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Re:ゼロから始める異世界生活 11(感情トリガー/感想)

獰猛な半獣×暴食の魔獣×大罪の魔女

「聖域」からの脱出を目指し、スバルは再度死に戻りのループに挑む。
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◆登場人物
スバル……『死に戻り』ができる青年。地球から来た異世界召喚者
レム……スバルの介添人で鬼族亜人の美少女。大罪司教との遭遇で永い眠りに就いてる
オットー……行商人の青年。スバル達と行動を共にする友達
フレデリカ・バウマン……ロズワール邸に戻っていた古参の半獣メイド
ガーフィール・ティンゼル……短絡的で口の悪い『聖域』の守衛者
ペトラ……スバルを慕うアーラム村の少女。ロズワール邸の使用人見習い
ベアトリス……禁書庫の司書で大精霊
ラム……ロズワールに仕える侍女。レムの双子姉
ロズワール辺境伯……歌舞伎者の魔術師でエミリアの後援者
リューズ・ビルマ……『聖域』の集落の代表者
リューズ・シーマ……リューズと瓜二つの見た目をしてる
エルザ・グランヒルテ……腸狩りの謎の美女
エキドナ……『強欲』の魔女
ダフネ……『暴食』の魔女
テュフォン……『傲慢』の魔女
ミネルヴァ……『憤怒』の魔女

◆これまでのあらすじ
 スバルは魔女教徒らの被害を防ぐため、アーラム村の人々を『聖域』と呼ばれる集落に避難させていた。
 討伐後も村に戻ってこないことをスバルは懸念けねんし、『聖域』の行き方をロズワール邸に戻っていた古参こさんの使用人——フレデリカからき、エミリアも連れていったのだが……。
 フレデリカから渡された輝石きせきが聖域の結界に反応し、危なくエミリアが転移されるところをスバルが身代わりとなった。
 魔女の墓所。エミリアと御者ぎょしゃのオットーと、そう離れていない。
 そこで聖域を守衛している半獣のガーフィールと出会い、集落に軟禁されていたアーラム村の人々、ラム、ロズワールとの再会を果たした。
 しかし、聖域の代表者——リューズから結界を解くまで帰せないと言われ、拒否権はないとガーフィールにもおどされる。
 魔女の墓所で試練を乗り越えろと。唯一ゆいつ資格を持つハーフエルフのエミリアが。
 要求をむ代わりに村人の解放を取り付けたスバルは、一旦、試練にのぞむエミリアと別れ、アーラム村へと帰還した。
 村人を届けたあと、スバルはフレデリカの思惑を確かめにロズワール邸へい戻った。
 そこに待ち受けていたのは、『腸狩はらわたがり』のエルザだった。
 思わぬ奇襲にえなくスバルは命を奪われ、『死に戻り』が再び始まったのだった。

【目次】
第一章 メイド・メイド・メイド
第二章 少女の福音
第三章 ユージン
第四章 命の価値
第五章 魔女たちの茶会
第六章 らぶらぶらぶらぶらぶらぶゆー
全320ページ

【感情トリガー】
第一章 メイド・メイド・メイド
 └艶めいた声【唖】(ッ⁉︎——)
第二章 少女の福音
 └握った左手【唖】(ッ⁉︎——)
第三章 ユージン
 ├二人の凶行【謎】(ナゾ)
 └知った声音【喜】(オー!)
第四章 命の価値
 ├聖域の脱走【悲】(ナンテコッタ!)
 ├巨大な猛虎【酷/憮】(ヒドッ!)(ソンナ…)
 └雪景色に兎【唖】(ッ⁉︎——)
第五章 魔女たちの茶会
 ├童女の審判【唖】(ッ⁉︎——)
 └魔女の呟き【蟠】(キニナル)
第六章 らぶらぶらぶらぶらぶらぶゆー

艶めいた声【唖】(ッ⁉︎——)
 誰もいなかった主の屋敷内で、17の少年は『腸狩はらわたがり』の女に奇襲されて絶命した。
『死に戻り』で三日前に戻った少年は、屋敷にいる仲間の安否を確かめるべく、翌日、助っ人を
ともなってふたたび『聖域』から帰ってきた。
 仲間たちは無事に居る。
 問題は『腸狩り』の存在だ。前回と違って時間を前倒ししてる分、襲撃までの余白がある。今のうちにみんなを屋敷から避難させれば、最悪の事態だけは避けられる。
 すると、少年らが居た応接間の入口から声が聞こえてきた。
 そちらを
見遣みやると、見覚えの人影が立っていた。
 仲間を人質にしている『腸狩り』の女が……。

握った左手【唖】(ッ⁉︎——)
 突如、大きな屋敷に現れた巨大な魔獣に、17の少年と二人のメイドの退路をふさがれてしまう。
 メイドの一人——鬼族の少女の魔法で魔獣を
ひるませると、そのすきに三人は窓から中庭のほうへのがれていく。鬼族の少女は地竜のいる厩舎きゅうしゃへと急いだ。
 少年はもう一人のメイド——村から雇われた見習いの幼い少女——に手当てされ、彼女の
幼気いたいけな献身さに気概きがいをとりもどす。
 何がなんでも皆んなで生き延びるのだと、少年は小さなメイドのを手を握り——
 そこで真上から響く
轟音ごうおんと衝撃に意識が一瞬途絶えた。
 
おぼろげな意識で判然としているのは、少年は地竜に運ばれているということ。左手にも確かな感触を認めて。
 
奔走ほんそうし回っていた地竜が異形の魔獣たちの攻撃で限界を迎えた。なんとか少年を救ってあげようと、最後に力を振り絞って屋敷の二階へと跳ね飛ばした。
 地竜の
断末魔だんまつまが上がり、少年は愛竜の絶命を悟る。満身創痍で思考力が湧いてこない。ただ、左手の感触だけはまだ残っている。
 勇気を与えてくれた小さなメイドの手を。
 弱った声で彼女の名前を呼び、視線を辿っていく——
 柔らかい小さな手、手首、前腕——そこから先が失い。

 千切れた少女の腕を握っていたのだ。

 自分が殺される三日も前倒しで帰還したというのに、またも17の少年は屋敷内で襲撃にい、絶命した。
 ふたたび聖域の墓所内で復活した少年は、別の方法で屋敷に残っている仲間を救おうと決意する。
 まずは聖域に軟禁されている魔術師に会い、
くだんの屋敷にたたずむ大精霊についてく必要がある。なんとか味方につける手がないかを。襲撃者を退しりぞせるために。
 だが、その前に聖域の守衛の者に呼び止められた。話があるという。場所を変えるから付いて来いと。
 少年は不思議に思っていた。『死に戻り』で唯一、パターンを変えてくる守衛の行動に。『死に戻り』が始まる前は、割と友好的な一面をみせてくれた彼だが、前の周回では少し様子がおかしかった。聖域の試練について、最初とは真逆の意見を言われたのだ。聖域の代表者も守衛の考えに同意だったから、少年が代わりに試練を受けるという案は拒絶された。
 守衛の案内で森の
けた場所に辿り着き、年齢不詳の少女風代表者と対面する。
 少年は賭けに出た。やはり自分が代わりに受けるから、ハーフエルフの少女を試練の苦悩から解放させてくれないかと。彼女では無理なのだ。
 試練に合格すれば聖域の結界を解くことができ、混血
亜人あじんである代表者も守衛の獣人も自由になれる。互いにウィンウィンな条件なのだ。
 それなのに代表者はここで大人しくしてろと言ってきた。
そばにいた獣人の守衛に首根っこをつかまれ、その小柄な肉体からは想像もつかない膂力りょりょくで体が浮き上がる。
 なぜ、こんな展開になってしまったのか。
 記憶を引き継げる『死に戻り』の利が、これじゃ活かせない
 少年は二人の凶行によって意識を奪われた。

 軟禁されている聖域の集落から、一刻も早く屋敷に帰る必要がある。でないと恐ろしい襲撃者によって、そこにとどまっている大事な仲間たちが惨殺されてしまうのだ。
 ふたたび聖域の墓所内で復活し、『死に戻り』による記憶の引き継ぎで17の少年は
はやっていた。戦力になる味方の数が足りない。ただ早く帰還するだけでは前回の二の舞である。
 なのに三週目は、想定外のトラブルが起きてしまった。
『死に戻り』を繰り返したことにより、少年にその権能を
さずけた魔女の瘴気しょうきが強くなって、聖域の守衛者——獰悪どうあくな獣亜人——を警戒させてしまったのだ。
 一時的な帰還を許してくれたこれまでと違い、今回は凶行手段による
拘禁こうきんを受け、何もできないまま時間だけが無駄に過ぎていく。光の入らない部屋に、目隠しされた状態だから、時間感覚も狂っている。舌を噛み切り、自決しようにも猿轡さるぐつわがそれを阻止し、許さない。
 完全に救うチャンスを絶たれた——と絶望寸前で誰かの足音が聞こえてきた。
 また食事を与えにきた世話係かと思いきや、聞き覚えのある声が少年の耳に届く。
 目隠しと猿轡が外された。
 少年が生きていたことに目の前の好青年は安堵していた。
 
御者ぎょしゃけ負ってくれている行商人。聖域まで運んでくれたのも彼であり、少年にとって数少ない仲間の一人だ。

 三日間も監禁されていた少年は、仲間の行商人によって助けらた。
 この聖域を守衛している獣亜人に見つからないよう、二人は脱走を試みる。だが、少年も行商人も、いずれ帰還した屋敷で待ち受ける襲撃者に太刀打ちできる力は持っていない。ただの平民、人間なのだ。
 そこで行商人は、ある協力者を連れてきていた。
 鬼族の美少女——少年の先輩にあたる屋敷の使用人。
 前回の『死に戻り』でも協力してくれた彼女だが、残念ながら襲撃者の力には及ばず、悲劇を防ぐことはできなかった。
 それでも彼女の協力はありがたい。それに希望はまだある。屋敷内の禁書庫に隠れる大精霊を味方にできるかもしれないのだ。
 三人で聖域を密かに脱走するという計画だが、思わぬ盲点に足が止まってしまう。
 聖域の森を抜ける足となる地竜は、二人乗りが限界。
 遅まきに失して気づく三人の前に、ふと、かがり火に照らされた人影が現れる。
 少年を力づくで
拘禁こうきんしてきた守衛の獣亜人。
 脱走を目前に見つかってしまったのだ。危険人物に。

 短絡的で荒っぽい口調の獣亜人に発見された。
 この聖域の森から脱走しようとしていた矢先の不測の事態。
 監禁場所から抜け出した少年と、彼を手助けした仲間の二人に対して、獣亜人は殺意を向けていた。話が通じないほど
憤懣ふんまんだ。
 一緒に屋敷へ向かうはずだった鬼族の使用人が足止めを買ってでた。その間、仲間の行商人が少年を連れて、森の結界を抜けようとする。混血の亜人は結界を通れない。抜けてしまえば手出し不可能。
 だが、
すさまじい獣の咆哮ほうこうと衝撃波が、地竜に乗って逃げていた少年らを襲い出した。
 地面に倒れた少年を、
獰猛どうもうな獣人が見下ろしている。
 虎の姿に似た四メートル級のどデカいモンスター。細い筋肉質の小柄な少年が、獣化した完全体の姿だった。
 鬼族の使用人は、もうすでに……。
 恐怖に
居竦いすくみ、少年は降伏した。これ以上犠牲者を出すわけにはいかない。
 巨大な
猛虎もうこが腕を振りかぶろうとする。その一撃は、熊をも軽く超える圧倒的な破壊力であることは想像に難しくない。
 行商人の好青年が、腰を抜かしたまま動けない少年を突き飛ばした。
 少年を
かばった彼は、真っ赤な血と苦鳴を残し、倒れた。
 
猛々たけだけしい咆哮を上げ、猛虎がまた腕を振り上げる。視線が少年からズレた。
 近くにいた協力者——聖域に
とらわれている村の若者達が石を投げていた。救世主である少年を逃がそうとして。
 その勇敢な姿勢も
むなしく、残酷に壊されていく。
 振りかぶる大きな爪、飛び散る鮮血、彼らの
断末魔だんまつま
 若者たちが次々に命を奪われていく。
 /
 地獄絵図に
憮然ぶぜんと何も動けない少年を、地竜が持ち上げた。
 忠義を誓った
あるじを救おうと、必死で結界の外に連れ出そうとする。
 巨大な
猛虎もうこ轟然ごうぜんと追いかけてきた。速い。追いつかれる。
 
くわえられていた少年は、地竜に投げ飛ばされ、境界線を越えた。
 が、大事な愛竜が犠牲となり、
ぎ払われた爪で体が真っ二つとなった……。

 聖域の森にってある結界を抜けた瞬間、少年が持っていた首飾りの輝石きせきがまぶしく光り、気づくと監禁されてた小屋に転移していた。聖域内に戻っていたのだ。なぜ、輝石が結界に反応するのか、転移の場所や時間の流れも未知数である。
 
いぶかしげにおもてへでると、あたりは雪景色に様変わりしていた。しばらく歩き回り、なんとか集落に戻って来れたが、人っこ一人居やしない。
 軟禁されてるはずの村人、大怪我を負った主人、その
侍女じじょ、仲間の行商人……。
 
おどしてきた聖域の代表者や守衛者の姿も見られない。
 足跡一つない積雪のなか、一匹の
うさぎに似た生き物が足下に転がっていた。二本の長耳に丸いっぽ、赤いひとみ
 突如、孤独に見舞われた少年は
すがるように手を伸ばし、兎に触れようとした瞬間、左手の手首から先が根こそぎもぎ取られていた。

 積雪のけた森中で、白い兎のような生き物が大量に出現し、少年は無惨に全身をわれて絶命した。
 ふたたび聖域内の墓所の中で『死に戻り』したが、そのあまりに凄絶な体験のせいで、少年の精神は崩壊しかけていた。
 すると、『魔女の茶会』に呼ばれ、少年の精神体だけが別の世界に
いざなわれる。
 
蒼穹そうきゅうした、果てしなく続く緑の丘に、一つの屋外テーブルと一人の魔女がたたずんでいた。
 この世の全てを知りたいと望む『強欲』の魔女。彼女に呼ばれたのはこれで二回目。不思議と青年の心は平静を保っている。
 物知りの魔女に、先の兎問題の打開策について少年は問うてみた。
 それなら、その魔獣を生み出した本人に会わせると魔女は言う。
 少年の目の前で魔女が入れ換わると、現れたのは
おさなそうな童顔の少女だった。
『暴食』の魔女。この天真爛漫そうな少女がそうだというのか。
 愛くるしい見た目と声で少年に握手を求めてきた。悪人かどうか判断できるという。
 言われるまま少女の手を取ると、少女が何かをつぶやき始めた。
 おもわず聞き返したが、ある違和感に気づく。
 笑顔でこちらを
うかがう少女の胸に、一本の腕が抱えられている。
 肩から引き抜かれた少年の右腕を。

 屋敷の仲間を襲ってくる襲撃者と、聖域の人々を全てらい尽くす魔獣という、板挟み状態の少年。
 三度の死を繰り返しても未だ打開策は
ひらけてない。
 絶望的な
最中さなか、『強欲』の魔女から茶会に呼ばれ、少年はうつろな世界で彼女と二度目の対面を果たす。
 そこで魔獣の生みの親——『暴食』の魔女から貴重なヒントを得て、茶会から元の異世界に戻されようとしていたとき、主催者である『強欲』の魔女が、ある言葉を残していった。
 次に会う機会が訪れたとき、今度は自分が君に話たいことがあると。

【刺激された感情の種類:7種
幸福☺️:★
 喜=思いがけずに恵まれた状況(1)
驚度😳:★★★★★
 酷=情け容赦ない悪魔的な行動(1)
 唖=俄に起こる想定外な事件(4)
思考🤔:★
 謎=不可解な問題が提起される(1)
不幸😫:★★★
 蟠=中途半端でまだ未解決(1)
 憮=如何ともし難い痛ましさ(1)
 悲=既に手遅れな不測の事態(1)

全体を通してのプロット

人物の葛藤・苦しみ
 二周目に突入したスバルは、ラムを引き連れ、前回よりも前倒しで屋敷に帰還する。が、すでに待ち受けていたエルザと魔獣に襲われ、スバルは二周目でも絶命してしまう。
 三周目、ふたたび聖域で復活したスバルだったが、代表者のリューズとその連れ、ガーフィールの凶行により監禁されてしまう。
 仲間に助けられたスバルは聖域からの脱走を試みるが、怒りに触れたガーフィールの猛獣化により、仲間たちが犠牲になってしまう。
 聖域の結界に反応した輝石の転移により、スバルはまた監禁場所に戻される。外は真冬なみに一変しており、大量に出現した小さな大兎に襲われてスバルは絶命する。
 四周目、スバルは『強欲』の魔女エキドナの茶会に呼ばれ、大兎の特性について生みの親の『暴食』の魔女から教えてもらう。
 エキドナの茶会から離脱したスバルだが、墓所にエミリアの姿はなく、得たいの知れない影に聖域が飲み込まれてしまう。

読了した感想

最後のおまけの挿絵は必見!
 個性的なキャラデザが神な大塚先生。
 貴重な初期のダフネ、テュフォン、そして、修正前のフレデリカが見れます!
 ずぅぅぅーーっと最後まで続くスバルの苦悩編を読み終えた後に、あの絵は気分をリフレッシュにさせてくれますね。

Re:ゼロから始める異世界生活 11
長月 達平(著)
大塚 真一郎 (イラスト) 
KADOKAWA
2016年12月23日発売
全320ページ

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