると、扉がノックされ、三角巾にエプロン姿の皇太子が現れた。焼きたてのパンが載っている鉄板を持って。
彼が侍る竜神に提供されていたお菓子も、彼の手作りだった。
成り行きで婚約してしまったが、前回の失敗をどこか少女は危惧し、素直な気持ちを表すことができない。彼より先に恋に落ちるなんて、あってはならいのだ。
それなのに、皇太子はこれからも魅力的な料理を振る舞うと豪語してくる。
そんな甘い言葉に釣られないと少女は強がるが、どこか辿々しい。
皇太子は得意げに言った。君の舌は僕の味を知ってしまった。たっぷりと僕を味わってもらう、と。
少女は、それを卑猥な表現として捉え、恥じらった反応をしていた。
二人の初夜【僻】(ケッ)
婚約を結んだカップルの初夜。
情事が頭をよぎり、十歳の令嬢(中身は一六歳)は激しく動揺する。
その扉を開けば、婚約者のイケメン皇帝陛下がベッドに横たわっていた。
すでに準備万端ということか。
と思ったらお酒の飲み過ぎでダウンしていただけだった。
肩透かしをくらいながらも、陛下が希望したリンゴを食べさせてあげようと令嬢は皮剥きにチャレンジする。
しかし、全然上手く剥けない。後ろから彼に笑われてしまった。
すると、陛下が起き上がり、令嬢の後ろから覆い被さった。手本をみせるようにリンゴの皮を綺麗に剥いていく。令嬢の小さな手を使って。
今度はそのリンゴを令嬢は手に取り、陛下の口へと運んであげた。
睦言を交わし合っていると、突然、陛下がシーツに包まりだす。寒気がすると。
失礼しますと言って、令嬢がそのシーツに入っていく。陛下の体を早く温めてあげるために。あくまで看病としての。
陛下の両腕が令嬢の体を抱きしめた。
「つかまえた」と戯れて。
【刺激された感情の種類:4種】
驚度😳:★
凄=程度が甚だしく優れてる(1)
攻撃👊:★★★
嘲=誤解が生む滑稽さ(1)
僻=男女のしつこい乳繰り合い(1)
草=現実では有り得ない茶番さ(1)
全体を通してのプロット
【人物・世界観の説明】
サーヴェル侯爵家の令嬢ジルは、婚約者のジェラルド王子が実の妹と近親恋愛していたことを知る。
秘密を知ったがために、ジルはジェラルドによって処刑が下される。
ジルは亡命に失敗し、絶命する。
目覚めると、ジルは十歳の頃に戻っていた。六年前に十五歳になったジェラルドから求婚され、婚約に至った分岐点に。
【物語が始まる起点・問題】
過去に戻ったジルは、クレイトス王国のジェラルド王子から再び求婚されてしまう。だが、シスコン王子への未練は全く無い。
【発生した問題への対処】
王子の誕生日パーティーに参加していた殿方を掴まえ、ジルは求婚を宣言する。その相手はラーヴェ帝国の皇帝——ハディスとも知らずに。六年後に起こる戦争で、ジルに敗北宣言をさせた美しき冷酷な男。
【問題の広がり・深刻化・窮地】
隣国の敵だった皇帝ハディスから、ジルの求婚を快諾される。
王子が諦めそうにないため、ハディスが帝国へとジルを連れていく。
ジルはハディスの船内で彼の侍従——竜神ラーヴェを紹介される。
ハディスが出した苺ケーキに心を攫まれ、ジルは皇帝と正式に婚約する。
船旅中、ラーヴェ帝国の政争にジルは巻き込まれる。
【人物の葛藤・苦しみ】
皇帝の管轄にある軍港でジルは軟禁される。
ベイル侯爵の狙いを掴むため、ジルは軍港周辺を偵察する。
ベイル侯爵の令嬢と共に、ジルは監禁される。
【問題解決に向かう最後の決意】
ジルは皇帝派の北方師団を味方につけ、謀反を起こした侯爵との戦闘準備に入る。
恐怖政治ではないやり方で、黒幕の陰謀を収めようとハディスは決意する。みんなから恐れられるのではなく、慕われる皇帝を目指して。
【問題解決への行動】
ジルとその仲間が敵の工作員を制圧する。
皇帝への謀反を阻止したハディスは、悪徳領主から領土を没収するという条件で厳刑を取り下げる。
【次に待ち受ける問題】
ベイルブルグの城で落ち着いていたジルの下に、ジェラルド王子からの親書が届く。
妻を奪おうとする挑発的な内容に、ハディスが闘争心を燃やす。
【発生した問題への対処】
ジルはハディスと共に訪問してきたジェラルドと会談する。仲睦まじい様子を彼に見せつけ、求婚を諦めてもらうのが二人の魂胆。
【問題の広がり・深刻化・窮地】
王太子の予言通り、ベイル侯爵が刑務所で自殺してしまう。皇帝陛下の呪いが、まだ解けてないことを示唆する。
ジルが女性に取り憑く化け物——女神クレイトスに襲われる。女神の復活を虞れたハディスは、強行手段を命じる。
【人物の葛藤・苦しみ】
帝国の町で暴動を扇動している賊が現れる。
【問題解決に向かう最後の決意】
軟禁されていたジルは竜神ラーヴェを説得し、ハディスの加勢に向かう。
【問題解決への行動】
ジルとハディスが、クレイトスの女神とジェラルド王子を迎撃する。
読了した感想
◆ジルが王太子の裏切りを知った根拠がない
ここで言う裏切りとは『浮気』のこと。
処刑が下される前日に、実の妹と禁断の恋に励んでいたところをジルは目撃したらしいのですが、詳細は不明のまま。
やっぱり、ここはあらすじの説明で済まさず、実際の現場を目撃して衝撃を受けるシーンを見せて欲しかった。
病弱でほとんど部屋から出ないというフィリス第一王女と、その兄——ジェラルド王太子の近親恋愛。
「我が妹よ、もう我慢できない」
「ダメです、お兄様。また風邪を移してしまいます」
「かまうものか。僕たちの濃い血統ができるまで」
——なんて会話を、開いていた扉越しから聞こえてしまうとかあれば、ジルの衝撃、失望に共感できるというもの。
『やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中』
永瀬 さらさ(著)
KADOKAWA
2020年3月1日発売
全267ページ
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