前半のストーリー
(前略)「魔女」と称される彼女の周囲では常に事件が起こり……。記憶を失った少女。川で溺れた子ども。教会で起きた不審死。不可思議な謎の原因は「魔法」なのか。あるいはそれは「嘘」なのか。くのりと僕、二人の高校生の等身大の青春を描く魔法×ミステリー、ここに開幕。
引用元:U-NEXT
理容師の次男である高一の薊拓海は、
同級生から魔女のことを尋ねられる。
その子が記憶を喪くした訳を知るため、
死を喰べる魔女と真相を追いかける。
◆登場人物
薊拓海……内向的で理容師が家業の姉持ち高校生
檻杖くのり……久城の魔女と謂れる謎の少女
安芸遥香……社交性があって明るい拓海の同級生
宇治垣……小学時代からの拓海の友人で不良風の少年
日下先生……拓海の担任の女性。理科の教師
檻杖閑也……くのりの父親
豊巻ゆかり……拓海の同級生
天音瑞季……盲人の教会のシスター
『魔女推理―嘘つき魔女が6度死ぬ―』
三田誠(著)
新潮社
2023年8月29日発売
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※U-NEXTポイントの消費分は対象外
詳しくは——
感情トリガーとあらすじ、場面
※:本ページの情報は2023年9月時点のものです。
最新の配信状況はU–NEXTサイトにてご確認ください。
【感情のトリガー↓】0~204P(スマホ)
①軌跡【怪】
②魔女【訝・茫】
③溺死【警・訝】
【トリガーの内訳】
①軌跡(檻杖くのりとの思い出場所を案内する)
└別れ際の顔【怪】(ン⁉︎ ナンダロウ?)
②魔女(拓海がくのりの特殊体質を当てにする)
├安芸の健忘【訝】(ハ?)
└魔女の能力【茫】(????)
③溺死(拓海とくのりが溺死事件にふみ入れる)
├担任の教師【警】(ナゼココニ?)
└物置に犯人【訝】(ハ?)
【刺激された感情の種類:4種】
驚度:★
茫=神秘的な現象に遭遇する(1)
思考:★★
訝=疑問を抱かせる言動や描写(2)
恐怖:★★
警=警戒心を抱いてしまう(1)
怪=様子に違和感を覚える(1)
①軌跡【怪】
あらすじ——
故郷の村に戻ってきた薊家の長女と次男。
弟も理容師を営む姉の手伝いをやらされる。
次男の拓海の担当した客が同級生の女子で、
安芸遥香と知り合うことになる。
翌日、
登校して早々、拓海のまえに安芸が現れ、
魔女と噂の『檻杖くのり』について尋ねられる。
拓海は大事な鋏を見つけてくれた恩があるため、
安芸に檻杖との思い出の場所を案内する。
別れ際の顔【怪】
拓海が故郷に戻ってきてから早々、
同級生の安芸と縁があって知りあい、
彼女から、ある頼まれごとをされていた。
久城市の魔女と噂される末裔——
檻杖くのりとの思い出を教えて欲しい、と。
安芸には中学時代に事故死した親友がおり、
その真相を知りたがっている。
食べた死者の記憶を辿れる魔女なら、
親友の真実が分かるかもしれない。
くのりの所在を知らない拓海は、渋々、
安芸を思い出の場所に案内することにした。
結局、廃墟の工場では何も起きなかった。
安芸は、まだ残って見まわるつもりらしい。
拓海は懐中電灯を渡して後を去ろうとする。
そんな拓海を安芸が呼び止めていた場面。
週末の夕暮れ時に訪れた、廃墟の元薬品工場。
「ありがとう」
《前掲書、 P.66》
どこかすっきりした感じで、安芸は言った。
「あたしは、もう少しこの工場を見ていようと思う」
(中略)
そのまま踵を返して帰ろうとしたところで、不意に呼び止められた。
「拓海くん」
振り返ったが、表情は見えなかった。
夕暮れの光に、彼女の顔が埋もれてしまっていたからだ。だから、どんなことを言おうとしているのか、なおさら分からなくて、僕はただ首を傾げた。
「なに、安芸さん」
「ううん、なんでもない。また明日」
と、彼女は笑ったのであった。
——ん!? なんだろう?
拓海が元の高校に転校してきて、
安芸遥香と知り合ったのが三日後。
外交的で観察力がするどく、
探究心もつよいというのが第一印象の女の子。
中学の時に事故死した親友のことが気がかりで、
どうも納得いっていない様子がうかがえる。
安芸は拓海に何を言いかけていたのだろうか?
全部嘘かもしれないよ、と冗談を言っていたが、
まだ、彼女のことがよくわからない。
暗い廃墟を一人で見てまわるとか、
相当の覚悟が要されると思うんだけどな。
彼女を一人にできる拓海もちょっとおかしい。
更にクレイジーなのは、語られていた魔女——
檻杖くのりの奇行である。
廃墟にあった薬品の跡を舐めるとかありえへん。
しかも、それで死にかけていたんだとか。
早く登場してもらいたいな。
◾️ここまでの相関図
拓海の両親も久城市に戻っているのですが、
仕事先の都合で、離れて暮らしているそうです。
拓海と姉の年齢は不詳。
②魔女【訝・茫】
あらすじ——
拓海がくのりとの思い出の場所を、
安芸に案内した日から翌日、
彼女は廃工場で倒れて入院をする。
お見舞いに訪れた拓海は、
安芸の記憶喪失をいぶかしむ。
不登校が続く檻杖くのりの下を訪ねた拓海は、
安芸遥香の事件の真相を教えてもらう。
夏の時期になった校内の一室で、
拓海は、くのりから溺死事件を持ち出され、
事の真相を確かめに付き合わされる。
❶安芸の健忘【訝】
拓海が廃墟を案内した翌日、
担任の日下先生から報告された。
村はずれの廃工場で安芸が倒れていた、と。
放課後、
拓海は入院している安芸の病室を訪れた。
彼女のからだにどこも問題はなさそうで、
二日で退院できると言われていた。
杞憂に終わった拓海が、
安芸に檻杖くのりの話題をもちだす。
すると、
安芸から予想外の問いが返ってきた場面。
院内の病室。
近くの丸椅子に腰掛けて、頭を搔く。
《前掲書、 P.70》
ついで、こんな場所で切り出す話題じゃないなと思いつつ、
「くのりのことなんだけど……」
と、持ちかけたときだった。
ベッドで上半身を持ち上げた少女が、ことりと首を傾げたのだ。
「くのりって何のこと? 薊くん」
——は?
『拓海くん』と下の名で呼んでいたのが、
苗字の『薊くん』に変わっている。
しかも、くのりのことも忘れているし……。
まさか、誰かに憑依されていたのだろうか?
檻杖くのりの魂とかに……。
拓海が廃墟を立ち去ったあと、
安芸も、くのりが舐めた場所に行って、
そこで舌をちろりとだしていたからね。
❷魔女の能力【茫】
安芸は昨夜の出来事のみならず、
檻杖を捜していた動機すらも忘れていた。
まるで別人に変わったかのように……。
病院を辞した拓海は山桜の咲く丘を目指し、
果たして三年ぶりにくのりと再会する。
その夕刻、
くのりと共に安芸の自宅に侵入した拓海は、
彼女がついていた嘘と直面した。
机に置かれた写真に写る二人の少女たち。
一人は安芸の親友だった明里で、
その隣りの子が安芸本人……ではなかった。
彼女の髪を切ったことがある拓海には分かる。
どんなに見た目がそっくりでも、
微細な生え際は、安芸と異なっていたのだ。
そして、明里と思われた子にあった黒子は、
安芸遥香にある黒子とも一致していた。
そこから導き出された答えはこうだ。
安芸は親友の明里に成りすましていた。
彼女こそが共感能力者だったのである。
くのりは淡々と論理的に語って説明するが、
拓海は安芸の行動に納得できてない感じだ。
そこで、
くのりが安芸の写真を舐めて、
死に関連する状況を再現してみせた場面。
日暮れに忍び込んだ安芸の部屋。
くのりの唇から、赤い舌がこぼれる。
《前掲書、 P.107~112》
写真を眼の前に持ち上げ、愛おしむように、べろりと舐めあげた。
痙攣するように、くのりの体が震えた。
(中略)
「さようなら」
と、少女が笑った。
そのまま、笑顔が不意に透き通っていった。
「……今のが、彼女の死、ね」
くのりが囁いた。そのときには、かつての安芸遥香の残滓はまるで残っていなかった。
——????
くのりの能力がついに垣間見れました。
魂を降霊させて憑依させるのとは違うみたい。
録音された死者の言葉を再生する感じです。
死者と会話することは不可能。
ちょっと、イヤミスな終わりかたです。
こうなって良かったのか、
良くなかったのかが、判断できかねぬとこ。
切なさと儚さが後を引いてきますね。
③溺死【警・訝】
あらすじ——
夏に差しかかった校内の一室で、
拓海はくのりの散髪を行なっていた。
くのりが発見された溺死体の話題を持ち出し、
拓海を誘って現場に足をはこばせる。
久城川に着いた拓海たちは、
河岸に残っていた紙片をみつけ、
くのりが死者の念を感じとる。
学校の裏山までやってきた拓海らは、
老朽化した物置を発見する。
翌日、物置の鍵を開けておいた拓海は、
くのりもいるまえで事件の謎を解き明かす。
❶担任の教師【警】
くのりと再会した日から数ヶ月が経ち、
セミの鳴き声が聞こえる夏のこと。
拓海は放課後の美術室で、
不登校だったくのりの髪を切っていた。
きっかけを持ち出したのは彼女である。
この久城市で溺死体が上がったという報道。
くのりが先陣を切り、
拓海も後から彼女の向かった場所へ赴く。
小学4年生の女の子が溺れた久城川。
事件から三日経っているその川に、
ある紙片が石にこびりついていた。
くのりが、その紙片を呑み込んだ。
感じ取ったのは溺死と関係のない誰かの死。
くのりが、「山が視えたと」言い、
拓海も一緒に学校の裏山へと足をはこんだ。
夏の山中にあった古い物置の錆びた壁を、
くのりの赤い舌が這いずっていく。
事件の加害者と思しき女がくのりに憑依し、
怨みを晴らした言葉を残して去っていった。
そのときだった。
拓海らの背後の——
昏い山中から物音が聞こえてきたのは——
学校の裏山の中。
がさり、と物音がした。
《前掲書、 P.168~169》
自分でもくのりでもない。坂下から、新たな気配が歩いてきたのだ。くのりの豹変に気を取られすぎて、周囲の観察を忘れていた。
「っ────!」
心臓が止まるかと思った。
懐中電灯の光が、こちらの足元を照らしあげたのだ。
「ん、誰?」
その声に、覚えがあった。
「……日下、先生」
懐中電灯の光とともに、自分たちの担任教師が、きょとんと目を見開いていた。
——なぜ、ここに?
長身の女性——日下先生。
理科の教師で、拓海たちの担任でもあられる。
日下先生は、どうして一人でやってきたのか?
昏くなった山中は無気味で怖いと感じるはず。
事件を嗅ぎつけている二人を尾けていたのか?
それとも、ミスリードにもっていくための、
作者のトラップなのかもしれない。
つまり、どちらからだ。
日下先生が事件の犯人。
もしくは、ミスリード用の囮。
❷物置に犯人【訝】
老朽化した物置の場所に現れた日下先生は、
そこの神社の巫女であったと自白した。
拓海たちは物置の中を見せてもらい、
日下先生の私物を確認する。
中にあったのは先生のダイエット器具ばかりで、
勝手に物置を私物化していたようだった。
翌日、事前に先生から鍵をくねていた拓海は、
早朝から物置の鍵を開けて準備していた。
放課後、拓海はすぐに裏山へ直行した。
すでに待ち伏せていたくのりと鉢合わせ、
諦念した拓海は、彼女と物置の所へ向かう。
鍵を開けておいた物置の扉を開け、
拓海達が中に隠れていた人物と対面する場面。
薄闇に、その相手は潜り込んでいた。まるで太陽を怖がる吸血鬼みたいだった。
《前掲書、 P.186》
「朝の内に、靴箱に手紙をいれたのは僕だから」
と、返す。
そう、彼女は、僕の手紙によって誘われたのだ。この物置が開いていることと、事件についての示唆を含んだ文で、至極当然にこの場へやってくることとなった。
くのりと同じセーラー服で、物置の壁近くにしゃがみこんだ犯人に、僕はなるべくゆっくりと話しかけた。
「ですよね、豊巻さん」
——は?
もう、訳がわからへん。
昔、拓海と久城川で泳いでいたという、
くのりの間違いを訂正しない拓海の行動。
結局、溺死体の事件とは別の事件なのか?
その別の事件の背景も謎のまま。
この情報が乏しいなかで、
どうして豊巻という女の子、
それも過する程度に登場した人が犯人なのか?
感想(前半)
◆場所と情景がイメージしやすい!
主人公たちは、どこにいるのか?
季節は? 時間帯は?
情景描写に五感を使っているか?
U-NEXTにある小説のほとんどは、
最初のかじりだけ読めるようになっています。
(『無料サンプルを読む』っていうやつ)
ちゃんと書籍化されているプロの小説でも、
セリフばかりで場所が分かりづらい作品とか、
たまに見かけるんですよね。
三田誠先生の文体は大丈夫。
匂いや花、虫の鳴き声などで季節や場所を表し、
読者をスムーズにその世界へと誘ってくれます。
◆本格ミステリとは違う系統のミステリ
プロローグの方で、注意書きが入っています。
『必ず、誰かが、噓をついている』と。
で、主人公の拓海が事件に関わっていき、
魔女と噂の檻杖くのりと解決していくのですが、
読者が真相を推理できるヒントは、ほぼ皆無。
(伏線はあります)
ただ、成り行きを見守ることしかできません。
そこを楽しんでいくようなテイストですね。
◆6度死ぬとあるけど、死んでない
前半では、まだ死んでいませんでした。
檻杖くのり。
彼女のことではないのかな?
くのりと出逢ったサブキャラのことだろうか?
後半が楽しみですね。
くのりが魔女っていうのも噓かもしれない。
無意識に拾った情報から推理しているだけかも。
くのりという子が謎めいているんですよね。
人間臭さがない人間風の別の生き物みたいな、
そんな印象が残っております。
表紙では可愛らしい女の子なんですけどね。
後半の感情トリガー
【感情のトリガー↓】205~391P(スマホ)
①獣害事件【ー】
②人狼の怨【驚・呆】
③拓海の嘘【ー】
【トリガーの内訳】
①獣害事件(くのりと拓海が名代として真相を追う)
②人狼の怨(獣害事件の真相が判明する)
├出奔した犬【驚】(エッ⁉︎ イガイ)
└檻杖の形代【呆】(ッ⁉︎——)
③拓海の嘘(くのりに隠している想いが判明する)
【刺激された感情の種類:2種】
驚度:★★
驚=予想外の出来事(1)
呆=突然で呆気にとられる(1)
全体を通してのプロット
A【人物・世界観の説明】
①登場人物の誰かが必ず嘘をついてる
②家業のバイトをする高校生の薊拓海
③人の死を喰べる檻杖くのりの存在
a【物語が始まる起点・問題】
❶同級生の安芸が檻杖のことを尋ねてくる
❷久城川で溺死体が見つかる事件が発生
❸くのりが父の案件を名代する
B【発生した問題への対処】
❶檻杖との思い出の場所を安芸に案内する
❷拓海とくのりが久城川の現場へ行く
❸拓海とくのりが獣害事件に踏み入れる
b【問題の広がり・深刻化・窮地】
❶安芸の記憶の一部が喪失する
❷溺死と思われた事件に他殺が浮上する
❸獣害事故に他殺の疑いが浮上する
C【人物の葛藤・苦しみ】
○くのりに最後まで隠す拓海の恋心
c【問題解決に向かう最後の決意】
❶拓海が檻杖くのりの下へ頼りに行く
❷放課後、拓海が裏山の物置へ向かう
❸拓海とくのりがシスターの下へ向かう
D【問題解決への行動】
❶拓海とくのりが安芸宅に侵入する
❷拓海が物置に呼び出した犯人に論告する
❸シスターの家族同士が死闘する
読了した感想
◆事件のどれも、イヤミスが後に残る
親友に成りきろうとして個性を消した少女。
嫉妬から小学生の子をあやめた同級生。
家族、兄弟のように愛していた者同士の死闘。
魔女の末路を回避できない拓海の秘めた想い。
切なさにフォーカスした印象でしたね。
当人達に何もしてあげられない、みたいな。
解決策が見当たらない苦しさに近いかも。
◆くのりの記憶の一部は6回死んでいた
一度目:小学生時代
二度目:安芸遥香の件
三度目:溺死事件
四度目:溺死事件
五度目:獣害事件
六度目:獣害事件
くのりの母親は6度目で本当に死んでいます。
死を喰らう行為には限界があるということ。
それを知っているからこそ、
拓海は、彼女への想いに嘘をついています。
おそらく、喪失への恐怖があるからでしょう。
親密な関係になればなるほど、
失ったときの絶望といったらないですからね。
となると、
二巻目は、ないということなのでしょうか?
それとも、本当の死を克服するのかな?
魔女だけに。
『魔女推理―嘘つき魔女が6度死ぬ―』
三田誠(著)
新潮社
2023年8月29日発売
想像力を鍛えて脳内映像化マスターへ!
※:執筆者の独断と偏見が含まれます。
※:本ページの情報は2023年9月時点のものです。
最新の配信状況はU–NEXTサイトにてご確認ください。
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