サスペンス・ミステリー

【クローズド・サークル】水車館の殺人(感情トリガー/感想)

墜落事故×絵画消失×不可能失踪×人体焼却

仮面の当主と孤独な美少女が住まう異形の館、水車館。1年前の嵐の夜を悪夢に変えた不可解な惨劇が、今年も繰り返されるのか? 密室から消失した男の謎、そして幻想画家・藤沼一成の遺作「幻影群像」を巡る恐るべき秘密とは……!? 本格ミステリの復権を高らかに謳(うた)った「館」シリーズ第2弾、全面改訂の決定版!
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◆登場人物
藤沼一成……故人。幻視者と云われた不世出の画家。
藤沼ふじぬま紀一きいち……その息子。傷ついた顔を仮面で隠し、「水車館」に住まう。(41)
藤沼由里絵ゆりえ……その妻。一成の弟子、柴垣浩一郎(故人)の娘。(19)
正木まさき慎吾しんご……紀一の友人。かつて一成に師事した。(38)
倉本くらもと庄司しょうじ……「水車館」の執事。(56)
根岸ねぎし文江ふみえ……住み込みの家政婦(過去)。(45)
野沢のざわ朋子ともこ……通いの家政婦。(現在)。(31)
大石おおいし源造げんぞう……年に一度、「水車館」に訪れる。美術商。(49)
もり滋彦しげひこ……同。M**大学、美術史の教授。(46)
三田村みたむら則之のりゆき……同。外科病院の院長。(36)
古川ふるかわ恒仁つねひと……同。藤沼家の菩提寺の福住職。(37)

島田しまだきよし……招かれざる客。(36)

◆あらすじ
 亡き有名画伯の父を持つ藤沼紀一が、一年に一度、父の画廊を開帳する山間の水車館に、恒例の御三方が集まっていた。
 そこに、招待もされてない一人の寺男が訪ね、加わった。
 一年前に、この館で起きた謎の失踪事件と殺人の真相を探るため。
 当時、寺男の知り合いであった住職も絵画鑑賞に参加していた。しかし、彼は突如、姿を消してしまったという。そして、飾られていた一枚の絵もなぜか無くなっていた。
 翌日、地下室の焼却炉から、燃やされていたバラバラの遺体が見つかった。館に居候していた紀一の友人が殺されていたのだ。
 犯人は住職の男と警察は睨んでいるが、未だ行方は掴めていない。
 寺男の島田は、この謎めいた事件の真相を明らかにすべく、集まった関係者と共に過去を振り返っていく。
 ——
 カットバックで展開される過去と現代の不可思議な謎。一つの線で結ばれるその真実とは。

【目次】
プロローグ (一九八五年 九月二十九日 午前五時五十分)
第一章 現在 (一九八六年 九月二十八日)
第二章 過去 (一九八五年 九月二十八日)
第三章 現在 (一九八六年 九月二十八日)
第四章 過去 (一九八五年 九月二十八日)
第五章 現在 (一九八六年 九月二十八日)
第六章 過去 (一九八五年 九月二十八日)
第七章 現在 (一九八六年 九月二十八日)
第八章 過去 (一九八五年 九月二十八日)
第九章 現在 (一九八六年 九月二十八日)
第十章 過去 (一九八五年 九月二十八日〜二十九日)
第十一章 現在 (一九八六年 九月二十八日)
第十二章 過去 (一九八五年 九月二十九日)
第十三章 現在 (一九八六年 九月二十九日)
インターローグ
第十四章 現在 (一九八六年 九月二十九日)
全348ページ

【感情トリガー】
プロローグ
第一章 現在
第二章 過去
第三章 現在
第四章 過去
第五章 現在
 └謎の紙切れ【謎】(ナゾ)
第六章 過去
第七章 現在
 └昇降機の謎【仮】(モシカシテ)
第八章 過去
 └薬指の切断【仮】(モシカシテ)
第九章 現在
第十章 過去
 ├揺れる黄光【蟠】(キニナル)
 └完全な消失【謎】(ナゾ)
第十一章 現在
 └書斎の部屋【訝】(ハ?)
第十二章 過去
 └濡れた足跡【謎】(ナゾ)
第十三章 現在
 └夫人の悲鳴【謎】(ナゾ)
インターローグ
第十四章 現在
 └一連の犯人【定】(ヤッパリ)

謎の紙切れ【謎】(ナゾ)
 十年前から外の世界を知らない十九の若夫人と、車椅子生活を送る四十を超えた主人が山間の大きな館で暮らしていた。
 広い中庭を石壁の回廊で囲った長方形型の館、その北西の角にある塔の二階が夫人の部屋。主人はそこで夫人のピアノ演奏を聴いてから、彼専用のエレベーターで降りて行く。
 主人が一階に着くと、エレベーターのドアが閉まらなくなった。
 階段で降りてきた夫人が、故障したのかと訝しがる。
 夫人が近くのトイレに姿を消すと、使用人の女性が主人の下にやってきた。
 神妙な様子に主人が尋ねると、使用人はある紙切れを差し出した。
 一階の主人の部屋の下に挟まっていたという紙には、
出ていけ
 この家を、出ていけ。
 と書かれていた。
 この館には、他にも執事、外科医、美術商、教授、招かれざる探偵の五人がいる。
 いったい誰が、何の目的でこの紙を置いていったのか。

昇降機の謎【仮】(モシカシテ)
 真ん中を広い中庭でくり抜いた長方形型の館で、住み込みの使用人が悲鳴を上げながら二階のバルコニー(北西の塔)から転落死した事件を振り返る。
 当時、使用人は二階の夫人の部屋を掃除していたはず。
 昼の十五時前、執事は、一階にあるエレベーターの呼び出しボタンから使用人を呼び出そうとした。これから食堂でコーヒーを持て成す時間だというのに、準備が整っていない。
 返事はなく、エレベーターは二階で止まっていた。仕方なく、執事は階段を使い、二階の塔の部屋へ向かっていく。すると、悲鳴を上げた使用人が、夫人の部屋のバルコニーから転落するのを窓から目撃する。
 ちょうどそのころ、最後の来訪客が現れ、玄関で待機していた主人と夫人が対応していた。三人とも外から人のような悲鳴を聞き、慌てた様子の執事が外へ飛び出し、使用人が亡くなったことを確認する。
 後に別館の客室(南東の塔)にいた来訪客が三人、そして主人の友人も駆けつけ、皆の知れることになった。
 警察に連絡後、エレベーターで昇った主人と、階段で上がった友人がバルコニーを調べ、欄干らんかんがグラグラになっていたと主人は明かす。
 この一年前に起きた不幸な事故の詳細を聞き、主人の館を訪れていた探偵は不可解と疑念を指摘した。
 執事の証言にある、エレベーターが二階で止まっていたという件。
 車椅子の主人が玄関で待機していたということは、一階で止まっているはず。一人しか乗れない彼専用で、他者の利用は認められていなかった。
 つまり、誰かがエレベーターを使い、使用人をバルコニーから突き落とした可能性があるということ。


 もしかすると、玄関まで同行していた主人の友人が犯人なのかもしれない。
 十四時十分頃、友人は自分の客室へと戻っていったが、彼だけが主人と夫人が玄関で待機していることを知っていた。その間、エレベーターを使い、二階の夫人の部屋を探索していたのだろう。
 目的は、主人が隠したという幻の画作を奪うこと。
 それを厨房でコーヒータイムの準備をしてるはずだった使用人に見つかり、バルコニーから突き落とした。疑われぬようエレベーターで降り、他の来訪客たちに紛れて駆けつけたということ。
 その証拠に、亡くなった使用人を発見した後、主人は普通にエレベーターで二階に昇っていた。その時には、一階に降りていたということ。
 また、他の来訪客たちは主人と夫人の居場所を正確に把握していないので、夫人の部屋を探索するというのは無謀すぎる。現実的でない。
 故に、使用人を殺害できるのは、主人の友人でしか考えられない。

薬指の切断【仮】(モシカシテ)
 山間の僻地へきち隠遁いんとんしている歳の離れた夫妻が住む館。
 その地下の焼却炉のある部屋に、車椅子の主人と若夫人、執事、来訪客の外科医、美術商、教授の六人が集まっていた。
 焼却炉の手前にある床に、切断された薬指が落ちている。くっきりと指輪のあとが残っていたことから、主人の館で居候いそうろうしていた友人の指で間違いない。

 火かき棒で焼却炉を開けてみると、人間の頭部、腕、胴体、脚がバラバラにされて燃やされていた。その左腕の薬指が欠けていたことから、友人の遺体であると推測された。
 同じ日の午後三時前、館の二階のバルコニーから、住み込みの使用人が転落死するという事故があった。
 その時はまだ友人は生きており、最後の来訪客である住職の方も滞在していた。
 事故後、その住職の方が主人の友人がいる客室を訪ね、十二年前の事件のことを語り出す。
 トラックとの衝突事故のことだった。
 運転していたのは館の主人。彼は顔、両手足、脊髄をやられた。同乗していた友人は奇跡的に大怪我をまぬがれたが、絵描きの生命線をたれている。残念なことに、その友人の恋人は助からなかった。
 住職は、彼の薬指に注目した。
 恋人との婚約指輪で、外れないとのことだった。


 もしかすると、焼却炉で燃やされていた遺体は友人ではなく、主人だったのかもしれない。
 友人には、主人に復讐する動機がある。恋人の命と才能のを奪われたのだから。
 主人は事故の後遺症で両手には手袋、顔は仮面で覆われていた。それを利用し、友人は自分の死を偽装したのだろう。
 バラバラにした主人を焼却炉に燃やす際、左腕の薬指を切断し、どこかに処分する。そして友人は自分の左薬指も切断し、焼却炉の前に残した。指輪の痕から友人の遺体だと思い込ませるために。あとは仮面と手袋で主人に成りすますだけ。
 消息不明となった住職は、この事件の罪を被せるための生贄いけにえ。おそらく、すでに殺害されて、どこかに遺体が隠されているのではないか。

 昨年起きた奇妙な事件。
 四つの塔を石壁の回廊で結んだ長方形型の館で、使用人の女性が転落死した。
 それは昼の十五時ごろに、彼女は悲鳴を上げながら、夫人の部屋である二階のバルコニーから落ちたのであった。
 当時、館に居たのは車椅子の主人と若夫人、執事、主人の友人、外科医、芸術商、教授、住職の八人。
 不幸な事故として問題視はされていなかったが、一年越しの今になって他殺の線が浮上していた。
 使用人が亡くなった後の館では、最終的に主人の友人が何者かによって殺されてしまう。地下室の焼却炉の中に、バラバラにされた状態で燃やされて。
 容疑者は、絵と共に姿を消した住職の男だとされているが、未だ発見はされてない。
 だが、の関係者であった探偵は、犯人は別の者だと考えている。
 使用人を転落させた犯人と同一人物なのではないかと。
 転落直前、車椅子の主人用エレベーターが誰かに使われていたという執事の証言。
 転落した使用人の発見後、びしょ濡れになった来訪客達が客室に戻る中、なぜか回廊の絨毯が濡れていたという教授の証言。
 以上から、バルコニーで豪雨に打たれた犯人が、その回廊を通って玄関に集まる皆んなにまぎれていたという仮説が浮上する。
 だとすると、館に到着したばかりだった住職では犯行不可能。
 この謎を解明するには、もう一つの事件を探る必要がある。
 いつ、住職は姿を消したのか。
 執事は、当時、奇妙な光を目撃していた。
 結局、警察は悪天候ですぐには来れず、来訪客達も宿泊するしかない。
 使用人不在の多忙さで執事の疲労度も影響していたのだろう。
 深夜の一時過ぎ、眠りに着こうと自室のカーテンを閉めようとした時、執事は窓越しから揺れる黄色い光を目撃した。
 別館の方角。二名の来訪客が泊まっている二階の廊下。
 光は消えてしまい、大した問題ではないと、執事は眠りについたのだった。

 人里離れた山間に佇む大きな館で、一人の客人が姿を消したという。
 その住職の男が最後に確認されたのが夜二十二時三十分前。
 彼は二階の自室に戻っていったと、同じ二人の客人らが証言している。
 だが、深夜一時十五分に不審な物音を階下で聞き、本館側の一階廊下に飾ってあった絵画が一枚無くなっていると家主の夫人がしらせてきた。
 そして、廊下にある裏口ドアが内側から解錠されており、少し開いていた。
 この激しい嵐で道は塞がれ、開通の目処も立っていないという状況。
 誰かが絵を盗んで、館から逃げ出したというのか。
 家主と夫人、執事の三人は、客人達が寝泊まりしている別館へと、繋がった廊下を通って事を報せに向かった。
 一時二十五分、三人はホール内でチェスをしていた外科医と教授と合流する。その後、起きてきたもう一人の客人——家主の友人——が二階の自室から現れた。あともう一人、一階の客室から芸術商も。
 ところが、最後の一人の姿が見られない。
 家主と友人、外科医、教授の四人が二階の部屋を調べることにした。
 住職が居るはずの部屋。荷物が残されてるだけで、彼の姿も無くなった絵も確認はできなかった。二階の屋根裏も痕跡なし。
 念の為、住職の部屋の隣——家主の友人の部屋——も確認したが、同じ結果だった。二階の隠れる部屋は、これ以上ない。
 廊下の窓も施錠されていた。開いていても人は通れないだろう。
 なら、住職はどうやって姿を消したというのか。
 彼が二階に戻ってからも、外科医と教授はずっとゲームをしていたのだ。彼らの目を盗み、ホール内にある階段を降りることは不可能に近い。
 透明人間にでもならない限りは……。

書斎の部屋【訝】(ハ?)
 深夜に屋敷内で飾ってあった絵画が一枚、無くなっていた。
 そして、絵と共に別館の客室から来訪客の住職も姿を消していた。
 だが、他の来訪客達の証言によると、住職が絵を盗み、館から出て行くのは不可能だった。
 住職が最後に二階の自室へ向かうのを目撃していた二人が言うには、事件が起きる寸前まで、彼は階段を降りてきていなかった。二階の窓も人が通れる隙間はなく、内側から掛け金で止められていたのだ。
 一年前に起きたこの不可思議な事件は、結局、他の者達の目を盗んで降りてきた住職が、絵を盗んで館から逃げたんだと警察に片付けられている。
 本当に抜け道はなかったのか?
 この館の建築に関わった人物は、これまでに何度も仕掛けじみた趣向を凝らす変人である。
 それを確かめるため、車椅子の主人に招かれていた探偵は、住職が使っていた客室をくまなく調べ出した。
 やはり隠し通路や隠し部屋は存在しなかった。

 すでに夜十時を過ぎていたため、皆、自室に引き返して行く。
 夜十一時、家主が一階の自室に戻ってきた。
 二階の自室に戻った幼妻と、その妻に横恋慕を抱く来訪客への懸念に煩わされている。
 そんな時、家主は居間の明かりを点け、驚愕した。
 書斎が開いていたのだ。
 鍵の紛失で、一年前から開かずの部屋だった扉が。

濡れた足跡【謎】(ナゾ)
 未明の午前三時四十分、館内の戸締りの確認を終え、一階の館の自室で眠りにつこうとしていた執事の男。やはり、一時間ほど前から館を飛び出した元絵描きの男——主人の友人——が気になり、様子を見に北回廊の裏口まで足を運んだ。
 ドアの手前の絨毯じゅうたんに黒いシミが付いていた。外はまだ強い嵐が続いている。これは雨に濡れた足跡だ。逃亡した来訪客を追っていた主人の友人が、戻って来たのかもしれない。
 足跡を辿ると、なぜか地下室への階段がある小部屋まで続いていて、そのドアが少し開いていた。
 入ってみると、階段の降り口に額縁の絵が置かれていた。昨夜、北回廊に飾られていた絵が一枚無くなり、姿を消した来訪客が盗んだのではないかと騒がれている『噴水』の絵。
 なぜ、こんなところに? 主人の友人が取り返したのだろうか。
 主人に報せようと、執事は西回廊のほうへ急いで向かう。——と、その時、後頭部に強烈な衝撃を受け、床に倒れてしまった。背後から殴られたのだ。
 今度は首の付け根あたりを打擲ちょうちゃくされ、執事は気を失った。
 地下室の絵といい、いったい、誰が執事を襲ったのか。

夫人の悲鳴【謎】(ナゾ)
 暴風と豪雨の嵐で八名が山間やまあいにある館に立ち往生状態。
 深夜の零時五十五分。
 甲高かんだかい女性の悲鳴が館内にとどろいた。
 一階の自室から車椅子の主人が出てくると、幼妻の声が聞こえた食堂へと急いで向かった。
 廊下を通っていた主人を慌てた様子の執事の男が呼び止める。
 近くの廊下で使用人の女が倒れているというのだ。息がないと……。
 ちょうど慄然りつぜんした幼妻が食堂ホールの階段から姿を見せた。
 どうしたんだと二人が尋ねるも、彼女は放心状態のまま。
 すると、探偵、美術商、教授の三人の男達もホールに現れた。
 使用人の女は首を絞められて殺されていたらしい。探偵がうには。
 更に別館の客室に居るはずの外科医の姿が見られないと。
 鍵は開いたままで、トイレや浴室にも居なかったという。
 突然、階段上に佇むおびえ切った幼妻が、言葉を絞り出すように「わたしのへや」と言った。
 探偵の男が、若夫人の部屋へと階段を踊り出した。そして、驚愕の叫び声が。
 階段の上に戻ってきて、探偵は告げた。
 外科医の男が、すでに亡くなっていると。

【刺激された感情の種類:5種
思考🤔:★★★★★★★★
 訝=疑問を抱かせる言動や描写(1)
 謎=不可解な問題が提起される(4)
 定=察した予想がピタリと一致(1)
 仮=知り得た情報からある仮説が立つ(2)
不幸😫:★
 蟠=中途半端でまだ未解決(1)

全体を通してのプロット

人物・世界観の説明
 父の遺産と水車の自家発電で、幼妻と隠遁生活を送っている藤沼紀一の館に、去年と同じ来訪客の三人が集まってくる。
 年に一度開帳される藤沼一成の絵画鑑賞が主の目的。
 館には、他に執事と家政婦の二人が在館している。
 以上七名の他に、招待もなく一人の寺男が参入してくる。

物語が始まる起点・問題
 去年の同じ日、奇怪な事件が起こっていた。
 同じ館で宿泊していた住職の失踪。
 館内廊下に飾ってあった一枚の絵画の消失。
 地下の焼却炉で燃やされていたバラバラの遺体。
 未だ住職の行方は判らず、彼に窃盗と殺人の疑惑が掛けられている。
 其の人物と知り合いであった島田は、犯人は別にいると考えている。

発生した問題への対処
 寺男の島田が、去年の未解決事件を解明しようと関係者達から事情聴取をしていく。

問題の広がり・深刻化・窮地
 紀一の部屋に、謎の便箋が置かれる。
 去年亡くなった住み込み家政婦の墜落事件に、他殺の線が浮上する。
 絵の消失とともに発覚した住職の失踪だが、当時の状況で館外に出るのは不可能であったことが判明する。
 現在の館内で殺人事件が発生する。

問題解決に向かう最後の決意
 島田が隠し通路を発見する。

問題解決への行動
 島田が犯人に論告する。

読了した感想

一般読者でも論理立てが可能な作品
 前作の『十角館の殺人』は、かなり特殊な犯行過ぎて最後まで犯人も手口も解くことは叶いませんでしたが、二作目となる『水車館の殺人』は手がかりをもとに推理できる内容となっております。
 タイムテーブル形式で、その時間の出来事が細かく描写されており、人物達の動きが見えやすくなっているおかげでしょう。
 また、離れているのは時間だけで、過去も現在も「舞台が同じ」というのも犯人を絞りやすくしているかも。
 専門知識がないと解けないような難解ミステリーより、参加しやすい本格ミステリが好きな僕には堪らん、たまらん。
 今、アニメで配信されてる『天久鷹央の推理カルテ』とか、一般素人にはまず解けないですからねぇ。病気の特徴や薬品の効果とか、予備知識必須で、いっしょに参加できないのが悔しい。
 今回は、『十角館』でお馴染みの島田潔が探偵役として参加しております。謎解きに必要なのは『状況把握、観察力、直感』の三つだけ。彼と同じ立場で考察できるのです。
 素晴らしいミステリーに感謝、感謝。

水車館の殺人〈新装改訂版〉 
綾辻行人(著)
講談社
2008年4月15日発売
全348ページ

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