前半のストーリー
悪夢のような事件が過ぎ、平和な日常を送っていた冷堂紅葉と天内晴麻。(中略)【同時刻連続殺人。喫茶店の密室。ダイニングメッセージ。ショッピングモールの爆破。そして冷堂父の不可解な死。】連鎖する事件。付き纏う死の影。運命のいたずらか、それとも……。「生きてほしいです。一秒でも長く」謎めいた事件に挑む学園ミステリ、衝撃の結末が待ち受ける第二弾!※電子版は紙書籍版と一部異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください
UNEXT
天内と冷堂の通う青崎高校に、
英国出身の双子姉妹が転入してくる。
学校で密室による他殺が発生したため、
時間遡行で手口と真犯人を暴き出す。
◆登場人物
2年A組
天内晴麻……キスで時間遡行できる冷堂の助手
冷堂紅葉……16歳で成長が止まった不老不死の探偵
網船至……色白美少年。美術部の幽霊部員
2年B組
カルバン・クレイン……文学研究会の一員
宮川愛……文学研究会の一員。学校一の巨乳
芦原伊代……宮川愛の親友。水泳部員
布施一馬……ショッピングモールで働く。筋肉バカ
エレイン・ティリー……冷堂紅葉の旧友。双子の姉
メアリン・ティリー……冷堂紅葉の旧友。双子の妹
1年生
山内絵美……事件の第一発見者になりがち
警察関係者
律音澪太郎……晴麻の幼馴染の刑事。27歳
湯之宮灯呂……律音刑事の上司。厳しい性格
その他
三鷹ソラ……カルバンのメイド。異能力者
冷堂青紫……紅葉の父。密室で不可解な死を遂げる
『不死探偵・冷堂紅葉 02.君に遺す『希望』』
零雫(著)
美和野らぐ(イラスト)
SBクリエイティブ
2023年11月13日発売
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詳しくは——
感情トリガーとあらすじ、場面
※:本ページの情報は2023年11月時点のものです。
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【感情のトリガー↓】0~253P(スマホ)
①最初の密室【謎・解・謎・訝・呆】
②双子の登場【呆・嘲】
③連続の密室【蟠・悲/謎・茫・推・謎/楽】
【トリガーの内訳】
①最初の密室(喫茶店で起きた密室の謎を解く)
├鼓動の感触【謎】(ナゾ)
├開かない扉【解】(ナルホド!)
├喫茶店密室【謎】(ナゾ)
├喫茶店密室【訝】(ハ?)
└湯之宮刑事【呆】(ッ⁉︎——)
②双子の登場(冷堂をよく知る双子姉妹が現れる)
├時間の制止【呆】(ッ⁉︎——)
└透けて視る【嘲】(ハハ)
③連続の密室(同じ高校で密室事件が同時に起こる)
├入るのNG【蟠】(キニナル)
├命を射る矢【悲/謎】(ナンテコッタ!/ナゾ)
├絶望の投身【茫】(????)
├3本の射撃【推】(マテヨ…)
└相互の密室【謎/楽】(ナゾ/ウキウキ)
【刺激された感情の種類:10種】
驚度:★★★
茫=神秘的な現象に遭遇する(1)
呆=突然で呆気にとられる(2)
思考:★★★★★★★
解=不可解が解明される(1)
訝=疑問を抱かせる言動や描写(1)
推=謎を解く仮説を考察する(1)
謎=行動や現象に不可解を残す(4)
不幸:★★
蟠=中途半端でまだ未解決(1)
悲=悪くなった状況を認知する(1)
攻撃:★
嘲=茶番さを小バカにした半笑い(1)
乗気:★
楽=告知されてる出来事への期待(1)
①最初の密室【謎・解・謎・訝・呆】
あらすじ——
放課後に喫茶店を訪れていた天内と冷堂は、
偶然、来店してきた律音刑事と再会する。
翌日の放課後、天内と冷堂は同じ店に向かい、
密室で起きていた殺人事件と遭遇する。
現場に来ていた律音刑事の上司——
スーツ姿の湯之宮刑事が現れ、
未成年である天内達は、追い返される。
冷堂をマンションまで送っていた天内は、
突然、彼女からキスをされてタイムリープする。
ふたたび、喫茶店の中にもどった天内は、
湯之宮刑事の現れたタイミングで、
密室の謎を解明していく。
❶鼓動の感触【謎】
プロローグのところ。
扉についている覗き窓に顔を近づけて、中を見る。
《前掲書、 P.11~12》※スマホで閲覧
部屋の奥には、金属製の机が一つだけ置いてある。
その下に、まるでそこに潜り込んでいるかのように、彼女が倒れていた。
(中略)
左手首に指を当て、脈拍を確かめる。けれど、鼓動の感触がやってくることはなかった。
やはり彼女は、……死んでいる。
美術部室の静謐。その中で、俺の心臓の動悸がうるさく響いた。
彼女が囚われたのは、誰にも『視ることのできない』密室殺人だった。
——なぞ。
「俺」ってだれ?
彼女は生徒なのか?
美術室ってことは、学校?
『視ることのできない』ってなんだ?
初っ端からミステリですねえ。
❷開かない扉【解】
放課後、
晴麻は同じクラスの冷堂と喫茶店に来ていた。
途中、来店した律音刑事も同席し、
彼は昔から知る晴麻と、冷堂の分まで支払った。
3人は店から出ようとしたとき、
先頭の冷堂が自動ドアの前で立ち止まる。
ドアが開かなかったのだ。
なぜ、ドアが開かなかったのかを、
冷堂が説明し、晴麻が納得する場面である。
天内晴麻視点
十月三日(月曜日)——十七時過ぎ。
喫茶店の店内。
「この手のセンサーは黒い物に反応しにくいのです」
《前掲書、 P.28》
「あぁー……なるほど」
説明を聞いて納得する。冷堂の下半身は黒いタイツに包まれ黒いローファーを履いているせいでほぼ黒だ。あの店員さんのように太ももに近づくにつれて肌色が透けているが、機械に判別がつくほどではない。
冷堂って、髪も制服も全体的に黒いもんな。
低い位置にあるセンサーが冷堂の黒い脚を認識できず、自動ドアが開かなかったというわけだ。
——なるほど!
黒はセンサーの光を吸収するせいで、
反射させることができないようです。
たまに開きづらいときがあるのって、
そういうことだったんですね。
❸喫茶店密室【謎】
晴麻と冷堂は翌日の放課後、
昨日とおなじ喫茶店にふたたび訪れる。
目当てだったナポリタンの料理が、
店長の不在で食べることが出来なかったから。
しかし、パトカーが店の前に停まっていて、
黄色い規制線が周囲に設置されている。
そこには、律音刑事もいた。
晴麻と冷堂は、早速、律音刑事に訊ね、
事件のことを確認する。
店内で店員が亡くっていたらしい。
昨夜、晴麻達に対応していた女性店員。
彼女が何者かに殺されていたのだ。
天内晴麻視点
十月四日(火曜日)——十七時三十分過ぎ。
事件現場の喫茶店。
被害者は椿緋芽。頭を硬い物で殴られ死亡している。
《前掲書、 P.38》
死亡推定時刻は、十月三日(つまり昨日だ)の午後六時半の前後一時間。この時間は、俺と冷堂とミオさんが食事を終えて店を出てから約一時間後だ。
——なぞ。
お店の出入りができるのは二箇所だけ。
入り口の自動ドアと、裏の勝手口。
勝手口の所に自動ドアのスイッチがあり、
オフになっている時は外に出られない。
律音刑事は密室事件だと言っていた。
つまり、自動ドアはオフになっていて、
勝手口も内側から鍵が掛かっていたのだろう。
今のところ疑わしいのは店長だ。
店長が第一発見者であり、
お店の鍵も当然、もっているから。
犯人は、なぜ椿緋芽を襲ったのか?
密室のトリックとは?
❹喫茶店密室【訝】
晴麻と冷堂も喫茶店の中を調べてみたが、
密室の謎を解くことはできなかった。
窓は内側から全て施錠されていたし、
勝手口と自動ドアも施錠されていたという。
釣り糸を通せる隙間もなかったため、
外側から施錠を掛けることもできない。
勝手口の鍵は二つだけで、
持っているのは店長と被害者である椿の二人。
椿の遺留品から鍵が見つかっているので、
店長以外は犯行が不可能と思える。
しかし、店長には昨夜のアリバイがあり、
椿を殺害した犯人ではなかった。
自動ドアをオンオフに切り替える——
突起状のスイッチに仕掛けができれば、
犯行後に密室を作ることができるかも。
でも、その方法が解らない。
遺体をホールから厨房に移動させた理由も不明。
おまけに、犯人は椿の黒タイツを脱がし、
それを持ち去っている。
いったん、帰ることになり、
晴麻は冷堂をマンションまで送っていた。
その時、彼女が自動ドアを通るところを見て、
晴麻がなにかに気づく場面である。
天内晴麻視点
十月四日(火曜日)——十八時三十分過ぎ。
冷堂紅葉のマンション前。
冷堂は俺に手を振ると、マンションの入口に立ち、自動ドアを通って中に入っていく。
《前掲書、 P.55~56》
「………………ん?」
俺はその様子を見て……脳内に、電流が走った。
頭の中を、昨日と今日の出来事が駆け巡る。
ホールで殺害され、厨房に移動した死体。閉じた扉。ロックされた自動ドア。……そして、冷堂が通る自動ドア。
頭の中は高速で回転し、車のエンジンのように徐々に熱を帯びていく。
「…………冷堂!」
「え?」
気が付くと俺は駆け出して、冷堂を呼び止めていた。突然名前を叫ばれた彼女は驚いて振り返る。
「密室の……ハァ、謎が……、ハァ、わかった!」
——は?
おそらく、黒タイツが関係しているのでは?
センサーに反応しづらいという件は、
密室の謎を解く伏線だったのかも。
しかし、それでも解らない。
❺湯之宮刑事【呆】
帰宅中に密室の謎を解いた晴麻は、
冷堂のキスによってタイムリープした。
30分前に戻り、晴麻達は喫茶店の中にいる。
律音の上司——湯之宮刑事がちょうど現れ、
晴麻は今度こそ、体裁よく推理を披露した。
すると、あの厳格な風体の湯之宮刑事が、
意外な反応を見せていた場面である。
天内晴麻視点
十月四日(火曜日)十八時三十分→十八時。
喫茶店の店内。
そして、厨房の台に背中が当たったところで、がくりと床に倒れこんだ。
《前掲書、 P.72~73》
「ちょ、大丈夫ですか?」
俺が心配になって駆け寄ると、湯之宮が倒れたタイルの床にぽたぽたと数滴の血が落ちていた。
出血しているのか、と俺が戦慄すると、呻くような声が湯之宮から聞こえた。
「………………っこ……いい…………」
「え?」
よく聞こえず、俺は聞き返す。すると、湯之宮は今まで聞いたことのない高い声で嬌声を上げた。
「かっこいい……天内きゅん……!!!!」
——ッ!?——
いやいや、相手は未成年ですよ?
惚れちゃまずいっしょ。いろいろと。
ぶっとんだラノベらしい展開で面白いです。
仕事に厳しそうな口ぶりの女刑事が、
急に乙女っぽくなっちゃうのですから。
ちゃんとギャップを出していますね。
肝心の自動ドアについてですが、
本当に音を出さずに開け閉めができるのか?
実際に実験してみたいですねぇ。
さて、密室の謎は解けましたが、
犯人は誰なのでしょうか?
そして、椿を襲った動機はなんだったのか?
②双子の登場【呆・嘲】
あらすじ——
喫茶店での殺人事件から一週間。
天内が通う青崎高校に転入生が現れる。
2年B組に入ってきた英国人の双子姉妹は、
冷堂紅葉とおなじ孤児院で育った経緯があり、
再会して早々、冷堂をつれまわす。
双子姉妹は冷堂をモールに連れ出し、
いろんなファッションを試そうとする。
そこにメイドの三鷹と、店員の女性も加わり、
冷堂の着せ替えショーが展開される。
翌日、
天内は冷堂と美術部室に向かい、
絵を描いていた双子姉妹の姉を紹介される。
❶時間の制止【呆】
青崎高校に転校生が入ってきた。
カルバンや宮川のいる2年B組に。
イギリス出身の双子姉妹である。
金髪ツインテールのエレイン・ティリー(姉)
金髪ボブのメアリン・ティリー(妹)
なんと、二人は冷堂の古くからの知り合いで、
おなじ孤児院に8年も一緒だったという。
そのエレインが転校してきて早々、
冷堂を強引に誘ってモールに連れ出していた。
控えめなメアリンも付き添い、
冷堂の服選びに参加する。
たまたまショッピングに来ていた——
メイドの三鷹ソラ(異能力者)と、
なぜか店員の女性まで参加してきた。
その後、5人はフードコートに落ち着き、
女性店員は、この前の喫茶店事件の——
殺された椿緋芽の姉だと述べた。
彼女達が雑談に花を咲かせていたとき、
突然、エレインが叫びだす。
彼女の持っていたコーヒーカップが、
女性店員に投げ出されていた場面である。
冷堂視点
十月十一日(火曜日)——十七時三十分過ぎ。
ショッピングモール4階のフードコート。
刺さるような悲痛な叫びがフードコートに響き渡る。
《前掲書、 P.128》
投げられたカップは宙を舞い、熱いコーヒーが椿さん目掛けて飛んでいく。
「!」
私は口を開くが、「危ない」と言う暇もなかった。コーヒーは軌跡を描きながら、椿さんの顔へ向かって零れていく。
その時、椿さんが飛んでくるコーヒーに掌を向けた。
すると、なぜかカップとコーヒーは時間が止まったかのようにその場で制止し、落下した。
——ッ!?——
赤髪の女性店員——椿藍花は、
時間を一時的に止められるのだろうか?
冷堂の嗅覚では、彼女も異能力者らしい。
メイドの三鷹も『時の破壊』で、
相手を少し前の時間に飛ばせる異能者だし、
イレギュラーな人物がどんどん増えている。
エレインの透視能力も楽しみだな。
❷透けて視る【嘲】
天内は、冷堂が紹介したいということで、
部活棟の美術部室にやってきた。
ちょうど絵を描いていたエレインと対面し、
天内は彼女の異能力について興味をもつ。
それを察したのか、エレインは毅然と言った
「私の視点だと紅葉は常に裸よ」と。
ややあり、部室の扉がノックされる。
迷子になっていた妹のメアリンと、
ここまで案内してきた宮川愛も現れた。
愛らしいメアリンの容姿に、
学校一の宮川が抱きついて離れない。
その様子を姉のエレインが視ていて、
天内がつっこむ場面である。
天内晴麻視点
十月十二日(水曜日)——十五時三十分過ぎ。
部活棟3階の美術部室。
「うわ、すっご……中はこんなことになるんだ……」
《前掲書、 P.163》
ん? 中は? どういう意味だろう。
……………………。
「おい! エレイン! お前『視ている』な!」
目を塞がれたまま、俺はエレインの声がする方向を指で差し叫ぶ。
そうだ、間違いない。エレインは透視の異能力を使って宮川を『視て』いる。
こいつなんてことを……!
——はは。
なんと羨ましい能力。
透視マジックのショーとかやれそうですよね。
武器を隠し持っている人も判別できるんで、
防犯にも役立つこと間違いなし。
③連続の密室【蟠・悲/謎・茫・推・謎/楽】
あらすじ——
冷堂と一緒に買い足しをした天内は、
彼女のマンションについて行き、
冷堂の珍しいお洒落姿に驚かされる。
その翌日の放課後、
天内は、クラスメイトの網船と出会し、
エレインの様子がおかしいという知らせで、
部活棟の美術部室に駆けていく。
エレインの死体を発見した天内は、
律音刑事に連絡し、警察を呼び寄せる。
エレインの死体発見とほぼ同じ時刻に、
メアリンも謎の不審死を遂げていたと知り、
彼女達と幼馴染の冷堂が失踪する。
日を跨ぐぎりぎりで冷堂を発見した天内は、
彼女とのキスでタイムリープする。
天内は刑事達のいる美術部室にもどり、
現場を詳しく捜査していく。
❶入るのNG【蟠】
美術部室のエレイン達と解散した天内は、
今晩のおかずを冷堂とスーパーで買い足しをし、
彼女のマンションについていった。
天内が料理を担当するということで、
キッチンカウンターの前に立つ。
その時、
向かい側の冷堂が気になる発言をしていた場面。
天内晴麻視点
十月十二日(水曜日)——十七時過ぎ。
冷堂の住んでいるマンション。
「じゃあ、俺は作ってるからゆっくりしててくれ」
《前掲書、 P.181》
すると、なぜか冷堂はカウンターに両手を置いてもじもじと話し出した。
「あの、私は今から向こうの部屋にいるので、絶対に入ってこないでくださいね」
「ん? ああ」
向こうの部屋、というのは寝室のことだろう。何か見られたくないことでもあるのだろうか。
「絶対ですからね」
「わかったわかった」
鶴の恩返しみたいにしっかりと念押しをしてから、冷堂は寝室の方へ消えていった。
——気になる。
着替えるから見るなということかな?
それとも、不老不死なりの秘密があるとか?
天内へのサプライズという可能性もある。
彼の誕生日が今日だったとか。
なんで「絶対」と強調していたんだろう?
❷命を射る矢【悲/謎】
放課後、天内は校舎を一人で歩いていた。
旧校舎の文学研究会部室へ向かっていると、
おなじクラスの網船が蒼白な顔で現れる。
彼は酷く動転していた。
エレインの様子がおかしいという。
今にもその場で倒れそうな網船を校舎に残し、
天内は一人で部活棟の3階にある——
美術部室に急いでむかった。
昨日と同じく、内側から鍵が掛かっている。
エレインが絵に集中するためだそうだが、
天内はノックして彼女の名前を呼んだ。
応答なし。覗き窓から部屋をのぞく。
金属製の机の下——
そこにエレインらしき人物が倒れていた。
天内は覗き窓を叩き割り、
そこから腕を通して鍵を開けた。
彼が部屋の中に入っていく場面である。
天内晴麻視点
十月十三日(木曜日)——十五時三十分。
部活棟の3階にある美術部室。
しゃがみこみ、机の下に潜り込んでエレインの様子を確かめる。
《前掲書、 P.199~200》
胸に刺さっていたのは矢だった。近づいて見ると、胸に二本、腹に一本、計三本。
深々と刺さっていて、目を背けたくなるほど痛々しい。
念のため左手首に指を当て、脈拍を確かめる。けれど、鼓動の感触がやってくることはなかった。
やはりエレインは、……死んでいる。
——なんてこった!
死を自認してしまったから、
それより前にタイムリープできないんだよね?
つまり、エレインを救うことができない……
なんで、凶器が矢だったんだろう?
昨日、妹のメアリンは言っていた。
弓道をやってみたいと……。
事件に妹が関わっているのだろうか?
それに、エレインは透視能力者だ。
なぜ、彼女は犯人の存在に気づけなかった?
机の下に倒れていたのも謎だ。
そこにいたら矢を胸に射れないよね?
射った後で、犯人が遺体を移動させたのか?
なんのために?
密室の謎もわからない。
とりあえず、網船が疑わしいと思う。
エレインが転校してきた時から、
彼女のことを意識していたし、
おなじ美術部というつながりもある。
才能あるエレインに嫉妬していたのかも。
❸絶望の投身【茫】
孤児院で家族のように暮らしていた双子姉妹、
エレインとメアリンを同時に失った。
冷堂紅葉は今、部活棟の屋上にいる。
不死である彼女が、投身する場面である。
冷堂紅葉視点
十月十三日(木曜日)——二十時。
青崎高校の部活棟の屋上。
静まり返った夜の校舎を、肌寒さを感じる秋の風が撫でる。涙で濡れた頰がより冷たくなった。
《前掲書、 P.210~211》
部活棟の屋上からは街の明かりが見える。
私はその光の海に飛び込むように身を投げた。
(中略)
一階が見えた。高い位置に小さな窓が見える。あそこはメアリンが首を吊っていた更衣室だ。
そして私の眼前に地面が迫り、鈍い音と共に意識がブラックアウトした。
——????
なぜ投身したのか?
まさか、妹まで亡くなるとは思わなかった。
更衣室で首を吊っていたらしい。
自殺だったのか?
犯人は妹のメアリンということなのか?
❹3本の射撃【推】
ティリー双子姉妹が亡くなった事件で、
冷堂が行方をくらましていた。
天内は、自前のエリミネーターで捜し回り、
深夜の学校にもどって彼女を発見する。
血まみれの服装と床の血の跡から、
投身を図ったことは容易に察しがついた。
亡き双子姉妹の無念を晴らすため、
天内と冷堂は、覚悟を決める。
真犯人をかならず見つけ出す——と。
冷堂とのキスでタイムリープした天内は、
エレインを発見した美術部室にもどり、
律音刑事や湯之宮刑事と現場を捜査した。
一通り捜査を終えた天内と刑事たちは、
学校の応接室に集まり、
エレインの殺害手口の謎にぶち当たる。
天内晴麻視点
タイムリープ後の——
十月十三日(木曜日)——十七時。
学校の応接室。
湯之宮が、見取り図でエレインの死体がある位置を指で差す。
《前掲書、 P.234~235》
「あの機械が置かれていた位置から考えると、エレインさんがあの位置……机の下に潜りこんでいないと命中しないわよね」
俺は射出機が置かれていた棚を差した。
「はい、しかもタイマーが設定した時間に必ずエレインがこの位置にいる必要があります」
射出機は棚の一番下に置かれていたため、非常に低い位置にあった。この高さでは、仮に直線上に人間がいたとしても、立っていれば脚に刺さる。
矢はエレインの胸と腹に刺さっていた。屈んだ体勢でなければ、あんな風にはならないのだ。
この射出機でエレインを殺すには指定した時間にエレインが机の下に入り込むという不自然な状況が必要ということだ。
——まてよ……
エレインの第一発見者は、網船至だった。
彼は、彼女の存在を以前から知っていたし、
エレインに対して興味を示していた。
もし、彼が犯人なら辻褄が合う。
時限式のボーガンが矢を放つタイミングで、
網船が美術部室に近づき、こう言うのだ。
「地震だ! 今すぐ机の下に潜り込め!」
何も知らないエレインは素直に従い、
そこで矢の発射を浴びてしまったのだろう。
網船は、天内を彼女の下へ向かうよう仕向け、
どこかで女装の準備をする。
メアリンが女子更衣室にいることを何かで掴み、
縄を鞄に隠し持って堂々と向かう。
同じ女だと思って油断しているメアリンを、
背後から襲っていたのだ。
網船は美青年らしいからね。
女装も様になるはず。
でも、女子更衣室も密室だったんだよね?
そこが謎だし、
メアリンが女子更衣室にいることを、
どうやって知ったのか。
❺相互の密室【謎/楽】
天内はまだ応接室で話し合っていた。
今、問題になっているのは更衣室の謎。
女子更衣室で見つかったメアリンは、
首を吊って死んでいた。
更衣室は施錠されており、
彼女の服から男子更衣室の鍵が発見されている。
女子更衣室の鍵は、
なぜか男子更衣室のロッカーに入っていた。
そして、男子更衣室も施錠されていたのだ。
これが、相互の密室。
もし、メアリンが女子更衣室の鍵と、
男子更衣室の鍵を持っていれば再現ができる。
♀鍵を男子ロッカーに隠し、更衣室をでる。
外から施錠したあと、女子更衣室に入る。
内側から施錠し、首を吊るというもの。
これが、メアリンの自殺説。
しかし、天内はそう思っていない。
それこそが犯人の狙いだったと睨んでいる。
天内晴麻のモノローグ。
犯人がその場にいて、『施錠されていない扉が開かない振りをした』可能性は消える。
《前掲書、 P.251》
女子更衣室の鍵は山内が、男子更衣室の鍵は近くにいたという男子生徒が開錠したという話から、『実は鍵は掛かっておらず、何かがつっかえていただけだった』ということも考えにくい。
扉は確実に施錠されていたのだ。
にもかかわらず、『女子更衣室にあったメアリンの死体から♂鍵』『男子更衣室のロッカーから♀鍵』が見つかったという不可解な状況。
——なぞ。
メアリンは着替え中だったのだろうか?
服装が明示されていないから、推測が困難。
犯人から更衣室に呼ばれていたのか、
着替え目的で更衣室に向かっていたのか。
例えば、女装した網船がメアリンを唆し、
一緒に女子更衣室へ入っていく。
そこでメアリンの首吊りを工作し、
♂鍵を彼女の服に忍ばせる。
女子更衣室を出て、外から施錠する。
次は男子更衣室に入り、内側から施錠する。
♀鍵をロッカーに隠し、
網船はみんなが来るまでどこかに隠れる。
他の男子たちが合鍵で入ってくる。
みんなに紛れてその場を去る。
そんな上手いこといかないか。
感想(前半)
◆早い段階でタイムリープが見れる!
待望の二巻目が早くも登場。
一巻がめちゃくちゃ面白かったんで、
期待してすぐ購入しちゃいました。
で、やっぱり魅せ方とミステリの発想が凄い!
こんな最初の方でキスするとは思わなかったし、
密室の謎を解くとも思わなかった。
そして、ちょっとクセのある女刑事も登場。
口絵では少女にしか見えない湯之宮灯呂です。
年齢は分かりませんが、
律音刑事の上司にあたるスーツ姿の女性で、
名探偵さながらに推理する天内晴麻をみて、
乙女の素が出ちゃっておりました。
面白いし、脳トレにも役立ちそうだから、
僕には、堪らないラノベ小説です。
◆ラブコメ要素も忘れてない!
普通のミステリ小説となると、
シリアスに見せる内容が多いのですが、
本書ではラブコメ要素もあるのが魅力です。
お胸の大きな少女の登場に、
クセの強い双子姉妹、着せ替え大会、
冷堂と天内のいい感じなシチュエーション。
ちょっと、こちらの緊張を解くような、
笑わせてくれる描写が楽しいです。
でも、油断は禁物。
こういうところに伏線が入りますからね。
後半の感情トリガー
【感情のトリガー↓】253~514P(スマホ)
①冷堂の天啓【悸・察・訝】
②背後の黒幕【訝/呆・諦・訝】
③天内の希望【肯・呆/喜・察】
【トリガーの内訳】
①冷堂の天啓(密室トリックの答えが閃く)
├添い寝する【悸】(ドキッ)
├絵画の題名【察】(マサカ…)
└謎が解けた【訝】(ハ?)
②背後の黒幕(事件の黒幕と対面する)
├計画と取引【訝/呆】(ハ?/ッ⁉︎)
├犯人の解明【諦】(オテアゲ)
└現れた刑事【訝】(ハ?)
③天内の希望
├射出機の謎【肯】(タシカニ)
├敗者の行方【呆/喜】(ッ⁉︎/オー!)
└黒幕の黒幕【察】(マサカ…)
【刺激された感情の種類:7種】
幸福:★
喜=恵まれた状況を認知する(1)
驚度:★★
呆=突然で呆気にとられる(2)
思考:★★★★★★★
諦=希望や答えがみえない(1)
訝=疑問を抱かせる言動や描写(3)
肯=諭す言葉に納得してしまう(1)
察=ヒントから展開の予測がつく(2)
乗気:★
悸=魅力的な異性と急接近(1)
全体を通してのプロット
A【人物・世界観の説明】
①天内晴麻と冷堂紅葉が密室事件と遭遇する
②密室の謎を異能力で戻って天内が解く
③青崎高校に双子姉妹が転入してくる
④他の異能力者やクラスメイトと知り合う
a【物語が始まる起点・問題】
☆青崎高校で密室殺人事件が起きる
B【発生した問題への対処】
①冷堂が失踪して、天内が彼女を捜す
②冷堂とタイムリープして、
天内と刑事たちが現場を調べる
b【問題の広がり・深刻化・窮地】
①現場にあった器具と描き遺しの謎
②更衣室の密室の謎
C【人物の葛藤・苦しみ】
①関係者への聞き込み
②警察からの重要な情報
③犯人への説得の失敗
c【問題解決に向かう最後の決意】
★天内が黒幕の正体に気づき、
計画を阻止しようと決意する
D【問題解決への行動】
①仲間と作戦会議をする
②犯人の説得と黒幕との戦闘に臨む
読了した感想
◆一筋縄ではいかないミステリが最高!
異能力×ミステリを上手く融合させ、
普通ではありえない謎を生み出しています。
なんという発想力なんでしょう。
読者への挑戦状が用意されていましたが、
謎の解明に難渋したあげく、降参しました。
答えを知って納得です。
ミスリードが上手いし、
読者の思考をよく分かっているなあと感服。
◆後半はアクション映画さながら!
なにで例えればいいかなぁ……
『ミッション:インポッシブル』
『ワイルド・スピード』
『ダイハード』
のような迫力シーンに近いかも。
小説だと緊迫感が伝わりにくいですが、
映像化したらそんな感じですね。
映画版の『名探偵コナン』と一緒。
後半は、大惨事とそこからの脱出で、
迫力のアクションシーンを魅せています。
こんなふうに、
映画っぽく一つの物語を完結させてくれる——
零雫先生の筋書きスタイルが好きですねえ。
◆次巻が待ち遠しい!
今回の事件は一旦、解決しますが、
まだ謎と黒幕が残っています。
作者のあとがきを読むかぎり、
次巻のプロットも既に考えていそうでした。
『不死探偵・冷堂紅葉』は、僕のイチオシです。
三巻目も間違いなく読ませて頂きます!
◆敢えてダメ出しを挙げるなら
僕の中ではダントツで面白いラノベですが、
少し気になるところもあったりします。
それは、人物が感じる『絶望』の描写ですね。
エンタメ性が濃厚なぶん、
リアルな人情味の部分が薄かったと思います。
昔から知る旧友、家族の死や裏切りに対して、
気持ちの切り替えがあまりにも早すぎる。
ショッピングで働く椿藍花さんは、
最近、双子の妹が殺されたというのに、
もう明るく接客して友達も作っています。
冷堂も天内もそんな感じでしたので、
悲しさより楽しさを優先したかったのかも。
『不死探偵・冷堂紅葉 02.君に遺す『希望』』
零雫(著)
美和野らぐ(イラスト)
SBクリエイティブ
2023年11月13日発売
想像力を鍛えて脳内映像化マスターへ!
※:執筆者の独断と偏見が含まれます。
※:本ページの情報は2023年11月時点のものです。
最新の配信状況はU–NEXTサイトにてご確認ください。
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