前半のストーリー
高給取りの夫と2人の子を持ち、美人でスタイルも良い専業主婦・藤堂玲花。自由が丘の高級住宅地で裕福に暮らす彼女だが、その過去には意外な事実が隠されていた……。現在の殺人事件と高校生時代の玲花の隠された過去が交錯する暗黒ミステリ。ラストの大どんでん返しに注目!
U-NEXT
旧友の葬儀に参列していた藤堂玲花は、
高校時代に親密となった教師と出遇う。
再び破滅の情欲へと身を疾らせるため、
夫や子供を蔑ろに教師と逢瀬を重ねる。
◆登場人物
藤堂玲花……ゲーテッドタウンのマドンナ
藤堂沙希……5歳児の長女
藤堂和葉……6ヶ月の次女
藤堂優太……玲花の夫
細田美優……専業主婦でママ友の頭領格
大泉菜々子……ゲーテッドタウンの新米顔
辻沢慎……聖蘭女学園高校の英語教師
水木……21歳、イケメンのカフェ店主
矢部今日子……玲花の元担任教師
『悪い女 藤堂玲花、仮面の日々』
吉川英梨(著)
朝日新聞出版
2023年9月7日発売
購入金額の最大40%が、
32日後にポイントで還元されます!
※U-NEXTポイントの消費分は対象外
詳しくは——
感情トリガーとあらすじ、場面
※:本ページの情報は2023年10月時点のものです。
最新の配信状況はU–NEXTサイトにてご確認ください。
【感情のトリガー↓】0~276P(スマホ)
①教師と邂逅【察】
②蜜月の発覚【謎】
③隠れ潜む敵【察・怪/謎・蔑】
【トリガーの内訳】
①教師と邂逅(葬儀場で教師と元教え子が出遇う)
└禁断の関係【察】(マサカ…)
②蜜月の発覚(玲花の不貞行為がバレる)
└夫の情報源【謎】(ナゾ)
③隠れ潜む敵(玲花を陥れたがっている存在が現る)
├生徒の挨拶【察】(マサカ…)
├外から悲鳴【怪/謎】(ン⁉︎ ナンダロウ?/ナゾ)
└生理の管理【蔑】(キモチワル)
【刺激された感情の種類:4種】
思考:★★★★
謎=行動や現象に不可解を残す(2)
察=ヒントから展開の予測がつく(2)
恐怖:★
怪=様子に違和感を覚える(1)
攻撃:★
蔑=愚劣な行いを見下す(1)
①教師と邂逅【察】
あらすじ——
高級集合住宅地内に住む二児の母——
藤堂玲花は、家族揃って歓迎会に参加していた。
新しく越してきた大泉家と知り合い、
玲花は奥さんから関心を持たれてしまう。
後日、逆らえないママ友グループにつき添い、
行きつけのカフェ喫茶に来店する。
そこで母から5年ぶりの連絡が入り、
高校時代の元親友が亡くなったことを知る。
すでに絶交していた楜沢由香の葬儀に参列し、
玲花は元英語の顧問だった辻沢と再会する。
禁断の関係【察】
ゲーテッドタウンに住む39の子持ち人妻、
藤堂玲花は、元同級生の葬儀に来ていた。
斎場の参列者のなかに、
当時、英語の顧問をしていた辻沢慎がいた。
同級生の由香が火葬場に運ばれ、
玲花は葬儀場の駐車場へと出ていく。
辻沢の車の中を窺っていると、
本人が玲花のまえに現れた。
流れで辻沢の車に乗ってしまい、
意味深な心情を叫んでいた場面である。
辻沢の車内。
こんなに至近距離で目を合わせたのは二十年ぶりだった。目尻の皺が増えているのを見ると、とがっていた性格も少し丸くなったのかなと思う。一方で、相変わらず唇は薄く乾いている。薄情な性格は直っていなそうだなとも思う。
《前掲書、 P.47》※スマホで閲覧
「お前はどこへ行きたいの?」
あなたのいる場所なら、どこへでも──。
二十年前の私が、叫んでいる。
——まさか……
教師と密月の仲だったのか?
斎場で“スカートの中がねっとりした”とは、
冷や汗のことではなく、アレのこと?
周囲からマドンナと称されるほどの麗人は
実は、とんでもなく○乱な女だったのか。
5歳児の長女と、6ヶ月の次女……、
本当に旦那の子なのか怪しいものだね。
■一章の概要
②蜜月の発覚【謎】
あらすじ——
楜沢由香の葬儀を終えた晩夏、
玲花はママ友達と小学校の説明会に参加する。
流れで聖蘭女学園高校を訪ねることになり、
玲花は再び勤務中の辻沢慎と再会する。
後日、辻沢と一線を越えてしまった玲花は、
夫の優太に疑惑をもたれてしまう。
玲花はイケメンがオーナーのカフェ店に来店し、
夫に密告していたママ友を推定する。
夫の情報源【謎】
きっかけは元親友の葬儀のとき。
玲花は教師の辻沢慎と再会してしまい、
長年眠っていた情欲が目覚めだした。
後日、小学校の説明会にママ友と参加し、
ながれで聖蘭女学園高校におもむく。
再び、50になった勤務中の辻沢と出会した。
後日、抗しがたい衝動に負けた玲花は、
その躰を彼に許してしまう。
恋の炎が再燃してしまった玲花は、
辻沢と交わる次の約束を待ち望んだ。
が、帰宅していた玲花に、
哀れな旦那が尋ねていた。
予め用意していた言い訳で玲花は切り抜けた。
でも、よく考えるとおかしい……。
夫が夜遅くに仕事へ出掛けていったあと、
そのことに玲花が気づく場面である。
藤堂夫妻の寝室。
差し込むように、夫の言葉を思い出す。〝今日の昼間、なにしてたの〟
《前掲書、 P.137》
どうして夫は疑惑を持ったのだろう。託児所に和葉を預けていたと、どうやって知ったのだろう。
誰かがわざわざ教えたのだろうか。
——なぞ。
旦那が玲花の鞄に盗聴器を仕掛けていたか、
彼女のスマホをGPSで確認していたのかも。
愛されてないことは気づいてるはず。
その妻が急に女らしくなれば、
不倫を疑うのも当然でしょう。
おそらく、旦那も不倫しているはずだ。
仕事の急用なんて、よくある口実。
相手はママ友の菜々子か美優あたりか。
というか、なんで結婚したんだろ?
子供が出来てしまったから、
世間体を気にして仕方なく?
最後、どうなるんだろう??
妻の裏切りを知った執念深い夫が、
恐ろしい復讐に出てバッドエンドとなるのか。
ハッピーエンドには、ならないだろうね。
■沢渡玲花の高校時代
③隠れ潜む敵【察・怪/謎・蔑】
あらすじ——
初秋に開かれた沙希の運動会を、
玲花は抜け出して辻沢の下へ会いに行く。
学校で剣道の稽古をつけていた辻沢と会い、
玲花は、帰り際の生徒から奥さんと間違われる。
帰宅後、玲花の自宅に不審な電話がかかり、
ネット上に彼女のアイコラ画像が流出される。
辻沢と相瀬していた写真がポストに入れられ、
玲花は驚くも、大して関心をもたない。
が、ゲーテッドタウンに矢部今日子が現れ、
逃げるように辻沢のところへ駆け込む。
辻沢に送られて帰宅した玲花は、
湯に浸かっている時に悲鳴を耳にする。
そのすぐ後、パトカーと救急車が現れ、
隣家の大泉家にブルーシートが掛けられる。
❶生徒の挨拶【察】
次女の運動会を抜けだしてきた玲花は、
聖蘭女学園高校に直行した。
剣道の稽古をつけている辻沢を見つけ、
玲花はひとときの安堵をおぼえる。
稽古が終わり、生徒の一人が玲花に気がついた。
その生徒が玲花を辻沢の奥さんだと誤解し、
挨拶をして去っていく場面である
聖蘭女学園高校の体育館。
着替えた生徒たちが、サンリオのキャラクターが描かれたうちわをパタパタ振りながら、更衣室から出てきた。「さようならー」と行きすぎていく。辻沢は「はい、さようなら」と、教師然として答えた。二十年前には考えられない口調だった。
《前掲書、 P.200~201》
ひとりの女子生徒が振り返った。
「先生の奥さん?」
私は無言で、辻沢を見た。辻沢は「早く帰れよ」としか答えない。生徒は私に元気よく手を振った。
「バイバイ、キョウコさん!」
——まさか……
キョウコとは、矢部今日子のことか?
玲花の高校時代の担任教師……。
辻沢は、彼女はいないと言っていたが、
妻はいるのかもしれない。
この物語に出てくる登場人物——
みんな蒙昧な連中しかいないではないか。
盛りがついたメス猫のように刺激を求め、
その先にある社会的制裁に盲目の玲花。
腹を痛めた小さな子供を放ったらかして、
阿呆な男にうつつをぬかしている憐れな女。
他を蔑み、己らの恵み豊かさを顕示する——
ママ友と呼ばれる有象無象の連中。
既婚者と知りながらも手を出す傲った男。
なんか、みんなマキャベリストに見えてくる。
目的の為なら他人を利用する人たちに。
❷外から悲鳴【怪/謎】
長女の晴れ舞台である幼稚園の運動会よりも、
辻沢の方を優先していた藤堂玲花。
冷めた家庭に帰宅後、異変が起きる。
玲花目当てで掛けてくる男達からの電話。
玲花の合成された淫らな写真が、
ネットで公開されていたのだ。
ゲーテッドタウンにもチラシが撒かれ、
住民からの冷たい視線が玲花に差される。
夫に弱音を吐く演技をしていた玲花は、
相変わらず辻沢のもとへ会いに行った。
ベビーカーに乗せた和葉を他人に残して……。
辻沢に送ってもらい、玲花は帰宅する。
彼のこと以外、全く関心がない玲花は、
平然と湯船に浸かっていた。
その時、
なにやら外から悲鳴が聞こえてきた場面である。
自宅の浴室。
女性の金切り声が聞こえて、目を開ける。
《前掲書、 P.232》
男性の怒声が続いた。(中略)男女の言い争いは、建物の外の換気口をつたい、浴室に届いている。金属と湿気で声は共鳴し合い、まるでテープの遅回しのように歪んで、私の頭上に降り注いだ。湯船につかっていても、背筋が寒くなる。
やがて女性は長い悲鳴を上げたが、それは唐突に途切れた。一瞬の間を置いて届いたのは、子どもの泣き声だった。
——ん!? なんだろう?
怒鳴っていた男性は誰だろうか。
細田美優の旦那
大泉菜々子の旦那
玲花の夫である優太
この3人が挙げられる。
カフェ店の水木は、タウン外だから除外。
悲鳴を上げていた女は——
細田美優
大泉菜々子
この2人ぐらいしかいない。
でも、なぜ揉めていたのか?
玲花の合成写真と関係がありそうだよね。
辻沢との不倫も知っている誰か……。
玲花が辻沢にご執心している水面下で、
いったい、何が行われているのか。
興が湧いてきます。
❸生理の管理【蔑】
辻沢と逢瀬を重ねていた高校2年の夏休み。
玲花の畏れる父親が京都から戻っていた。
連んでた楜沢由香の非行も知っている父が、
娘の目の前で妻を叱咤する。
父が娘の派手な下着について咎めると、
恐怖のあまり、玲花は失禁を晒していた。
その日から始まったのだった。
父の指示による母の異常な監視が……
沢渡家の自宅。
帰りの京王線の中で、下腹部と腰に、重たく垂れ下がるような痛みを感じた。(中略)帰宅して、夕食の支度を始めていた母に、生理がきたことを報告した。(中略)母は赤ペンを出して、今日の日付から六日後まで、赤マルをつけた。前月のものを確認して、「周期通りね」と微笑みかけた。京都の官舎の布団を汚してしまってから、私は生理周期まで管理されている。
《前掲書、 P.276》
——気持ちわる。
沢渡家の闇が垣間見えてくる。
警察官僚という堅い職業でありながら、
妻に暴言と暴力を振るう玲花の父親。
そんな夫に頭が上がらず、
娘に八つ当たりをするネグレクトな母親。
二人に支配される環境で育っていた哀れな娘。
そりゃあ、性的奔放性が高いのも肯ける。
玲花は両親や社会に対して反抗したいのだ。
今まで耐えてきた分の恨みを晴らすために。
いわば精神の均衡を保つための防衛本能。
玲花を欲情の化身にした因は両親だった。
まさか、生理周期まで監視されていたとは……
■沢渡玲花の高二時代
感想(前半)
◆恋人に冷めている心理描写がえぐい
高校時代から美人と持て囃されていた沢渡玲花。
彼女には気取ったイケメンの彼氏がいた。
のちに旦那となる藤堂優太である。
玲花の貞操を偽善で守っていた優太は、
将来を見据えた関係を思いえがき、
恋人にそれを愉しそうに語っていた。
滔々とつづく彼のセリフの合間に、
玲花の心情が描かれている内容——
そこに注目してほしい。
優太への愛情が欠片もないことが覗える。
そういう描き方もあるのかと勉強になります。
◆官能とミステリを融合させている
ヒロインである藤堂玲花は、クズである。
自身の子供たちよりも不倫が第一優先で、
そのためなら平気で嘘を演じられる悪い女。
そこがこの物語の魅力なところです。
いかにして、この女は破滅していくのか。
そこにミステリが絡んでいるせいで、
犯人は誰なのかと最後まで読みたくなります。
◆玲花の依存度に狂気が孕んでいる
高校時代、悪友の由香のせいで、
体育会系の強い辻沢に怒られたのがきっかけ。
仕返しで彼をハニートラップに嵌めるつもりが、
玲花の依存対象になっていた。
自分の行動の源は、すべて辻沢にあり、
すでに恋人の優太を眼中から消している。
家族や友達、恋人には嘘をかさね、
辻沢には逢瀬をかさねる始末。
ついに玲花が結婚を彼に匂わせると、
辻沢は、自分に前科があるからと回避する。
玲花の父親は警察官僚で、前科など問題外だ。
すると、玲花は簡単に言ってのけた。
『それじゃ、殺そうかな』と……。
自分の父親を……。
実際、20年後の玲花の父親は、
すでに交通事故で亡くなっている。
いつ、事故にあったのか?
それは、玲花がしくんだ事故だったのか?
後半も楽しみでしょうがない。
後半の感情トリガー
【感情のトリガー↓】276~510P(スマホ)
①隣人の接点【謎】
②逢瀬の終焉【緊/驚】
③希望と破滅【忌】
【トリガーの内訳】
①隣人の接点(被害者の奇妙な繋がりを知る)
└由香のメモ【謎】(ナゾ)
②逢瀬の終焉(男女の不貞関係が終わりを迎える)
├女の執着心【怖】(ゾッ トスル)
└娘の反抗期【緊/驚】(ハラハラ/エッ⁉︎)
③希望と破滅
└近親の慰み【忌】(ムリムリ)
【刺激された感情の種類:4種】
驚度:★
驚=予想外の出来事(1)
思考:★
謎=行動や現象に不可解を残す(1)
恐怖:★★★
緊=不安への緊迫感(1)
忌=生理的な回避反応(1)
怖=悪い予感を感づる無気味さ(1)
全体を通してのプロット
A【人物・世界観の説明】(藤堂玲花編のみ)
①舞台が日本都内の高級集合住宅地内
②夫と二児の娘がいる藤堂玲花の現状
a【物語が始まる起点・問題】
☆疎遠になっていた元旧友の死亡
☆旧友の葬儀で昔の想い人と邂逅
B【発生した問題への対処】
○ふたたび辻沢先生と逢瀬を重ねる
b【問題の広がり・深刻化・窮地】
①隣人の夫人に不貞の疑いを密告される
②辻沢先生に奥さんがいる疑惑をもつ
③タウン内で玲花のアイコラ画像が撒かれる
④昔の担任教師——矢部今日子と出遭う
⑤隣家で不審死事件が起きる
C【人物の葛藤・苦しみ】
①刑事から訊き込みを受ける
②辻沢先生の奥さんを確認しに行く
③亡くなった元旧友の自宅を調べに行く
④辻沢との不倫で、夫が娘と家を出てしまう
④昔書いた辻沢へのレターが見られそうになる
⑤辻沢先生と無理心中を図ろうとする
c【問題解決に向かう最後の決意】
★玲花が今ある幸せに気づく
D【問題解決への行動】
○関係者たちに、けじめを付けていく
読了した感想
◆本当の恋とは狂気に満ちたものなのか
ひとりの男をこよなく愛していた藤堂玲花。
彼女の独占したい恋心は常軌を逸していた。
相手に愛されていないと知りながら——
他に抱いている女がいたとしても——
いつか自分を選んでくれると愛しつづける。
どんなに不幸に晒されようが玲花は平気だった。
辻沢慎という、彼さえ隣りにいてくれれば。
やがて想いは破裂寸前まで膨らんでいく。
そして、玲花は辻沢とともに死のうとした。
まさに『狂気』……。
◆ブチ切れた玲花にハラハラ
ずっと、暴力亭主の父親に怯えていた玲花が、
ある事件をきっかけにブチ切れる場面がやばい。
あそこは読んでいて心拍数が上がりました。
玲花の淑女然とした口調が乱暴に変わり、
これまで我慢してきた恨みが爆発するところ。
いままで従属的だった娘の豹変ぶりに、
父親は唖然じょうたい。
しかも、玲花の手には凶器が握られている。
あそこは迫真していて凄かった。
◆最後の忌避感とイヤミス感が濃く残る
吉川英梨先生の描く人間の闇が興味深かった。
人の淵源にある穢らわしいぶぶんです。
ママ友グループ内に発生する同調圧力。
味方のフリを装って、裏で攻撃してくる女達。
家族を支配してないと安心できない臆病な父。
受けた暴力を娘に同じことして八つ当たる母。
自分の子供に性的虐待を繰り返していた母親。
妙にリアリティがあって、芸術を感じました。
やはり、不幸な解決で終わりましたが、
その後が気になります。
藤堂玲花は、娘達をちゃんと育てられるのか?
三つ子の魂百までって言いますからね……。
『悪い女 藤堂玲花、仮面の日々』
吉川英梨(著)
朝日新聞出版
2023年9月7日発売
想像力を鍛えて脳内映像化マスターへ!
※:執筆者の独断と偏見が含まれます。
※:本ページの情報は2023年10月時点のものです。
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