
登場人物・目次・感情トリガー
マンションの13階からフックでぶら下げられた女性の全裸死体。傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文。これが近隣住民を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の凶行だった。警察の捜査が進展しないなか、第二、第三と殺人事件が発生し、街中はパニックに……。無秩序に猟奇的な殺人を続けるカエル男の正体とは?どんでん返しにつぐどんでん返し。最後の一行まで目が離せない。
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◆登場人物



【目次】
一 吊るす
二 潰す
三 解剖する
四 焼く
五 告げる
【感情トリガー】
一 吊るす
二 潰す
├手口の変化【問】🤔❓(ナゼ)
├虐待する父【唖/慄】😳(ッ⁉︎)😖(ムリムリ…)
├右掌の古傷【蟠】
😖(キニナル)
└聞いてた蛙【察】🤔(マサカ…)
三 解剖する
├解剖の少年【唖】😳(ッ⁉︎—— )
├一緒に捜索【疑/仮】
🤔(マチガイナク)🤔(モシカシテ)
└被害者選別【仮】🤔(モシカシテ)
四 焼く
└ナツオって【察】
🤔(マサカ…)
五 告げる
├吊り上げ方【慮】
🤔💡(コウシタラ)
├三重の構造【驚】😳(エッ⁉︎ イガイ)
└美しい終幕【褒】👍(スバラシイ)

廃車工場で働く従業員が、昨夜からセットしていた車のプレス作業に取り掛かっていた。
が、作業員は車がひしゃげる音に違和感を捉えた。
異音が混じっている。
すぐにプレス機を止め、車を圧縮させるシリンダーを元の位置に戻した。
中途半端に潰れされた車に近づき、真っ赤な液体が漏れているトランクを開けてみた。
作業員は驚愕して腰を抜かすことになる。
圧縮された人間の遺体の有り様に。
『潰す』という目次どうり、潰された被害者が発見された。
しかし、一件目の殺人と変わった点がみられる。
ガイシャの衣服を持ち去っていなかったのだ。
標的をカエルとして扱っていた犯人が、なぜ二件目は裸にしなかったのか?
男だったから? 老人だったから? それとも気まぐれ?
もしかしたら模倣犯の可能性もありそうだ。

ナツオが小学校から帰宅すると、家で飲んだくれていた父親が飯の準備を求めてきた。
狭いアパートの部屋でナツオは怯えながら父親とカップラーメンを啜る。
理由もなく平手打ちをされ、椅子から転げ落ちた。
今度は風呂だと父親が言った。
ナツオは逆らうことができず、すでに湯に浸かっていた父親と一緒に入る。
痣や傷だらけの身体を父親に洗われ、色白の肌が去年家を出てしまった母親によく似ていると言われた。
父親がバスタブの縁に腰掛けると、ナツオに命令する。
咥えろ、と。
——ッ!?
なんなんだ、この父親……
気持ち悪すぎるだろ。
ナツオって名前から男の子だと推測できるけど、これってカエル男の過去を見せているのだろうか?
連続殺人鬼は往々にして悲惨な幼少期を送ってることが多いからね。
それにしても不快すぎるシーンだ。
吐き気を誘うほどの描写が出てくるので、続きを読むなら覚悟されたし。
これは絶対映像化出来ない。

猟奇的な殺人鬼は、突如、その一面を現すわけではない。
その前兆がもっと前から顕れているという。
動物虐待や窃盗、器物破損などなど。
おそらく、カエル男もなにかしらの犯罪を犯して捕まっていたと思われる。
そこで過去に性犯罪や殺傷事件を起こし、現在釈放されている者を洗い出す。さらに飯能市内に居住している者だけに絞り込む。そこから垂れ込み情報と重複する人物を割り出す。
これらの条件でヒットしたのが七件。
その内の一件を新米刑事の古手川和也が担当することになった。
当真勝雄、十八歳。四年前に近所の幼女を監禁し、暴力を加えた上で絞殺していた男。
現行犯ですぐに逮捕されているが、カナー症候群と診断され、不起訴となっていた。
再犯の可能性はなしという医師の判断で、三年後には保護観察付きの釈放となっている。
古手川は、捜査班長の渡瀬から担当の保護司に当たって、其の男の生活実態を調べてこいと指導された。
保護司の現住所が書かれた用紙を渡瀬に返すとき、右掌の古傷を見られてしまったシーンである。
”「ああ……古傷っス」
「傷一本だと皮膚はすぐにくっつくが、二本だと血は止まっても皮膚はなかなか元に戻らん。一昔前のスケ番のやり口だ。女の貌に一生残る傷をつけるためのな。お前、そういうのと痴話喧嘩でもしたか」
「そんな色っぽい話じゃないですよ」
古手川は笑ってごまかしたが、艶めいた話でないことは本当だった。”
う〜ん、気になる。
年齢も明記されてないからどんな容姿なのかも想像しにくい。
新人というワードから二十代を思い浮かべるが、いろんな叙述トリックを見てると先入観でまた騙されてしまうかもしれない。
古手川の先輩である渡瀬も年齢不詳。勝手に三、四十代と当たりをつけてるが、実際はどうなのだろう。それに下の名前も不明である。
二本の古傷は、過去の虐待の跡なのだろうか?
まさかカエル男ってことはないよね。
視点が謎の人物に変わった。
彼のモノローグの一部に注目。
”人の声は生活廃水と同じだ。濁っていて、聞くだにおぞましい。会話をしている近くに立つだけで汚泥に身を浸しているような不快感に襲われる。周囲の人間もテレビの中の馬鹿騒ぎも自分の容姿を嘲笑っているように聞こえる。話し掛けられるのが嫌だったから、彼も挨拶など必要最低限の言葉以外は決して口にしようとしなかった。
ただ、あの人の声だけは別だが。
それ以外の声は雑音として聞き流すようにしている。しかし、今日耳にした雑音の中には興味を誘う言葉もあった。
カエル男──。”
犯人視点で『今日耳にした』とは、まさか十二月九日のことなんじゃ?
視点が切り替わったのは、古手川が有働さゆりから二度目の音楽療法を受け、彼女の自宅を辞した直後。十二月十日。
その前日の九日、古手川は初めて有働さゆりと会った。虞犯者リストに入っていた当真勝雄(一八)の保護司である。
今は自宅で音楽教室を開き、患者の心のケアも同時に行なっている。
そこには件の当真勝雄も音楽療法を受けている最中だった。
古手川は其れを見届け、終わると当真勝雄は帰っていった。
本当は彼に会う事前報告を保護司に伝えに来たのだが、まさか本人が居るとは思ってもいなかったのだろう。話もせずに帰らせてしまっていた。
四年前に近所の幼女を監禁し、殺害したにも拘らず、カナー症候群という理由で不起訴になった男。
もしかすると、当真勝雄はまだ教室の近くにいて、二人の話を聞いていたのかもしれない。
古手川とさゆりがカエル男の話題で話していたのを。
つまり、カエル男の正体は、やや肥満気味の臆病そうな風体をしていた自閉症の当真勝雄。
『あの人の声だけは別だが。』とは、保護司の有働さゆりのことと思われる。

十二月十一日。
昨夜、子供の捜索願が警察に届いた。
担当した年配の倉石巡査がその母親と深夜三時まで探し回ったがダメだった。
ところが、朝六時になって或る通報が入る。
死体を発見した、と。
嫌な予感が疾り、寝不足の倉石巡査は現場の公園まで自転車を走らせた。
辿り着くと入り口の門で青年が待機していた。通報の主だった。
見てはいけないものを見てしまったような後悔と恐怖で貌が蒼白している。
問題の死体は砂場にあると青年が怯えた指を差した。
覚悟を決め、倉持巡査がひとり、砂場へと歩を進める。
確認した。おそらく男児の死体。
頭と手足の四肢が切断され、胴体は表面から観音開きのように切り開かれていた。
その中に詰まっていたはずの各臓器が砂場に整然と並べられている。
男児の衣服がその隅に置かれ、衣服の間に犯人が残したと思われるメモが挟まっていた。
稚拙な文章で『ぼくもかいぼうしてみよう』
。
なんとか吐き気を堪えている倉持巡査が、男児の下着に書かれていた名前に気づく。
予想通り、捜索願が出ていた少年の名前だった。
——っ!?
これは予想外。古手川が知ったらショックを受けるだろう。
昨夜、その男児から友達の証として手作りの風車をもらったばかりだというのに……。
警察からの連絡で、規制線の貼られた現場の公園に母親の有働さゆりが急いで走らせてきた。
車から降り、息子の様子を確認しようとするが古手川に止められる。
臓物を全て取り出され、バラバラに切断された息子の遺体を見せられるわけがない。
さゆりはパトカーに押し込まれ、最愛の息子に会えない苦悶、突つと訪れた絶望に動顚しながら昨日からの経緯を説明した。
”「……一時間経っても帰らないからコンビニまで探したけど、どこにもいなくて……コンビニの店員さんは、そんな男の子来てないって言うし……それで当真君にも手伝って貰ったけど、やっぱりいなくて」”
なんと当真勝雄も捜索に加わっていたのか!
間違いなく怪しい。
彼がカエル男なら、わざと被害者がいない場所に誘導できたかもしれない。
捜索を切り上げた午前三時以降に被害者の躯をバラバラにしたのだろう。
でも、なんか腑に落ちない。あまりにも犯人特定が簡単すぎる。
もしも……もしもだ。こんなことはありえないと思うかもしれないけど、もしもカエル男の正体が男ではなく、女だとしたら?
もしも連続殺人犯の正体が有働さゆり(三十五)だとしたら。
最後のどんでん返しとしては十分ありえるだろう。
気になったのは、さゆりの息子の身体にあった痣だ。一日限りのものではなく、慢性的に受けていたと思われる傷痕。
同級生によるイジメの暴行痕と思われたが、イジメっ子は暴行していないと言っていた。
さゆりは息子がイジメを受けていることを知っていたが、どこか人ごとのように俯瞰している節があった。
もしかしたら、あれはさゆりが付けた虐待痕だったのではないだろうか?
古手川と初めて会ったとき、カエル男の話題を振ってきたのも彼女だった。
謎の人物視点のモノローグを振り返ると、
”それ以外の声は雑音として聞き流すようにしている。しかし、今日耳にした雑音の中には興味を誘う言葉もあった。
カエル男──。”
耳にした雑音とは、ニュースのことだったのだろう。古手川とさゆりの会話ではなかった。
これらを踏まえると、有働さゆりが述べていた経緯の説明も疑わしい。
まるで当真勝雄が真犯人ですと、それとなく古手川を誘導しているように聞こえるのだから。
だが、最初の犯行は明らかに力のいる作業だった。大人の遺体を運び、それを階段の庇に吊り下げるという力作業。
二件目の犯行は老人だったので女性でも鈍器で簡単に殺せただろうが、工場に忍び込むという無謀さがさゆりの賢しさからして矛盾している。
となると、当真勝雄を操っていた線も考えられる。教唆犯の可能性が。
有働さゆりの行動には注意を払っておかないといけない。

第一の犯行:OLの死体を集合住宅の階段にある庇に吊るしていた。
第二の犯行:老人の死体を廃車工場に忍んで車のトランクに入れていた。
第三の犯行:男児の身体をバラバラに切断し、内臓も全て取り出して公園に遺棄していた。
すでに三人の犠牲者を出しているが、未だ犯人に繋がる有力な情報は得られず、捜査の難航に警察達も憮然状態。
そんな中、班長の渡瀬が被害者同士のつながりを発見していた。
犯人は五十音順に標的を擇んでいると。
最初の被害者が荒尾礼子。次が指宿仙吉。三人目が有働真人。
苗字の頭文字が、あ、い、う、とつづく……
そこで三つの殺害現場と被害者達の住所を拡大地図に表し、犯人の行動を分析することにした。
連続殺人鬼の特徴的パターンに当てはめていくのだ。
①出遇ったときに相手を襲う。
②標的を尾行して襲う。
③自分に近づいてきた相手を襲う。
この中だと、カエル男はパターンの②が当てはまる。
その理由に渡瀬は、何らかのリストを基に被害者を選別していると云った。
もしかしたら、有働さゆりの教室に通っていた客のリストから標的を擇んでいたのでは?
被害者らが自分の客だったことを、有働さゆりが隠していた可能性もある。
ナツオって【察】
🤔(マサカ…)
父親からの酷い虐待に堪えていた十歳のナツオに、ある変化が現れていた。
自分よりも遥かに弱い生き物——虫やカエルなどの小動物を殺しまくるという愉しみの発見。
十二歳になった今も父親から虐待を受けているのは相変わらずだが、そのころにはもっと大きな標的に代わっていた。
続けていると近所の野良犬や野良猫も見当たらなくなり、手持ち無沙汰となったナツオは、最近越してきた三つ下の女の子に目をつけだした。
或る夏休みの夕刻近く、獲物を探し回っていたナツオは偶然その女の子と出会し、突然の雷雨に後押しされたように廃屋で幼女を殺害した。
死体を弄ぼうとしたところで警察に止められ、現行犯逮捕。
医療少年院に隔離されたナツオは、犯罪心理学者の教授である御前崎先生と初対面する。
改心できれば外の世界に出られると先生に言われ、ナツオは、素直にそれを喜べないでいた。
周囲の人達は自分の罪を知っている。外に出れば皆んなに虐められてしまう危惧があった。
御前崎先生は、「心配要らない」と言う。
名前を変えてしまうんだよ、と。
まさか、その改名が当真勝雄なんじゃ……。
ナツオ、かつお、響きもいっしょ。
幼女と初めて出会ったのは十二歳だが、殺害したのは其の二年後だったのかもしれない。
当真勝雄は四年前に近所の幼女を殺害している。今は十八歳。四年前だと十四歳。担当の医師も御前崎宗孝だった。
これはもう、ナツオの正体は当真勝雄で決まりだと思う。
ひとつ気になるのがナツオの性別だ。名前からして男と勝手に想像するが、明示はされていない。
当真勝雄も地の文で「青年」とか「彼」という三人称が使われているが、だからといって必ずしも男とは限らない。
実は女だったというオチも考えられる。
なぜなら、被害者らは性的暴行を受けていないから。
父親から散々やられてきたのに、だ。
考えられるとしたら、不能か、それとも女か。
ただ、ここが腑に堕ちないのだが、当真勝雄はIQ七十以下だということ。
カエル男は、指紋や体液などの痕跡を残していなかったし、目撃者すらいなかった。
メモ書きも稚拙なようで自分に繋がらない文章にしている。
となると、また新たな仮説が出てしまう。
カエル男が当真勝雄なら、彼は知能の高いもう一つの人格を宿していると。

事件解決と思いきや不覚を取られ、古手川は襲われてしまった。
真っ暗な部屋で覚醒し、古手川は真犯人の正体に驚きを隠せない。
これまでの事件を振り返り、納得できるまで熟考する。
一つ、解せないところがあった。最初の事件——荒尾礼子の遺体が階段の庇に吊るされていた——である。
場所は集合住宅の十三階で、手摺りを足場にしないと庇のフックに手が届かない。
シートに包まれた成人女性の死体を、どうやって一人の犯人が成し遂げたというのか?
怪力の持ち主ならまだ解かるが、そうではない。
これまでのカエル男の犯行手口に共犯者の影も見られなかったし、複数で行動すれば却って目立ってしまうだろう。
では、その方法を考えてみようではないか。
一つ、思いついた案がある。
要は死体を手摺りまでの高さまで持ち上げることができれば良いわけだ。あとは死体の口内にロープ付きのフックを引っ掛け、手摺りを足場にしてロープの反対側を庇のフックに引っ掛けるだけ。
ある商品を使えば女性でも吊るすことは可能だ。
それは『電動式エアマットレス』。
充電式のものを使えばコンセントはいらないし、キャリーバッグなどで簡単に運ぶことも出来る。
手摺りの高さが凡そ一一〇〜一三〇センチくらい。エアマットレスの膨らんだ高さが四〇センチとすれば、三つほどで足りるだろう。
其の三つを重ねて死体を上に載せる。下から順にマットレスを膨らませれば、先の仕方で吊るすことが出来る。
空気の厚みで死体を手摺りの高さまで持ち上げれば腕力はいらない。
実際に人を載せた状態で膨らませられるのかは分からないけど……。
死闘の末、古手川は満身創痍で無事生還した。
真犯人も捕まり、いよいよ物語のページが終わりに近づいたとき、まったく予期しなかった展開を見せていく。
或る人物を訪ねた渡瀬と車椅子の古手川が、捕まった犯人についての事情聴取をしていたときだった。
——
これは意外!
予想通りの真犯人で終わると思いきや、まだ黒幕が一人潜んでいたとは。
ただ、物的証拠がないため逮捕することはできないでしょう。
彼がしたことは、乖離した人格を目覚めさせただけ。
最後の最後で明らかとなった連続殺人鬼の黒幕。
しかし、物的証拠がないために警察らは動くことができない。
このまま黒幕の犯人を野放しにしたまま物語は終わってしまうのか……。
いや、著者は素晴らしいエピローグを用意していた。
五十音順に被害者を擇び、殺害していたカエル男——に成りたがっている虞犯者が心神喪失を理由に再び世に放たれることになる。
この虞犯者は、事件の続きを再開させるつもりだ。
次に擇ばれる五十音順の被害者——
正にそれが黒幕の人物の名だったのである。
イヤミスで終わらせず良かった。
後味よろしく、解決のさせ方に驚歎です。そこまで考えていたのかと。
【刺激された感情の種類:10種】
賛美系🥳:★
褒=解決策に納得する👍(1)
驚嘆系😳:★★★
驚=後から知る意外な事実😳(1)
唖=俄に起こる想定外な事件😳(2)
思考系🤔:★★★★★★★
慮=或る状況の打開策を考察🤔💡(1)
察=ヒントから展開の予測がつく🤔(2)
疑=疑惑を確信する証拠や傍証🤔(1)
問=状況から予想される行動と異なる🤔❓(1)
仮=知り得た情報からある仮説が立つ🤔(2)
不幸系😫:★
蟠=中途半端でまだ未解決😖(1)
恐怖系😣:★
慄=回避反応が出る気持ち悪さ😖(1)
全体を通してのプロット
【舞台設定】
十二月の始め、新聞配達のバイトをしていた学生が、集合住宅の階段でシートに包まれていた女性の遺体を発見する。
其の通報が埼玉県警に入り、ベテラン刑事と組む新米の古手川を筆頭に捜査が始まっていく。
被害者が発見されたのは十三階の階段。其の庇にあるフックにサンドバッグ状のブルーシートが縄で吊るされていた。
犯人は現場にメモを書いた紙片を残している。
『きょう、かえるをつかまえたよ。(略)』
被害者をカエルとして扱う殺人鬼の異様な姿が垣間見えていた。
【問題提起】
同じ市内で第二の殺人が起きてしまう。
マスメディアにより第二の殺人事件が明るみとなり、この犯人に『カエル男』という異名を与えてしまう。それによって対岸の火事と楽観視していた市民中に恐怖が伝播していく。
【問題拡張】
カエル男による第三の犠牲者が出てしまう。
記者会見で被害者らの共通する繋がりを記者に悟られてしまう。何を基準にして標的を擇んでいるのか。それにより、更に恐怖が市民中に波紋していく。
同じ市内で模倣犯が現れ、市民の恐慌状態が加速する。
ついに第四の犠牲者を出してしまう。
【試練の時】
捜査本部である飯能署に、暴徒化した市民らが押し寄せてくる。
虞犯者リストの一人——当真勝雄の居場所が漏れてしまい、魔女狩り宛らの市民らが攻め込もうとする。
【解決手段】
真相に辿りついた古手川が真犯人と死闘する。
読了した感想
◆著者がこの物語でテーマにしているもの
それは『刑法三十九条の見直し』。
人の命を奪うような犯罪であっても、加害者に責任能力がない——心神喪失者と判断されれば罪に問われないという法律である。
加害者は医療施設で入院することになり、社会復帰へのケアが施される。
概ね入院期間は十八ヶ月以内となっているが、それよりも早く退院することもあるという。
それからは保護観察下の許、約三年の通院を強いられるのだが、もし、また同じ犯罪を繰り返したらどうするのか?
彼らは社会復帰するために名前を変え、住む地域も変える。
できれば自分の家族に近づけたくないというのが大方の本音だろう。
社会の善悪も解らない猛獣を解き放してしまうようなものなのだから。
問題は遺族の気持ちである。自分の家族を奪っておいて無罪というのは、あまりにも酷な判決ではないだろうか?
犯罪は犯罪。仮令、精神に障害を抱えていようが健常者と同等に刑の裁きを受けるべきなのでは。
著書では面白いことを云っています。
『罰を与えられて罪を償うのは義務ではなく、権利なのだ。刑法三十九条という法律は患者を救うのではなく、患者からその権利を奪うものではないか』と。
個人的にも同感してしまいます。
◆カエル男の犯行手口に感じた違和感
この猟奇的な連続殺人鬼の犠牲者は、どれも同じ犯人によって殺害され、死体に色を加えられていた。
吊るす、潰す、解剖する、焼く。
しかし、唯一、一貫していないものがあった。
二人目の犠牲者だけ、犯人は中途半端に遺棄していた。
潰すという行為をしたのは作業員である。
なぜ、自分の作品の完成を他人任せにするような真似をしたのか?
考えられるとしたら、まず機械の操作方法が分からならい。それと、自分でプレスした場合、血も乾いてしまって遺体に気づかない惧れがある。
今回、たまたま作業員が異音に気づいて事件が発覚したが、人によってはそのまま作業を続けてしまい、遺体があるとも知られずに終わってしまう可能性もあった。
狡猾な犯人にしては、ちょっと運に助けられてる感が否めない。
例えば、死体を大型車で何度も轢き潰すとかの方法も出来たはず。この方が一貫性を感じるし、犯人のスタイルがブレないと思いました。
◆巧妙な叙述トリック
主人公の古手川刑事がカエル男を捜査していく物語とは別に、或る小学生の視点を描く描写に注目。
その小学生は『ナツオ』という名前なのですが、性別が不詳。
これまでに幾度も叙述トリックで騙されてきたのでピンと来ました。
敢えて性を隠していると。
これは引っかかりますよね。あの虐待シーンも、そっちを想像してしまうように描いていたし。
いや〜巧妙でありました。
◆古手川刑事の非力さにおったまげ
新人でまだ経験値も少ないから仕様がないと謂えばそうなんだけど、あまりにも死闘シーンが痛々しいし、無様で格好わるい。
「もっと銃撃の練習をしろよ」と喝を入れたくなります。
最後は全身包帯だらけでミイラ宛らの満身創痍でしたからね。
同情を抱くほど人としての欠点も少ないので、ただただ失望です。
脇役だった渡瀬刑事の株を上げるだけの存在って印象が強い。
新人の労災手当て、高く付いたでしょうね。
◆ネタバレの目次がもったいない
できれば第一発見者の驚愕をこちらも擬似体験したかったのですが、どんな死体なのか目次に書いてあるため驚けない。
ど直球過ぎません?
僕だったらどんな目次にするか考えてみましょう。
【目次】
吊るす → カエル狩りの始動
潰す → 浮上した不起訴の虞犯者
解剖する → カエル男の擇び方
焼く → 被害者の共通点と物的証拠
告げる → 辛勝と妄想と因果
これなら死体の様子は分からないし、最後どうなるのかも想像しにくい。
且つ、各章の一番重要な部分が見出しに表れている。
こんな感じでどうでしょう。
『連続殺人鬼カエル男 』
中山七里(著)
宝島社
2011年2月1日発売
全348ページ



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