サスペンス・ミステリー

medium 霊媒探偵城塚翡翠(感情トリガー/紹介/あらすじ/感想)

前半のストーリー

死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。だがその魔手は彼女へと迫り――。ミステリランキング5冠、最驚かつ最叫の傑作!(中略)すべてが、伏線。
UNEXT

女受けの良い推理作家の香月史郎は、
ある機会でうるわしき霊媒師と邂逅かいこうする。
行先ゆくさきで遭遇する事件を解決するため、
霊媒の力をたよりに香月が論理的にみちびく。

◆登場人物
香月こうげつ史郎しろう……女性ファンの多いミステリ・推理作家
城塚じょうづか翡翠ひすい……資産家の娘で若く美しい霊媒師
千和崎ちわさきまこと……翡翠と共に暮らす付き添い人
鐘場かねば正和まさかず……警視庁捜査一課の警部で香月とは知り合い
倉持くらもち結花ゆいか……香月史郎の大学の後輩

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』
相沢沙呼(著)
遠田志帆(イラスト)
坂野公一(デザイン)
講談社
2021年9月15日発売
購入金額の最大40%が、
32日後にポイントで還元されます!

※U-NEXTポイントの消費分は対象外
詳しくは——

感情トリガーとあらすじ、場面

※:本ページの情報は2023年12月時点のものです。
  最新の配信状況はU–NEXTサイトにてご確認ください。

【感情のトリガー↓】0~312P(スマホ)
①泣き女【//
②鏡の女【/

【トリガーの内訳】
①泣き女(推理作家が霊媒師の女性と邂逅する)
 ├霊媒師の力【訝】(ハ?)
 ├最後の笑顔【察】(マサカ…)
 ├翡翠の演技【驚】(エッ⁉︎ イガイ)
 ├犯人の性別【訝/謎】(ハ?/ナゾ)
 ├翡翠の能力【知】(ヘェ~)
 └亡霊の憑依【呆/訝】(ッ⁉︎/ハ?)
②鏡の女(作家と霊媒師が呪いの館を訪れる)
 ├痛覚の実験【茫】(????)
 ├犯人が判明【呆】(ッ⁉︎—— )
 ├呪いの書館【興】(ワクワク)
 ├鏡の中の女【怖】(ゾッ トスル)
 ├三つの夢幻【謎/謎】(ナゾ/ナゾ)
 └合理的証拠【肯】(タシカニ)

【刺激された感情の種類:10種
驚度:★★★★
 驚=予想外の出来事(1)
 茫=不可解な現象を目撃する(1)
 呆=突然で呆気にとられる(2)
思考★★★★★★★★★
 知=豆知識を教えてくれる(1)
 訝=疑問を抱かせる言動や描写(3)
 謎=行動や現象に不可解を残す(3)
 肯=諭す言葉に納得してしまう(1)
 察=ヒントから展開の予測がつく(1)
恐怖:★
 怖=悪い予感を感づる無気味さ(1)
乗気:★
 興=まだ未開な出来事への期待(1)

①泣き女【訝・察・驚・訝/謎・知・呆/訝】

あらすじ——
関東地方で連続死体遺棄事件が起きていた。
推理作家の香月こうげつ史郎しろうは、霊媒れいばいの女性と、
いくつもの事件を解決に導いた実績があり、
遺族から犯人をつかまえて欲しいとたのまれる。
香月は、その霊媒師と初めて出会った——
最初の事件のことをり返る。
 ※
香月は大学の後輩に当たる倉持くらもち結花ゆいかに付きい、
霊媒師の住むタワーマンションを訪れる。
若いしん的な霊媒師の女性と対面し、
倉持がなやむ霊障についててもらう。
後日、倉持の部屋を調べるということで、
一緒に付き添うことになった香月は、
霊媒師の城塚じょうづか翡翠ひすいと待ち合わせをする。
香月と翡翠が倉持の住むマンションを訪ね、
くなっている彼女を発見する。
数日後、香月は再び城塚翡翠と出会い、
殺された倉持のマンションを訪れる。
翡翠が倉持の部屋で降霊こうれいをおこない、
推理に必要な手がかりを言い残す。
後日、容疑者を呼び出した香月が論告ろんこくし、
香月の知り合いの鐘場かねば警部が犯人を逮捕する。

❶霊媒師の力【訝】

若く、ミステリアスな雰囲気のただよう——
二十代の霊媒れいばいの下を訪ねた香月こうげつ史郎しろう
彼は大学の後輩にあたる綺麗な女性——
倉持くらもち結花ゆいかの付きいだった。
彼女は最近、霊障になやまされているらしい。
高級住宅街にある高層ビル上層階の部屋で、
二人は霊媒師の城塚じょうづか翡翠ひすいと対面する。
倉持結花の身辺を読み取っていた霊媒師が、
なにやら不思議な現象を起こす場面シーンである。

城塚翡翠が霊媒を行う怪しげな個室。

「これから、倉持さんの周りを歩き回ります。足音や気配が気になるかもしれませんけれど、お化けじゃなくて、わたしですから、安心してください」
「はい」
 (中略)
「いえ、その……。誰か、あたしに触ってますよね?」
「いや、そんなことは……」
「だって、その、肩とか、手とかに……」
 結花の手を見る。彼女は掌を上に向けたままだった。ずっと香月の視界に入っていたが、誰も彼女の手には触れていない。誰かが触れたなど、それはありえないことだろう。

《前掲書、 P.38~40》※スマホで閲覧

——は?

これはトリックなのか?
どうやって触れたんだろう?
まさか、ほんとに霊の仕業じゃないよね?

❷最後の笑顔【察】

倉持くらもち結花ゆいかが悩む心霊現象の原因をさぐるため、
後日、霊媒師が彼女の家をたずねるという。
香月も同行することに承諾し、
この日は倉持と帰ることになった。
まだ暑い六月の帰り道で、
倉持と香月が別れる場面シーンである。

「そう、ですね。来週も、付き合わせてすみませんが、よろしくお願いします」
 結花はまた頭を下げた。
 香月はおどけるみたいに肩を竦めて言う。
「まさか女の子の家にお邪魔することになるなんてね」
「片付けないと……。時間あるかなぁ」
 それから、笑って言う。
「そのときは、あたしのアイスコーヒー、飲んでくださいね。美味しいですよ」
「それは楽しみだ」
 電車が来る時間だったので、二人はそこで別れた。
 それが、香月史郎が倉持結花の笑顔を見た、最後になった。

《前掲書、 P.56~57》

——まさか……

倉持結花が死んでしまうということ?
ん〜、城塚翡翠がどうもあやしい。
詐欺師のテクニックが使われていました。
抽象的な当てずっぽから、
相手の反応をて範囲をせばめていく方法。
幽霊はミスディレクションで、
連続死体遺棄事件の犯人は城塚なのでは?
なんてね。だったら、驚きますよね?

❸翡翠の演技【驚】

倉持結花の家を調べる当日の早朝、
待ち合わせ場所の駅に香月史郎はやってきた。
ホーム内で朝帰りの男達が女にからんでいる。
その女性は、あの霊媒師の城塚じょうづか翡翠ひすいだった。
彼女の当てた霊視に怖気づき、
やからたちが去っていく。
すぐに香月が翡翠にけ寄り、
彼女の意外な一面をみて質問する。
その質問に翡翠が答えていた場面シーンである。

「あのミステリアスな感じは、演技ですか?」
「ええと……、そのう、真ちゃん──、千和崎さんの、アイデアなんです」
 翡翠は怯えたように、上目遣いでちらちらと香月を見ながら言った。
「普段のわたしが、ふわふわしてて、頼りなくて、威厳がないからって……。その、せっかく才能があっても、それじゃ説得力がないから、どうにか雰囲気を出そうと……。いえ、ええと、騙しているつもりは、まったくない、のです、が……」
「今日は、メイクも違いますね」
「あんな濃いアイシャドウじゃ、わたし、電車に乗れません……」

《前掲書、 P.64》

——えっ!? 意外

超然としていたイメージから、
しとやかな女性の面を見せるとは……。

❹犯人の性別【訝/謎】

霊障に悩んでいた倉持結花と連絡がつかない。
香月史郎は翡翠と彼女のマンションへ行く。
二階の部屋。
なぜか、部屋の鍵がいていた。
いやな予感がする……。
リビングの方へ香月は先に進んでいった。
その中央のテーブル付近で、
後輩の倉持がたおれている。
彼女はすでに亡くなっていた。
床にれたグラスが散乱しており、
争った形跡が見られる。
ベランダ付きの窓はひらかれたままだ。
リビングの入り口にいた翡翠が通報した後、
突然、彼女の様子に異変が起きた場面シーンである。

六月の金曜日、早朝八時過ぎ。
駅から近い倉持結花のマンション2F。

 ただ、焦点の合っていない目で、虚空を見つめている。
 どうしてか、それを恐ろしい光景のように感じて、香月は背筋を震わせた。
「翡翠さん?」
 翡翠の身体がよろめいた。
 貧血の類かもしれない。慌てて駆け寄り、身体を支える。
 膝をついた彼女はきつく瞼を閉ざし、微かに呻いた。
「大丈夫ですか」
「香月先生」
 翡翠が呻いて、言葉を零す。
「犯人は、女の人です」

《前掲書、 P.76》

——は?

なぜ分かるんだ? これも霊視で?
倉持結花の服装は仕事帰りのままだった。
窓が開いていたのは偽装工作かもしれない。
入るにしたって二階だし、
開いてる保証なんてないからね。
だとすると、倉持が犯人を招いた?
彼女は香月に好意的な感じだったから、
彼氏はいなさそうだよね?
だとしたら、確かに女性が疑わしい。
でも、知り合いの男という線もあるのでは?

❺翡翠の能力【知】

後輩に当たる倉持結花は殺害されていた。
事件から数日後、翡翠から連絡が入り、
香月史郎は彼女と喫茶店で会うことにした。
過去に警察から捜査協力をたのまれ、
事件を解決にみちびいていたことを調べたらしい。
犯人をつかまえて欲しいと頼まれた香月が、
翡翠の能力についてたずねていた場面シーンである。

馴染みのある喫茶店。

「多いのは、事故現場となった道を知らずに通り過ぎるときです。突然、目眩に襲われて、一瞬だけ意識が遠のいて……。それで、ぼんやりとした映像が、頭に浮かぶんです。たぶん、それは、人が亡くなる間際に目にした光景……、なんだと思います」
 (中略)
「それは、なにか役立つかもしれませんね。例えば、誰かが自分自身では気づかなくとも第三者に深く恨まれていたりする場合、それがわかる?」
「ええ、たぶん、それは祝福や呪詛のようなものなんだと思います。憎悪の場合、呪いが対象の精神を蝕んで、影響を与える。わたしは、その傷跡を見るような……、そんなイメージです。かなり意識しないと、感じ取るのは難しいんですが」

《前掲書、 P.110~》

——へぇ〜

スーパーナチュラルですね。
死人の最後に見た光景が視えるのと、
メンタリストのように、
相手の人となりがなんとなく分かってしまう。
それを作家の香月が論理的に推理し、
犯人を見つけるようです。
犯人が女の人ってことは、
倉持結花の友達の小林こばやし舞衣まいってこと?

❻亡霊の憑依【呆/訝】

喫茶店で城塚翡翠と再会した香月は、
彼女の頼みで再び倉持結花の家にやってきた。
翡翠が、殺された倉持を降霊こうれいさせてみるらしい。
一回きりの短い時間という制限のなか、
香月は犯人への手がかりを聞き出す必要がある。
そして——、
翡翠が霊媒の力を発揮する場面シーンである。

倉持結花が住んでいたマンション二階。

  悲鳴に、心臓を鷲摑みにされそうになる。
 翡翠は絶叫しながら、上体を跳ね起こした。恐ろしい夢から飛び起きたときのようにも見えた。香月は椅子から離れて、彼女の身体に近づいていた。翡翠の身体が、暴れている。驚愕に見開いた双眸。溺れたように空を蹴る足。長い髪を振り乱して、身を捩っている。
「翡翠さん──」
「冷たい冷たい、冷たい冷たい冷たい!」
 尋常ではない。
 痛々しいほど恐怖に満ちた瞳から、見る見るうちに涙が溢れていく。
「翡翠さん、落ち着いて──。翡翠さん!」

《前掲書、 P.144》

——ッ!?——

降霊させることもできるのね。
倉持結花は、犯人の名前を口にするのか?

②鏡の女【茫・呆・興・怖・謎/謎・肯】

あらすじ——
香月こうげつ史郎しろうは招待された作家仲間の古い洋館で、
息絶えた遺体の主の部屋にいた。
現場にあった凶器と血痕けっこんから、
他殺であることがめいとなる。
香月と一緒に同行していた翡翠ひすいが、
霊視で知ってしまった犯人の正体をかす。
昨日ゆうべ——
香月は怪奇推理作家の黒越くろごしあつしから連絡が入り、
去年、購入したいわくつきの別荘にさそわれる。
霊媒師も呼んで欲しいという要望で、
香月は翡翠も誘って、かがみそうを訪れる。
作家仲間の数名が黒越の別荘に集まり、
香月と翡翠も会食に参加する。
その晩、宿泊する者以外は帰路につき、
残りのメンバーと香月たちが館に外泊する。
翌朝——
家主の黒越が何者かに殺害され、
警察達の事情聴取が始まる。
香月は翡翠から夢で見たという——
参加者達の不思議な行動を告げられる。
香月は翡翠の夢から論理的な証拠を探しだし、
黒越を殺害した真犯人を逮捕させる。

❶痛覚の実験【茫】

倉持結花が殺害された事件の解決後、
幕間で登場する殺人犯が被害者をもてあそ場面シーン

山奥の山荘。

 薄闇の中、女の艶めかしい裸体が浮かび上がっている。
 鶴丘文樹は、傍らに立って、その女を見下ろしていた。
 営業マンらしい地味な短髪と眼鏡、雑踏に紛れるようなスーツ。それら印象の薄い風貌には不釣り合いな、愉悦を堪えるような軽薄な微笑が、彼の口元を歪ませていた。
 鶴丘は、横たわる女に嚙ませた猿轡を外してやる。
「お願いします。助けてください……」
 (中略)
 だが、それでももし、自分の存在に行き着く人間がいるとしたら。
 それは警察組織ではなく、それこそ超常の力を持った人間に、違いないだろう。
 鶴丘は女の身体を洗い流しながら、一人鼻歌を口ずさみ続けていた。


《前掲書、 P.175~183》

——????

鶴丘文樹?
連続殺人犯であることを語っていたが、
いったい、彼の目的はなんなのか?
被害者のからだに刃物をしずませておいて、
「痛くないだろ?」ってくあたり、
かなりサイコな人格だ。
あの世についてもたずねていたしね。

❷犯人が判明【呆】

第二話のプロローグ。
香月は、かがみそうの仕事部屋で殺された——
作家である黒越くろごしあつしの現場を観察していた。
凶器に使われたトロフィーが床に落ちてあり、
被害者の頭部からは出血が確認できる。
つい半日前まで、
一緒にバーベキューを楽しんだ人物だった。
そんな中、
遅れて現れた城塚翡翠がのたまった場面シーンである。

水鏡荘の黒越篤の仕事部屋。

 香月は考えていた。死亡推定時刻は香月でも割り出せそうだ。そうなると、容疑者になりえる人間は誰だろう。そのうちアリバイがあるのは?
 そして、この血液で印された奇妙なマークが意味するものはなんだろう。犯人の目的は……。
 なにから推理すればいいのか。
 廊下の騒がしさが落ち着いたようだ。香月も、必要以上に現場に足を踏み入れないようにしていた。警察が来るまで、こうして現場を保存しておいた方がいいだろう。都内なので、鐘場が事件を担当する可能性もなくはない。翡翠が戻ってきて、香月の傍らに立った。
「先生」翡翠が囁く。「あの、わたし、犯人を知っています」

《前掲書、 P.186~187》

——ッ!?——

全く状況がわからないぞ。
突然、死体を出されて、
犯人がわかったといわれても……。
なかなかインパクトのある序章ですねえ。
ここから回想シーンに移っっていくのかな。

❸呪いの書館【興】

香月史郎の作家仲間から連絡があり、
いわく付きの水鏡荘に彼はさそわれた。
以前、話した城塚翡翠に興味があるそうで
一緒に連れて来て欲しいという。
香月は、ダメ元で翡翠を誘ってみると、
予想に反してこころよく承諾してくれた。
二人は都心から離れたへんきょうの地にある、
古い洋館へと車でたどり着く。
はんが見える前庭のところで、
数名がバーベキューの準備をしていた。
香月と翡翠は作家の黒越くろごしあつしに案内され、
家主達が次々と不幸を被ったという——
館内を見てまわる。
この不気味なやかたを面白がって購入した黒越が、
城塚翡翠に霊を感じるかたずね、
翡翠がそれに答えていた場面シーン

水鏡荘の館内。

 一通り部屋を見たあとで、バーベキューに合流しようということになった。
「それで、城塚さん、どうですか、なにか感じ取れるものがありますか」
 玄関を出るとき、黒越は翡翠にそう訊ねた。「いやな感じは、確かにします。ただ……、これまで、あまり感じたことのない匂いなんです」
「匂い?」
 翡翠の霊視を知らない人間にとって、その表現は奇妙なものに聞こえるのかもしれない。
「深夜になれば、なにかわかることがあるかもしれません」

《前掲書、 P.203》

——ワクワク

いったい、犯人はいつ黒越を襲ったのか?
なんと、名前までわかっていますからね。
どういう展開になっていくのか興が湧く。

❹鏡の中の女【怖】

黒越くろごしあつしの別荘に招待された香月こうげつ翡翠ひすいは、
作家関係者とバーベキューを楽しんだ後
やかたのリビングでり添いながら本を読んでいた。
宿泊する者以外は帰路きろにつき、
残りの人達はみんな自分の部屋に戻っている。
ソファに香月と翡翠の二人きり。
心霊現象を確かめようと徹夜を覚悟したが、
翡翠の方が先にまぶたを閉ざしていた。
そんな甘い時間を過ごしていた時、
香月があやしい気配を感じ取った場面シーンである。

水鏡荘のリビング。

 キスの距離。
 香月は、彼女の髪に触れる。
 その柔らかさを指先で感じ取りながらも、どうにか顔を離したときだった。
 ふと、怖気立つような感覚に全身を包まれる。
 視界の片隅にある大鏡に、なにかが映っていたような気がしたのだ。
 そちらへと、顔を向ける。
 背筋に、冷たい汗が流れ落ちていく。
 鏡の中。
 青い眼をした白人の女が。
 なんの感慨もない虚無に等しい表情で。
 香月のことを、じいっと見つめていた──。

《前掲書、 P.229》

——ゾッとする

え? ガチの幽霊?
トリックとかじゃなくて?
ホラーミステリーじゃん。

❺三つの夢幻【謎/謎】

黒越篤を殺害した容疑者は3人。
翡翠の直感で犯人はすでに特定されている。
が、逮捕させるには物的証拠が必要だ。
遺体が発見された午前九時過ぎ、
自分のてがわれた部屋に翡翠をまねき、
香月は、もう少し、彼女から情報を探ってみる。
すると、
翡翠が事件に関連する夢を語った場面シーンである。

水鏡荘の客室である香月の部屋。

「どのような夢だったのです?」
「全部で、三つです。その三つを、一つの夢として見たのか、一つずつ、三つの夢として見たのか……、眠っている間のことですから、自信がなくて」
 香月は自分が混乱しているのを自覚した。
 その表情を見て、翡翠は悟ったのだろう。慌てて言った。
 (中略)
 翡翠が語ったのは、あまりにもとりとめのない内容だった。ただの夢だともいえるし、仮に霊視の類なのだとしても、なにを意味しているのかまるでわからない。結花の事件のときの魂の共鳴よりは詳細が判明しているが、これが事件解決の手がかりになるとは思えない。

《前掲書、 P.256~259》

——なぞ

一つ目の夢には編集者の有本ありもと道之みちゆきが登場し、
二つ目は黒越の弟子である別所べっしょ幸介こうすけ
最後は黒越の元教え子である新谷しんたに由紀乃ゆきの
これは香月と翡翠が目撃した順番と一緒だ。
深夜零時近くから深夜二時までの間に、
リビングを通ってトイレに向かった順。
黒越の死亡推定時刻も深夜零時から深夜二時。
香月と翡翠はリビングにいたわけだから、
トイレ側にある黒越の部屋をおそえたのは、
先の3名の誰かということになる。
が、翡翠が語った夢の内容は意味不明だった。
そこからどう推理していくのだろうか?

❻合理的証拠【肯】

黒越篤の殺害犯が捕まってから数日後、
香月は翡翠の自宅を訪れていた。
彼女が見た事件に関わる不思議な夢から、
どう論理的に推理していったのかを、
香月で語っていく場面シーンである。

タワーマンション上層階に住む翡翠の自宅。

 それから、香月は三種類の考察を、順に翡翠へと説明した。
「まずは、①新谷由紀乃を犯人と仮定する場合です。彼女が犯人の場合は、事前に洗面所を使った有本さんか別所さんがキャビネットを開けたことになります。
 (中略)パスワードロックが掛かる。新谷さんがデータを削除することは不可能ですから、これは不合理です。つまり、もっとも合理的に状況証拠が整うのは、別所さん犯行説だけなんです」

《前掲書、 P.300~305》

——たしかに

これは納得できますね。
最後(一時四十五分)に洗面台を使った新谷あらたにが、
黒越くろごしの部屋にあるパソコンを使えていた。
この時点で、有本ありもとは犯人から除外できる。
有本がリビングを通ったのは深夜れい時前後。
もし、彼が犯人で黒越を殺害したのなら、
深夜一時くらいでオートロックが掛かり——
スクリーセイバー機能が作動するため——
新谷がパソコンを利用することは不可能。
犯人は、別所べっしょか新谷の二人にしぼられる。
また、洗面台のキャビネットから、
新谷の指紋が二つ検出されていた。
その前に指紋をき取った跡もあったらしい。
手についた血を洗いにいった新谷が、
拭き取った後にまた指紋を残すのはおかしい。
が、別所が犯人で、
彼が指紋を拭き取っていたのなら辻褄つじつまが合う。
その後に利用した新谷が、
キャビネットに触れて指紋を残した。
凄すぎる。
整合性の取れたミステリの推理劇。
自分で解けれないのが悔しい。

感想(前半)

◆謎の解き方が斬新で面白い!

人気推理作家の香月史郎は、
過去に警察への協力で事件を解決させていた。
今回起きていた二つの事件も、
彼一人で解決できたかもしれない。
それぐらいの推理力を持っていました。
でも、それじゃ月並みすぎてつまらない。
そこで、城塚翡翠の登場です。
資産家の娘で——
無償で怪異相談にのる慈善家の——
うるわしき美貌の持ち主。
状況証拠からではからない犯人の正体を、
それにつながる手がかりを翡翠が霊視であたえ、
香月が論理的に媒介ばいかいしてみせるというせ方。
ちょっと、ひねりがいていて最高です。
また、翡翠のギャップもたまらない。
超然としたミステリアスな娘の顔から、
少しお茶目で天然っぽい素顔もかい見れました。
男が好みそうなしとやかさがあり、
顔を立ててくれるような優しさを感じますね。

◆連結した一話完結型が楽しい!

一話ごとにミステリ事件が用意されており、
ちゃんと推理で解決していきます。
擬似的な達成感が味わえますね。
更に、続きが気になる魔法﹅﹅がかかっています。
幕間で登場する、シリアルキラー﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅の存在です。
鶴丘つるおか文樹ふみきという名の人物は、
連続死体遺棄事件の犯人と思われ、
未だ、野放し状態。
被害者を選ぶ傾向パターンは見られるものの、
犯人に繋がる証拠は見つかっていません。
この犯人を逮捕できる人物がいるとしたら、
霊媒能力を持つ城塚翡翠と、
彼女の言葉を論理的に導く香月史郎の二人だけ。
後半もウキウキワクワクですね。

後半の感情トリガー

【感情のトリガー↓】312~720P(スマホ)
①絞殺魔【//
②刺殺魔【/

【トリガーの内訳】
①絞殺魔(女子高生を襲う連続殺人が起きる)
 ├翡翠の呟き【呆/驚】(ッ⁉︎/イガイ)
 ├携帯の着信【呆】(ッ⁉︎——)
 ├犯人でない【訝/解】(ハ?/ナルホド!)
 └菜月の願い【安】(ホッ)
②刺殺魔(連続死体遺棄事件がついに終結する)
 ├実験の対象【訝】(ハ?)
 ├懇ろな男女【悸】(ドキッ)
 ├悪寒の匂い【訝/驚】(ハ?/イガイ
 ├翡翠の嘲笑【謎】(ナゾ)
 ├翡翠の仮面【驚】(エッ⁉️ イガイ)
 ├鋭い洞察力【凄】(スゴッ!)
 └圧巻の決着【褒】(スバラシイ)

【刺激された感情の種類:9種
幸福:★
 安=不安・恐怖が解消される(1)
賛美:★
 褒=解決策に納得する(1)
驚度★★★★★★
 驚=予想外の出来事(3)
 呆=突然で呆気にとられる(2)
 凄=程度が甚だしくて優れてる(1)
思考★★★★★
 解=不可解が解明される(1)
 訝=疑問を抱かせる言動や描写(3)
 謎=行動や現象に不可解を残す(1)
乗気:★
 悸=魅力的な異性と急接近(1)

全体を通してのプロット

第一話 泣き女の殺人

A人物・世界観の説明
①関東地方で連続死体遺棄事件が起きている
②ミステリ作家の香月史郎の下に、
 件の被害者の遺族が依頼で現れる
③香月が、初めて霊媒師と出会い、
 協力して解決してきた過去の事件を巡る

a物語が始まる起点・問題
香月が、霊障に悩む後輩に付きそい、
 霊媒師の城塚翡翠と邂逅する

B発生した問題への対処
○改めて、後輩の自宅を調査するため、
 香月は、翡翠と待ち合わせをする

b問題の広がり・深刻化・窮地
○後輩の自宅で、
 香月と翡翠が死体を発見する

C人物の葛藤・苦しみ
①翡翠から犯人捜しが頼まれ、
 推理のヒントを探っていく
②絞られていた容疑者が、
 警察の調べによりシロだと判明する

c問題解決に向かう最後の決意
★翡翠の霊媒により、
 香月が犯人の正体を掴む

D問題解決への行動
○香月が容疑者を呼び出し、
 犯人であることを論告する

第二話 水鏡荘の殺人

A人物・世界観の説明
①水鏡荘に来ていた香月が、
 死体を観察している
②一緒に同伴していた翡翠が、
 犯人を名指しで宣言する

a物語が始まる起点・問題
作家仲間から曰くつきの別荘に招待される

B発生した問題への対処
○翡翠と香月が、件の別荘で一泊する

b問題の広がり・深刻化・窮地
①別荘の家主が遺体で発見される
②犯人が判っていても、論証が難しい
③違う容疑者が逮捕されてしまう

C人物の葛藤・苦しみ
○霊視能力で視た翡翠の意味不明な夢を、
 香月が論理的に考察する

c問題解決に向かう最後の決意
★鐘場刑事からの情報により、
 香月が犯人を一人に絞る論理を見つける

D問題解決への行動
○翡翠の自宅で、
 香月が合理的な犯行説を語る

第三話 女子高生連続絞殺事件

A人物・世界観の説明
○香月史郎のサイン会に、
 城塚翡翠も顔を出しにくる

a物語が始まる起点・問題
サイン会に現れた女子高生から、
 殺人事件の解決を依頼される

B発生した問題への対処
①鐘場刑事から事件の詳細を教えてもらう
②香月と翡翠が、殺人現場を調べに行く

b問題の広がり・深刻化・窮地
①翡翠が霊媒で感じた犯人の特徴を言う
②被害者達が通っていた高校を訪れ、
 香月達が容疑者を探っていく
③次の犠牲者が出てしまう

C人物の葛藤・苦しみ
○香月、翡翠、警察が集まり、
 容疑者候補を絞っていく

c問題解決に向かう最後の決意
★香月と翡翠が、
 行方を晦ました犯人を捜しにいく

D問題解決への行動
○翡翠の霊媒で居場所を突き止め、
 犯人を捕まえる

最終話 VSエリミネーター

A人物・世界観の説明
なし

a物語が始まる起点・問題
連続死体遺棄事件の遺族の依頼を、
 香月史郎が引き受ける

B発生した問題への対処
○香月は、鐘場刑事と接触し、
 事件の捜査状況を教えてもらう

b問題の広がり・深刻化・窮地
①翡翠を連れて、
 死体が遺棄されてた現場を訪う
②翡翠を自分の別荘に案内する
③翡翠が犯人に捉われる
④衝撃の告白

C人物の葛藤・苦しみ
○過去の事件3つの真相に辿りつく、
 別の推論が展開される

c問題解決に向かう最後の決意
★警察を呼ぶ合図をおくる

D問題解決への行動
○犯人を逮捕させる

読了した感想

このミステリ小説は凄い!

真相に辿たどりつく方法が一つじゃないから。
それに気づかされたときの驚きといったら、
感銘かんめいするものであります。
「すべてが、伏線」というじゃっにも納得。
事件事態は月並みでありますが、
その解決方法が斬新で面白かったですね。
次作も早く読んでみたい!

medium 霊媒探偵城塚翡翠
相沢沙呼(著)
遠田志帆(イラスト)
坂野公一(デザイン)
講談社
2021年9月15日発売
想像力を鍛えて脳内映像化マスターへ!

雛森寧子のミステリな日々(感情トリガー/紹介/あらすじ/感想)
推しの殺人(感情トリガー/紹介/あらすじ/感想)
マッチング(感情トリガー/紹介/あらすじ/感想)
アリアドネの声(感情トリガー/紹介/あらすじ/感想)
ファラオの密室(感情トリガー/紹介/あらすじ/感想)

※:執筆者の独断と偏見が含まれます。
※:本ページの情報は2023年12月時点のものです。
  最新の配信状況はU–NEXTサイトにてご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました