前半のストーリー
(前略)新たに捜査に当たるのは、帰宅途中に殺害された女性の遺体が、まるできれいに清められたかのように安置された『エンゼルケア殺人事件』。再び道警本部捜査支援分析室の天海伶佳らとともに捜査を進めるうちに浮かび上がってきたのは、十五年前に発生した少女殺人事件と、死亡した少女の遺族である一人の青年の存在。そして、数年おきに発生している女性の不審死事案だった。(中略)上巻に続き、奇妙な古書に導かれた殺人犯を二人の刑事が追う。猟奇事件×スーパーナチュラルミステリーの後編!
UNXET
道内で見つかった女性の不審死事件が、
過去の未解決事件と手口が類似する。
このエンゼルケア連続殺人犯の捜査で、
別班の刑事と心理分析班が始動する。
◆登場人物
加地谷悟朗……頑固で口が悪い猛攻型の刑事
浅羽賢介……好色でオカルト好きの加地谷の相棒刑事
天野伶佳……本部に在籍する心理分析班の女刑事
御陵伽耶乃……心理分析班所属の分析官
青柳史也……両親と義妹を亡くした孤独な青年
西条茜……親戚の家に居候する少女
『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book2《怪物》』
阿泉来堂(著)
KADOKAWA
2023年10月24日発売
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詳しくは——
感情トリガーとあらすじ、場面
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【感情のトリガー↓】0~184P(スマホ)
①弔う殺人犯【謎】
②未解決事件【ー】
③聞込み調査【察】
【トリガーの内訳】
①弔う殺人犯(防風林から遺体が見つかる)
└矛盾の手口【謎】(ナゾ)
②未解決事件(類似する過去の事件が浮上する)
③聞込み調査(15年前の事件の関係者を訪ねる)
└手紙の内容【察】(マサカ…)
【刺激された感情の種類:2種】
思考:★★
謎=行動や現象に不可解を残す(1)
察=ヒントから展開の予測がつく(1)
①弔う殺人犯【謎】
あらすじ——
連続殺人鬼の犯人逮捕から2ヶ月ほど。
加地谷悟朗と相棒の浅羽賢介は、
事件の要請で現場へと足をはこぶ。
被害者の遺体を確認すると、
心理分析班の女刑事たちが研修で現れる。
刑事らしからぬ風貌の御陵伽耶乃は、
現場の様子からプロファイルし、
敵対視する加地谷に実力を見せつける。
矛盾の手口【謎】
町境にある川沿いの防風林の中から、
二十代半ばの女性の遺体が見つかった。
「別班」の加地谷と浅羽が呼びだされ、
件の現場へと足をはこんだ。
すると、加地谷が犯行手口のようすに、
矛盾する犯人の感情を読み取っていた場面。
殺害後に何者かが池の水で泥や血液を洗い落としたとでもいうのだろうか。それからこの体勢に横たえたのだとしたら、死後硬直が始まる前に遺体を動かさなければならない。それが出来るのは犯人だけだろう。
《前掲書、 P.56》※スマホで閲覧
だが、女性を襲い、何度も執拗に後頭部を殴って殺害し、持ち物を漁って財布から現金を奪っていくような犯人が、わざわざそんなことをするだろうか。その間に誰かが来たら、殺人の現場を見られてしまう。そんな危険を冒す必要が、どこにあったというのか……。
——なぞ。
女性は二十時間程前に殺害されていた。
凶器は現場に落ちていた石……
——無計画で衝動的。
何度も執拗に殴っていた……
——恨みがあったか、サディスト。
遺体の顔を綺麗にしてポーズをとらせていた。
棺桶に入ったすがたのような体勢に……
——後悔や罪悪感の表れ。
そして、お金を盗んでいる。
もしくは、最初からお金が入ってなかったか。
もし、犯人が単独だったならば、
多重人格が考えられるね。
それか、複数による犯行。
②未解決事件【ー】
あらすじ——
遺体を丁寧に横たえていた様子から、
加地谷は15年前の事件を想起していた。
元荏原警察署の刑事だった君島のいる交番に、
意見を求めて加地谷と浅羽が訪ねる。
今回起きた事件と類似する事件が、
過去にも3件起きていたことが判明し、
加地谷たちは、有力な容疑者を知らされる。
■手口が類似していた未解決事件
③聞込み調査【察】
あらすじ——
元刑事の君島から容疑者候補を聞き、
加地谷と浅羽は、青柳史也の家を訪問する。
彼には、二日前の犯行時間にアリバイがあり、
加地谷らの捜査は難航する。
手紙の内容【察】
中学生の佑真くん宛てに書いていた——
小学生の西条茜の手紙に、
エンゼルケア殺人の犯人像と、
類似するところが載っていた箇所。
そうそう、この前の続きを書くね。
《前掲書、 P.143~144》
助けてもらった日から、私とおじさんはたまに古本屋さんで顔を合わすと話をするようになった。公園のベンチに座って本の感想を言い合ったり、おじさんにおすすめの本を教えてもらったり。おじさんは嫌な顔一つせずに私の話を聞いてくれるし、退屈そうにしないで笑ってくれる。だからとっても話しやすいの。
おじさんはお父さんの遺産がたくさんあるおかげで、働かなくても生きていけるから、毎日本を読んで過ごしているんだよ。
——まさか……
おじさんの正体は、青柳史也なのでは?
15年前に義妹が殺されたせいで、
再婚した両親から酷い虐待を受け、
挙句、その両親が娘の後を追うように心中。
精神科に送られていた史也は、
退院した後、札幌の児童施設に送られ、
父から相続した家に移ったという哀れな青年。
彼は、元刑事の君島が疑っていた容疑者であり、
御陵伽耶乃のプロファイルにも当てはまる。
カットバックで登場する小学生の茜ちゃん——
と暮らしている親戚の息子(30歳)も怪しいし、
まだ、犯人が誰かわからないねえ。
今のところ怪しいのは——
現在28歳と思われる青柳史也と、
茜ちゃんを怖がらせていた30歳の直昭。
被害者は皆、女性で無抵抗だったことから、
犯人は安心感を与えるような人物だろう。
直昭は、見た目がまだよく分からないし、
茜ちゃんに警戒されていた。
一方、青柳史也は端正な顔立ちに、
身長と体格にも恵まれている。
茜ちゃんも彼に心を許していたくらいだから、
女性に安心感を与えるという犯人像にぴったり。
しかし、青柳にはアリバイがあったのです……。
感想(前半)
◆手紙のやり取りがまだ判然としない
中学に入ったばかりの佑真くん。
親戚に居候する小学生の茜ちゃん。
彼らは、血の繋がる兄妹関係なのか?
時系列は加地谷側と近いか同じくらい。
茜ちゃんの手紙の内容には、
無職の青柳史也らしき人物と、美大の講師——
久間琴絵という女性が登場している。
史也は、琴絵とも関わっていた。
今回の矛盾する手口の犯行は、
この男女二人による仕業だったのか?
この手紙で事件の真相に近づけさせる手法が、
とても勉強になりますねぇ。
ただ、その分、物語の動きは少なめです。
◆天野伶佳より新キャラが際立つ!
心理分析班の美人分析官——
ちいさくて華奢な躰をパンツスーツでまとい、
黒い髪をうしろで結んでいる——天野伶佳。
彼女の活躍を期待していたのですが、
新キャラのほうがキャラ立っています。
おなじ心理分析班で警部補の御陵伽耶乃。
パンクロッカーのような身なりで登場し、
天野伶佳に馴れ馴れしく接する長身の女性です。
彼女の奇抜性には、加地谷も手に余ってました。
アニメキャラのように超然としていて溌剌。
しかし、プロファイルの腕は確かです。
このギャップが面白いですよね。
後半の感情トリガー
【感情のトリガー↓】184~376P(スマホ)
①捜査会議【蟠・蟠】
②俺の責任【察・推・清・悲/悩・茫】
③超自然的【蟠・呆/驚・謎】
【トリガーの内訳】
①捜査会議(容疑者とプロファイルを照らす)
├乙女の動揺【蟠】(キニナル)
└窓のそとに【蟠】(キニナル)
②俺の責任(怪物と対峙する)
├つたない字【察】(マサカ…)
├本当の犯人【推】(マテヨ…)
├真犯人判明【清】(スッキリ)
├最後の呟き【悲/悩】(ナンテコッタ!/ドウスレバ…)
└幽玄な現象【茫】(????)
③超自然的(不可解な謎に行き当たる)
├正しいこと【蟠】(キニナル)
├解離の兆候【呆/驚】(ッ⁉︎/エッ⁉︎ イガイ)
└古書の印象【謎】(ナゾ)
【刺激された感情の種類:10種】
幸福:★
清=怨みや蟠りが解消される(1)
驚度:★★★
驚=予想外の出来事(1)
茫=神秘的な現象に遭遇する(1)
呆=突然で呆気にとられる(1)
思考:★★★
推=謎を解く仮説を考察する(1)
謎=行動や現象に不可解を残す(1)
察=ヒントから展開の予測がつく(1)
不幸:★★★★
蟠=中途半端でまだ未解決(3)
悲=悪くなった状況を認知する(1)
恐怖:★
悩=すぐに選択できない(1)
全体を通してのプロット
A【人物・世界観の説明】
①舞台が北海道札幌圏内
②加地谷刑事が相棒と『別班』に配属される
③未成年の兄妹が手紙のやり取りをしている
a【物語が始まる起点・問題】
☆女性の不審死事件に駆り出される
☆犯人は被害者を殺害後、遺体を弔っていた
B【発生した問題への対処】
○過去の事件に詳しい元刑事を訪ねる
b【問題の広がり・深刻化・窮地】
①類似する事件が過去にも起きている
②過去の事件の容疑者に聴取をとる
③容疑者に、アリバイの証言者がいる
C【人物の葛藤・苦しみ】
①プロファイルでは容疑者が犯人とでる
②通報してきた少女が何者かに攫われる
③容疑者宅で犯人のメモ書きを発見する
c【問題解決に向かう最後の決意】
★メモ書きから犯人をプロファイルする
★加地谷と浅羽が犯人を捕まえに行く
D【問題解決への行動】
○犯人と対峙し、被害者を救う
読了した感想
◆天野伶佳のセリフが気になる!
容疑者のアリバイの確認から署に戻ったあと、
加地谷と浅羽は、捜査会議を開いてました。
心理分析班の天野と御陵伽も会議に現れます。
御陵伽は、まるで百合の関係であるような——
思わせぶりな発言で天野を困らせていました。
その後の御陵伽と天野のやり取りです。
「ご、誤解を招く発言は控えてください。それに私は、御陵警部補が意味の分からない寝言ばかり言うので熟睡できず、すっかり寝不足です」
《前掲書、 P.188》
「あははぁー、ごめんねぇ。でも、レイちゃんだって寝言で『少し気になるだけ』とか『でも会えてうれしい』とか意味深なこと言ってたじゃん。それって誰のこと……むぐぐっ」
「よ、余計なことは良いんです!」
なんだか、恋する乙女という印象ですね。
加地谷は既婚で子持ちのおっさんだし、
浅羽賢介は、女好きのちゃらんぽらん。
ってことは、彼らのことではなさそうな……。
それとも、恋ではなく、敬慕かな??
加地谷の姿に、天野の父親の面影があったとか。
結局、この答えはわからずじまい。
もやもやしますね。
◆複雑なミスリードが上手かった!
後半のどんでん返しです。
そこに超自然的な要素も加わることで、
感情もたくさん刺激されました。
前半の動きは少なかったけど、
後半からの巻き返しがすごい!
かなり集中して読んでいた気がします。
◆最後の伏線回収も素晴らしい!
序盤から何度も登場する手紙——
西条茜ちゃんと、兄の佑真くんのやり取り。
ずっと、燻っていた二人の謎が、
最後の方で真実が示唆されます。
これは想定外で驚かされました。
タイトル回収で幕を閉じましたが、
続編もありそうな予感がしますね。
期待して待っています。
『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book2《怪物》』
阿泉来堂(著)
KADOKAWA
2023年10月24日発売
想像力を鍛えて脳内映像化マスターへ!
※:執筆者の独断と偏見が含まれます。
※:本ページの情報は2023年11月時点のものです。
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