前半のストーリー
エリートの少女たちによって男子は全員退学に追い込まれ、女子しかいない帝国スパイ養成機関〈クリプトス〉。そこへ編入生の男子生徒エドガーが現れる。二年前に死んだはずの最強のスパイという正体を隠して――。
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同胞を逃がし消息を絶った諜報員隊長。
2年後に目覚めた彼はエドガーになる。
敵国に潜伏している同胞達を救うため、
編入した養成学校で最強ぶりを魅せる。
◆登場人物
エドガー・フランク……伝説のスパイ〈蜃気楼〉
カリン・ベネディクト……変装科の黒髪少女〈琥珀〉
ノイナ・ロス……戦闘科の銀髪少女〈柘榴石〉
アルマ・クレール……潜入科の白髪少女〈金剛石〉
ミルフィ・シュガー……尋問科の桃色髪少女〈瑠璃〉
コレット・アルンデル……装備開発科の少女〈紫水晶〉
シャロン・マリフォート……電子支援科の少女〈水宝玉〉
ミア・ナイトリー……狙撃科の緑髪少女〈翡翠〉
『スパイアカデミー 真実を惑わす琥珀』
武葉コウ(著)
色塩(イラスト)
KADOKAWA
2023年8月19日発売
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詳しくは——
感情トリガーとあらすじ、場面
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【感情のトリガー↓】0~241P(スマホ)
①再会【ー】
②同盟【突・嘲・笑】
③潜入【ー】
【トリガーの内訳】
①再会(スパイの元隊長とその同胞達が対面する)
②同盟(エドガーが同胞の一人を味方につける)
├教師の看過【突】(オイオイ!)
├実力テスト【嘲】(ハハ)
└痛い愛弟子【笑】(アハハ)
③潜入(エドガーとカリンが変装して情報を探る)
【刺激された感情の種類:3種】
攻撃:★★★
笑=滑稽さを感じて可笑しい(1)
嘲=憐れさを小バカにした半笑い(1)
突=予期しなかった相手の誤り(1)
①再会【ー】
あらすじ——
ある任務についていた諜報員の隊長は、
内通者によって作戦の失敗を強いられた。
敵国から部下たちを逃がしてあげた後、
隊長の男は敵国に捕まり、消息を断つ。
帝国スパイ養成機関〈クリプトス〉で、
定期試験の内容をめぐる争いが勃発する。
学校敷地内で銃撃戦が行われているなか、
一人の少年エドガーが登校してくる。
ある任務を負って登校してきたエドガーは、
スパイのエリートである少女達と対面する。
2年ぶりに再会した元隊長エドガーは、
少女達から思いがけない歓迎を受けるのだった。
◾️伝説のスパイ〈蜃気楼〉の潜入経緯
識別名〈蜃気楼〉は2年前に死亡した——
そう思われていた。
原因は内通者による情報漏れと考えられている。
見た目が少年の彼を助けていたのは上官だった。
妙齢の若いポニーテールをした童顔美人のリズ。
もし彼女が内通者だったのなら、
〈蜃気楼〉を助けるのは理屈にあわない。
だとすると……、
逃がしてあげた部下達、少女7名が怪しくなる。
一人なのか、全員なのか。
裏切り者はだれなのか。
エドガー・フランクになった〈蜃気楼〉は、
それでも全員を救おうと帝国に潜入していく。
部下たちが潜伏しているスパイの養成機関——
〈クリプトス〉へ。
◾️帝国スパイ養成機関の構成
この学校では定期的に試験が行われており、
テストの情報を奪い合うのも養成の一環。
7科の候補生たちによる点数競争。
実力主義の厳しい世界。
しかも、
非殺傷かつ訓練、講義に差し支えなければ、
銃火器や近接武器、その他諸々も使用OK。
そして、
〈蜃気楼〉の部下たち7名ひとりひとりが、
各科目のエリートになっていたのです。
②同盟【突・嘲・笑】
あらすじ——
各科のエリート候補生(同胞)と対面し、
なぜかエドガーは、彼女らに銃口を向けられる。
予冷により救われたエドガーは、
おなじ変装科のカリンに連れていかれ、
講壇のまえで生徒達に自己紹介をする。
が、カリンの権力により編入試験が始まり、
エドガーはみんなの前で射撃テストに臨む。
追放が狙いの難関を突破したエドガーは、
編入初日の深夜に寝込みをおそわれる。
襲ってきた相手は同胞のカリンで、
事前に対策をしていたエドガーが逆に拘束する。
自分の正体を知らないカリンを説得し、
エドガーは彼女との同盟に成功する。
❶教師の看過【突】
スパイ候補生の各科エリート7名から、
思わぬ勧告を受けていたエドガー。
予鈴のチャイムに救われたあと、
彼は一番弟子のカリン〈琥珀〉に連れていかれ、
広い講堂の講壇に上がり、自己紹介をした。
変装科に所属する生徒のすべては女子だけで、
エドガー以外の男子は一人もいない。
そんな折り、
挨拶を終えたエドガーに対して、
彼女たち全員が黒い銃口を向けだした。
女教師のいるまえで……。
変装科の学棟にある講堂。
彼の真横には、変装科の生徒を監督するべき女教師が立っている。
《前掲書、 P.117》※スマホで閲覧
だが彼女は終始無言を貫いたままだ。新入生が在校生一同に銃口を突きつけられる状況であっても、動くつもりはないらしい。
——オイオイ!
生徒も教師もクレイジー過ぎるやろ。
ゴム弾だから当たっても貫通はしないけど、
死なない保証なんてないからねっ。
女教師の心理がさっぱり理解不能だ。
このクレイジーさが魅力なんだろうね。
気になるのは、カリンの塩対応である。
どうも違和感があります。
隊長だと気づいたんじゃなかったのか?
彼を初見した時、目を瞠ったあの反応は?
なのに銃口を向け、追い出そうとしている。
意外だったのは、小隊の7名全員が、
任務中でも顔合わせをしていなかったこと。
彼女達は互いが同胞であることを知りません。
もしかしたら、塩対応は張りぼてなのかも。
隊長だと気づいてはいるけど、
敵国スパイのいる前では本音を出せない、
みたいな。
実は同じ〈蜃気楼〉の仲間同士なのに……。
そんな感じがする。
❷実力テスト【嘲】
自己紹介を終えたエドガーに試練がくだる。
舞台は講堂から屋内の戦闘訓練場にうつり、
射撃テストが行われようとしていた。
もし、合格基準に入らなければ即退学。
それを言い出したのは女教師だが、
裏で糸を引いているのはカリンで間違いない。
どうあっても学校から追放したいのだろう。
かつての愛弟子から受ける敵対視に、
悲しさを覚えるエドガーであったが、
任務遂行のためには合格するしかない。
エドガーは的を全て正確に撃ち抜いてみせた。
まわりの生徒達から怪訝などよめきが起きる。
助手役のリズ(上官)がイヤホン越しに指摘する。
超一流でも難しい激ムズ仕様であったことを。
新人が全て的中させるのは不自然過ぎたのだ。
そこで、
誤りを指摘されたエドガーが二巡目に臨み、
またもや、リズに呆れられていた場面。
射撃訓練場。
「外れは三発。六発を的の中央横、残り六発は枠ギリギリ。装塡数一五の内、合計で一二発命中──七〇点だ」
《前掲書、 P.136》
上手く事を運ばせた満足感から、つい、エドガーは得意げな笑みを形作る。
「これで、射撃の腕だけは良い普通の候補生だな?」
『そうだけど! そうなんだけど! 自信満々なのが微妙に納得いかない! 全世界の射撃ベタに謝れぇいっ』
——ハハ。
なるほど、笑いには連続が大事なのかもね。
ボケとツッコミ役を理解した上でやられると、
やっぱ、ちょっと笑ってしまう。
普通はギリギリの合格ラインに入れて、
ホッとするか大喜びするところ。
なのに、エドガーはドヤ顔ですからね。
このズレをリズが指摘してくる滑稽さ。
『謝れぇいっ』が利いています。
お見事。
❸痛い愛弟子【笑】
無事、編入をカリンに認められた初日の夜、
エドガーは学生寮の一室で眠りについていた。
午前零時、
エドガーはカリンに寝込みを襲われるが、
事前に警戒していた罠で逆に彼女を拘束する。
〈蜃気楼〉を死なせた敵だと誤解する彼女に、
エドガーは嘘を重ねて説得してみせた。
大胆な行動とは裏腹に、意外とちょろい少女。
協力し合わないかとエドガーが持ちかける。
すると、
カリンが言い出した取引の内容が、
随分、こちらがわに献身的すぎた場面。
学生寮の部屋。
「定期試験。直に開催されるそれは、私がエルダー・エリートになるためには合格が必要不可欠なの。手を貸して欲しい」
《前掲書、 P.169~170》
(中略)
「私がエルダー・エリートに上り詰めた後は、あなたの望む情報を全て渡す。あなたの指示に従う手駒になる。隊長がいなくなった真相……それが知れた後なら、私のことを好きにしてくれていい。不要なら処分しても構わないから」
「いや重すぎる。却下だ」
——アハハ。
いやいやいや、こりゃ笑ってしまうやろ。
あんなに敵対していた塩対応のカリンが——
高慢でエドガーを見下していた少女が、
なんでそんな隷属てきなの!
賢そうな口ぶりのわりにポンコツだし、
素晴らしいですね。
ちゃんと、ギャップを与えているところ。
今度はエドガーがツッコミに転じてるし、
滑稽なやり取りを魅せるのが上手い。
ちなみに、夜襲をしかけてきたカリン、
エドガーの縄に自ら拘束されてしまい、
あわわな格好を晒しています。
挿絵もあるので、ファンサービスもGOOD!
◾️同胞の少女たちを救う最善手
エドガーでも解決できそうですよね?
彼がエルダーエリートになって公国と交渉する。
あ、できないのか。
エドガーの身元や過去を確かめられるはず。
でも、それは帝国も同じだったはずだから……
やっぱ、いけるんじゃね?
なんせ、伝説のスパイですから。
銃弾の嵐の中でも歩いて渡れる超人ですから。
③潜入【ー】
あらすじ——
協力関係を結んだエドガーとカリンは、
定期試験に向けて作戦を立てる。
一週間以内に機密文書を入手するため、
エドガーらは電子支援科に潜入する。
専用サーバーに侵入した二人は、
機密文書の隠し場所をみつけだす。
エドガーらが目的を果たした矢先、
デバイスを逆にハッキングされてしまう。
その相手は電子支援科のエリート——
エドガーの同胞でもあるシャロン。
帝国に報告すると脅されたエドガーは、
シャロンとハッキング勝負をするのだった。
◾️試験内容
七つの科での実技競争をおこない、
勝者を決めます。
合格できる枠は一つのみ。
所属する生徒全員に高得点が入るのです。
◾️各科のエリート(同胞)たち
公国の諜報部門から落第認定された少女達。
そんな彼女達が各科のエリートになっている。
皆、〈蜃気楼〉の小隊であるのに、
互いが帝国の人間だと思い込んでいるのだ。
感想(前半)
◆目的が明確で分かりやすい
二年前の作戦失敗で逃げ延びていた同胞——
〈蜃気楼〉の弟子達を公国に帰還させること。
そこに至るまでの隔たりがいくつもあり、
少しずつゴールに近づいていく達成感。
そのハードルが高いほど、
どんな解決策があるのか見たくなります。
後半に期待ですね。
◆コメディ要素が強い印象
主人公のエドガーは、最早チートキャラだし、
同胞の少女達は、各科のエキスパート。
まだ本当の敵らしい敵は現れず、
味方同士で争い合ってるかんじであります。
魅力はやっぱ、彼らのやりとりでしょうな。
同胞の意外なポンコツぐあいが面白い。
◆カリンとグレーテが重なる
グレーテとは『スパイ教室』の赤髪少女です。
どちらも変装のエキスパートであり、
かつ、ボス以外の男が苦手という所も一緒。
さらに、両方ともMっ気がありますよね?
要素が似ているから、
どうしてもグレーテとかぶってしまう。(笑)
後半の感情トリガー
【感情のトリガー↓】242~476P(スマホ)
①争奪戦【笑・呆】
②騙る者【胸】
③蜃気楼【ー】
【トリガーの内訳】
①争奪戦(C文書を巡って候補生達が戦う)
├窺う人の影【笑】(アハハ)
└ルール無視【呆】(ッ⁉︎——)
②騙る者(試験の背景に潜む黒幕を現れる)
└恋人のフリ【胸】(キュン)
③蜃気楼(エドガーが学園のテロ事件を解決する)
【刺激された感情の種類:3種】
驚度:★
呆=突然で呆気にとられる(1)
攻撃:★
笑=滑稽さを感じて可笑しい(1)
乗気:★
胸=無意識な惚れてるサイン(1)
全体を通してのプロット
A【人物・世界観の説明】
①二年前の任務失敗の状況
②帝国スパイ養成機関の存在
③定期試験を巡って争い合う候補生達
a【物語が始まる起点・問題】
☆伝説のスパイ〈蜃気楼〉の二年ぶりの覚醒
☆同胞の少女達が敵地に送られていると知る
B【発生した問題への対処】
①〈蜃気楼〉が少年に扮して学園に編入する
②同胞の少女達7名と再会を果たす
b【問題の広がり・深刻化・窮地】
①同胞から奇襲をかけられる
②試験の合格が同胞を救うことに繋がる
③試験内容の任務に当たっていく
④他の科に任務の邪魔をされる
⑤機密情報を持つ標的を追跡する
⑥偽装試験の首謀者が登場する
⑦同胞達は首謀者に操られている
⑧帝国一帯に爆弾が仕掛けられる
C【人物の葛藤・苦しみ】
なし
c【問題解決に向かう最後の決意】
★同胞達を救うために、
エドガーは首謀者の目的の阻止に向かう
D【問題解決への行動】
①首謀者のテロ行為を阻止する
②首謀者の背景に裏切り者の存在を知る
③エドガーに新たな目的が加わる
読了した感想
◆キャラクター各々に笑える要素がある
常識離れしたエドガーに突っこむ上官リズ。
男嫌いのカレンが見せるマゾっ気ぐあい。
偶像化されたシャロンが見せる凡俗さ。
愛弟子の顔色を窺うメンタル弱なエドガー。
不遜な色仕掛けを仕掛けるミルフィの空回り。
『スパイ』は読者を惹きつけるための入り口で、
一番魅せたいのはここなんじゃないかと思う。
滑稽な状況を描くのが得意なんでしょうね。
◆大きな葛藤や苦しみはなかった
小さな葛藤はあるんですけどね。
同胞に正体を明かせないエドガーの苦しみ。
自己肯定感に飢えるカリンの切実。
同胞とも戦わなくてはいけない状況。
でも、そんなに深刻そうじゃなかった。
人物の成長要素は薄かった気がする。
◆裏切りものは誰なのか
二年前の敵国の侵略阻止任務の失敗——
その原因は内通者が作戦を漏らしていたから。
上官のリズ。
隊長の〈蜃気楼〉。
変装のカリン。
戦闘のノイナ。
潜入のアルマ。
尋問のミルフィ。
装備開発のコレット。
電子支援のシャロン。
狙撃のミア。
このなかに潜んでいる可能性が……。
一巻の終わり方がなんか意味深で、
少し、ダークな〈蜃気楼〉を描写しています。
こうなると、隊長も怪しくなってくる。
だって、生きてたわけですからね。
そこにミステリーがあります。
次巻が楽しみですね。
『スパイアカデミー 真実を惑わす琥珀』
武葉コウ(著)
色塩(イラスト)
KADOKAWA
2023年8月19日発売
想像力を鍛えて脳内映像化マスターへ!
※:執筆者の独断と偏見が含まれます。
※:本ページの情報は2023年8月時点のものです。
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