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『異端審問官シャーロット・ホームズは推理しない 』感情トリガー/あらすじ/場面/考察/感想

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前半のストーリー

(前略)最強の審問官を目指すシャーロットの猪突猛進ぶりに振り回されながら、ジョンは街の平和を脅かす人狼を暴き出す――!思考ゼロ秒の人狼狩り少女と紡ぐ人狼×推理×バトルファンタジー、開幕!
引用元:U-NEXT

ロンドン貧困街でらす兄のジョンは、
人狼狩りの端審問官たんしんもんかん少女と邂逅かいこうする。
病弱な妹をやしなう生活費をかせぐため、
天荒てんこうな少女の助手となってすいする。

◆登場人物
シャーロット・ホームズ……金髪碧眼少女の異端審問官
ジョン・ワトソン……シャーロットの助手の赤毛青年
アシュリー……父と兄ジョンに溺愛されてる少女
サー・マイクロフト・ホームズ……狩猟騎士
イーラン・ホプキンス……黒髪緑眼少女の異端審問官

異端審問官シャーロット・ホームズは推理しない ~人狼って推理するより、全員吊るした方が早くない?~』
中島リュウ(著)
キッカイキ(イラスト)
オーバーラップ
2023年7月25日発売
購入金額の最大40%が、
32日後にポイントで還元されます!

※U-NEXTポイントの消費分は対象外
詳しくは——

感情トリガーとあらすじ、場面

※:本ページの情報は2023年8月時点のものです。
  最新の配信状況はU–NEXTサイトにてご確認ください。

【感情のトリガー↓】0~265P(スマホ)
①無差別娘【/
②相互補完【
③上位個体【

【トリガーの内訳】
無差別娘シャーロット(鬼畜な異端審問官の少女が現る)
 ├血塗れの女【茫】(????)
 └自撮り写真【慈/呆】(アイラシイ/ッ⁉︎)
そう互補ごほかん(シャーロットとジョンが組む)
 ├りょくがんの少女【凄】(スゴッ!)
 ├妹の負い目【切】(セツナイ)
 └アシュリー【驚】(エッ⁉︎ イガイ)
③上位個体(並以上の人狼たちが登場する)
 └上位の人狼【呆】(ッ⁉︎——)

【刺激された感情の種類:5種
幸福:★
 慈=我が子のように愛おしい(1)
驚度★★★★★
 驚=予想外の出来事(1)
 茫=神秘的な現象に遭遇する(1)
 呆=突然で呆気にとられる(2)
 凄=程度が甚だしくて優れてる(1)
不幸:★
 切=救ってあげれない心苦しさ(1)

①無差別娘【茫・慈/呆】

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※一触即発が正です。一色触発は誤り

あらすじ——
西暦2037年、イギリス・ロンドン——
マザーコンピューターに支配された都市で、
16のジョン・ワトソンは探偵をしていた。
やとい主の記者から手間賃をいただいた帰り、
地下鉄のホームで人狼じんろうを目撃する。
機械化移植を受けた端審問官たんしんもんかんが事をおさめ、
ジョンはいとしの妹が待つ家へと帰宅する。
病弱な妹のアシュリーのためにも、
ジョンは翌日、こうの仕事を続行する。
カフェ店に現れた異端審問官の少女に、
ジョンはなぜか命をうばわれかける。
人狼狩りの災難にったジョンは、
老紳士から娘を追ってくれとたのまれる。
お金を受け取ったジョンは、
先程、自分の命を奪おうとした——
シャーロットのところへけ出す。
ジョンは、シャーロットを見つけ出し、
異端審問官同士の戦いを止めようとする。

❶血塗れの女【茫】

少し背の低い赤毛の若い青年ジョンは、
雇い主の依頼で反機械派ラッダイトの男をこうし、
過激派組織との接触をうかがっていた。
が、目当ての男が帰宅してしまったため、
尾行を中断して雇い主の記者と合流した。
依頼料をもらって解散したジョンは、
地下鉄のホームへと帰路きろにつく。
ちょうど電車が現れ、ホームに停車した時、
中からまみれの女が出てきた。
その背後からあやしい仮面をつけた巨漢きょかんも現れ、
太い指でつかみあげたその女を、
容赦ようしゃなくホームの床にたたきつけていた場面シーン

地下鉄ベイカー・ストリート駅。
夜8時をまわる地下鉄のホーム。

地下鉄
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異端審問官が女を殴りつける音が、生々しく響く。(中略)女の腕から、黒い毛が生え伸びている。そしてその変化は、女の全身で、一斉に進行した。
 皮膚の下で骨格が動いた。筋肉が一度爆発的に盛り上がり、次にしぼるように細く収束していく。素肌はくまなく毛で覆われた。顔面とて例外ではない。剛毛に埋もれた顔は、口と鼻を極端に突出させる。
 (中略)
 そこにいるのはもう、か弱い女ではなく、二本の足で立つ魔物、人狼じんろうであった。

《前掲書、 P.19~20》※スマホで閲覧

——????

変貌していく描写が上手いですねえ。
イメージしやすいし、読みながら茫然ぼうぜんでした。
人狼になる女にも驚きましたけど、
カラスみたいなペストマスクの大男も驚き。
いきなし女に容赦ない暴力を行うのですから。

❷自撮り写真【慈/呆】

貧困区の町で妹とらしている兄のジョン。
離れた鉱山こうざんで働く父の仕送りがとどこおり、
生活費を仕事でかせぐ必要があった。
そんなとき、
ペストの後遺症で病弱な妹が熱を出してしまう。
妹に仕事へ行くなとうらないで忠告されたが、
ジョンは薬を買うお金をかせぐために、
アシュリーを置いて仕事に向かった。
仕事は反機械派ラッダイトの男を尾行すること。
男は午前中のカフェに入店し、
ジョンもあとから客として入っていく。
はなれた席から男の様子をうかがっている時、
妹のアシュリーからのメールがとどいた場面シーン

午前中のベイカー・ストリート。
カフェの店内。

カフェ
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 (前略)アシュリーからメッセージが届いている。まさか、体調に異変が──そう思い慌てて開くと、自撮りした写真が貼付されていた。
『ジョンへ。がんばってね。ねこより』
 キメ顔でウインクするアシュリーの脇に、申し訳程度に猫のぬいぐるみも写り込んでいる。
 かわい過ぎて叫びそうになった。

《前掲書、 P.40~41》

——なんと愛らしい

父親と兄から溺愛できあいされるのもうなずける。
こんな娘や妹がいたら、
そりゃ、身をていしてでも頑張っちゃいますよね。
一見いっけん淡然たんぜんとクールな印象をあたえながら、
猫のぬいぐるみで人の温かさもせるという、
冷温キャラ効果が勉強になります。
ツンデレに近い効果ともいえる。
ようはギャップですね。
アシュリーに心をつかまれてしまいやした。
この後は呆然です。

舞台はロンドン

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マザーコンピューター
ヴィクトリア女王の人格が移植されている
人狼の現れる場所、時間、数を予測できる

異端審問官
組織的に存在し、
人狼と戦うための移植手術を受けている

ワトソン一家

現在、父親の職場がストライキ中。
割に合わない業務内容に従業員達が大不満。
これで給料アップにつながればいいのですが、
最悪、全員クビということも考えられる。
ほかの仕事も決まってないようなので、
かなり深刻といってもいいでしょう。
仕送りが期待できないいじょう、
ジョンは妹のために働くしかないのです。

②相互補完【凄・切・驚】

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あらすじ——
イーランとシャーロットをちゅうさいしたジョンは、
人狼じんろうの特性と現状から犯人を特定する。
まもなくシャーロットと人狼の戦闘がはじまり、
イーランの活躍によって終止符がうたれる。
その後、シャーロットは単独行動をきんじられ、
審問しんもんには牽制役けんせいやくが必要だと上司から命じられる。
パトロールにつき合っていたジョンは、
シャーロットとのデート中に人狼と遭遇そうぐうする。
新しい出会いと仕事にジョンは快活かいかつそうで、
そんな兄に妹のアシュリーはさみしさを覚える。
人狼狩りという危険な仕事をねんし、
アシュリーは密かに兄をうらなう。

❶緑眼の少女【凄】

集団に人狼がひそむ地下カジノで、
シャーロットとイーランがたいしていた。
二人の仲裁ににあったジョンは、
これから人狼をすいで当てるとのたまい、
シャーロットの協力を得る。
人狼だと発覚した人物は変貌へんぼうし、
シャーロットと激しく戦闘をまじえた。
手負いの彼女は最後までめきれず、
人狼の暴走をゆるしてしまう。
そんなとき、
見物していた少女イーランが立ちふさがり、
圧倒的な力を見せつけていた場面シーン

ロンドン南西部リッチモンド。
曇天空でも関係のない地下空間。

地下
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「こうやるのですよ、シャーロット・ホームズ」
 イーランの動きは終わっていない。爆発の反動で右足を引き戻し、その勢いのまま反転。中段の後ろ回し蹴りへと滑らかに移行する。
 (中略)
 イーランは宙に浮いた敵の腹部に、すでに掌底を押し当てている。手のひらを包むグローブは、ブーツと同じ炸薬仕込みだ。破壊力は手を伝い、敵の体内へ。硬い毛皮の奥にある、結晶の心臓へと浸透する。
「終わりです」
 ぱきっ。

《前掲書、 P.111》

——すごっ!

ぜひ、動画で見てみたい。
きっと、『ワンパンマン』に出てくる、
ジェノスみたいな感じなのかな。
描写が上手いからイメージもしやすい。
スピード感が伝わってきます。
サイボーグ化した少女達の人外なパワー。
シャーロットも凄いけど、
イーランのダイナミックな戦闘に圧巻です。

人狼の特性

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いまのところ明かされているのがここまで。
とりあえず、けっしょうしている心臓をねらえば、
人狼をたおすことができるみたいですね。

❷妹の負い目【切】

ジョンはシャーロットのパートナーとなり、
人狼パトロールに同行するようになっていた。
二週間あまりの時がった今も、
仕事が終われば大好きな妹に報告はわすれない。
が、妹のアシュリーは複雑ふくざつな心境であった。
唯一ゆいつの兄が他所よその家族と仲良くしている。
自分といる時よりも生き生きとしている。
そして、またシャーロットの話題……。
アシュリーは自分のために無理をする兄に、
ずっとい目を感じていた。
兄と夕食をたべていたアシュリーが、
その切実な悲しさをち明けていた場面シーン

ロンドン貧困街にある
ジョンとアシュリーの自宅アパート。

リビング
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「アシュリーはゆかない。ついていったって、すぐ疲れて歩けなくなる。ジョンの邪魔はしたくない」
 (中略)
「母じゃなくて、アシュリーなら良かったのに。生きてるのが母なら、誰にも迷惑かからなかった」
「……怒るよ。そんなこと言ったら、ダメじゃない」
「母のカレー食べたい。アシュリーは、あんなにおいしく作れない」
 震え始めた妹の肩を、ジョンは抱きしめた。
「役立たずなの、やだぁ……! わたしだって、役に、立ちたい……」

《前掲書、 P.168~169》

——せつない。

心が締めつけられるような感覚。
意外と感傷させられますな。
コメディだからと安心しきっていましたが。
なんとか病弱の克服をしてもらいたい。
マザーが考案したスペシャルな薬で全快し、
魔女コスチュームに合う活躍が見たいです。
近未来の設定だから、
なんとか治療できそうな感じしますけど——
どうなのかな?

❸アシュリー【驚】

兄に心の内を明かしていたその日の深夜、
ジョンが眠っているそばで、
アシュリーが水晶玉を抱えていた場面シーン

ベッド
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 ジョンは目を覚まさない。アシュリーは兄の上に手をかざした。抱える水晶玉が輝きを強めていく。
 頭にかぶる魔女の帽子が、ひとりでに背後へ落ちる。かざす手と水晶玉で、アシュリーの両手はふさがっているのに。
 帽子の下から現れたのは赤い髪と、同じ色の毛をたくわえた、三角形の大きな耳だった。
 (中略)
 ジョンは妹の秘密を知らない。アシュリーが人狼であることを知らない。

《前掲書、 P.171〜172》

——えっ!? 意外。

いつから人狼だったんだ?
赤い毛もいるんですね。
でも、なんでアシュリーは検知されないんだ?
マザーヴィクトリアが正確に予測するはず。
ほかの黒い人狼とは違うということなのか?

③上位個体【呆】

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あらすじ——
兄の不吉をけんしていたアシュリーは、
ジョンにともない、カフェのテラスに同席する。
シャーロットとその父、マイクロフトと対面し、
その後、マイクロフトとれの男がっていく。
そこにマザーヴィクトリアからの通知が入り、
シャーロットがジョンと妹をき連れ、
人狼が出現する聖堂へとび立つ。
聖堂でハリス牧師と対面したジョン達は、
人狼の推理証明ができず、
そのうたがいはアシュリーに向けられてしまう。
一方、ガーゴイルをっていたマイクロフトは、
単独で彼らのいる工場におもむき、審問を始める。
が、上位クラスの人狼相手に苦戦をいられ、
娘のシャーロットにSOSをおくるのだった。

上位の人狼【呆】

ジョンは妹の潔白けっぱくを証明できず、あきらめる。
なら、ハリス牧師が人狼だと証明すればいい。
ジョンの不完全な推理がこうそうして、
ついにけの皮をいだ人狼と、
シャーロットが戦闘にはいった場面シーン

昼間の聖堂内。

聖堂
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 シャーロットの真横、鋭利な爪を振り切った姿勢で現れた人狼がつぶやく。シャーロットは即座に袖の刃を展開し、よこぎに反撃した。人狼は軽やかに身をかわす。その褐色の体毛が、虹色に波打って透明化、背景と同化していく!
 (中略)
「お父さまから聞いたことがあるわ。強い人狼は、人間以外のものにも化けられるって。あなたは風景に化けるのね。つまり──」

《前掲書、 P.243~244》

——ッ!?——

マジか!
風景に化けるって、カメレオンやん。
イメージするのはプレデターの光学迷彩装置。
身体能力が極めて高く、人間の狩猟を好み、
恐ろしく醜い容貌をした宇宙人です。
彼らは高度な科学技術を持っており、
装備している装置で透明にもなれるんですよ。
きっと、あんな感じなのでしょう。

感想(前半)

バトル劇が熱い!

とにかくあばれます。
幼女体型のなりをした少女たちが、
はんサイボーグの力で人狼と激戦する姿すがたが凄い。
やっぱ、ワンパンマンのジェノスとか、
幼女ようじょ戦記のターニャを彷彿ほうふつさせますね。
シャーロットのゴスロリのスカートの中に、
空を飛ぶブースターを仕込んでいたのは斬新ざんしん
なんで、スカートえないんだ?
かん、めっちゃ火傷やけどしない?
なんて、真面目まじめにつっこんじゃダメ。
それがいいのです。(笑)

アシュリーのこの先が気になる

あいはないけど無垢むくで優しい一面もある、
とてもとてもキュートな女の子11歳。
魔女のコスチュームをしており、
片時かたときも猫のぬいぐるみをはなさないジョンの妹。
そんなアシュリーでありますが、
兄にもかくしている秘密がありました。
き母の真似まね事ではなく、
本当に未来をうらなうことができるのと、
魔女帽子の下にけものの耳を隠していること。
もしかしたら審問されるかもしれないという、
危惧きぐがつきまとっています。
後半がちょっとドキドキですね。

シャーロット父の連れはいずこ?

今も工場で上位クラスの人狼と戦っている、
シャーロットの父——サーマイクロフト。
五十がらみの紳士でつえをついた狩猟騎士ナイトオブハントです。
老いても強いマイクロフトでありますが、
特殊な人狼たちに追いめられてました。
岩肌いわはだのガーゴイル。
魚鱗ぎょりんのシーハッグ。
ツタのナルシス。
そこも斬新ですよねぇ。
ふつうのオオカミ男とはちがいます。
しかし、もう一人の異端審問官はどうしたのか?
カフェテラスに同行していたクリストファー。
娘とおなじ15歳の青年で、実力のあるお方。
いっしょに向かったはずなのに、
なぜ、マイクロフトだけが戦っているのか?
後半が楽しみです。

後半の感情トリガー

【感情のトリガー↓】266~536P(スマホ)
①人狼の王【
②人狼当て【
③王の終幕【

【トリガーの内訳】
①人狼の王(人狼を生みだす支配者が現れる)
 ├おんちょうしき【呆】(ッ⁉︎——)
 └赤い乱入者【察】(マサカ…)
②人狼当て(団長格のなかに紛れた人狼をみつける)
 └人狼が判明【訝】(ハ?)
③王の終幕(人狼の王の野望がついえる)
 ├娘の父の友【呆】(ッ⁉︎——)
 └ジョンの父【察】(マサカ…)

【刺激された感情の種類:3種
驚度:★★
 呆=突然で呆気にとられる(2)
思考:★★★
 訝=疑問を抱かせる言動や描写(1)
 察=ヒントから展開の予測がつく(2)

全体を通してのプロット

A人物・世界観の説明
①人狼が存在する近未来のロンドンが舞台
②人狼を討伐する異端審問官の存在
③貧困区で妹を養う兄のジョンの現状

a物語が始まる起点・問題
ジョンが異端審問官の少女と邂逅する
ジョンが異端審問官の暴走を止めにいく

B発生した問題への対処
①カジノに潜む人狼をジョンが推理する
②シャーロットとイーランが人狼と戦闘する

b問題の広がり・深刻化・窮地
①シャーロットに単独審問の禁止命令が下る
②ジョンがシャーロットの助手として働く
③ジョンの妹が兄の不吉を占いでみる
④ジョンの妹が人狼だと疑われる
⑤シャーロットの父が上位人狼たちに窮す
⑥人狼の王がロンドンに帰還してくる

C人物の葛藤・苦しみ
◯ジョンの妹の秘密にシャーロットが葛藤する

c問題解決に向かう最後の決意
★ジョンに諭されたシャーロットが、
 街を守り抜く決意をする

D問題解決への行動
○人狼の王の野望を阻止する

読了した感想

激しいバトル劇が魅力な一方で

後半は、ほぼバトルの展開。
ジョンやシャーロットだけでなく、
様々な登場人物も激しく交戦しあっています。
ですが……なぜか、共感がしづらい。
おそらく、神の視点描写に原因があります。
それは、バトルがターン制になっていること。
例えば、

AがBに右パンチをくり出す。
Bはそれを躱し、Aの顎に右アッパーを打つ。
顔面に受けたAは、地面にくずおれた。
ひるんだAにBが踵落としでとどめをさす。
ぎりぎりでAはそれを避けて、立ち上がる。

こんな感じで、
AとBの行動が交互に描かれるのがターン制。
激しくやり合ってる感じは伝わるけど、
イメージに脳が疲れるし、
AにもBにも共感ができないですよね?
森沢明夫先生の言葉がよくわかります。

いわゆる「ターン制」だと、読者にバトルの「状況を理解させる」ことはできますが、そのシーンの「熱を伝える」ことはできません。

《森沢明夫『プロだけが知っている 小説の書き方』 P.179》飛鳥新社 2022/7/20 ※スマホで閲覧 ※画像元:U-NEXT

じゃあ、どうしたら共感を味わえるのか?
森沢先生によると、
視点を一人にしぼるのが良いらしいです。
かんする対象をシャーロットなどにしぼり、
彼女が受ける苦痛や心情を描くこと。
すると、読者は彼女と同じ擬似ぎじ体験を味わえる。
鬼滅の刃のたんろうだったり、
はじめの一歩のまくうちみたいな感じです。
一人称視点ならこういう問題は起こらないけど、
神の視点は工夫がひつようですね。

ジョンとアシュリーの父親って……

名前のないモブキャラだと思って油断してたら、
最後の方で登場してきました。
名前はサイラス・ワトソン
息子達と離れた鉱山街で働いている人です。
使い込まれたスラックスを穿き、
サスペンダーで留めている50歳の壮年そうねん男。
スラックスとサスペンダーで思い出しました。
シャーロットの父親に替えの義肢ぎしを渡した友人、
シリウスも同じ服装であったことを
彼も労働者風の壮年の男とありました。
あれ? もしや……同一人物??
ジョンがシャーロットの父と初対面した時の、
名前の伏線ともつながってくるし、
きっと、そうだとおもう。
でも、だとしたらおかしい。
なぜ、ジョン達への仕送りができなかったのか。

一番成長が見れたのはシャーロット

己のからだを犠牲にして機械化させた少女——
シャーロット・ホームズ(15歳)。
推理をほうして皆ごろしが最短解決だと、
とんでもない行動にでる破天荒むすめです。
異端審問官の騎士ナイトである父マイクロフトにあこがれ、
おなじ道を選んだシャーロットでありますが、
ジョンと邂逅かいこうしたことで迷いが生じます。
どうして異端審問官を続けているのか?
どうして推理することを放棄したのか?
自分を見つめ直すきっかけを与えられ、
シャーロットは自分の本当の望みをさとるのです。

ということで、ジョンと少女たちが魅せる、
漫才っぽいやりとりも魅力のひとつ。
おもわず、顔がゆるんでしまうはず。
では、次の作品でまたお会いしましょう。

異端審問官シャーロット・ホームズは推理しない ~人狼って推理するより、全員吊るした方が早くない?~』
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キッカイキ(イラスト)
オーバーラップ
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※:執筆者の独断と偏見が含まれます。
※:本ページの情報は2023年8月時点のものです。
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